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Vol.【46】【森麻紀さん】
名古屋で夫と小学4年生の長女と3人で暮らしながら、ライフオーガナイザーとして活動。個人宅での片付けのサポートや、自宅や幼稚園・小学校などで講座を行っている。また、ブログやWebサイトなどでライターとして情報を発信。2019年の暮らしニスタ大賞では、困りがちなことを平和に解決するアイデアが評価され、審査員・吉川永里子賞を受賞した。
●突っ張り棒で倒れない!キッチンの引き出しデッドスペース活用
●リビングに「バッグの一時置き場」を作る
理想と現実のギャップを埋めるためにできることを考える
森さんの家の脱衣所の様子。お子さんと一緒に洗濯しやすい環境づくりの観点で物の配置を考えたそう。
子育ての大変さをきっかけに、家事の「めんどくさい」を改善
インテリアには小学生の頃から興味がありました。
『ティーンの部屋』っていう雑誌があったんですけど、すごく好きで、愛読書でしたね。
当時、自営業の父の会社からもらったグレーの事務机を使っていたんですが、
今のマステみたいにビニールテープを切って貼ったりして、小学生なりにかわいくなるように工夫するのを楽しんでいました(笑)。
大人になってからもインテリアは好きで、オーダー家具のお店で働いていたこともあります。
シャビーシックな、アンティークっぽい家具をオーダーで作っているお店で、
お客さまのおうちに伺ってサイズを測って、仕上がった家具をお届けする。
みなさん雑誌などを見て「こんな感じで」と希望されるんですが、作って納品した後に実際に使用している様子を見たときに、本当にこういう風に使いたかったのかな?と感じることがあったんです。
最初に話されていた理想と現実が全然違う、というか。
本当にこんな風に使いたかったのかな。
理想と現実は違うのかな、というのが、ずっと気になっていました。
ライフオーガナイザーの資格を取るきっかけになったのは、子育てです。
子育ては、自分の想像をはるかに超える大変さでした。
もともとインテリアに興味があって見た目は気にするタイプなので(笑)、
部屋はパッと見は片付いていたんですが、使い勝手がとにかく悪くて。
雑貨が好きで飾っていたけれど、人が来るたびに掃除をするのが大変。
キッチン周りの飾る収納も、たまにしか使わないキッチンツールはその都度洗わないといけない。
子どもは、置いてある物が気になると触っちゃうじゃないですか。
それは別に悪いことをしているわけじゃないし、大人が飾りたいから飾っているのに、触ると怒られちゃう。
これって、なんか違うなーと感じていました。
お子さんがまだ小さくて、システムキッチンの引き出しが大好きで入りびたっていた頃の様子。
叱るのではなくて、存分に遊べるようにしたのだそう。
出されてもすぐに適当に戻してOKなものや、危なくないものを入れるようにしました。
子どもの相手をしていても、あれを片付けなきゃ、と気になって、
目の前の子どもに集中できない自分がいました。
余計なものがテーブルの上に置いてあると、なぜかやらなきゃいけないことがたくさんあるような気にもなっていたんです。
私は子どもに対して感情的に叱るようなタイプじゃないと思っていたんですが、実際に子育てしていると、イライラして強く言ってしまうことも。
出産後すぐのころ、「めんどくさい」が口癖になっていたんですが、育児のめんどくささはどうしようもないことだから、せめて家の中のめんどくさいことを改善していこうと思いました。
それがきっかけで、掃除がしやすい、子どもを無駄に叱らなくていい環境づくりに移行していきました。
片付いていない家でも、実はみんながんばっている
いつもスッキリ片付いている森さんのご自宅。
チェストの上は、お嬢さんが帰宅後に、リュックを置いたりするための一時置き用として空けています。
そうやって自分である程度家を整えてみて思ったのが、片付いた家で子育てをしていても大変なのに、片付いていない家での子育てはものすごく大変だろうということ。
昔は、虐待する親は信じられないと思っていましたが、紙一重なのかもしれないと思うようにもなりました。
そういうのを救いたいって言ったら大袈裟ですけど、そんな思いがありました。
自宅を片付けながら収納方法などを検索する中で、ライフオーガナイザーの存在を知りました。
ライフオーガナイザーは、自分が目指す理想の生活がどういうものかが先にあって、その生活のために行動するというスタイル。
理想と現実とのギャップを埋めるために何をしたらいいか、という考え方が、
実際に私が片付けで経験してきたことが体系化されている感じがして、しっくりきました。
最初は、ライフオーガナイザーって仕事になるのかな?という疑問もあったんです。
でも、ライフオーガナイザーとして第一線で活躍されている鈴木尚子さんのセミナーに参加したとき、
鈴木さんのお話を聞きながら、「あ、これ、仕事になる!!」と直感。
それをきっかけに、プロとして活動できる1級を取得しました。
1級取得後の1年間くらいは、無料でいいので練習がてらやらせてほしいと周りに話し、
紹介してもらったりして経験を積みました。
うちは女の子の1人っ子で、男の子や複数の子ども、高校生などがいる生活の実体験がありません。
友達の家に行っても人が来るときは片付けてられているので(笑)、いろんな家の実際の様子を知っておきたいということもあって、無料期間を設けました。
仕事でご家庭に訪問するときは、事前に「私はお客さんではないので、特に片付けず、いつも通りに過ごして待っていてください」と伝えています。
リアルな状態を知っておかないと、改善策が変わってしまいますからね。
実際に活動を始めてみて思ったのは、みんながんばっているんだなということ。
片付いていない状態の人も、話を聞くと理由があるんですよね。
