食卓にはとても馴染み深いじゃがいも。もとは南米のアンデス山脈生まれで、17世紀のはじめころに日本にやってきました。インドネシアのジャカルタからやってきたため、ジャカルタから来たいも=じゃがたらいも、がなまり「じゃがいも」と呼ばれるようになったそう。秋の季語として知られているじゃがいもですが、一般的な旬の時期は実は違うのです。
この記事では、インカのめざめやシャドークイーンなどの品種ごとの特徴から、主な産地まで紹介します。ぜひチェックしてくださいね。
じゃがいもの旬は春だが、秋もおすすめ!
じゃがいもが美味しい時期は、一般的には春といわれています。じゃがいもは涼しい気候で育てられるため、春頃になると収穫され、出荷量が増えます。そのため、じゃがいもの主産地である北海道では、4〜5月に作付けして8〜10月頃に収穫する「春作」が中心です。
一方、九州では、9月に作付けして11〜12月に収穫する「秋作」や、10〜12月に作付けして2〜4月に収穫する「冬作」を取り入れています。
このように、秋から冬にかけても収穫量が増えるため、秋も第2の旬といわれているのです。ちなみに、旬の時期は安い時期でもあるので、安く購入したいときは旬の時期を狙うのがおすすめですよ。
じゃがいもは一年中美味しい野菜でもある
先述の通り、じゃがいもの旬は春や秋と紹介しましたが、実際のところ年間を通して店頭に並んでおり、旬ではない時期でも美味しく食べることができますよね。というのも、じゃがいもにはさまざまな種類があり、早生種や中生種など、栽培時期が異なる種類があるためです。
また、気候が異なる日本各地でも山の高低差を利用して育てることができるため、季節を問わず、年間を通して収穫されているのです。
さらに、じゃがいもは貯蔵できる食材で、10℃前後の低い室温と湿度に設定されている冷暗所だと半年近くも保存することが可能。そのため、収穫量が多くなる春や秋以外の季節でも、美味しいじゃがいもを食べることができるのです。
ただし、じゃがいもの旬がいつなのか試験問題で出題された際は、「春」が正解なので覚えておいてくださいね。
じゃがいもの収穫量No.1は「北海道」!
じゃがいもが最も多く収穫されるのは、じゃがいもの産地として有名な北海道です。農林水産省によると、令和4年には年間で1,819,000トンものじゃがいもが収穫されました。
土地が広い北海道では、大型機械の導入や大規模経営によって盛んに栽培がされており、なんと国内のじゃがいもの生産面積のうち8割を北海道の土地が占めているそう。
北海道のなかでも、大空町やニセコ町で作られるじゃがいもは品質が高いことで知られています。過去に噴火した羊蹄山の火山灰が堆積し、水はけの良い土壌になったことで、湿度を嫌うじゃがいもに適した土地になったからといわれています。
次に生産量が多いのは鹿児島県や長崎県。九州でも多くのじゃがいもが栽培され、全国に出荷されています。鹿児島県では、長島町のミネラルを多く含む赤土で栽培されるじゃがいもや、離島の徳之島産のじゃがいもが有名です。長崎県では雲仙市愛野町で栽培される「ロマンスポテト」が有名な品種として挙げられます。
じゃがいもの品種
じゃがいもにはさまざまな品種がありますが、よく耳にする「新じゃがいも」と「早春じゃがいも」は、実は品種名ではありません。
新じゃがいもは春に収穫されてすぐに出荷されるじゃがいものこと。早春じゃがいもは秋に植え付けされて1月〜2月頃に収穫されたじゃがいものことをいいます。
このように出荷される時期によっても呼び方が異なるじゃがいもですが、さまざまな品種により、さらに名称や特徴が異なります。ここでは有名な7つの品種についてご紹介します。
メークイン
