もし、目の前に豚肉があったら、よ~く見てみてください。筋(すじ)のようなたくさんの繊維からできてることがわかるでしょう。この繊維状のものが筋繊維(きんせんい)です。
筋繊維は加熱をしても残り、歯で噛み切りにくいので、「このお肉は硬いな」と感じる原因になります。筋繊維を断ち切ってあるスライス肉ならほぼ影響がないのですが、厚めの赤身肉などでは筋線維がそのまま残って硬さを感じやすいかもしれません。
豚肉の主成分はタンパク質です。炒めものなど短時間で加熱をする調理では、熱によってタンパク質が変性して収縮し、さらにタンパク質が保持していた水分も「肉汁」として流れ出てしまうことから、お肉の硬さが増してしまいます。
豚肉はpH5.5程度ですが、適度にpH値を下げるか上げることで、保水性が高まって食感が柔らかくなるそう。豚肉のph値を上下させる方法はいくつかありますので、のちほどご紹介しますね♪
家庭では、冷凍していた豚肉を使うこともありますよね。豚肉を柔らかくするためには、解凍方法も重要なポイント。やり方によって豚肉のなかに肉汁がぐっと残りやすくなるんです。
豚肉が肉汁を保持できるようにpH値を変えるには、適度にpH値を調整してくれる食材と一緒に漬け込む下ごしらえが有効。また、タンパク質を分解して筋線維をほぐしてくれる食材もあります。
豚肉を柔らかくするために漬け込む食材12選
ここでは、豚肉を柔らかくしてくれるが漬け込み食材を10種類ご紹介します。
漬け込みをするときのポイントは、フォークなどで豚肉を数カ所刺して漬け汁を浸透させるようにすること。これをしないと、厚みのある肉では表面だけが柔らかくなってしまうことも。
また、漬け汁に浸した後の豚肉は、油はねを防ぐために、汁気をよくふき取ってから調理してくださいね。
◎豚肉を柔らかくする食材1…玉ねぎ
タンパク質は約20種類のアミノ酸が並んで結合してできていますが、この結合を分解するのが、「プロテアーゼ」という酵素。
「プロテアーゼ」は、フルーツや野菜に含まれていて、野菜なら玉ねぎなどに豊富。刻んだ玉ねぎやすりおろした玉ねぎに豚肉を1~12時間程度漬け込むと、タンパク質が分解されて筋繊維がほぐれ、お肉が柔らかくなるんです。
タマネギは豚肉の風味をよくする効果も期待できるので一石二鳥!
◎豚肉を柔らかくする食材2…マイタケ
「茶わん蒸しの具にマイタケを入れると、茶わん蒸しが固まらない」という話を聞いたことはありませんか?
これはマイタケにも、タンパク質分解酵素「プロテアーゼ」が豊富に含まれているから。まいたけを細かく刻んで水、塩と混ぜたものに豚肉に漬け込むと柔らかくなります。
ちなみに、プロテアーゼは加熱すると効力が激減。だから、豚肉とマイタケを一緒に炒めるだけでは効果がなく、あらかじめ1~12時間程度ほど漬け込むのが肝心です。
◎豚肉を柔らかくする食材3…ショウガ
ショウガにも タンパク分解酵素「プロテアーゼ」が含まれます。定番料理の「豚肉のショウガ焼き」は、ショウガの搾り汁入りの漬け汁に一晩漬けておく、というレシピを見かけることがありますよね。
これは味がよく染みるうえに、肉質を柔らかくする目的でも理に適っているんですね!
◎豚肉を柔らかくする食材4…パイナップル
フルーツでは、タンパク質分解酵素「プロテアーゼ」を含む食材としてパイナップルがおすすめ。
実は、プロテアーゼとはタンパク質を分解する酵素の総称。パイナップルには「パパイン」というプロテアーゼが含まれていて、短時間でお肉を柔らかくしてくれるんです。
ただし、加熱処理がされた缶詰タイプではなく生のパイナップルを使うのが大切。刻んだものや、すり潰して絞った果汁に豚肉を漬け込んでおきましょう。漬け込み時間が長いと肉がボロボロになるので、2~3時間ほどでOKです。
◎豚肉を柔らかくする食材5…キウイフルーツ
キウイフルーツも同じく、タンパク質分解酵素「プロテアーゼ」を含むフルーツ。キウイの場合、「アクチニジン」という強力なプロテアーゼが豊富に含まれています。とくにグリーンキウイの多いようです。
長く漬け過ぎると柔らかくなり過ぎるので、薄切り肉なら15~20分程度、厚切り肉なら2時間程度で十分です。
◎豚肉を柔らかくする食材6…塩麹
一時期ブームになった塩麹(しおこうじ)も、やはり豚肉を柔らかくする食材のひとつ。麹は酵素の宝庫で、プロテアーゼをはじめ、アミラーゼ、リパーゼなど30種類以上の酵素が含まれています。
なかでも、豚肉を柔らかくするのに役立つのは、やはりプロテアーゼ。塩麹は漬け込んでも、香りや風味はそれほど変わりませんが、一晩以上など長く漬け込み過ぎると、茶色く変色することがあるので注意しましょう。
◎豚肉を柔らかくする食材7…甘酒
塩麹同様、甘酒も麹を原料としているので、酵素の力で豚肉を柔らかくしてくれます。肉全体に回るくらいの甘酒をくうぇ、3~4時間漬け込めばOKです。
