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長い通路を生かして建てた路地の奥の ちょっと気になる家【旗ざお状&狭小地】

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長い通路を生かして建てた路地の奥の ちょっと気になる家【旗ざお状&狭小地】

【 小笠原さん宅(東京都)】

ご夫妻と2歳の長女、2カ月の長男の4人家族。2カ月前に引っ越してきたばかり。登山やキャンプなどのアウトドアが夫婦共通の趣味。「近隣には緑が多く、自然を身近に感じられる環境も気に入っています」
しっくいの壁にナラの無垢材を使用した床など、自然素材を生かした内装。床の天然オイル塗装は自分たちで行い、7万円ほどのコストダウンに。DKとリビングの間に36㎝の段差を設けたことで、オープンな空間を維持したまま、自然にゾーニングができました。

【難条件】旗ざお状&狭小地!

旗ざお状&狭小地な立地

小笠原さんの家づくりのイメージは、「路地の奥にたたずむ、ちょっと気になる家」。道路から13mほど奥まった旗ざお状敷地という難条件を、見事、魅力的なプランに転換しています。

“小径”のアプローチをたどり、玄関から2階に上がると、勾配のある天井やベンチにもなる出窓、段差に座って食事ができるダイニングなど、楽しい空間が目を引きます。これらはすべて、建物の狭さや高さ制限をカバーし、延べ床面積約78㎡の家にゆとりと空間の豊かさをもたらすためのもの。

「設計をお願いしたトトモニさんにプランを提案されたときは驚きましたが、説明を聞くうちに、狭い中でも空間を有効利用できそうだし、家の中にベンチがわりの段差や出窓があるのも楽しそうだな、とワクワクしてきました」土地を探し始めた当初は、予算内で満足のいく家がつくれるか心配だったという小笠原さん。旗ざお状敷地についても、駐車スペースをとると人の通路が圧迫され、出入りにストレスを感じるのでは、との心配もありました。

「トトモニさんにも土地を見てもらい、『間口が3mあるこの敷地なら、人の通路幅も十分にとれて、理想の家づくりができる』とアドバイスをいただきました。私たちだけで土地を見ても、希望に合うのか、判断するのは難しいですよね。旗ざお状敷地でよけいにかかりそうな費用のことも、事前に相談できたので安心でした」

この家に引っ越して2カ月。春がきたら、アプローチに芝や花を植えようと計画中だそう。緑の先に立つ小笠原邸、ますます“気になる家”になりそうです。

2F リビング

3方向に窓を設けた明るいリビング

3方向に窓を設けた明るいリビング。斜め天井で、建物の高さ制限に対応しながら広がりのある空間に。

天井が低いソファコーナー

天井が最も低い場所をソファコーナーに。「座って過ごす場所なので、圧迫感は感じません」

2F バルコニー

光がたっぷり入るバルコニー

敷地いっぱいに家を建てず、余白をとった分、バルコニーにも光がたっぷり。「夏、ビニールプールで子どもを遊ばせるのが楽しみ」

2F  ワークスペース

ミニ書斎付きのワークスペース

リビングの一角にミニ書斎を設置。腰高の壁とロフトの支柱でゆるやかに仕切り、リビングにあっても落ち着けるコーナーに。棚の上2段にはご夫妻の本、下段には絵本を収納。

2F キッチン

黒板が仕切り壁のオリジナルキッチン

【写真左】大工さん製作のオリジナルキッチン。シンク下は扉を省くなど仕様をシンプルにして、既製のキッチンと同等の価格で、希望どおりのデザインにできました。
【写真右】仕切り壁に黒板をつけ、長女が落書きを楽しむ場所に。

2F ダイニング

段差をベンチにしたダイニング

以前から愛用しているテーブルがぴったりおさまるように、階段をつくって段差をベンチとして活用しています。「キッチンの真後ろなので、配膳も片づけもスムーズです」

設備の要・不要を見極め、コストを抑えながら毎日使いやすい場所に

2F トイレ & 洗面室

高さを確保したトイレ&洗面室

【写真左】浴室と同様に天井が低くなっているので、構造材を出して仕上げ、その分、高さを確保しました。収納棚は、板だけのシンプルなものにしてコストダウン。
【写真右】「手洗い洗濯がしやすそう」と選んだシンクは実験用。陶器で質感がよく、価格も手頃でした。「タイルはブラウンで遊んでみました」。窓の下にはDIYで棚をつくる予定。

2F 浴室

傾斜した天井の浴室

建物の高さ制限で傾斜した天井と壁は、水に強いサワラ材の板張りに。入浴後はシャワーで水を流すだけですみ、
お手入れも簡単です。

しっくいの壁と無垢材の床、自然素材のよさを日々感じられる家

1F 玄関

踏み板をベンチと兼用した階段

【写真左】登山などアウトドア用の靴が多いので、天井までの靴箱を設置。
【写真右】階段の踏み板を延長してベンチと兼用し、床を斜めに切ることでたたきが広くなり、家族4人でも出入りしやすい玄関に。

