マイホームは数千万円という大きな買い物。人気のエリアや価格相場は、気になるポイントのひとつです。
とくに注文住宅の場合、こだわればこだわるほど価格はどうしても高くなる傾向にあります。
価格相場を把握し、ひとつの目安にしましょう。
今回は、東京都に注文住宅を建てることを想定して、お金の問題をシビアに検証!
不動産コンサルタントでさくら事務所創業者会長の長嶋修さんにじっくりお話を伺います。
東京都の土地付き注文住宅の購入費用は全国トップ
東京都における注文住宅の相場を知る足がかりとして、住宅金融支援機構が発表している「フラット35利用者調査2017年度」を見てみましょう。
これによると、東京都で土地付き注文住宅を購入した人の平均所要資金は、5,592万円。
ダントツの全国1位です。
全国平均の4,039万円から見ても、東京の相場は高い、ということがひしひしと感じられます。
続いて土地の購入代金を除いた平均建設費を見てみましょう。
こちらもやはり全国トップは東京都で3,936万円。
全国平均は3,356万円です。
土地付き注文住宅ほどの大きな差はないことから、東京都での住宅購入費を押し上げる要因は地価の高さにある、ということが浮かび上がります。
ただし、この数字はあくまでも平均。
23区内にしぼっても、地価が上昇しているエリアもあれば、下落を続けているエリアもあります。
どこにどんな建物を建てるか、によって価格は大きく変わります。
「満足できる家をできるだけ安く建てたい」というのは、誰もが願うこと。
「理想のマイホームなら、ちょっとくらい不便でも気にならない」と考える人も少なくないかもしれません。
けれど、住宅は「生活の場」であるとともに、「金融商品」でもあります。「安いから」という理由で家を買ってしまうと、ほとんど無価値にまで資産価値が暴落する可能性があるだけでなく、周囲に空き家が増える、治安が悪化するなど、住み心地まで損なわれてしまう恐れもあります。
東京においても、不動産の三極化が進んでいる
これまで、住宅を始めとした不動産取り巻く状況は、都市部と郊外部の2極化が進んでいる、という捉え方をされてきました。
しかし、最近ではさらに状況が変わっています。
都市部でさえも、勝ち組エリアと負け組エリアがわかれてきて、3極化の様相を呈してきたのです。
3極化の内訳を見てみると…
①10〜15%の物件は、価値を維持する、または価値が上がります。
②70%の物件は、価値がなだらかに減少します。
③15〜20%の物件は、限りなく無価値、あるいはマイナス資産となって廃墟化します。
価値が維持できる、または上昇するような住宅を購入できればベストですし、
②や③の物件を購入するならば、その将来像を分かった上で判断することが大切でしょう。
三極化が進む一番の要因は、少子高齢化によって人口が減ることです。
人口が増加していた時代は、住まいが足りずに、どんどん家が売れました。
きちんとした都市計画がないままに市街地が拡大していったのです。
しかし、ひとたび人口が減り出すと、人々は利便性の高い駅の近くや、生活がしやすい商店街の近くなどに住むようになります。
都心部であっても、駅近物件と、駅から徒歩7〜8分以上かかる物件との格差が開きつつあります。
駅までバスを利用しなければならないような郊外のベッドタウンにおいては、この傾向はさらに顕著に。
住民の高齢化とともに一気に過疎化するところも少なくありません。
東京の勝ち組エリアは、都心5区!
