【Mさん宅(東京都)】
キッチンを壁づけにしたことで、大きなテーブルを置くゆとりが生まれました。親子でお絵描きをしたり、一緒に料理したりできます。
ご夫妻と長女のRちゃん(3歳)、長男のNくん(1歳)、ご主人のお母さまの5人暮らし。「土地探し中に下の子がおなかにいるとわかって、ここでは狭いかな?と心配でしたが、プランの工夫で解決できました!」
リビングとDKはフロアが違っても ワンルーム。その安心感がうれしい
Mさんが購入した土地は、都市部でよく見かける細長い狭小地。ここにお母さまを含めた家族5人が快適に暮らせる家をつくろうと、女性建築家・小針美玲さんの主宰する「KURASU」に家づくりを依頼しました。おおまかな要望とともに約2000万円という予算を伝えると、最初は「難しいですね」という返事が。「でもいろいろお話ししていくうちに、やってみましょう!と受け入れてくださって。女性同士なので話しやすく、プランから設備選びに至るまで何でも相談できました」と奥さま。
採用したのはスキップフロアのプラン。平面図を見ると3階建てですが、その中に半地下からロフトまで6.5層のフロアを積み重ねています。それぞれをつないでいるのは、5段ほどの短い階段。この階段が、限られた面積に広がりをもたらし、暮らしにも豊かな変化を与えています。「リビングとDKをつなぐ階段は、ベンチがわりに腰かけたり、子どもたちが上と下に分かれてボール遊びをしたり。目線の高さが違うと気分が変わりますし、普通のフラットなLDKより広く感じられるみたい。段差はあっても空間そのものはつながっているので、家族に目が届きやすいのも理想的です」
細長い建物であること、半地下のフロアをつくったことなどで、構造や基礎工事に通常よりコストがかかったというMさん宅。その分、内装や設備選びなど、安全性に影響のない部分でコストを抑えました。たとえば壁を左官仕上げではなくクロス張りにしたり、3階の個室の床を合板フローリングにしたり。ドアや玄関収納、浴室などには手頃な既製品をとり入れました。「一方でこだわりたい部分には予算を割いて、1階、2階の床は無垢材に。キッチンカウンターは厚みのあるステンレス製で、水返しのついていないフラットなデザインを選びました。小さなことですが、おかげで毎日の生活や家事が気持ちよくできます」
Mさん宅の "コストダウンポイント"
- スキップフロアでエリアを分け、 間仕切り壁やドアの数を最小限に
- 浴室や建具、収納部材は既製品を採用。 デザインを選べば満足度は十分!
- 床などの内装材は自然素材と既製品の 両方をとり入れ、メリハリをつけて
2F LDK
【ココが暮らしやすい!】階段をとり込んだむだのないプランで開放感たっぷりに
リビングとDKの間は幅を広めにとった階段。フラットなワンルームより変化がつきました。階段は遊び場やベンチとしても大活躍。
2F DK
【写真左】DKの階下はリビング、階上は子ども部屋。視線が奥にのびることで実際より広く感じられます。ドアがないのでコストダウンにも。
【写真右】左手のシェルフは、アイアンのフレームに床材の残りを組み合わせて製作。飾り棚にはデザインのいいお茶アイテムを並べて。
短い階段は、ゾーニングだけでなく、「リビングとDK、どちらにいても家族が何をしているのかがわかっていいですね」。
【ココが暮らしやすい!】デッドスペースを有効利用してデスクコーナーに
【写真左】階段まわりに生まれた小さな空間を有効利用。棚や扉つきの収納も設けて、文具などのこまごましたものをしまっています。
【ココが暮らしやすい!】家事をしながら自然に子どもに目が届く小さな“余白スペース”
【写真右】ダイニングの面積にゆとりをもたせて、一角を小さな子どもコーナーに。半階上がった先は、子ども部屋のフロア。
2F キッチン
【写真左】LDKの床は無垢のナラ材。「ちょっと古材っぽい表情にひかれて、あえて節のあるタイプを選びました」
【写真右】木目の面材がナチュラルな印象の「ウッドワン」のキッチン。ワークトップはステンレス、壁は白いタイルと、こだわりを反映させて
2F リビング
【ココが暮らしやすい!】DKとは独立させてくつろぎ感を高めたリビング
家事をするDKとエリアを分け、ソファまわりを壁で囲んだことで落ち着ける雰囲気に。掃き出し窓の先には小さなバルコニーが。
【ココが暮らしやすい!】隣家からの視線が気にならないよう横長のスリット窓に
天井近くに横長の窓を設けたおかげで、家具や飾り棚のレイアウトもラクラク。テレビは壁づけにしてすっきりと。
【写真左】お気に入りのキャンドル&ルームフレグランス♪
【写真右】ソファ脇の袖壁をくりぬき、リモコン用のニッチをつくりました。すぐ手にとれて、見た目もすっきり!