「メークイン」はイギリス原産のじゃがいもで、「メイクイーン」といわれることもあります。名前の由来は、ヨーロッパの伝統行事である五月祭の女王「メイ・クイーン」からきています。
煮崩れしにくく、なめらかな舌触りが特徴で、肉じゃがやシチュー、カレーなどの煮込み料理に最適です。メークインは北海道や鹿児島県、長崎県などの主産地をはじめ、千葉県や青森県で主に栽培されています。
男爵薯
じゃがいもの品種として馴染み深い「男爵薯(だんしゃくいも)」。名前から日本の品種に思われますが、もともとはアメリカの「アイリッシュ・コブラー」という品種です。
明治時代後期に川田龍吉男爵が日本に導入したことで「男爵薯」と呼ばれるようになったそう。主に北海道で栽培され、全国の89%が北海道産のものですが、静岡県や茨城県でも栽培されています。ホクホク感が特徴で煮崩れしやすいため、コロッケやポテトサラダに向いている品種です。
インカのめざめ
「インカのめざめ」は、農研機構北海道農業研究センターが育成しているじゃがいもを掛け合わせて作られた品種。じゃがいもの起源地であるインカ帝国と新しさを意味する「めざめ」から名付けられたそうです。
同系統の品種としては「インカのひとみ」や「インカルージュ」などが挙げられますが、最大の特徴は強い甘みとなめらかな舌触り。一般的なじゃがいもの糖度が4〜5℃に対し、インカのめざめは6〜8℃もあるそう。北海道や青森などの東北地方で主に栽培されていますが、中部地方や中国地方など全国各地で栽培されています。
シャドークイーン
黒っぽい紫色の皮と、鮮やかな紫色をした中身が特徴的な「シャドークイーン」。2006年に北海道で開発されたじゃがいもの品種です。
味は普通のじゃがいもですが、食感はねっとりとしており、ビタミンCが豊富に含まれています。鮮やかな紫色は加熱しても残るので、ポテトサラダやポテトフライなどにすると華やかな見た目を楽しめますよ。北海道で主に生産されていますが、鹿児島県など全国各地で生産されています。
マチルダ
豊作の女神である「Matilda」から名付けられた「マチルダ」は、スウェーデンで誕生し、「幻のじゃがいも」といわれている品種です。希少品種であり、基本的に北海道でしか流通していないため「幻の品種」といわれています。
見た目はキウイフルーツのような楕円形で、表面がザラザラしているのが特徴。小ぶりサイズのじゃがいもで、食感はほくほくしながらも少しの粘り気と口の中でとけるような滑らかさがあります。煮崩れしにくいため煮込み料理と相性がよい品種ですよ。
とうや
北海道農業試験場で育成され、1995年に品種登録されたじゃがいもである「とうや」。名前は北海道にある洞爺湖(とうやこ)が由来とされています。
見た目は丸く芽が浅いのが特徴で、中は淡い黄色です。煮崩れしにくく味わいはクセがないため、煮物などにするのがおすすめの食べ方です。とうやは北海道の奨励品種の一つとなっているため、北海道全域で栽培されており、特に道南で多く作られています。
果肉が黄色く、気品のある味わいであることから、「黄爵(とうや)」として出荷されることもあるそうですよ。
キタムラサキ
「キタムラサキ」は、皮は濃い目の紫、中身は鮮やかな紫色が特徴の品種です。北海道の「北」と特徴的な紫色からキタムラサキと名付けられました。
この紫色は抗酸化力が強いアントシアニンという色素によるもので、水に溶けやすいため、茹でることで色が落ちて薄くなったり青っぽい色になったりします。ただ、煮崩れが少ないため煮物などで美味しく食べられますよ。
主に北海道で栽培されていますが、ほかのじゃがいもに比べると生産量は少なめです。
じゃがいもと馬鈴薯の違いって?
