都市部での便利な暮らしを望むファミリーにとって、ネックになりやすいのはやっぱり「土地の狭さ」。まずは、小さくても快適で暮らしやすい間取りづくりについて、実例をまじえながらご紹介しましょう。
狭小住宅とは?
10~20坪ほどの敷地に建てた、延べ床面積30坪以下の家というのが、一般的な狭小住宅のイメージです。ほとんどが都市部に集中していますが、最近はもともと大きかった敷地を分割して売り出されることも多く、郊外でも小さな敷地が増えてきました。
こうした敷地の周囲は、隣家とのすき間が少ない住宅密集地になりがち。つまり狭小住宅では、生活スペースの狭さだけでなく、日当たりや風通し、プライバシー対策なども課題になります。
とはいえ、小さな敷地は価格も安く、駅から近いなど利便性の高いエリアに住みたい人にはやっぱり人気。
狭さや日当たりなどの問題はプランの工夫で乗り越えて、便利さと快適さを両立させているケースもたくさんあります。
成功した狭小住宅の例を実際に見ていきましょう。
狭小住宅の間取り・レイアウト成功実例①
狭小&密集のダブルハンデも、中庭効果で明るく快適な住まいに!
東京都・石橋さん宅の間取り図
ご家庭プロフィール
家族構成 夫婦+子ども2 人
敷地面積 66.07 ㎡(19.99坪)
建築面積 38.54 ㎡(11.66坪)
延べ床面積 75.08 ㎡(22.71坪)
1F37.54 ㎡+2F37.54 ㎡( ロフトを除く )
構造・工法 木造2 階建て( 軸組み工法 )
設計 瀬野和広+設計アトリエ( 瀬野和広 )
www.senonose.com/
「夫婦2 人とも東京生まれの東京育ちなので、交通の便のいい都心で土地を探しました。その分、小さい家にも慣れていて、便利さを優先させたら狭いのは仕方ないと割り切っていました。購入したのは、路地の突き当たりにある20坪の敷地。3 方を建物に囲まれている厳しい条件だったので、家づくりのパートナーには建築家さんを選びました」
外観の間取り・レイアウト
敷地はほぼ正方形のきれいな形ですが、狭い路地の奥にあたり、周囲を隣家に囲まれています。
中庭の間取り・レイアウト
プランの最大の特徴は、壁で囲んだ中庭を設けたこと。1 階も2 階もこの中庭に面して窓をあけたことで、日当たりと風通しの問題をクリアしました。
風がよく通るよう、中庭を囲む壁の一部はルーバー状に。繁華街に近い立地ということで防犯面にも配慮し、門扉には電子錠をとりつけました。
リビングの間取り・レイアウト
2 階のリビングから中庭を見たところ。周囲の家からの視線はカットしつつ、白い壁に反射した明るい光を室内に取り入れています。
LDK は合わせて13畳ほど。くつろぎの場として、圧迫感のない低めのソファ+座卓を使っています。キッチンとの間は、造りつけの収納で間仕切り。日用品のほか、子どもの着替えもしまっています。
キッチンの間取り・レイアウト
キッチンは壁づけのI 型。もっともコンパクトで、狭小住宅に向くスタイルとされています。吊り戸棚をプラスして収納量をアップ。
サニタリーの間取り・レイアウト
リビングの引き戸をあけると、すぐにサニタリーへ入れるプラン。廊下がない分だけスペースの無駄がなく、家事や子どもの世話もしやすいそう。
洗面室とトイレは仕切らず、ワンルームに。これも狭さ解消の工夫です。左のドアの中はバスルーム。
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狭小住宅の間取り・レイアウト成功実例②
「開口部」と「間仕切り」!オープンにして狭小住宅でも開放感たっぷり!
