【Iさん、Nさん宅(東京都)】
90坪ほどの土地を購入して2分割したIさんとNさん。子世帯と親世帯がそれぞれ家を建て、その間を広々としたデッキでつなぎました。「実は以前も隣同士に住んでいたのですが、敷地が仕切られていたので、わざわざ玄関を通らないと行き来できなくて。両親が高齢化してきたこともあり、お互いをもっと身近に感じられる住まいがほしかったんです」とIさん。
今回の家づくりでは、2つの建物を隔てる塀はなく、子世帯のダイニングと親世帯のダイニングの間にあるデッキを通って気軽に行き来できるプランに。もちろん、玄関を回り込む手間もありません。IさんもNさんも「急いでいたらスリッパ履きのまま歩いていっちゃう(笑)。食事を作って持っていったりと、お互いに毎日何度も往復するので、この気軽さは助かります」
室内にいながらお互いの気配が感じられるのも、このプランのメリット。デッキ越しにそれとなく姿が見えるだけでなく、Nさんの入浴中は外構のライトが点灯する仕組みになっているのだそう。「今朝もちゃんと起きたな、今お風呂に入っているなとわかるので、自分たちも両親も安心できます」とIさん。別々の建物でほどよい距離感を保ちながら、元気に過ごしていることが自然に伝わるーーそんな理想的なライフスタイルを実現しました。
プランニングにあたっては、両世帯のプライバシーにもきめこまかく配慮。たとえば、子世帯のリビングは2階に設けて、親世帯や同居しているご主人のお母さまに気兼ねなくくつろげるようにしました。またお母さまの部屋は、動線のいい1階にありながらも、Nさん宅のLDからは直接見えない角度にレイアウト。こんなさりげないプランの工夫で、家族それぞれに心地よい空間を確保しました。さらに水回りのプランには、万一、体が不自由になったときのための用意も行き届いています。
外観
左がNさん、右がⅠさんのお宅。Ⅰさん宅は片流れ屋根にして太陽光発電をとり入れました。Nさん宅は1階だけで生活できるよう、平屋をベースにして、2階はロフト風の納戸のみに。
デッキ&庭
デッキは家族の交流の場としても大活躍
【写真左】家の完成時は毎週のように親戚や友達を招いてバーベキューパーティをしていたそう。「2軒ともダイニングの出入り口をオープンにして、家の中から外まで使ってワイワイやっていました」
【写真右】2つの敷地をまたぐようにデッキをプラン。将来どちらかを貸し家などにする場合は、デッキの真ん中にある敷地境界線に沿ってフェンスを立てれば、2軒がより独立した建物になります。
玄関
【写真左】こちらは親世帯のNさん宅。アプローチに屋根をかけているので、雨の日の出入りもラク。ガラススリット入りのドアで屋内に光を導いています。ポーチは洗い出し仕上げで、やや和風の趣に。
【写真右】 子世帯のⅠさん宅のエントランス。ポーチと階段はモルタルでシンプルに仕上げました。玄関ドアはレッドシダーを使い、建具工事でつくったもの。赤いポストがかわいらしいアクセントに。デッキ越しに自然とお互いの姿を確認できるのが◎
デッキ越しに自然とお互いの姿を確認できるのが◎
子世帯のダイニングのデッキ側は、おおらかな吹き抜け空間。掃き出し窓+ハイサイドライトをとり入れたことで、日当たりも抜群。1階からも2階からも親世帯の様子がわかります。
【子世帯】1F ダイニング
Ⅰさん宅の床は、ラフな質感のパイン。「犬を室内に入れるので、傷がついても気にならない素材を選びました」。キッチンカウンターのダイニング側は造りつけのオープン棚に。
【子世帯】1F キッチン
両世帯とも「サンウエーブ」のシステムキッチンをセレクト。太陽光発電+オール電化を採用したため、熱源はIHクッキングヒーターです。火が出ない安心感もお気に入りとか。
【子世帯】2F リビング
リビングにはプロジェクターを設置して、ゆったりと映画やサッカー観戦などを楽しんでいるそう。「イケアのソファベッドは、長女が帰省して泊まるときに重宝しています」
【子世帯】1F バス&サニタリー
水回りはご主人のお母さまの部屋の目の前。入浴や洗面などの生活動線が短くなるように配慮しました。浴室の壁は青森ヒバ。トップライトから入る光も心地よさを高めています。
【親世帯】1F LDK
Nさん宅のパブリックスペースの中心は、左右から通り抜けられるアイランドキッチン。玄関側からもサニタリー側からもアクセスできます。一角にはご主人の書斎コーナーが。
LDの頭上はダイナミックな吹き抜け。モダンな格子のデザインが印象的です。
デッキに面した大きな窓が安心感を高めて
LDのデッキ側は掃き出し窓を2面に設けました。室内が明るくなり、子世帯と気配を伝え合うことができます。デッキに視線が抜けることで、室内が広く感じられる効果も。
【親世帯】1F 寝室
キッチンと同様、寝室も通り抜けられるプランを採用しました。玄関ホール〜寝室〜サニタリー〜LDKを回遊できます。枕元には子世帯につながる非常ベルも設けてあるそう。
【親世帯】1F バス&サニタリー
【写真左】タイルで仕上げた清潔感あふれる水回り。万一、介護が必要になったときも動きやすいよう、トイレと浴室の間はオープンにしました。入り口もあけたまま出入りできる引き戸になっています。
【写真右】寝室とLDKをつなぐ通路に洗面台を設置し、その向かいにトイレと浴室をレイアウト。将来もし車椅子を使うことになっても生活しやすいようにと考えました。1階の床は無垢のナラで統一。
DATA. Iさん、Nさん宅(東京都)
設計のPOINT
デッキで、「つながりたい」と 「独立したい」を両立させました
明野 岳司さん 明野 美佐子さん
ⅠさんとNさんの両世帯からリクエストされたのは、「つながる安心感」と「ほどよく独立して暮らせる距離感」。それを両立させるため、2つの建物をデッキでつなぐプランを提案しました。ここが、2世帯の交流の場としても、それぞれのプライバシーを守る境界としても役立っています。また、将来2つの敷地を分割して使う可能性もあるため、デッキのまん中でカットできるように土台を設計してあります。
Profile.
岳司さん: 1961年東京都生まれ。88年芝浦工業大学修士課程修了後、磯崎新アトリエを経て2000年に明野設計室を設立。
美佐子さん: 64年東京都生まれ。88年芝浦工業大学修士課程修了後、小堀住研(現エス・バイ・エル)などを経て明野設計室を設立。
家族構成 |
夫婦+子ども1人+母(Ⅰ邸)/ 夫婦(N邸) |
敷地面積 |
Ⅰ邸 149.30㎡(45.16坪)/ N邸 150.20㎡(45.44坪) |
建築面積 |
Ⅰ邸 61.63㎡(18.64坪)/ N邸 73.56㎡(22.25坪) |
延べ床面積 |
Ⅰ邸 116.01㎡(35.09坪)/ N邸 93.08㎡(28.16坪) Ⅰ邸 1F 60.18㎡ + 2F 55.83㎡ N邸 1F 68.24㎡ + 2F 24.84㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2010年3月~10月 |
設計 |
明野設計室一級建築士事務所 (明野岳司、美佐子、担当/安原正人) TEL: 044-952-9559 |
構造設計 |
永田構造設計事務所 TEL: 047-424-0290 |
施工 |
㈱渡邉技建 TEL: 03-3324-7811 |
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