ルーパーを設置した玄関ドア

隣家の視線に配慮して、玄関ポーチの柱と壁の間にルーバーを設置。

1F 子ども部屋

カラマツの床材の子ども部屋

現在は家族4人の寝室として利用していますが、将来はセンターに間仕切り壁を設け、子ども部屋にする予定です。床材はカラマツの無垢材、壁はクロスにしてコストを抑えました。高窓で光をとり入れながらプライバシーも確保。

「旗ざお状&狭小地」を生かす5つのコツ

「周囲を家に囲まれているのですが、ダイニングにいるときもソファでくつろいでいるときも、目線の先にバルコニーや出窓が明るく開けていて、広がりを感じます。リビングとの段差は、最初は長女がケガをしないか気になりましたが、一度転んだら慎重になったみたいで(笑)。段差があることで、つながった空間なのになんとなく仕切られているから、とても暮らしやすいです」と奥さま。

予算の関係から、建築コストを抑えるために、床の天然オイル塗装を自分たちで行ったり、造りつけの棚やロフトのはしごなど、市販品で安く代用できるものは潔く省いたりしました。

「設計前だけでなく、施工中もトトモニさんの住宅見学会に足を運んでいたので、自分たちの家もイメージしやすく、仕様や設備の取捨選択がしやすかったですね」そのおかげで、希望の「しっくいの壁と無垢材の床の、自然素材のよさを感じられる家づくり」を叶えることができました

敷地の南側は空間を設けて光をとり入れる

空間が設けられた外観

土地の広さに余裕がない場合、敷地いっぱいに家を建てたくなりますが、建物をコンパクトにプランニングすることで、隣家との間に空間ができ、奥まった旗ざお状敷地や住宅密集地でも光と風をとり入れやすくなります。「物質的な広さより、心地よさを優先しました。そのおかげで、余った敷地に庭をつくることもできました」

アプローチを楽しむ工夫を

玄関へと誘う小径

旗ざお状敷地の通路部分は、工夫しだいで単なる通路に終わらない、遊び心のある空間にすることが可能。家づくりのテーマである「路地の奥のちょっと気になる家」に合わせて、玄関へといざなう“小径”をつくりました。今後は、土の部分に芝や花を植え、さらに魅力的なアプローチにする予定です。

段差を生かしたダイニングスペースと空間の広がり

段差を生かしたダイニング

DKとリビングの段差にテーブルを置き、段差をベンチがわりにすれば、その分、椅子を置かずにすみ、省スペースです。同時に、床や天井の高さに変化が生まれ、目線ものびるので、床面積以上に空間が広く、豊かに感じられます。段差には空間をゆるやかに仕切る効果もあり、暮らしやすさの点でもプラスに働きます。

ロフトを設けて空間を有効活用

空間を有効活用したロフト

リビングの天井が高くとれる場所に約3.5畳のロフトを設け、オフシーズンの衣類や登山道具などを収納しています。1階、2階の収納スペースを減らすことができ、居室のスペースが広がりました。専用のはしごはつくらず、市販の脚立を利用することで、5万円ほどのコストダウンにも成功しました。

出窓を広くとり、 くつろぎスペースに

出窓があるくつろぎスペース

リビング南西の角に、大人が座れる高さと幅の出窓をつくり、明るい日ざしが降り注ぐ、くつろぎスペースに。来客時には大勢が座れて助かるそう。出窓はつくり方しだいで、延べ床面積には算入されません。出窓分の広さと奥行きがプラスされるうえに視界も開けるので、狭さの克服にも◎。

DATA. 小笠原さん宅(東京都)

間取り

設計のPOINT

齊藤 元彦

トトモニ  齊藤 元彦さん

小笠原さんの敷地は2方向から北側斜線の高さ制限を受けていて、それも難条件のひとつでした。斜め天井やLDKの段差のほか、梁を出して天井を仕上げることで天井高をとるなど、さまざまなアイディアの合わせワザで克服しました。また、家づくりでは「あれもこれもほしい」と足し算になりがちですが、小笠原さんは不要なものは引き算して予算と要望のバランスをとり、無理なく金額を抑えられました。きっと、自分の暮らしに合うもの・合わないものが明確だからですね。

【Profile】
1976年生まれ。2009年、SE、OL、大工、木工家、建築士とともに設計・施工事務所「トトモニ」を設立。個性豊かなメンバーと侃々諤々しながら、自然素材を生かした楽しい家づくりを提案。

家族構成 夫婦+子ども2人
敷地面積 115.42㎡(34.91坪)
建築面積 43.36㎡(13.12坪)
延べ床面積 78.26㎡(23.67坪)1F 39.13㎡ + 2F 39.13㎡
構造・工法 木造2階建て(軸組み工法)
工期 2013年4月〜9月
本体工事費 約1820万円
3.3㎡単価 約77万円
設計・施工 トトモニ TEL: 03-6459-7360

 

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