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Vol.【50】【iie designさん】
岐阜県可児市で、自ら設計した一軒家の自宅に、一級建築士事務所iie design(イーエデザイン)を構える村田純子さん。住宅や店舗の空間デザイン、リノベーションなどを手掛けています。夫、二人のこどもの4人家族。暮らしニスタでは、北欧テイストでまとめられた自宅のアイデアを中心に、日々の生活が快適で楽しくなるような情報を投稿しています。
●玄関に置いてある家具はまさかの!あるもの再利用で玄関スッキリ収納
●シンク下のすきまに楽ちんゴミ袋収納
次の世代まで、長く使える、長く楽しめる空間をつくりたい
ご自宅のリビングの様子。
自分が住みたい家をつくるために、建築の道へ
もともとおうちが大好きで、高校生の頃から、自分の家を設計して建てたい、と思っていました。
きっかけは母です。
その頃は奈良に住んでいて、母は、自宅で個人塾をやっていました。
おもしろい人で、近所で塾に通う年代の子どもが少なくなってくると、じゃあ次の場所に行きましょう!と、自宅を引っ越していたんです(笑)。
2か所目に引っ越したときに両親が家を建てたんですが、うちは3姉妹だったのに、子ども部屋が2つしかなかったんですね。
母は、「あなたたちがお嫁に行ったら、子ども部屋は無駄な部屋になる。私はあなたたちがお嫁に行くときよりも長く仕事を続けたいから、仕事部屋のほうが重要だ」と(笑)。
すごく合理的で腑に落ちたんですが、でもやっぱり、姉妹一緒の部屋では自分の好きな空間にはなりません。
リビングも、私は音楽を流したいのに、父がずっとリビングでスポーツ観戦(笑)。
そこから、この家は自分の好きにはできないけれど、もし自分が家を作るなら家族みんながリビングにいて音楽が降り注ぐような感じにしたい、と、住みたい家をイメージするようになりました。
そして、家のつくり方を学べば、好みに近いものが建てられるんじゃないかと思い、大学は建築学科へ進みました。
卒業してからはハウスメーカーに勤務していましたが、付き合っていた彼(今の夫です)がアメリカに赴任するのを機に結婚し、アメリカへ。
アメリカの国立公園の年間パスを購入し、年に4回ほど4日~5日の連続休暇を利用して国立公園を巡っていたそう。その時のワンシーンです。
アメリカで一級建築士の勉強を続けて、一時帰国して資格を取得しました。
3年程で日本に戻ってからは、京都で暮らしながら、住宅のデザインを行うアトリエ系の設計事務所に勤務。
息子を出産するまで働きました。
その後、夫が名古屋に単身赴任。
しばらく別々に暮らしていましたが、夫が通える場所で生まれ育った奈良に近い環境の土地を探し、夢だった自分の家を建てることにしたのです。
個室や扉がほとんどない、自然とリビングに集まれる家
ご自宅のリビングの様子。扉がなくひとつの空間になっています。
家を建てるときにこだわったのは、「家族がリビングに集まる家」にすること。
だからうちは、あまり扉がないんです。
個室といえるのは一か所で、ヒソヒソ話ができるのはその部屋だけ(笑)。
それと、子どもたちには物を置く場所は用意していますが、決まった部屋は与えていません。
私自身が、自分の部屋を持ちたいと思ったことで自立できたので、今の状態が子どもたちの自立につながるかもしれないと考えています。
勉強するのも、ダイニングテーブルでもいい、私の仕事部屋が空いていたらそこでもいい、ということにしていて、子どもは気分に応じて選択しています。
このフレキシブルなスタイルは、今回の自粛生活でも便利でした。
夫は自宅でテレワーク、子ども2人も家にいる中、臨機応変に誰でも使える空間があるというのがすごく役に立ちましたね。
ご自宅にある事務所スペース。テレワークや勉強にも使えます。
それから、意識したのはデンマークの家。
高校生の頃、住宅展示場でデンマークの家に出合って衝撃を受けたんです。
まず、色使い。
当時、どこの家も壁は白でしたが、その家は、玄関が黄色でドアがコバルトブルー、リビングの壁はグレーでした。
形も、子どもが絵に描くような大きな三角屋根。
なんてかわいいいおうちなんだろうと。
そこからデンマークの家が大好きになって、自分の家も大きな三角屋根の家にしました。
三角屋根が目を引くご自宅の外観。
お客さまに悩みを吐き出してもらうことが、満足度につながる
iie designさんが設計を担当した事例の様子。
家を建てた頃は、幼児と赤ちゃんの育児に毎日奮闘していました。
一級建築士事務所の看板は出していましたが、すぐに表立って仕事はできませんでした。
今のように一人で仕事を請けるようになったのは3年程前からです。
当時は、メンタル的にしんどいことがあって、自分と向き合っていろいろ考えた時期でした。
ちょうどライフオーガナイザーの資格も取り、その頃から、どうやったら自分がご機嫌でいられるかがわかるようになりました。
朝ははかどるけれど夜は時間がかかるなど、自分の得意と不得意をわかったうえで、できるときにやる、自分に合わないことは違う方法でやる、という感じで行動するとスムーズに進むように。
