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Vol.【33】【yunyun(猪俣友紀)さん】
布小物作家。ヴォーグ学園東京校・横浜校で講師も務めている。「猪俣友紀(neige+)の仕立てがきれいな大人バッグ」(ブティック社)『布合わせで楽しむ ワンランク上の布バッグ』(スタジオタッククリエイティブ)などの著書のほか、書籍や雑誌、テレビ番組等でも数多くの作品が紹介されている。また、DIYも得意で、夫と二人の娘と暮らす自宅は、壁の塗装から床張り、棚作りなども一人でこなす。
●オール100均でトイレをお洒落に簡単セルフリノベ♪お気に入り空間に大変身!
●インテリアにグリーンを♪0円で楽しめる簡単スワッグの作り方
いろいろな人との出会いから、新しいアイデアが生まれる
元々和室だった部屋をアトリエにDIYで改造。日中は、ほぼアトリエで手を動かしているそう。
ハンドメイドの原点は「節約」
母親が洋裁や編み物をしていた影響で、子どもの頃からハンドメイドは大好きでした。母に手伝ってもらいながら初めてミシンを使ったのが幼稚園の頃。それから編み物や刺しゅうも教わりました。マジックテープの財布が流行ったときも、自分で作ったりして。全然うまくはなかったんですよ(笑)。お店で売っている既製品が高くて買えなかった、でも使いたいから、自分で作っていたんです。「節約」ですね。結婚して子どもができてからも、子どもの洋服や小物を作っていました。
自分のためだったハンドメイドが今の仕事につながることになった最初のきっかけは、子育て中のホームページを作ったこと。たしか2002年頃だったと思います。自分が子供のために手作りした物を記録に残したかったんですね。それで、作品を見せるギャラリーのようなページを作りました。そこで同じ趣味を持つ方たちとつながることができました。
その後、2005年4月にブログを始めました。その頃、友人に声をかけてもらってイベントで手作り小物を販売したのですが、ブログを見ている方からも「欲しいです、同じものを作ってください」という声をいただきました。それでブログ開設の2か月後には、ネット販売を始めるようになりました。当時はまだ手作りの物をネットで販売している人があまりいなかったからか、軌道に乗るのは早かったですね。本当に運がよかったし、お客さまに恵まれているんだと思います。
自分を過信せず、努力は惜しまない
アトリエに並ぶ作品。まるで雑貨屋さんのようです。
でも、ブログを見てくれる人が増えて、作品が売れるようになってくると、少し勘違いしちゃうんです。自分で作ったバッグを持って日暮里の布問屋街に出かけて、「誰かに声かけられるかな」なんて生意気なことを思ったこともあったけれど、実際は誰も私のことを知らないんです。限られたネットの中で人気が出たからと言って調子に乗るのは嫌だ、もっと広い人に知ってもらうために努力しないと、と思いました。
それで、2006年頃から、ハンドメイド関係の雑誌に応募したり、自分の作品を扱ってくれるお店を探したりし始めました。それがきっかけで、雑誌に掲載されるようになって著書を出版させていただいたり、委託販売をしてくれた淡路島の「そらみどう」さんで定期的に個展を開催させて頂くようになったり、新しい出会いや新しい仕事につながりましたね。ブログもよりたくさんの人に見てもらえるように、アクセス解析をして、SNSを駆使したりしています。
LDの様子。腰壁、カーテン、クッションカバーなど、yunyunさんの手作り作品があふれるかわいい空間。
講師をやらせていただいていることも、良い影響がありますね。自分では当たり前で簡単だと思っていたことが、生徒さんにとっては初めて知ること、難しいことかもしれない。中途半端には伝えられない、すごく責任感のある仕事だと思いました。ブログなどで作り方を紹介するときの見せ方や言葉の使い方も、とても気を付けるようになりました。
自分にしかできない物を追求して生まれた「布耳バッグ」
yunyunさんの看板娘的作品の「布耳バッグ」。
