子どもたちが「楽しい」と社会は変わる
――――それ以来、多摩川の水、そこに生息する生き物、土手の草花に至るまで、多摩川のすべてを愛してきた賢さん。
その活動が周囲に広がり、近隣小学校からも課外授業を行って欲しいというオファーがくるようになったそうですが…
当時は、多摩川は「汚い・危ない」と思っている大人も多かったから、最初からスムーズというわけではなかったんだよね。当然反対する親御さんもいたわけで。
そこで、小学校の先生方と相談して、親子一緒にガサガサ体験に参加してもらうことにしたんだけど、みんな驚いていた。自分の子どもがあんなにはしゃいだり、楽しそうにしていたりするのを初めて見たわけだから。
「汚いはずの多摩川に生き物なんか居るわけがない」と思っているから、魚がたくさん獲れてまたまたびっくり。いつの間にか、子どもより親の方が夢中になってたりしてね(笑)。その時のことは今でも話題に上がるよ。
子どもが楽しそうにしているという事実だけで、社会は変わる。子どもたちが希望であることは、間違いないんだと思うよ。
子どもたちの笑顔は、誰もが「幸せ」を感じる宝物かもしれませんね。
――ガサガサ体験を通じて、子どもたちに望むことは?
現在の多摩川は、アユやどじょうが住めるほどきれいになっているし、あまり知られていないけれど、都市部の水質は「上水道水源」として利用できるほどに改善している。
それでもまだ、家庭排水やごみやマイクロプラスチック問題など解決しなくてはならないものがあるのも事実。
でも、多摩川は問題を探す場所じゃない。多摩川は未来を探す場所。
問題を探して解決するだけでは、問題が起こる前の状態にただ戻るだけ。環境とどう共生していくのか、その先にどんな素敵なことがあるのかを見つけていく。
魚を買ってきて放流するんじゃなくて、産卵できるような場所を準備してあげればいい。水がきれいになったら、どんな魚が増えて、どの環境が魚にとってよかったのかを調べるべき。
子どもたちにはそういう目を養っていってほしいと思うよ。
中本 賢(なかもと・けん)●1956年、東京・浅草生まれ。俳優。映画『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』『鉄道屋(ぽっぽや)』のほか、『下町ロケット』などテレビドラマでも活躍中。約40年以上続けている多摩川での自然観察を記した『ガサガサ探検隊』『多摩川ノート 土手の草花』など著書も多数。
撮影/目黒-meguro.8- 取材・文/山川麻衣子
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