3F 寝室
北側斜線に合わせて天井と壁が斜めになりましたが、かえってペントハウス風の開放的な空間に。天窓から光もたっぷり入ります。
3F 廊下
【ココが暮らしやすい!】気兼ねなく使える子世帯専用の洗面コーナー
【写真左】子ども部屋と寝室をつなぐ階段と廊下。左右にクローゼットを設けて、家族みんなの衣類を収納しています。
【写真右】廊下の中ほどに設けた洗面コーナー。1階のサニタリーはお母さまと共用なので、混雑防止に役立ち、移動の手間も省けます。
3F 子ども部屋
部屋の中央に2段ベッドを造りつけて。耐力壁がどうしてもこの位置にきてしまうため、それを逆手にとった一石二鳥のアイディア。子ども部屋の入り口は2つあり、どちらから入ってもベッドのまわりをぐるりと一周できます。
B1F ホール
【ココが暮らしやすい!】玄関や水回りに近く上り下りの少ない場所にお母さまの部屋を
1階の南側を半地下レベルまで掘り下げ、お母さまの部屋をレイアウト。このレベル差をスキップフロアに生かしました。
1F 浴室
コストダウンと掃除のしやすさを考えて、ユニットバスを採用。「パナソニック」の1坪タイプからシンプルなデザインを選びました。
1F サニタリー
洗面脱衣室とトイレをまとめて。木のカウンターからぬくもりが伝わります。洗面ボウルは「INAX」、鏡は「サンワカンパニー」。
ロフト
【ココが暮らしやすい!】季節ものなどをたっぷりしまえる納戸がわりのロフト
子ども部屋の上に小屋裏収納をプラン。ホットカーペットやおひなさまなど頻繁に使わない大きなものは、まとめてここに収納。
1F 玄関/玄関ホール
【写真左】靴箱は「サンワカンパニー」の「ゲタボックス」。白を選び、床との間をあけたことで圧迫感を抑えました。カウンターは飾り棚として活用。
【写真右】正面の半階分の階段を上るとリビングが。ドアをあけたときの目線を考慮して、階段上にニッチを設け、さりげなく飾れる場に。
外観
外から見ると細長い3階建て。この中に6.5層のフロアが詰まっているとは想像もつきません。外壁はローコストなガルバリウム鋼板。
教えて! Mさん宅の資金計画
自己資金について
母と姉が実家(マンション)に二人で暮らしていたのですが、姉の結婚を機に実家を売却して、母と自分たち家族が同居できる2世帯住宅を新築することに。住宅資金は特に準備はしていなかったのですが、実家の売却益で残債を支払って、残った分を新築の頭金にしました。
住宅ローンについて
中央三井信託銀行(当時)の変動金利型のローンを35年で契約。月々の返済額は無理のない範囲にして、繰り上げ返済をしながら早めに完済したいと考えています。ローンについてはほとんど下調べをしなかったのですが、不動産関係に勤める知人が、いい相談相手に。
【施主のつぶやき】
いっぱいいっぱいの額を融資してもらったので、あれこれローンを選ぶ余地がなかったのが実情です(笑)。
DATA. Mさん宅(東京都)
設計のPOINT
Mさん宅のプランは、1階の一部を半地下のレベルまで掘り下げ、そこで生まれた段差をスキップフロアとして生かすというもの。地下を掘り込むと通常より基礎工事にコストがかかりますが、家族5人がのびのび暮らすためには有効なプランと考えました。狙いどおり、フロアごとの用途は分かれていながら空間自体はつながっていて、家族のコミュニケーションをはかりやすい住まいになったと思います。
