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Vol.【36】【増田陽子さん】
企業でのメニュー開発、幼稚園の調理師を経て、現在はキッズ食育トレーナー、キッズ食育マスタートレーナー、子どもの食育料理研究家として、子ども向けの食育スクールの講師や、講師を目指す大人へのレッスンを行っている。「暮らしニスタ」では、日々の食事やおやつにすぐに取り入れられるレシピを紹介。小学5年生、小学3年生の2児の母でもある。
●運動会や遠足のお弁当にも練らずに簡単!豚こま肉団子
●ピンクでキュートに焼き上がる いちごのベイクドチーズケーキ
レッスンやレシピ発信で、食に興味をもつ人の輪を広げたい
子どもたちに食の大切さを伝える仕事
キッズ食育トレーナーは、子どものうちに身につけたい食に関する知識や選ぶ力を指導する、食と保育のプロです。私の主な仕事は、子ども向けの料理教室の講師。週3日、継続型の食育スクールで教えているほか、月に1度の幼稚園でのレッスン、イベントでのワークショップなどを行っています。
また、キッズ食育マスタートレーナーとして、キッズ食育トレーナーを目指す大人のかた向けの講座も、年に数日担当。レッスンのない日は、自宅でレシピの試作をしたり記事を書いたりと、食育を広めるための活動をしています。
子どもたちが大好きなパンプディング。お休みの日の朝食によく一緒に作るそう。
フードコーディネーターに憧れて、食の世界へ
食に関わる仕事がしたいと思うようになったのは、大学時代。カフェのキッチンでアルバイトをしていたときに、私が盛り付けたサラダをホール担当の人が「おいしそう~!」と言ってくれたんです。そんな風に言ってもらって、食べ物は見た目だけでも人を幸せにすることができるんだ!と嬉しかったのを覚えています。
当時、フードコーディネーターという仕事があるのを知って、そういう仕事がしてみたいと思うようになりました。それで、大学3年生から夜間の調理師学校に通うことに。母親は、そんなに料理好きだったの?と驚いていましたね (笑)。授業料はアルバイトで稼いで、1年半かけて調理師免許を取得しました。
その後、フードコーディネーターには憧れつつ、企業で働くことにも興味があったので、店舗をもつ中食企業に入社。就職して最初の3年半はお店で、その後4年半は商品開発の仕事をしました。そこで、食育の大切さを知ることになりました。
例えば、お店にお惣菜を買いに来た常連さんが、竜田揚げに肉団子、卵サラダを買ったとします。「野菜は卵サラダに入ったキュウリちょっとだけしかないけど大丈夫かな?」と不安を感じるようになりました。でも口出しできません。また、商品開発をしていたときには、お客さまの健康を意識して薄味のメニューを考案しましたが、企画会議で同僚から「味が濃くないとお金を払う気がしない」という意見が出る。そんなことが続いて、大人になってからでは、食への意識を変えるのは遅いのではないかと思うようになりました。
ちょうどその頃、とある幼稚園で調理師を探していると聞いて。その仕事なら、子どものうちに食の大切さを伝えられるんじゃないかと思い、転職しました。その幼稚園は、基本的にはお弁当持参なんですが、おうちのかたが体調不良のときのお弁当やイベントの料理を調理師が用意するんです。赤ちゃんとママのためのカフェのような施設もあり、そこでの食事も作っていました。
幼稚園で働いたのは9年間程。とても楽しかったのですが、独立してもっと食育を広める活動をしたいという気持ちが強くなっていきました。そして、日本キッズ食育協会で勉強することを決め、今に至ります。
子どもへの食育が、大人の食への意識も変える!