作品作りにおいてずっと信念にしているのは、埋もれないでいること。以前、「同じような小物を他で見たよ」と言われたことがあって。絶対に違うものを作ろう、と思ったんです。負けず嫌いなんですね。ある方から、「デパートのショーウィンドーに並ぶような作品を作ってみたら」とアドバイスをいただきました。その頃は5000円以上の物は作っていなかったんです。でも、例えば10万円の商品を作ったとして、その10万円の商品は売れなくても、1万円の商品に価値を見出してくれるからと。それだけの価値のあるものを作るにはどうすればいいか。高い生地を使ったとしても見た人にはわかりにくいし、「他でも見つけられそう」と思われたら買ってもらえない。でも、手がこんでいる物、見たことがない物なら、価値を感じてもらえるんじゃないか。自分にしかできない物は何かを、ずっと考えるようになりました。
悩んだ末に思いついたのが、捨てるにはもったいからと取っておいた生地の耳の部分をつぎ合わせた「布耳バッグ」です。みんなが捨ててしまう布耳が、アイデア次第で作品に変わる。これしかない!と、渾身の思いで作り上げました。この作品が生まれてから、個展やイベントに出品するときに自信がもてるようになったし、「同じようなものがある」とは言われなくなりました。私の看板娘です。
アドバイスを下さる方がいたから、物の価値に気づくことができたし、自分にしかできない作品が生まれました。人とのご縁で成り立っています。恵まれていると感じるし、日々感謝しています。
旅先で、ハンドメイドのワークショップをするのが夢
玄関の塗り壁もyunyunさんのDIYによるもの。
「暮らしニスタ」の記事では、自宅のDIYや雑貨などについても記事を書いていますが、インテリアも子どもの頃から興味があったんです。インテリア雑誌をよく見ていました。私、ずっと妹と同じ部屋で、一人部屋がなかったんですよ。お金もかかるし雑誌と同じようにはできなかったけれど、憧れていましたね。
階段の吹き抜けの壁も脚立を置いて腕を伸ばして一人で塗ったそうです。「さすがに天井は無理でした(笑)」
DIYを始めたのは、結婚して、建売の一戸建てに住むようになってからです。最初は廊下の壁。家を買った半年後には自分で張り替えをしました。それからは、他の部屋も壁や扉を塗ったり、野地板を使って棚を作ったり。自分でやっているのは、ハンドメイドを始めた時と同じで、お金をかけずに好きなインテリアにしたかったからです。
今、作業部屋として使っているスペースは、もともとは和室。畳をフローリングにしたくて業者に見積もりを取ったら、20万円と言われたんです。インターネットで調べたら自分で張り替えている人がいたので、それを参考に、畳を剥いで、板を1本1本カットしながら貼って。全部自分でやったら5万円でできました(笑)。
壁、腰壁、棚とすべてがyunyunさんによるDIYです。
今思えば、私の父は木工が趣味で、ソファを作ったりしていたんですよね。その頃はまったく興味はなかったですけど、家に道具がそろっていたし釘を打つくらいはしていました。実は、夫の実家は建具屋さんで、そんなところにも縁を感じます。今でもインテリアは、仕事にしたいというよりは趣味ですね。
趣味といえば、旅行も大好きです。学生時代は、旅行のコーディネーターになりたいと考えていたくらい。ワーキングホリデーで、単身でオーストラリアに滞在していたこともあります。結婚後も家族でよく旅行に出かけていましたが、子どもたちも大きくなり、昨年は25年ぶりに海外一人旅にも出かけました。行き先はベトナム。久しぶりでドキドキしましたけど、楽しかったですね!
ベトナムでは現地の布市場にも行きました。今後は、ハンドメイドのお仕事と大好きな旅行を結び付けた活動もしたいです。海外で見つけた布を日本で紹介したりとか。あとは、日本全国旅しながら、各地でワークショップをしたい! いつか海外でもやってみたいですね。
取材・文/大島佳子
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