お正月飾りの縁起物に使われ、日本で古くから親しまれてきた干し柿。「たくさん獲れた柿を長く保存できるようにしたい」という、先人の智恵から生まれたドライフルーツです。 そんな干し柿について、簡単な作り方とアレンジして楽しめるレシピをご紹介します。
干し柿とは
干し柿とはその名のとおり、柿を干して作るドライフルーツ。日本で書物に干し柿が登場するのは古く、なんと平安時代中期。その時代の法典「延喜式」に祭礼用のお菓子として記述が残っています。 昔は砂糖そのものが貴重だったので、甘~い干し柿は人気もの。昭和中期にいろいろなお菓子が登場するまでは、子どもたちが喜ぶおやつの一つでした。
おいしいデザートがありふれる今でも、干し柿は根強いファンの多い食べ物です。「和菓子の甘さは干し柿をもって最上とする」という言い回しがあるほど、日本人にとって干し柿は特別な食べ物なのかもしれませんね。「福を『かき』こむ」などの意味から、縁起物としてお正月飾りに使われる地域もあるようです。
干し柿の種類
作り方の違いでいくつかの種類があります。
縄や糸に吊るして干すものは「つるし柿」 つるし柿は地域によっては「ころ柿」 と呼ぶことも。
竹などの串に刺して干すものは「串柿」
干し柿になる手前でとろけるような食感が魅力の「あんぽ柿」
では続いて、簡単な作り方やレシピなどを見ていきましょう。
基本的な干し柿の作り方
干し柿作りに最適な時期は、晩秋から初冬。 カビの発生を防ぐために、干し柿作りは気温が低く、雨降りの日が少ない乾燥した時期に行います。 作り方は、時代を経て改良されてきていて、串に刺して干す「串柿」スタイルはやや古く、明治以後はひもなどでぶら下げる「つるし柿」スタイルが現代の主流。 ここでは、その「つるし柿」 スタイルの作り方についてご紹介していきましょう。
<材料>
・渋柿 ・ひも(縄や荷造りひもなど)
<作り方>
1.渋柿を手に入れる
甘柿と渋柿のうち、干し柿作りに適しているのは渋柿。 なぜ渋柿で作るのかと言うと、実は、糖度は渋柿のほうが甘柿よりも上だから。 干して渋みを抜くことで、本来の糖度が生きてくるのです。 それに、甘柿は作る途中でカビが発生しやすいのも難点。まずは渋柿を手に入れましょう!
2.吊るす準備をする
渋柿の皮をむいて、ひもに結びます。結びやすいようにヘタ部分を残し、枝もT字型のままにして付けておきましょう。もし、手に入れた柿に枝がないなら、竹串や針金を柿に刺して吊り下げる作り方がおすすめ。 ザルに並べて乾燥させるのもよいでしょう。
3.じっくり干す
雨にかからないように軒先などで、お日様の光に当ててじっくり干します。日当たりと風通しがよい場所がベスト。 風通しがよいか、扇風機などで風を当てるなどの工夫をすれば、干し柿作りは室内でもできます。 ※カビ発生を防止するためなどの注意点は後ほどご紹介します。
4.柿をもむ
干し始めてから10日ほど経ったら、柿を揉んで柔らかくしましょう。 表面と内側が混ざって食感が均一になり、乾燥もよりスムーズになります。
5.白い粉がふいてきたら完成
干しているうちに、柿の表面に白い粉がたくさんふいてきたら、甘くておいしく仕上がった証拠。 白い粉はもちろんカビではなく、「柿霜」(しそう)と呼ばれ、果糖とブドウ糖が結晶化したもの。漢方で咳や喉の痛み、口内炎に効果があるとされているんです。
干し柿作りの注意点
干し柿の作り方は非常にシンプル。とはいえ注意点がいくつかあるのでご紹介します。
◎完熟した柿を使う しっかり熟した渋柿を選ぶのが最初のポイント。柿丈夫の葉っぱの部分を「ガク」と言いますが、この部分が黄色っぽくなっているものほど熟しています。
◎柿同士がくっつかないように 柿同士がくっついているとカビが発生しやすくなるので、ひもで結ぶときは柿と柿の間を空けておきましょう。
◎焼酎でカビを防止 干し柿作り最大の敵はカビ。カビ防止のためには、柿をひもで結んだら、干す前に熱湯に5~10秒ほどくぐらせて殺菌をします。ほか、アルコール度数が高い焼酎にサッとつける方法も効果的。
干し柿の食べごろは?