Tさん宅( 東京都 )宅の間取り図
ご家庭プロフィール
家族構成 夫婦+子ども1 人
敷地面積 56.32 ㎡(17.04坪)
建築面積 33.20 ㎡(10.04坪)
延べ床面積 65.82 ㎡(19.91坪)
1F32.91 ㎡+2F32.91 ㎡
構造・工法 木造2 階建て( 軸組み工法 )
設計 アルクデザイン( 増田政一 )
www.arc-masuda.co.jp/
「家づくりを思い立ってから、半年かけて見つけた土地は17坪。住宅密集地で日当たりにも問題ありそうでした。でも、相談していた建築家さんの手がけた実例の中に、同じような敷地条件のお宅があり、見学させてもらったら、とても明るくて広々。それがすごく気に入って、迷わずこの土地を購入することにしたんです」
外観の間取り・レイアウト
両隣にぎりぎりまで建物が迫っている立地。1 ・2 階とも、南にあたる道路側に大きな開口部をつくり、そこから光をとり入れることにしました。
玄関の間取り・レイアウト
玄関前のアプローチ。道路との間を木製の引き戸で仕切ったうえで、一角にグリーンを植えました。
玄関ドアの左右を、天井までいっぱいのガラス張りに。外のアプローチを見通せるため開放感があり、光もたっぷりと入ります。
玄関ホールと浴室の間を、なんとガラスで間仕切り。壁で仕切るより空間が広く感じられ、入浴中の開放感も抜群だそう。
玄関ホールからそのまま続く、1 階のフリースペース。間仕切り壁をできるだけ少なくして空間をつなげたことで、実際の面積以上の広がりが感じられます。
LDの間取り・レイアウト
1 階の玄関と同じく、2 階のLDにも、道路側に大きな開口部が。くつろぎの場に明るさと開放感をもたらしています。
LDの外のバルコニー。隣家との間にステンレスのワイヤーを張り、ゴーヤのつるを這わせて、目隠しを兼ねた緑のフェンスに。
キッチンの間取り・レイアウト
キッチンカウンターとダイニングテーブルを一列に配したレイアウト。コンパクトなうえ、横に移動するだけで配膳や片づけができるメリットも。
階段を上がると、キッチンを通り抜けてLDに向かう間取り。キッチンに廊下の役割も持たせることで、限られた面積を賢く使っています。
快適な狭小住宅の間取り図・プランの考え方・コツ
2 軒の実例の中にもヒントが隠れていましたが、ずばり「暮らしやすい狭小住宅を建てるには、どんなポイントがあるの? 」でしょうか。狭小住宅の間取りを考えるときに役立つ基本的なテクニックをまとめました。
間仕切りの少ないオープンプランで、狭さを感じさせない
部屋ごとにこまかく仕切らず、空間同士をなるべくつなげる。冷暖房効果が心配なら引き戸をつけておき、必要なときだけ仕切れるようにする。洗面室などの狭い空間では、間仕切りにガラスをとり入れると、視覚的な広がりが感じられる。
廊下や玄関ホールを省いて、スペースを有効利用
移動するだけの廊下をなくし、LDと洗面室などを直結させたり、独立した玄関ホールをつくらず、たたきから居室にそのまま上がれるようにして、無駄なスペースを作らない。反対に、あえて廊下の幅を広げ、そこにほかの機能( 趣味スペースやライブラリー、キッチンなど )を兼ねさせる手もあり。
視線を外に抜いて、広がりを感じさせる
窓から戸外へと視線が抜けると、実際の部屋の面積よりも広く感じられる。窓をとる位置は、周囲の建物と建物のすき間を狙い、なるべく遠くに視線が届くようにする。隣家の庭に樹木が植えてあれば、それを借景するのも手。
住宅密集地ではプライバシーにも配慮を
隣家の窓と鉢合わせしてしまう場所では、ハイサイドライト(壁面の天井近くにつける窓)や地窓(壁面の床ぎりぎりにつける窓)から視線を抜いたり、フェンスなどで囲んだ中庭をつくり、そこに向けて窓をとる方法も。
スキップフロアにする
「スキップフロア」とは、半階ずつ床の高さをずらす建て方。普通の2 階建て、3 階建てよりも生活空間をふやすことができる。
引き戸を多用する
手前や奥に開閉スペースが必要なドアよりも、左右にスライドさせる引き戸のほうが、省スペースで狭小住宅向き。開けたままにすると空間同士がつながるのも○。各部屋の出入り口のほか、クローゼットや納戸などにもとり入れてみては。
狭小住宅を建てる時におすすめの依頼先とは?
暮らしやすい狭小住宅を建てるためには、敷地条件や周囲の環境に合わせた、きめこまかな設計が必須。そのため依頼先として向いているのは、建築家が主宰する設計事務所や、小回りのきく工務店・ハウスビルダーがおすすめです。
完全自由設計のハウスメーカーもありますが、狭小住宅を依頼できるところは限られています。用意された規格( 企画 )プランの中から選ぶスタイルのメーカーでは、狭小住宅には対応できないケースがほとんど。プラン変更という形で対応してもらえたとしても、高額なオプション費用がかかるため、坪単価はぐっと割高になります。
まとめ
狭小住宅といっても、成功実例を見てみると「暮らしやすそう! 」「気持ちよさそう! 」と感じるのでは? 狭い= 悪条件ととらえず、プランに工夫をこらして、“ 小さくて豊かな暮らし" を楽しんでください。
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この記事のライター:後藤由里子
主婦の友社刊「はじめての家づくり」をはじめ、数々の住宅・生活関連記事を手がけるライター。キャリアは20年、これまでの実例や建築家、ハウスビルダーへの取材件数は300以上に及ぶ。
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