馬鈴薯(ばれいしょ)とは名前のとおり、馬の首につける鈴に似ていることから名付けられたといわれています。
中国では、馬鈴薯といえばホドイモという植物を指しますが、日本では江戸時代後期に小野蘭山という学者が「馬鈴薯はじゃがいものことである」と解説したのがきっかけで、馬鈴薯とじゃがいもは一緒とされています。そのため、じゃがいもと同じく馬鈴薯も秋の季語としてされているのです。
そんな馬鈴薯で有名なのは、きれいな卵型が特徴の静岡県の三方原馬鈴薯。他にも関西地方の広島県安芸津などで栽培される「まる赤じゃがいも」は有名な品種として挙げられます。
じゃがいもの栄養とレシピ
年中美味しく食べることができるじゃがいも。品種によっては栄養素のバランスも若干異なりますが、じゃがいもにはどのような栄養があるかご存じでしょうか。
また、年間通して手に入れやすいじゃがいもを美味しく食べることができるおすすめのレシピも紹介します。ぜひ実践してみてくださいね。
じゃがいもの栄養
実は、じゃがいもにはビタミンやミネラル、食物繊維など健康に欠かせないさまざまな栄養素が含まれています。
ビタミンCはみかんと同じ程度含まれているといわれており、2〜3個たべれば一日に必要な量を摂ることができます。また、デンプンがビタミンCを保護しているため、調理で火を通しても減りにくいのもうれしいポイントです。
また、塩分を体から排出し、高血圧を予防できるカリウムも多く含まれています。高カロリーに思われがちなじゃがいもですが、実は同じ量で比較するとごはんの半分ほどしかないのです。比較的ヘルシーで栄養満点なじゃがいもを、ぜひ積極的にとってみてくださいね。
じゃがいもの絶品レシピ3選
焼く、煮る、揚げる、蒸すなど、さまざまな調理ができるじゃがいも。また、じゃがいもの皮には鉄分や食物繊維などが豊富なため、皮ごと調理するといいですよ。
そんなじゃがいもの栄養を存分に生かしたまま味わえるレシピを紹介します。ぜひ、お気に入りのレシピを見つけてくださいね。
わんたるさんのアイデア
じゃがいもとベーコンのガーリック味噌炒め
材料 : 新じゃが / ベーコン(ブロック) / にんにく / みりん / 味噌 / 油
香ばしいガーリックの香りが漂う、じゃがいもとベーコンのガーリック味噌炒め。じゃがいものほくほくとした食感と、ベーコンの旨みが口いっぱいに広がります。ガーリックのパンチと味噌のコクが絶妙に絡み合い、ご飯やお酒のお供として満足感のある一品です。
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桃咲マルクさんのアイデア
明太チーズのポテトサラダ
材料 : じゃがいも / 玉ねぎ / クリームチーズ / ★すし酢 / ★砂糖 / ★塩 / ★オリーブオイル / 明太マヨネーズ / 大葉 / 12切り海苔
大人気の明太子とクリームチーズの相性がよい明太チーズのポテトサラダ。ほくほくのじゃがいもと、クリームチーズの絶妙なコンビネーションが口の中で広がります。パーティーやお弁当のおかずとしてもおすすめの一品です。
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青山金魚さんのアイデア
たことじゃがいもとアスパラのカシューナッツ炒め
材料 : たこ(蒸し) / じゃがいも / アスパラ / カシューナッツ / 桜エビ(乾燥) / オイスターソース / 白ワイン / ガーリックパウダー / 油、ごま油 / 香辣油
プリプリのたこ、ほくほくのじゃがいも、シャキシャキのアスパラが、香ばしいカシューナッツと絶妙に絡み合った一品。炒めることで素材の旨みが引き出され、香り高い一品に仕上がります。見た目の彩りも美しく、食卓を華やかに演出することでしょう。さまざまな触感を楽しめる、ごはんのおかずやお酒のおつまみとして最適な料理です。
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じゃがいもの保存方法
湿気が苦手なじゃがいもは、風通しが良い冷暗所で保存するのが基本です。じゃがいもを一つずつ新聞紙にくるんでからダンボールなどに入れて、涼しい室内においておくと、2〜3ヶ月ほどは美味しく食べることができます。
ただし、夏場などは湿気が増えたり気温が上がったりするため、同じようにくるんだあとに野菜室で保存するのがおすすめ。ただし、温度が低すぎる冷蔵庫での保存はでんぷん質が糖化してしまい風味が損なわれてしまいます。
そのため、冷蔵庫での保存期間は1ヶ月、冷凍保存する場合は2週間ほどと覚えておいてくださいね。
そして、ここでひとつ注意点です。
冷蔵庫で低温保存すると、じゃがいものでんぷん質が糖化すると先述しましたが、その糖化したじゃがいもを120℃以上の温度で高温調理(揚げる・炒める・焼くなど)すると、アクリルアミドという有害物質が発生すると言われています。
じゃがいもを冷蔵保存した場合は、アクリルアミドが発生しにくい煮物や蒸し物などの水を使った調理や、120℃以上の高温にならない方法でじゃがいもを食べるのがおすすめです。
まとめ
年間通してスーパーで手に入れることができるじゃがいも。品種の多さや豊富な栄養素に驚いた方も多いのではないでしょうか。栄養も豊富なうえにさまざまな調理方法があるじゃがいもは、食卓に取り入れやすい野菜です。それぞれの品種によって味わいも変わってきますので、食べ比べてみるのもおすすめです。
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