設備機器編
安価な既製品を賢くとり入れる
家は40年50年と住み続けていくものですが、キッチンや洗面台などの水回り設備は、15年ほどでとりかえの時期が訪れます。つまり、建物とは違って「消耗品」という面が。予算が限られているなら、やはり長く使う建物本体に予算をかけ、設備面でコストを抑えるのが賢明です。
最もローコストなのは、普及品のシステムキッチンや洗面化粧台。それでは味けないと思うなら、既製品と造作工事を組み合わせてみては。たとえばキッチンなら、カウンタートップだけ既製品にして、土台部分を大工さんにつくってもらいます。材質や収納のスタイルを自由に選べるのも魅力です。また手頃なユニットバスを採用する場合、浴槽だけはプラスチックより人造大理石を選ぶのがおすすめ。劣化の速度が格段に違い、とりかえの時期を延ばすことができます。(菊地さん)
【M邸 設計/MONO設計工房】
【写真左】パイン材で製作した台に、既製品のカウンター&シンクの組み合わせ。シンク下をオープンにしたのも
コストダウンの工夫。
【写真右】背面収納は造作カウンター + 市販のシェルフ。
施工業者とつきあいのあるメーカーで購入する
使いたいメーカーが決まっていない場合、最も安価に設備機器を入手する方法がこちら。施工業者にはそれぞれつきあいのあるメーカーがあり、まとめて仕入れる独自のルートをもっているため、そのメーカーの製品から選ぶと、かなり割安で購入できます。その中でも、流通している数量の少ないハイグレードなタイプより、流通量の多い普及品のほうが値引き率が高くなります。
また、メーカーによっては戸建て用とマンション・アパート用の製品を販売しており、一般的には後者のほうが安価。ショールームで実際に見てみて、サイズに問題がなく、戸建て用と比べても遜色がなければ、こうした製品を選ぶ手もあります。(宮地さん)
冷暖房設備はスペックにこだわらない
冷暖房設備に限らず、家電の寿命は10〜15年。モデルチェンジのサイクルも早いので、高価でハイスペックな最新モデルより、やや型が古くても手頃なものがおすすめです。
エアコン選びの基準は「どれくらい涼しくしたいか」。暑さをやわらげたい程度であれば、12畳の部屋に6〜8畳用のエアコンで十分、というケースも。新築時は“目安の畳数”が小さいものを設置しておき、必要になったらもう1台追加できるように、ダクト用の穴とコンセントだけ用意しておく手もあります。また床暖房の設置には数十万円〜100万円ほど費用がかかりますが、使う時期は1年のうちの数カ月。そう考えると、ホットカーペットを見直してみてもいいのでは。(宮地さん)
照明器具はシンプルなものでも 十分おしゃれ
照明器具と聞くと、真っ先にシェードのデザインを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、照明の本質は「明かり」、つまり光をもたらすもの。そうとらえると、デコラティブなデザインのものより、裸電球やシンプルなガラスシェードのほうが、光そのものの魅力が強く伝わります。もちろん、こうした照明のほうがずっとローコスト。飽きたときや模様がえをするとき、別の器具へのとりかえも気軽にできます。
また、照明を多くつけすぎないことも、コストを抑えながら明かりを楽しむポイント。照らしたいところをしぼって照らすことで、光に美しいコントラストが生まれ、塗り壁などの素材の表情も引き立ちます。天井づけの照明だけでなく、フロアスタンドなど、タイプの違う光源を加えるのも一案です。(小山さん)
【 I 邸 設計/プランボックス】
本体工事費約1500万円で完成したお宅。テーブル上のペンダントは、ひとつ数百円のモーガルソケットです。シンプルで飾らないデザインが、ナチュラルな空間にぴったり。施主支給するなら 設計&施工業者と相談を
内装材や部材と同じく、設備機器も施主支給すればコストダウンにつながります。特に施工業者が扱っていないメーカーの製品を使いたいときは、建主が直接購入したほうが割安に。ただしトラブルの原因にもなりやすいため、設計者、施工業者との綿密な打ち合わせが肝心。
まず、注文書の「一式」に何が含まれているのかを施工業者とすり合わせ、部品の不足や重複を防ぎましょう。ショールームで見積書をつくってもらい、それを業者に見せて、一式に含まれる内容を伝えるのがおすすめ。品番がわかれば、同じものをネットで探し、より安く購入することもできます。発注したあとは、いつ誰が受けとるのか、誰が検品(届いたものに不備がないか確認すること)するのかを明確に。この一連の工程で工事に遅れが出ないよう、くれぐれも注意を。(宮地さん)
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Adviser
ピーズ・サプライ
井上 徹さん
1996年設立のハウスビルダー「ピーズ・サプライ」
代表。「シンプル&ナチュラル」をコンセプトに、
新築、リフォーム、キッチン設計などを手がける。
MONO設計工房一級建築士事務所
菊地 一幸さん
1962年大分県生まれ。東京工芸大学工学部建築学科
卒業。92年に現事務所を設立。ローコスト住宅を数多く手がけ、神奈川県内の自宅も1000万円台で建築。
プランボックス一級建築士事務所
小山 和子さん
1955年広島県生まれ。女子美術大学芸術学部卒業。87年に小山一級建築士事務所、95年に一級建築士の湧井辰夫さんと共同で現事務所を設立。
宮地亘設計事務所
宮地 亘さん
1970年千葉県生まれ。工学院大学工学部建築学科卒業。高橋克彦建築事務所を経て2001年に独立。同年、
オフィス兼自宅を千葉市内に建てる。HP「おうちや」
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