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Vol.【51】【玉田悦子さん】
千葉県市川市で、夫と小4の長男、小1の次男、4歳の長女との5人暮らし。料理家として、子ども向けの食育スクール「青空キッチン」の講師を務めるほか、食育に関する講演や、企業のレシピ開発なども行っています。また、最近は、料理のスタイリングや写真撮影を手掛けるフォトスタイリストとしても活動。暮らしニスタでは、身近な材料で作りやすいおかずやおやつのレシピを紹介しています。
●子供もポリポリ食べる♪ブロッコリーのおひたし
●レモンドーナツ
料理を作る人も食べる人もハッピーになってほしい
3人のお子さんも料理好きで、毎日のようにお手伝いしてくれるそう。写真は、次男の誕生日に3人で一緒にケーキを組み立てているところ。
初めて一人で作ったのはブラウニー
料理は、気づいたときには好きでした。
母が料理をしっかり作る人で、私も小さい頃から一緒に料理をするのが当たり前。
初めて、最初から最後まで自分一人で作ったのは、ブラウニーです。
小学3年生の夏休みでした。
それ以来、ブラウニーはよく作るようになりました。
黒糖を使うのが特徴で、今でもブラウニーには必ず黒糖を使用しています。
子どもの頃からのレシピをヒントに、黒糖で甘く煮たゴボウを混ぜたブラウニー。
中学生の頃にはもう食品メーカーで開発をやりたいと思っていました。
大学で食品加工学を学び、希望通り食品メーカーに入社して、開発の部署に配属。
やりがいはあったんですが、もっとお客さまに近いところで食の仕事がしたいと感じるようになりました。
次男の育休中に、レシピブログをスタートし、オリジナル料理を競うテレビ番組にも出演。
その経験から本気で料理の道に進む心構えができ、長女がお腹にいるとき、11年勤務した会社を辞めて、料理家として生きていくことにしました。
子どもの好き嫌いで悩むおうちのかたを助けたい
「青空キッチン」は、独立してすぐに準備を始めました。
私自身の子どもたちはそれほど好き嫌いはなかったんですが、私の姉や周りのママ友たちが子どもの好き嫌いで悩んでいたんです。
その姿を見て、お母さまがたを助けたいなと思っていました。
子どもが健全に育ってほしいという思いももちろんありますが、困っている親を助けたいという思いが、私の仕事のモチベーションになっています。
レッスンは月18コマで、週3日使って自宅で行っています。リビングのテーブルを使い、子どもたちに合わせた踏み台を用意。最近、キッチンカウンターの下にぴったりおさまる家具をオーダー。レッスンに使う道具や食器が収納されています。
「青空キッチン」のレッスンの様子。にぼしの腹わたをとっているところと、ピーマンを切っているところ。
子どもたちに人気があるのは、ちらし寿司など盛り付けを楽しむ料理。
卵を混ぜたり味噌を溶いたりする混ぜる作業もみんなやりたがりますね。
中には刻むのがすごく好きという子もいて、「もういいよ」というまでひたすらトントン。
粗みじんでいいところが細かいみじん切りになったりします(笑)。
そうやって自分で作った料理には愛着がわくので、苦手意識を持っていたものでも食べてくれます。
レッスンという場で緊張感があることで食べられる子も。
圧をかけているつもりはないんですが(笑)。
教室で「食べられた」という自信が生まれて、おうちでもだんだん食べられるようになるようです。
実際に好き嫌いが改善されたという声をいただくと嬉しいですね。
野菜が苦手で、幼稚園には茶色いお弁当を持って行っていたけれど、野菜が食べられるようになって、卒園する頃にはすごくカラフルなお弁当になったというお子さんも。
また、ブログで紹介したレシピについても、「やってみたら本当に効果がありました!」とお返事を下さる方もいます。
最近だと、箸やフォークを使わずに手で食べられるように作る提案が好評でした。
いつもは食べない子がスナック感覚で野菜を食べてくれてすごく効果がありました、と。
そういう言葉が励みになっていますね。
トマトの肉巻きを串刺しに。竹串やピックに刺すことでイベント感が出て、「お祭りの焼き鳥みたい!」と喜ばれ、パクパク食べてくれることがあるそう。
苦手をがんばったことで出会いがつながり、新しい仕事に
活動の柱は「青空キッチン」ですが、最近力を入れているのがフォトスタイリストとしての仕事です。
独立してすぐ、フォトスタイリング協会でスタイリングと撮影の勉強を始めました。
スタイリストさん、カメラマンさんが付いてくれる大きな仕事なんてなかなかないので、自分でスタイリングして写真を撮れないと、料理の仕事はもらえないと思ったんです。
私は、その場でパッとスタイリングできるタイプじゃなかったんですね。
なので、こういう構図にするといいなど理論的に教えてもらえることが、すごく合っていました。
初めは落ちこぼれで思うようにできなかったんですけど、がんばって続けて、今に至ります。
今でも月に1回、レッスンに通っています。
スタイリングや撮影を身につける前の写真。美味しそうじゃないし、昭和感があるし、全然イケてない……と玉田さん。
最近の1枚。レモンのきれいな色は並べるだけで絵になると感じ、小物を抑えたスタイリングで撮影。
フォトスタイリングに力を入れる後押しになったのが、管理栄養士の渥美まゆ美先生の存在です。
