「知らなきゃ損!」というのはこのコーナーのタイトルですが、今回の「食器洗浄機(以下 食洗機)」は、まさにそういう家電です。「関係ない!」と思っている人もいるかもしれませんが、今回「実は大間違い!」と言い切ってしまいましょう!ここまで勘違いされている家電もありません。まぁ、聞いて下さい。
食洗機を使うと1日50分、家事が時短に!?
今、時短をうたわない家電はありませんが、「本当に家事の負荷が減った」と感じる家電はほとんどありません。確実に時間が短縮できる家電は、「ロボット掃除機」「洗濯乾燥機」「食洗機」のみと言い切ってもいいほどです。
理由は簡単です。「ほったらかし」ができないからです。例えば、全自動洗濯機。洗濯自体の負荷は小さくなりました。しかし終わったら、なるべく早く干さなければなりません。そうでなければシワになり、アイロンをかけまくらなければならなくなります。
つまり自動なのに「ほったらかし」できない。洗濯終了と共に、一度その時にしている仕事を中断しなければならず、うまく使えるとは限らないわけです。
その中で食洗機はどれくらいスゴいのかというと、経済学者であり上智大学教授であった故・篠田雄次郎氏の「日本人とドイツ人」の中にこう書かれています。
「自動皿洗機の威力は大きかった。1日3時間50分だった台所仕事が、1日3時間に短縮されたのは、一にかかって自動皿洗機の貢献である」
1970年代の話ですが、調理して、食べ、後片付けをすることは、全くと言ってイイほど変わっていません。一日24時間も変わりませんし、現代でも一日50分は、少ない時間とは言えません
【勘違い1】食洗機はブルジョワ家電か?
「水と安全はただ」「湯水の如く」と言う表現は、現代の水道代では「ちょっとね」と思うこと、ありませんか? 日本は比較的水の豊富な国ですが、支払い金額を見ると「節水しなきゃ」と思ってしまいます。
ところで、手洗いと食洗機、どちらが少ない水で洗えるのでしょうか?
日本電機工業会自主基準に乗っ取った手洗いのテストデーターがあります。40点の食器と5人分の小物を洗った場合です(写真は4人分)。
手洗いでは、10Lのお湯(40℃)につけ置き洗い後、毎分6Lの流し湯で食器1点13.5秒、小物5.5秒の条件ですすいだ時、約75Lかかったそうとか。そんなにも水を使っていることに驚いてしまいます。
食洗機の使用水量は、メーカー・機種によっても異なりますが、10〜20L。これは食洗機が、洗浄時にため洗い、ため洗浄を行うためです。また、すすぎの時に水を使うことになる泡が、あまり出ない洗剤を使用しているからです。
よりわかりやすく、金額で示しましょう。手洗いの場合は、洗剤代+ガス代+水道代で、約55.6円/回。一方の食洗機は、洗剤代+電気代+水道代で約26.7円/回(後述するパナソニックの食器洗い乾燥機 NP-TH1を使用=約11L/回)。
となると、1日2回食器を洗うとして、年に約21,000円の差が出ます。5年使うと10万円も違ってくるので、据え置き型だと元が取れます。
本体価格が安くないため、ブルジョワの家電。というイメージを持つ人はかなり多いですが、初期費用は高いものの、トータルで見るとかなりお得といえる家電なのです。
しかも、電気代がより安くなる深夜電力の契約をしている場合には、夜間にまとめ洗いすれば、より差が出てきます。食器点数が少ない場合、少量コースを使ったり、機種によってはセンサーが検知し、洗い時間を短縮してくれるので、家計の負担がぐんと減ることになります。
これに加え1日30〜50分の家事短縮。1年にすると約12日です。しかも一日のうち、最後の家事がなくなるのですから、メリットは非常に大きいですね。
【勘違い2】手洗いより汚れが落ちないのか?