こうした三極化の傾向を踏まえ、都心を見てみると、今後も価値が落ちないのは超都心部に絞られます。
具体的に言うと、千代田区、中央区、港区の3区、これに渋谷区、新宿区を加えた都心5区は、人口が減少するなかでもブランド力をキープ。「立地のいい場所にマイホームを建てたい」という需要は高まり続けるでしょう。
品川・目黒区を含んだ7区くらいでも大丈夫かもしれません。
資産価値を維持しようと思うなら、高額でも「駅の近く」、あるいは「多少駅から遠くても学校や病院、子育て施設、介護施設などが近くにある」「買い物がしやすい」など、生活利便性の高いエリアを購入するほうが安全と言えます。
「人気のエリアだから」「高級住宅街だから安心」と考えてしまうのも危険。
成城や田園調布といった高級住宅街のブランド力も、これからは徐々に低下していくと予想されます。
現在は、駅から徒歩20〜30分以上離れたところまで住宅地が広がっていますが、今後は駅前以外の地価はゆるやかに下がっていくでしょう。
車を持たない人も増えている昨今、駅から遠い不動産でも価値が維持された時代はとっくに終わったのです。
そうはいっても、誰もが都心に家を買えるわけではありません。
また、都心5区以外にも、独自の取り組みで人口を増やし、魅力ある街づくりを進めているエリアもあります。
従来型の物差しではなく、“不動産3極化時代”に対応する選択眼を持つことが、賢くマイホームを購入するための大切なポイントです。
購入前に必ず自治体の都市計画をチェックしよう
人口減少時代に対応するため、多くの地域が“街を縮める”政策を進めています。
1741の自治体のうち、約400の自治体が推進する「立地適正化計画」です。
区域全体に住宅が広がっている状態では、自治体はほとんど利用者がいないところまで交通網を整備し、学校をつくり、病院を誘致し、インフラ整備のために多額の税金を投入しなければなりませんでした。
しかし、人口が減少して財源が不足するようになれば、区域全体にまんべんなく予算を配分するほどの体力はありません。そこで持ち上がってきたのが、立地適正化計画です。
上のイメージ図のように、現在、黄色のエリアまで広がっている市街地を、将来的には水色のエリアまで縮めていこう、という構想です。
赤いエリアには、駅や役所、子育て施設、介護施設、商店街など、都市機能を集約する場所。
水色のエリアは、居住地域です。
対象外となった地域にももちろん住むことはできますが、将来的には開発にも整備にも力を注いでもらえないため、住み心地はだんだんと悪化していくでしょう。
バスが来なくなる。商店が立ち退く。住民がどんどん減って空き家が増える。ゴミの回収すらなくなって、エリア内の回収場所まで持っていかなければならなくなるかもしれません。
こうなれば、利便性が極端に下がるだけでなく、不動産としての価値も暴落してしまいます。
家を買うときには、自治体の「立地適正化計画」がどのように考えられているか、必ずチェックするようにしましょう。各自治体のホームページ、国土交通省のサイトで確認することができます。
「立地適正化計画」をまだ発表していない自治体で住宅の購入を検討している場合は、やはり駅に近い便利なエリア、病院や学校、商店などが集まっているエリアで探すのが安全です。
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見直される「自治体選び」の観点
「立地適正化計画」の対象エリア内に購入することと合わせ、自治体そのものも吟味することの重要性も見直されています。
不動産選びのポイントとして、これまでは都心部に近い、駅から徒歩圏内など、利便性の高い場所にニーズが集中することをお話ししてきました。
これに加え、最近の不動産選びでは、どんな政策を進めている自治体か、という観点も重視されるようになっているのです。
例えば千葉県の流山市は、子育てに優しい政策をとっていることで有名です。
子育て世代が集まることで、人口が増加し、税収がアップ。
10年前には350億円規模だった流山市の予算は、今や550億円に拡大しています。
豊かになれば、さらに行政サービスを手厚くでき、いっそう子育て世代を呼び込むことになる。
人が増えれば、需要と供給のバランスで決定される不動産価格もおのずと上がります。
対して、流山市の隣の埼玉県三郷市は、こうした対策を打ち出せていません。
現在のところ、流山市と三郷市の不動産価格水準は同じです。
しかし、10年後には確実に格差が開いてくるでしょうし、受けられる行政サービスにも差が生まれてくるはずです。
勝ち組となる自治体か、手をこまねいて負け組に陥落する自治体か、自治体選びによって住宅の資産価値も、住む人の満足感にも開きが出てくる時代に突入した、と言えるでしょう。
帰りたくなる街、人が集まるユニークな取り組みをしている街、その街にしかないおもしろさがある街、こうした場所は人口減少時代にも人集め、それによって不動産の価値も下がりにくくなります。
反対に特徴のない街の不動産は、価格暴落予備軍となり、将来はマイナス資産となってしまうかもしれません。
ホームインスペクションで、注文住宅の品質をチェック!