◎豚肉を柔らかくする食材8…赤ワイン
お次は、豚肉のpH値を下げることで柔らかくするという方法です。具体的には適度なpH値の酸性食材に浸すとよいでしょう。その意味では、赤ワインやレモン汁が有効。赤ワインなら豚肉の味や保存性も高められておすすめです。
◎豚肉を柔らかくする食材9…ヨーグルト
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は豚肉のpH値を適度に下げてくれます。しかも乳酸菌はタンパク質分解酵素「プロテアーゼ」を生み出すので、豚肉の食感を柔らかくしてくれるんです。
漬け込み方法は簡単で、 豚肉をヨーグルトに漬けて冷蔵庫で30分ほど寝かせるだけ。
◎豚肉を柔らかくする食材10…炭酸水
酸性の食材では、炭酸水もおすすめ。そのまま浸しておいたり炭酸水で煮込んだりするだけでいいのでカンタンです。
筋線維の多い部位のお肉も、柔らかくなりますよ。コーラやビールでも効果はありますが、香りが素材に移りやすいので使うときは注意しましょう。
◎豚肉を柔らかくする食材11…重曹
豚肉を柔らかくするには、pH値をアルカリ性のほうへ整えるのも有効。アルカリ性の食材では、重曹が便利に使えます。水に溶かした重曹に、しばらく豚肉を漬けておくとよいでしょう。
◎豚肉を柔らかくする食材12…ブライン液
ブライン液とは、水に対して5%の塩と砂糖を溶かした調味液のこと。このブライン液に漬け込んでから調理すると、パサつきがちな肉でも、びっくりするほど柔らかくジューシーに仕上がると評判の方法です。
塩が肉のたんぱく質を分解し、水分が入っていくことで肉が柔らかくなる上、砂糖が肉の保水性をアップ。そのため、加熱調理をしても肉がパサつきにくく、柔らかく仕上がるのだとか。ブライン液は、家にいつもある調味料で手軽に作れるのがいいですね!
豚肉を硬くしない焼き方のポイント
せっかく下ごしらえや漬け込みをした豚肉。焼くときに硬くしてしまっては台無しですよね。焼くときのポイントについても最後にチェックしておきましょう。
◎味付けのタイミングに注意
塩やしょうゆなどの塩分は、浸透圧により肉の水分を外に出してしまいます。また、糖分も焦げ付ぎの原因に。下ごしらえでは塩や砂糖は使わず、肉を柔らかくする素材だけを使いましょう。
焼くときには食材に熱が通ったら一度火を止め、調味料を加えて絡めれば、水分の余分な蒸発を防いでしっとり仕上げることができます。
◎粉をまぶす
豚肉には小麦粉やかたくり粉をまぶしてから焼くと、中の肉汁が流れ出るのを防いで、柔らかジューシーに焼き上げることができます。粉をまぶしておくと、味の絡みがよくなるのも魅力。
ただし、小麦粉の場合はまぶしてから時間が経つと、肉から水分が出てベタベタになるので、焼く直前にまぶしましょう。粉は厚くつき過ぎないように、茶こしなどで全体に薄くまぶせるといいですね。余分な粉ははたいておくとよいでしょう。
まだある!その他のお肉を柔らかくする方法もチェック
暮らしニスタさんが実践する「お肉を柔らかくする方法」もご紹介!ぜひ試してみてくださいね。
豚こま肉が炒めても固くならない方法
炒めると固くなりがちな豚こま切れ肉。柔らかく仕上げる方法は、なんと、炒める前に豚肉に水と塩を加えて和えるだけ!浸透圧により豚肉に水分が補給され、炒めても柔らかいままなのだそう。
https://kurashinista.jp/articles/detail/71895
「酢」で下味をつけて豚肉をジューシーに
厚めにカットした豚バラ肉も、酢を加えた下味に漬け込むことで、柔らかくジューシーに仕上がります。漬け込みは前日から行ってもOK。
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マーマレード効果でお安い豚肉も柔らかくコクのある味わいに
マーマレードを肉料理の味付けに使うと、さわやかな柑橘系の風味と程よい甘酸っぱさが加わるうえ、マーマレードに含まれるペクチンの働きで肉が柔らかくなります。ぜひ試してみてくださいね!
2023.03.31マーマレードはパンにつけるだけでなくお料理に使うといいですよ。安い豚肉でもマーマレードと一緒に煮ると肉質が柔らかくなります。マーマレードに含まれるペクチンの効果です。他のお肉でも利用できます。お試しくださいね。続きを見る
まとめ
キッチンによくあるものを使って、豚肉を柔らかくする方法がこんなにたくさんあるなんてびっくり! さっそく取り入れて、今日から豚肉をもっとおいしく、柔らかジューシーに焼き上げましょう。
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文/北浦芙三子
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