干し柿は自分で手作りすると、好みのタイミングで食べられるのも魅力。干し始めてから2週間ほど経ったころから甘みが出て、食べられるようになります。おすすめの食べごろは次のとおり。
◎2週間ごろの「あんぽ柿」 ギフトなどでも人気の「あんぽ柿」は、干し始めてから2週間ごろのもの。 内側がトロッとした食感が魅力で、干し柿と生柿の中間と言われます。1カ月ほど干したものに比べると保存期間は短くなりますが、好きな人にはたまらない味わい。
◎1カ月ほど干した「枯露柿」 白い粉がふくほど干したものは「枯露柿」と呼ばれます。目安は、干し始めてから3週間~1カ月ほど。甘さがしっかり凝縮された味わいです。ここまで仕上がったら、お日さまに当たらない場所へ移して保存を。果肉がやわらかいうちに食べ切れるとベストです。
干し柿の保存方法
じっくり時間をかけて作りあげた干し柿。保存方法にも気を配って、なるべく長くおいしさを保ちたいですよね。 干し柿は常温で保存するときは、紙袋に入れたりキッチンペーパーでくるむなどして、「冷暗所」に置くようにするのがよいとされています。
ちなみに、「冷暗所」という用語は、ひんやりとしてお日様の光が直接当たらない場所のことを指していますが、実は明確な定義はなされていません。似たような用語で「冷所」があり、こちらは食品衛生法の添加物の通則と日本工業規格JIS K 0050:2005化学分析方法通則によると、いずれも1~15℃と定義されています。
つまり、冷暗所は1~15℃で日光が当たらない場所と考えることができそう。家のなかで探すながら、冷暗所は寒い季節に、暖房器具を使っていない室内。干し柿は、そのようなお部屋で日当たりに気を付けて保存するのがよさそうです。
常温保存だと保存期間は2~3日が限度ですが、もっと長く保存したいときは、冷蔵庫で2か月ほど保存が可能。ただし、干し柿は臭いを吸収しやすいので、新聞紙やキッチンペーパーなどにくるんで冷蔵庫へ。さらに長く保存したときは、密閉できるビニール袋などに入れて冷凍するとよいでしょう。
干し柿活用のレシピ
たくさん作った干し柿。そのまま食べるのもいいけれど、料理やお菓子にアレンジするもおすすめ。 各レシピの分量はお好みで楽しんでみてくださいね。
なます風和え物
<作り方>
1.大根などお好みの野菜を刻んで塩でもみます。
2.干し柿はへたと種を取ってを細く刻みます。
3.ボウルに酢、砂糖、1、2をすべて入れて混ぜれば完成。
干し柿の天ぷら
<作り方>
1.天ぷら粉を適量の水で溶き、衣を作ります。
2.干し柿に1を薄めに付けて170℃の油でカラリと揚げます。
干し柿の簡単おつまみ
<作り方>
1.干し柿を食べやすい大きさに切ります。
2.クリームチーズを適量のせれば完成。ワインなどお酒と一緒に食べれば相性抜群!
干し柿のパウンドケーキ
<作り方>
1.干し柿は5mm角程度に刻んでラム酒に漬けておきます。
2.バター、砂糖を混ぜ、卵を加えてさらに混ぜます。1を加えます。
3.薄力粉、ベーキングパウダーをふるい入れて混ぜます。
4.パウンドケーキ型に3を流し入れ、180度に予熱したオーブンで30~40分焼きます。
ジョンガ(韓国デザート)
<作り方>
1.水3~4カップ、しょうが(薄切り)、シナモンスティック2、3本を鍋に入れて火にかけ、沸騰したら弱火で30分ほど煮ます。
2.砂糖を加えて火を止め、器に入れたら干し柿を入れます。干し柿は切らないままでOK。
3.冷蔵庫で冷やし、松の実を浮かべます。
まとめ
干し柿は作り方も材料もシンプル。コツさえ掴めばカンタン手作りできそうですよね♪ たくさん作れたら、アレンジレシピで味わうのも楽しみです。これまでに作ったことがない人も、今年こそ、干し柿作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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参考:文部科学省「食品成分データベース」(https://fooddb.mext.go.jp/)
文/北浦芙三子
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