日本の家庭からの二酸化炭素排出量は増加していますが、国は2030年度の国全体の排出目標を「13年度比26%減」と決定。家庭の排出量は4割減と見込んでいます。つまりこれからは今まで以上に住宅の省エネ性を高める必要があると言えます。
建物の断熱性を高め、すき間を少なくして気密性も高める「高気密・高断熱住宅」は、エネルギーロスの少ない省エネ住宅と言えるのです。
求める快適さのタイプ
断熱・気密性を高めることが重要とはいえ、最近では工法や断熱剤などが非常に進化しているため、寒冷地でない限り、過剰な性能アップは不要という考え方も。自分たちが求めるのは次のどちらのタイプかぜひ検討してみましょう。
徹底した高気密・高断熱化
温・湿度を数量的に調節し、病院の病室的な快適さに。ただし窓は閉め切り。計画換気をとり入れて自然の風は通しません。
このタイプを実現するには、高気密・高断熱工法が得意な専門の工法をもつハウスメーカー、設計事務所、工務店に依頼するのがおすすめ。
適度な高気密・高断熱
自然の風を適度に取り入れて快適に。夏はある程度暑くていいし、冬はある程度寒くていいという、上のタイプのような人工的環境を息苦しく感じる人向き。
高断熱化には抵抗は少ないけれど、高気密化に抵抗がある人も多いので、断熱性は適度に高めながらも、過度に高気密化しないことがポイント。「長期優良住宅」の仕様にも用いられている断熱等性能等数4級。断熱・気密性ともにバランスが取れています。
断熱材を入れる箇所
断熱材は屋根、外壁、床に入れて家全体をくるみ、家の中の湿度をなるべく均一に。冬、寒い廊下などに出たときに脳卒中を起こす、ヒートショックの予防にも。
最近は、リビングを2階に上げて勾配天井にするケースも多く、屋根にはなるべく厚くて効果の高い断熱材を入れましょう。
断熱材を高める条件とグラスウール
一般的によく用いられている断熱材は、ガラスを細い繊維にして線状加工した、無機質繊維系のグラスウール。湿気に弱いのが難点ですが、施工の工夫で湿気を防げます。
また、たいていの断熱材は、密度が高くなり、厚みが増すほど断熱性が高まります。グラスウールに関していえば。密度が16K(1㎡あたり16kg)か24Kで、厚さ10cmのものが多く使われています。
外壁の断熱工法の種類と特徴
断熱工法で最も一般的なのが、壁の内側に断熱材を入れる充填(じゅうてん)工法。また最近注目されているのが、外張り工法です。
充填工法(内断熱)
壁の中に断熱材を施す方法。いちばん普及している断熱法で、コストは外張り工法より割安。以前の充填工法(内断熱)では、断熱材の外側に通気層を設けないことが多く、そのため壁の内部に湿気が溜まって壁内結露が生じ、湿気に弱い断熱材(グラスウール)が湿って下部にずり落ち、断熱効果が低くなるのが難点です。
そこで、最近では、外壁と断熱材の間に通気層を設けることで問題を解決しています、充填工法(内断熱)にする場合、通気層を設けることは基本中の基本です。
さらに充填工法(内断熱)では、室内で調理したときに出る湿気が壁内に入るのを防ぐため、断熱材の内側に気密シートを張り、電気スイッチプレートなど湿気が入りやすい部分には気密テープを張ったり、壁と床の継ぎ目気密材(木材)を入れることが重要です。
外張り工法(外断熱)の方が断熱性は高いと思われがちですが、充填工法(内断熱)でも、このような施工上の注意を守れば、十分断熱性が得られます。
外張り工法(外断熱)
家の外側全体をすっぽり断熱材でくるむ方法。そのため、断熱性にすぐれ、内部結露が生じにくいなどのメリットがあるが、コストが割高。また外壁が厚くなる。
断熱と通気工法
躰体を長持ちさせるには、外壁材と断熱材の間に通気層を設ける「通気工法」が効果的。通気層の中を空気が流れて、壁内部の湿気を逃し、結露の発生を抑制。夏場、日射を受けた外壁の熱を室内に伝わりにくくする効果もあります。
屋根の熱が伝わるため、夏場は、2階の室温は1階よりも上昇します。これを防ぐには断熱材を施しますが、天井裏より屋根材の下に入れるほうが効果的です。
どちらの断熱工法を採用しても、外壁下地材と断熱材の間に通気層を設ける通気工法を採用するのが理想的。夏場は、通気層を通って壁や屋根内部の熱気や湿気が放出され、冬場は結露を防ぐことができる。
窓の断熱
窓などの開口部は熱の出入りが多いので、開放的なプランでリビングなどに大開口を設ける場合は注意が必要です。ペアガラスは、ガラスとガラスの間が6mmと12mmの2種類ありますが、なるべく断熱効果の高い12mmを選びましょう(ガラスの厚みの組み合わせによっては、12mmにできない場合も)。
Low-Eガラスには遮熱型と断熱型があり、関東以西は遮熱型、東北以北では断熱型を使うのが一般的です。
サッシの断熱
最近のサッシは断熱性が高いだけでなく、すき間がなくて気密性も非常に良くなっています。結露は熱が通りやすいところに起きるので、結露対策をしてあるサッシを選ぶことも重要です。
ペアガラスだとガラス面は結露しませんが枠が結露するので、枠内に断熱材が入っているタイプや、結露しやすい部分がアルミではなくプラスチック樹脂になっているサッシを選びましょう。
寒冷地では、ペアガラスサッシを二重に取り付ける二重サッシが、結露対策に効果大です。
玄関の断熱
玄関ドアからも熱が多く出入りするので、断熱仕様のものを選びましょう。デザインを重視して、玄関ドアをオーダーし、断熱タイプでは無いものを使う場合は、玄関ホールとリビングの間にドアを入れて室内と玄関の間にワンクッションおき、リビングへの熱の出入りを防ぐなどの工夫が必要です。
この場合、リビングからバス・トイレへの動線は、寒い玄関を通らずに行けるようにしましょう。
南からの陽射しや西日に対する断熱
昔ながらの知恵としては、南面の軒を深くする方法があります。軒をきちんと出せば、夏の高い位置からの陽射しはカットでき、冬の低い位置からの陽射しはさえぎることなく室内に取り込めるため、夏冬ともに快適に過ごせます。
外観をスクエアなデザインにするなど、軒を出さない場合は、それぞれの窓のすぐ上に庇を設ける。小庇も効果的。
軒や庇は、夏の南からの陽射しを防ぐには有効ですが、東西からの低い角度で射す陽射しは防げません。すだれやルーバーなどを窓の前に設け、日射を直接さえぎるのが最も効果的です。遮熱型Low-Eガラスも西日対策に有効です。
真夏の西日は、実は北西に近い方向から射すことも注意が必要です。北側の高窓から西日が射して不快なことも。
各地域の緯度によっても角度は異なりますが、CAD(キャド : コンピューターによる設計支援ツール)を使って比較的容易に、太陽の位置と建物の関係をシュミレーションできますので、設計者などに調べてもらうもの良いでしょう。
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