1000箇所以上のモグラ塚に指を突っ込んできているけれど…
こうやってモグラ塚を見つけるたびにトンネルの横幅サイズを測って、地図の上に記録をしていけば、だんだんとモグラの分布図が出来上がっていきます。
全国の子どもたちが協力してくれたら、きっとあっという間に最新のモグラ生息地図ができちゃうね。
ところで、地面の穴に指を突っ込むのは怖いと思うかもしれませんね。何か出てきたり、モグラに嚙まれたりしたらどうしよう、という子もいるかもしれません。
私はこれまで1000箇所以上のモグラ塚に指を突っ込んできているけれど、一度も怖い目にあったことはありません。蛇なんかいないし、モグラも逃げちゃって指に噛みつくなんてことはないから安心して。
モグラのトイレの目印はキノコ
モグラの巣を見つけるもう1つの方法は、トイレです。モグラは必ず、巣の脇にトイレをつくって、そこでうんちをするんですね。なんと、そのモグラのトイレから生えるキノコがあるんです。
ナガエノスギタケというキノコで、地中深くまで菌糸が伸びているのが特徴。
ナガエノスギタケを見つけたら、菌糸を見失わないように注意深く掘っていきます。そうすると、モグラのトイレに行き着く。そして、そこにガラス板を当てて待っていると、やがてモグラがやってくるというわけ。
だけど、モグラというのはとても賢くて、昔、モグラを捕まえようとしてワナをしかけたら、まんまと裏をかかれたことがありました。
モグラが入ったら、パタンとふたがとじるワナをかけて、中にカブトムシの幼虫を入れておいたんです。そうしたら、モグラは、ワナに土をつめて、ふたが落ちないようにした!
そのうえ反対側に回って、幼虫だけ持って逃げたんです。モグラは地中にいても、トンネルの地図が頭に入っているんですね。真っ暗な地中でも、ここから回っていけば反対側に出るということがわかっている。すごいもんだね。
人間の祖先はモグラ説。
モグラは鼻もいいですよ。視力はほとんどないけれど、嗅覚はとてもすぐれています。胸のあたりからニオイを出して、自分の縄張りにニオイをつけてパトロールしています。ほかのモグラが入ってくると、ニオイで感知して追い出す。
こうやってモグラの生態を調べていくと、モグラは実にいろんな能力があって、本当に興味深い動物です。そもそも人間の祖先は猿だというけれど、猿の祖先をたどればモグラ。だから。私はモグラに会うと、なんだか懐かしいなーって思いますよ(笑)。
今泉忠明(いまいずみ・ただあき)●動物学者。動物学者 今泉吉典の二男として生まれ、動物三昧の子ども時代を過ごす。大学卒業後、多くの生態調査に参加。各地の博物館館長、研究所所長などを歴任。『ざんねんないきもの事典』シリーズ(高橋書店)他著書・監修書多数。
取材・文/浦上藍子
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