KURASU 小針 美玲さん
1973年栃木県生まれ。中央工学校女子建築設計科卒業後、ゼネコン数社の現場監督として13年勤務。2006年に㈱KURASUを設立。2005年から中央工学校女子建築設計科の非常勤講師も務める。
家族構成 |
夫婦+子ども2人+母親 |
敷地面積 |
63.16㎡(19.11坪) |
建築面積 |
37.68㎡(11.40坪) |
延べ床面積 |
97.20㎡(29.40坪) 1F 30.43㎡ + 2F 33.33㎡ + 3F33.44㎡ (ロフト9.44㎡は除く) |
構造・工法 |
木造3階建て(軸組み工法) |
工期 |
2011年12月〜2012年5月 |
本体工事費 |
1940万円 |
3.3㎡単価 |
約66万円 |
設計・施工 |
㈱KURASU(小針 美玲) TEL: 03-5726-1105 |
★おしゃれな注文住宅を建てたい方はこちら
★注文住宅のカタログを取り寄せたい方はこちら
狭小住宅の関連記事
2017.06.13作業する時間が長く、収納したいものも多い場所は、何といってもキッチン。狭小住宅でも使いやすて、ストレスの少ないキッチンを目指したいですよね。そのためには、コンパクトで無駄のないレイアウトや収納計画が必須です。基本的なテクニ...続きを見る
2017.06.10都市部での便利な暮らしを望むファミリーにとって、ネックになりやすいのはやっぱり「土地の狭さ」。まずは、小さくても快適で暮らしやすい間取りづくりについて、実例をまじえながらご紹介しましょう。目次開く狭小住宅とは?狭小住宅の間...続きを見る
2017.06.19広々としたリビングに、高い天井。ゆとりのある寝室や書斎、そしてひとりひとりに与えられた子ども部屋……。住まいへの理想は尽きませんが、現実の暮らしには限られた広さや予算など、条件はつきもの。狭小住宅を、楽しく居心地良い暮らし...続きを見る
2017.06.15小さな敷地でも広い生活スペースを確保できると人気の3階建て。3 つのフロアをどう活用するかによって、ライフスタイルにも大きな影響が出てきます。ここでは3階建ての暮らしについて、デメリットも含めて考えてみましょう。3階建て住...続きを見る
2017.06.20敷地面積にあまり余裕がない場合に、近頃注目を集めている間取りプランのひとつ“スキップフロア”。耳にしたことがあるでしょうか? ここではスキップフロアとはどういうプランなのか、そしてスキップフロアを採用した場合のメリットとデ...続きを見る
2017.06.232階建てや3階建てには絶対に必要なのに、意外と面積をとってしまうのが階段。ただでさえ敷地面積の小さい狭小住宅では、省スペースで使いやすい階段をプランしたいもの。ここでは特に狭小住宅の階段について、実例を見ながら考えてみまし...続きを見る
2017.06.26「家って最低限どのくらいの広さがあれば生活できるの? 」という素朴な疑問。みなさんも考えたことがあるのでは?狭小住宅が歩んできた過程を見てみると、この問題にチャレンジしてきた先輩たちが次々に登場します。なかにはなんと建坪(...続きを見る
コメント
全て既読にする
コメントがあるとここに表示されます