食洗機が手洗いと違うのは、「湯の温度」「洗剤」「水流」です。
まず「湯の温度」ですが、通常、人が手洗いで使うお湯は、熱くて40℃前後。豚や牛の油が溶ける温度は、40〜50℃ですから、完全に取り去るためには、長時間洗い続けるか、より熱い温度が必要です。一方の食洗機は、要所々々で60〜80℃の湯で洗浄、すすぎを行うので、当然、油汚れに強いわけです。
次は「洗剤」です。いわゆる手洗い洗剤(中性洗剤)の主成分は界面活性剤。油、タンパク質、炭水化物の汚れに対して効果があります。が、よく落ちないと感じられる時もあるのではないでしょうか?
これは、手洗い洗剤が「野菜、果物、食器洗い用」であり「食品衛生法」の管理下にあるからです。野菜に使うので、全ての汚れを上手く落とすというわけにはいかないのです。その上、女性の肌荒れにも対応となると、ますます使える洗剤は限定されてきます。
それに対して、食洗機用の洗剤には、「漂白成分」や「高pH(アルカリ性)」など、手洗い洗剤には入れられない殺・除菌効果の高い成分や、洗浄力の高い「酵素」を入れることができます。
当然、念入りな安全性のチェックがされています。食品衛生法など法律の適用はありませんが、日本食品洗浄剤衛生協会の定めた「業務用食品洗浄剤」に関する品質や表示などの自主基準を守っています。このため、食洗機で使う分にはご安心ください。尚、適合製品には、丸に「証」を書かれたマークが付けられています。
さらに、食洗機なら高い「水圧」も可能。今、いろいろなところで高圧洗浄による歴史的建造物洗浄がすすんでいます。
くすんでいた日本橋などは、見違えるようにきれいになりましたが、手洗いでは不可能な水の圧力も、機械なら可能。
つまり、人の手では非常に時間のかかる汚れも、食洗機にはさっと落とすことができるのです。
「据え置き」と「ビルトイン」、どちらを選ぶ?
食洗機には、2つのタイプがあります。「据え置きタイプ」と「ビルトイン・タイプ」です。
据え置き型はキッチン天板上に置くタイプで、洗いかごの代わりと考えていただければと思います。ビルトインは、海外では当たり前、日本でも浸透しつつあるタイプで、システムキッチンに組み込むタイプです。いずれも一長一短があります。
据え置きは、本体価格が安いところが大いに魅力です。しかし、改善されたとはいえ、調理道具全部を入れられないことが多いです。
ビルトインは、あることを感じさせない何気なさと、容量が大きく、ほとんどの場合調理道具も全部洗えるのが大きなメリットです。しかし、本体価格は買うのに大きな決断が必要なレベルです。勘違いする人が多い要因もそこらにあります。
が、個人的に欲しいのは、ビルトインです。理由は簡単で、容量が大きいからです。面倒くさがり屋を自負する私にとって、鍋など調理器具も入れることができるのは、大きな魅力なのです。
食洗機が苦手なものとは…!?
人の手よりも格段に優れた食洗機ですが、実は洗うのが苦手なものもあります。それは、漆器です。表面が柔らかく、高温にも強くないため、食洗機で扱うと漆が傷みます。私の友達などは、傷んでも「普段使いには問題なし!」と豪語して、使っていますが、基本漆器はNG。
ただ、今はガラス耐久コート剤のナノコーティングがしてある漆器などがあり、これなら食洗機でも問題ありません。食洗機不可の漆器を愛用されている方は、それだけは別に洗うなどの工夫が必要です。
また、プラスチックなどの軽い食器も得意ではありません。水を噴射して汚れを取るわけですから、噴射の水圧で飛んでしまうと洗浄できないからです。じっとしていない子どもをお風呂に入れようとするようなものですね。お弁当箱ががそれにあたります。
とはいえ、子育て世代にはお弁当箱を毎日使っている人も多いでしょう。パナソニックは、そのためにビルトイン・タイプには、抑えバーを取り付けたモデルもラインナップしています
食洗機はどんな人におすすめか?