今、レッスンをしていて感じるのは、子どもはすごく吸収が速いということ。「打てば響く」とはこういうことなのか!と。大人に「野菜食べたほうがいいですよ」と言ってもなかなか行動に移してもらえないことも多いですが、子どもは「お肉もおいしいけど、野菜と一緒に食べると元気もりもりになるよ‼」と言うと、本当に食べてくれるんです。
レッスンの後で学んだことをおうちのかたに話す子が多くて、それをおうちのかたから聞くと、本当に嬉しいなと思います。子どもが家族に話すことで、お母さんが興味を持ってくれたり、お父さんも「じゃあ野菜も食べようか」と思ってくれたり、ほかの大人から言われるよりも素直に聞いてくれる(笑)。この仕事を始めてみて、子どもに教えるメリットはそこにもあるのかなと気づきました。子ども自身にとってもいいし、家族にとってもいいし、一石二鳥です。
おせちは毎年お姑さんが用意してくれるそうですが、ここ4年位はお子さんたちと一緒に1〜2品を作って持っていくようにしているのだとか、この時は、子どもたちが田作りと黒豆を作りたい!と言ったので、一緒につくりました。岩石卵は増田さん作。
講師としてサポートしつつ、子ども本人が「自分で作った」という達成感を味わってもらうにはレッスンをどう組み立てたらよいか、を考えることが、この仕事では大切です。新しいレシピのレッスンを行う前に、実際にうちの子どもたちと一緒に作ってみることも。それがレッスンをするときの参考にもなっています。
そういえば、先日、上の子が「自分でご飯を作れるようになりたい」と言ってくれました。将来子どもが独立したとき、お惣菜を買う前に、お味噌汁に野菜をたっぷり入れて納豆でご飯を食べればいいかと考えられたらいいな、買うにしてもバランスのいいものを選べるようになってほしいなと思っていたので、その言葉は嬉しかったですね。生姜焼きが大好きな子なので、生姜焼きの作り方を教えています。
お子さんが大好きな生姜焼き。増田さんの家では、ロースではなくて豚こまに玉ねぎを入れるのが定番なのだそう。
シンプルなレシピにも、自分のこだわりを盛り込みたい
「暮らしニスタ」ではオリジナルのレシピを紹介していますが、考えるときは、まずは自分が食べたいものにしようと思っています(笑)。あとは、シンプルに。最初の頃は、自分が食べたいわけじゃなくても、変わった組み合わせや凝ったレシピを考えていたんですが……作りにくいな、と思って(笑)。もちろん材料や調味料もこだわっていたんですけど、ある日、記事を見た姉からメールが来て、「材料が家にないから作れない」って。それなら、できるだけシンプルにして、たくさんの人に作ってもらえるほうがいいなと思うようになりました。
でも、シンプルな中にも自分らしさは生かしていきたい。材料や調味料も、「お料理好きじゃないと持っていないかもしれないけれど、この料理にはぜひ使ってもらいたい」というときがあります。「手に入れて作ってみたい」と思ってもらえるように、ほかの料理での使い方も提案するようにしています。
季節のものや行事の料理も、意識して紹介しています。自分が子どもだった頃の、この季節にこれを食べた、という記憶があって、それを子どもたちにも伝えていきたい。形にして残しておくことって大切だなと思うんですよ。私は、子どもの頃に母親が作ってくれたパンプキンパイが好きだったのですが、どんな形だったかどういう作り方なのかは全然覚えていないんです。例えば写真が残っていたら、おいしかった記憶がより鮮明になるんじゃないかな。
ハロウィンの時の食事の様子。オレンジと紫色がきいています。
だからみなさんも、SNSなどで発信しなくても、きれいに盛り付けていなくても、料理を撮っておくといいんじゃないかなと思います。後から振り返ると、こんなもの作ったなって思い出せますよね。家族がおいしいって言ってくれたなとか、そのときの様子も含めて。自分も結構がんばってるじゃん、って前向きになれるじゃないですか。私も、記事に載せない料理でも写真を撮ることも多いんですよ。
SNSに載せるつもりはないけれど、記念として撮影したというクリスマスの食卓風景。
ちなみに、盛り付けやスタイリングは、料理の本や「暮らしニスタ」のほかのかたの記事なども日々見て、勉強しています。食器がすごく好きなんですが、両親が食器好きだった影響が大きいですね。子どもの頃、家にあった備前焼のお皿がすごく好きで、「将来、これをもらって行こう」と勝手に思っていました(笑)。実際、家を出るときにもらってきて、今も大切にしています。
実家から持ってきた備前焼のお皿などお気に入りの食器。
今年の目標は「切り替え」! 嬉しかったことを思い出すのがコツ
ブログは、自分のレシピや仕事について発信しつつ、誰かの役に立てたらいいなと思いながら書いています。最初の頃は、子どもが寝た後、夜中に書いていたんですが、つい自分の世界に入りすぎちゃうので(笑)、今は早朝に。ブログに限らず、子どもが寝てからいろいろやろうとすると、子どもが寝ないことにイライラしちゃうんですよね。夜は9時に寝て、朝は4時起き。子どもが起きる6時までが自分の時間です。
放っておくと悶々と考え込んでしまう性格なので、今年は「切り替え」を目標にしています。頭を切り替えたいときは、最近あった「いいこと」を思い出すんです。そのために、楽しかったことや嬉しかったことがあったら、手帳に書き留めています。「暮らしニスタ」で受賞した!とか。逆に、心にしまっておいた苦しかったことも、手帳に書いて吐き出すこともあります。絶対に人に見せられないですね(笑)。どちらにしても、毎日書こうとは決めていなくて、思い立ったときに。できる範囲で、おおざっぱな感じでやっています(笑)。
食育に関する目標は、レシピを提案する仕事をもっと増やしていくこと。今はレッスンが中心ですが、来ていただけるかたが限られます。雑誌などのメディアや企業とのコラボなど、レシピ開発などの活動によって、もっと食に対する興味を持ってくれる人の輪が広がったらいいなと思っています。
毎日使っているキッチンの様子。掃除はカンタンにできるように、調理台にはなるだけ物を置かないようにしているそう。
取材・文/大島佳子
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