「こう考えてやってみたけど、やり方が自分に合っていなくて、それが積み重なって一人ではどうしようもなくなってしまった」という状況です。
一緒に住んでいる家族より家のことを考えてくれる、と言われることがあるんですが、
みなさん片付けについて孤独感を抱いているのも分かりました。
友達と話しても、「片付かないよね」で終わってしまって建設的な話ができない、
片付けを相談する相手ができたことが嬉しいと言われると、私もすごく嬉しいです。
お客さまの小さなこだわりを大切にしながら、プチストレスを解消したい
キッチンの様子。全てのアイテムに定位置があるので自然と片付きます。
私のブログは、「今の暮らし これからの生活」というタイトルなんですが、今のことだけじゃなく、先を見越した片付け・収納を考えるということを大切にしています。
以前、フルタイムで働かれていて産休中のお客さまのお宅に伺ったときのこと。
将来子ども部屋にする予定の部屋に、いろんなものを置いていました。
確かに今は使っていないから、少し先の未来のためだけにまっさらにしておく必要はないと思うんです。
でも、このあと職場に復帰して、フルタイムで働く合間に子ども部屋に変えなくてはいけない。
その時期が来たらスムーズに移動できるような配置を、今から作っておくことを提案しました。
実際にお客さまにアドバイスするときは、その人の小さなこだわりがどういうところかを知ることが必要になってきます。
ヒアリングも、座って話しているだけだとお客さまも思い出せないので、実際にその場で行動したり物を移動させたりと動きながら行います。
自宅で開催するセミナーでは、座学だけでなく、どこに何が入っているのかを見せながら説明する“自宅収納ツアー”も盛り込んでいます。
例えば、鍋をするときに使うカセットコンロの収納。
ダイニングテーブルで使うから、キッチンカウンターのテーブル側にしまう、という提案をすることがあるのですが、カセットコンロはキッチン用品だからリビングのほうに置くのは感覚的に嫌、というお客さまもいらっしゃる。
いくら楽でも、気分的に嫌なこと、違和感があることはしないほうがいい。
そういうお客さまのこだわりはすごく大事にしています。
「暮らしニスタ」は、ライフオーガナイザー協会の理事や、仲良くしているライフオーガナイザーの香村薫さんの推しがあって、始めました。
私はDIYは苦手なので(笑)、大掛かりなことじゃなくて誰でも簡単にできること、生活の中のプチストレスの解消を記事にしています。
「この家のこの間取りだからできること」だと、片付けが得意な人は自分の家に応用できるんですが、苦手な人だとたぶん無理。
プチストレス解消は、共通項として、苦手な人でも役立つ内容だと思っています。
暮らしニスタで大好評だったアイデア。
バッグの中に、リモコンやペンケース、ハサミ、ハンドクリームなど、必要なもののほとんどを入れています。
自宅講座では、私の家に来ていただいて、収納も見ていただいています。
「こういう理由があってこうしている」というのを、行動しながら、全部の引き出しをお見せするような感じで細かくお話しします。
自宅講座でも、参加した方はプチストレスの解決策を後日報告してもらうという宿題付き。
2週間後に写真で見せてもらったりして、それに対して、ここをこうしたらもっといいかもとアドバイスもするようにしています。
人生100年! 20年後の上達を目指し、3度辞めたエレクトーンを再開
自分自身の実生活は、最近、娘の習い事の送迎やお弁当作りの予定が一気に増えて、
タイムスケジュールがぐちゃぐちゃになってきたので(笑)、生活スタイルを見直し中です。
でも、この忙しさを調整できれば、その経験をお客さまへのアドバイスに反映できると思っています。
そんな中で、今、楽しんでいるのがエレクトーン。
もともと小学校6年生まで習っていたんです。
20歳くらいのときに再開したんですが、あまりにも弾けなくて愕然として(笑)、辛くて1年続かないくらいで辞めちゃったんですよ。
でも子どもが生まれてから、子育ての合間に弾こうかな、子どもも楽しんで触るかなと思い、もう一度エレクトーンを購入。
でも、やっぱり弾けなくて(笑)。
処分することも考えていたんですけど……
最近、「人生100年時代」と言われてるじゃないですか。
私は今45歳ですが、今から20年練習したら、20年後には結構弾けるんじゃない?と考えたら気持ちが上がりまして(笑)。
まだ全然弾けないんですけど、将来気分よく弾いている姿を想像しながら、頑張って練習しています。
捨てようと思っていたけど最後にもう一度考えて、というパターン、片付けでもあると思うんですが…。
1年着ない服はもう着ないから捨てる、とか言われますけど、私、そういう服でもめっちゃ着るんですよ(笑)。
3年くらい寝かしてたけど、自分の中でブームがまたやってきたみたいなことって、ありますよね?(笑)。
もちろん、服だったら、着ないけどめちゃめちゃ気に入っている、もう一度買いたいくらいというのが前提で、そこまでではないものなら処分の対象にしていいかもしれません。
でも、着なくても残しているものって、何か引っかかるものなんだと思います。
仕事に関しては、これからのチャレンジという意味では、動画投稿はやってみたいなと思います。
お客さまに対しては、個別のレッスンをもっと充実させたい。
最近は、「片付けは習う時代」と言われていて、教室もあるし、私の自宅講座もそうなんですが、みなさん自分の家に帰ったら現実に戻るだけという気もしていて。
やっぱり、自分で片付けられるようにするには、お客さまのおうちでやるのが一番理想的だなと思っています。
美容院に行っていい感じに仕上がっても、自分でブローしたらいつもと一緒、みたいなことにならないように(笑)、再現性を大事にしたいですね。
取材・文/大島佳子
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