共稼ぎ、子育て、シルバー、全ての方におすすめです。
共通に言えることは、食事が終わった後の家事負担が減ることです。イニシャルコストはかかりますが、じわじわ還元されます。お金、時間に加え、手荒れも少なくなります。
子育てだとそれに加えて、乳児の食器の除菌などの手間から解放されます。これは大きいです。
では、シルバーの方のメリットはというと、洗っている時に器を落とさないとか、細かな汚れが取れたか、眼をこらさずにすむとか、本当にいろいろです。
おすすめの食洗機はこれ!
では、据え置きタイプ、ビルトイン・タイプ、それぞれのおすすめ機種をあげていきましょう。
■パナソニック 食器洗い乾燥機 NP-TH1
卓上型ならこれ。見た瞬間にポテンシャルが感じられる食洗機です。据え置きタイプは容量が足らないことが多いのですが、それに対し最大の解答を出したモデルです。容量 約50L。2段組の中に、5人分 40点の食器類が入ります。
あと、フライパンであれば直径 26cmまでのもの。鍋は1つくらい入れられます。もしあなたが、取っ手がとれるタイプをお持ちなら、サイズによっては2つは入れられます(ただし、この時は食器を40点も入れられません)。
もし調理道具の油汚れが多い場合は、調理道具を中心に洗うのも一つの手。油汚れは食洗機の得意技です。
設置は、流しの横に細長いワゴンを置いて、その上に設置するのがおすすめ。35cm以上の幅があればOKです。あとは、水道に分岐水栓を取り付けて接続すれば使えます。
電源コンセントは、100V 15A以上の容量があればOKなので、いじる必要はありません。洗いかごが空いた作業スペースは、とても使いやすいと思います。
■パナソニック 食器洗い乾燥機 K8シリーズ
ビルトイン型。幅:45cmですから、ほとんどのシステムキッチンに入れることができます。
庫内容量は約60L。据え置き型より約10L大きいだけかと思ってはいけません。この約10Lの余裕で、一日分の調理器具も対応します。2ノック(トントンですね)で自動的に開く扉を引くと、巨大な引き出しが出てきます。そこに食器、調理道具を入れ込むのです。
パナソニックは、市販の食洗機用の洗剤が使えるところもメリット。ドラッグストアでも買うことができます。
また、設置は水道管から水を取るので、業者依頼のほうが良いのですが、中には自分で行う強者もいるそうです。
前述した、プラスチック製の弁当箱にも対応しているモデルです。
■ミーレ 食器洗い乾燥機 G 6620 SCU
世界的な高級白物家電メーカー、ドイツ ミーレ社の食洗機です。30万円を越しますが、これでも一番安い価格となります。ミーレが高いのは理由があります。樹脂ではなく耐久性のある金属などを使い、20年使えることを考慮して設計されているからです。
ビルトイン型の先駆者でもあり、その時はシステムキッチンも販売していたと言いますので、この分野の第一人者とも言えます。
システムキッチンをギリギリまで活かした60cmのドアを開けると、3段トレイと供に、巨大な容量が見て取れます。それでいて、洗浄水量は6.5L。これだけの水でキレイになるのは、食器の汚れ具合を検知するセンサーや独自の濾過システム、独自の専用洗剤との組み合わせでなし得ることとは言え、脅威です。
特に自信があるのは、ガラス。ヨーロッパ文化の華の一つはワイン。グラスがキレイでないとワインは栄えませんからね。低価格モデルでも実力は一級品です。
【筆者プロフィール】
多賀一晃 さん
1961年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学部卒。大手メーカーにて商品開発、企画を担当後独立。国内はもちろん、世界最大の家電見本市「IFA」等で世界中の家電を取材し、役立つ情報を「生活家電.com」から発信中。日本経済新聞夕刊の家電製品特集や土曜日別冊「日経プラス1」の「家電ランキング」選者、WEDGE Infinity「家電口論」主筆としても活躍。
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