ここまで立地の見極め方について詳しくお話ししてきました。
最後に、注文住宅を建てるときのポイントについて、考えてみましょう。
まずはメーカー選びです。
大手ハウスメーカーか、あるいはパワービルダーか、建築家と工務店に依頼するか、という3通りの方法があります。
パワービルダーとは、ローコストで住宅を提供する中小規模のハウスメーカーのこと。
有名なところではタマホームや飯田産業グループ、オープンハウス、などが挙げられます。
コストを抑えたいなら、断然パワービルダーがリード。
かつては「安かろう悪かろう」の印象もありましたが、最近では大手メーカーの物件と比較しても、品質に大差がない場合がほとんどです。
3つの依頼方法、どれを選ぶにしても、大事なのは設計通りの品質できちんと施工してもらうことです。
おすすめは、第三者によるホームインスペクション(住宅診断)を入れること。
意外に思われるかもしれませんが、大手ハウスメーカーでも鉄筋が足りない、本来必要な断熱材が入れ忘れられていた、などのミスは珍しくないのです。
有名メーカーだから、評判の工務店だからと手放しに信用せず、欠陥がないか、建物のチェックを十分に行っておきましょう。
また、これまで再三お伝えしてきた「資産価値が下がりづらい住宅」という観点で考えるなら、特殊すぎる間取り、デザインは避けたほうが無難です。
個性が強すぎると、市場に受け入れられない可能性が高いからです。
さらに、おしゃれでかっこいい外観を重視するあまり、建物としての構造をおろそかにしないように意識したいものです。
たとえば、最近は軒のないフラットな外観の住宅も増えていますが、こうした形状は外壁が雨をダイレクトに受け止めることになり、雨漏りのリスクが高まります。
雨風にさらされる分、外壁の劣化も早く、修繕費も高くつきます。
これから注文住宅を建てるのであれば、美しさ、デザインとともに大切なポイントとして、メンテナンス性の高さを要望として伝えましょう。
コンクリート打ちっ放しなど、省エネ性が悪い材質で家を建てることはあまりおすすめできません。
省エネ効率が悪い住宅は時代に逆行しています。
建築から解体まで、長い目で住宅にかかる費用を考えれば、当初の建築費が多少コスト高になっても、省エネ性能が高い住宅を建てたほうがお得です。
まとめ
住宅を建てる際のポイントは、なんといっても立地。
家族が長い時間を過ごす住まいであるとともに、金融資産でもあるという視点を持って慎重に検討することが大切です。
これまで人気だったエリアだからといって、今後もずっと人気が続くとは言えません。
数千万円の大きな買い物をするのですから、自治体の都市計画まで含めて比較検討する姿勢が必要ですね。
また、住宅の建築においても、見た目の満足度だけでなく、長く価値を維持できるか、省エネ効率がよく住み心地がよいか、といった視点も忘れないようにしたいもの。
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記事監修者
さくら事務所創業者会長
長嶋 修さん
不動産コンサルタント。1999年に業界初の個人向けの不動産コンサルティング、ホームインスペクション(住宅診断)を行う株式会社さくら事務所を創業。業界の第一人者として、テレビ出演、セミナー、講演等で不動産購入のノウハウを発信するほか、政策提言なども精力的に行う。『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)、『100年マンション』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
https://www.sakurajimusyo.com/
取材・文/浦上藍子
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