渥美先生は「青空キッチン」のレシピ監修をされていて、先生がアシスタントを募集されたときに私が手を上げ、今もアシスタントをさせていただいています。
先生が作った料理を盛り付けしてスタイリングするんですが、盛り付けはいまだにすごく直してもらっているし、スタイリングも一発OKが出ることは稀で、内容の濃い数稽古の場になってます(笑)。
でも2年ほど前から、「写真、上手になったね。撮ってくれる?」と言ってもらえて、いろいろな案件で先生に依頼してもらえるようになりました。
さらに渥美先生が、料理専門の写真教室「フェリカスピコ」の佐藤朗先生を紹介してくださって、ストロボ撮影とレタッチを勉強する機会もいただくことに。
翌日までにレタッチ数百枚、とか、それもものすごく大変だったんですけど(笑)、絶対に役立つと思ってがんばりましたね。
渥美先生の料理を、玉田さんがスタイリングし撮影したもの。コンセプトや季節に合わせ、器や小物選び、盛りつける量、食材一つひとつの向き、クロスのふんわり加減まで、渥美先生の指導が詰まった1枚だそう。佐藤先生からレタッチを教わったことで、色味調整もできるようになりました。
そしてさらに、佐藤先生のご紹介で、最近新しいお仕事もスタートしました。
食のクリエイティブアウトソーシング事業を行う株式会社Paysanneに所属して、企業向けのレシピ開発などをやらせていただいています。
あらためて振り返ってみると、いろいろなことがすべていいご縁でつながっていると感じています。
もう一つ、週に1回やっているお仕事が、食事の作り置きサービス。
お客さまのお宅に伺って、料理を作っています。
始めたきっかけは、渥美先生のアシスタントをしているとにあまりにも自分の動きが不甲斐なく、もっといろいろな環境で料理を作り込まないとだめだと思ったから。
当日用意された材料を見てその場でメニューを考え、お客様の希望に合わせて3時間で8〜12品くらい作ります。
株式会社Paysanneの仕事を始めたときに、いきなり「じゃあ作りましょう!」と言われたんですが、あまり動じなかったんですね。
それはたぶん、作り置きサービスを経験したからだと思います。
作り置きサービスでは、お客さまと近いことで味わえる喜びも。
以前、あるご家庭で私が作ったサラダをお子さんが気に入ってくださって、「ツナハッピーサラダ」と名前を付けてくれたんです。
そんなのもう、キュン♡ってしますよね(笑)
味見したお子さんが気に入って命名してくれたという「ツナハッピーサラダ」。
仕事、子育て、趣味……葛藤しながら
数年前までは、自宅で子どもがいるときには写真撮影をしないようにしていました。
でも、それでは仕事が回らなくなり、子どもがいても撮影するようになったら、子どもにとってそれが当たり前の光景になったよう。
自然光で撮影するから部屋の電気を消すんですが、以前は申し訳ないと思っていましたが、みんな受け入れてくれて、むしろレフ板とか持ってくれたりします(笑)。
仕事だからと変に切り替えないほうが、私の場合はうまくいっていますね。
ただ、つねに葛藤はあります。
日曜日の「青空キッチン」のときは夫が子どもたちを連れて私の実家に行ってくれたり、子どもの習い事の送迎がどうしてもできないときは実家の母にお願いしたり。
私一人では回っていません。
でも仕事のつながりって、残念ながらいつまで続くかわからない。
だから、葛藤しながらも、できるときにやらせてもらおうと思っています。
子どもたちに料理をしてもらうときは、レッスンのときと同様、ダイニングテーブルで。写真のように、動線を作ってあげることで、子ども1人でも作業がしやすくなるそうです。
今は時間がなく自分の習い事は封印していますが、私、バレエが好きなんですよ。
子どもの頃に習っていて、辞めていた時期もありますが、大人になってから再開しました。
練習はつらいんですが、だからこそ、発表会の舞台での感動が大きい。
あの興奮が忘れられなくて、またやりたいと思えるんです。
舞台を鑑賞するもの好きで、母と観に行くことも。
その予定に向かってがんばろうと思える、心の柱のようなものになっていますね。
結婚式でご主人と社交ダンスを踊ったときの写真。ご主人が学生時代に社交ダンスをやっていて、このときは結婚式で踊るために練習。いつかきちんと習ってみたいそうです。
今、経験を積んでいることが実を結んでほしい
私の活動理念は、「料理を作る人も食べる人も、食事の時間がもっと楽しいものになりますように!」。
私自身、料理は好きなのに、忙しいから思うように取り組めなくて、ストレスになった時期がありました。
作る人にとってストレスにならないようにするには、作りやすいレシピであることが大切で、また、食べてもらえる美味しい料理であることも大切。
ちょっとした工夫で作りやすい美味しい料理ができれば、食べた人も嬉しいし、作った人も嬉しい。
そこを目指しています。
例えば会社を興したいとか大きな目標はなくて、今、一生懸命経験を積んでいることが実を結んで、今の延長線上で確実にステップアップしていきたい。
身近な目標としては、雑誌の特集を担当したい!
数年前、ある雑誌の記事をやらせていただいたことがあるんですが、今振り返ると力不足ですごく恥ずかしくて……。
もう一度やり直したいという気持ちがずっとあるんです。
リベンジ、したいですね!
取材・文/大島佳子
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