仕事に関しても暮らしに関しても、ストレスがなくなりましたね。
もともとは新築の家を手掛けたいという気持ちが強かったんですが、3年前を転機にいろいろな人と知り合う機会が増えて、店舗やリフォームなどの仕事も多くなりました。
今は新築にこだわらず、環境にやさしくて次の世代まで渡せるような空間づくりを意識しています。
最近リフォームを担当したカフェの様子。
仕事を進めるうえでは、お客さまがどんな暮らしがしたいのか、何のために家を建てる(リフォームする)のか、優先順位はどうか、というのが軸になります。
きれいにしただけでは、お客さまの満足度って上がらないんですよね。
自分の収納スタイルに合わなければ、すぐにまた散らかってしまう。
今はカフェのリフォームを担当していますが、スタッフのみなさんに、何がストレスかを言ってもらうんです。
そして、どうすれば心地よくなるかを考えてもらい、そのうえで私が、こうしたらどうですか?とアイデアを提供します。
悩みを吐き出してもらうことが何よりの解決策。
建築の仕事ですごく大事なことだと思っています。
それが最後にお客さまの笑顔につながっていくところがおもしろいですね。
悩みに向き合うほどに、日々の暮らしは良くなる
デンマークでは、家具などが壊れたらメンテナンスに出すということが習慣化されていて、好きなものを長く楽しむ文化があります。
私の家でも、20年30年使い続けているものが結構あります。
例えば、リビングの壁に取り付けているBOSEのスピーカーは、大学生のときにお小遣いをためて買ったもの。
リビングの様子。壁に取り付けている黒のBOSEのスピーカーは大学生の時に購入したものです。
音楽が降り注ぐ部屋にしたいという、高校生のときからの願いを叶えました(笑)。
社会人になってからは、ボーナスなど臨時収入があったときに絵を買っていたんですが、初めて画廊で買った絵は今でも寝室に飾ってあります。
見ていると当時の気持ちを思い出すんですよね。
思い入れがあるものは長く使えています。
寝室に今も飾っている、はじめて画廊で購入したという思い出深い絵。
特に照明など空間の中でメインになるインテリアには、本当に一番欲しいものを選ぶようにしています。
仕事でも、お客さまが、一番欲しいものには今は手が届かないけれど二番目なら買える、というとき、「一番が買えるときまで待ちませんか」とお話しすることがあります。
二番目の物を買っても、やっぱり一番目が欲しくなるんですよ(笑)
「とりあえず今買えるもの」を買わないで、一番目が欲しいという気持ちをどんどん高めていって、「今や!」というときに買う。
そのときの感動はすごいし、壊れても修理に出すなど長く持ち続けようと思えるはず。
もちろん価値観は人それぞれですが、お客さまが迷われているときは、そういうことをおすすめしています。
家を建てるときって理想と現実があって、どんなおうちでも100%望み通りにはつくれません。
生活には予測できないことが起こるし暮らし方は日々変わっていくので、50%くらいの状態でつくって、残りの50%は住みながらつくっていく。
一番欲しいものが今はなくても、そのあと手に入れる楽しみが継続します。
何か問題が出たときにも、改善できることが必ずあるので、向き合うほどに日々の暮らしがどんどん良くなっていきます。
家づくりは、そうやって臨機応変にできればいいんじゃないかなと思います。
趣味は空間ウォッチング、そして一つの事を極めている方が大好きです
私、飽きっぽいというか、趣味を極められないんですよ。
でもいろんなことに興味はあるんです。
学生時代は250ccのバイクに乗るのが好きでした。
そのあとはスキューバダイビング。でも5回くらい潜って終わったかな(笑)
今は、料理教室に通っているんですが、先生が作り上げる空間がとても素敵で、毎回季節に応じたテーブルコーディネートを楽しく見ています。
パン教室で習ったパンを自宅で再現!
そのうえ、美味しいものが食べられる(笑)。
その道を極めた人から学んで体験することには、すごく楽しさを覚えますね。
フットワークは軽いので、そういう方を見つけるとすぐに動きます。
新しいお店もすぐに行きたくなります。
空間ウォッチングが、好きですね(笑)。
自分が好みじゃない空間だったとしても、なぜここに人が集まるんだろう?なぜ流行っているんだろう?と考える。
その考え方は仕事にもつながっています。
実は今年、節目となる記念日を迎えるので、デンマークに行こうと計画していたんです。
でも、新型コロナウィルスの影響で持ち越しに。
残念ですが、今は、今できることを楽しみたいと思います。
まずは、自分が好きなことを仕事としてやっていきたい。
私が好きなことを続けていれば、それを好きな人が集まってくれる。
だから、「好き」を続けていきたいなと思います。
自宅設計直前に旅したというフィンランドで、一番大好きという著名な建築家アルヴァル・アールト(Alvar Aalto)の自邸とアトリエを訪れた時の一枚。この旅での経験は自宅設計する際にもとても参考になったのだそう。
取材・文/大島佳子
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