プランニング編
床面積をしぼるのが いちばんローコスト
プラン面でのコストダウンで最も効果的なのは、床面積を減らすこと。コストのかかる基礎や外壁、屋根などがすべて小さくなるため、これだけで一気に予算にゆとりが生まれます。家づくりではつい「敷地ギリギリまで家を建てないともったいない」「4人家族だから30坪は必要」などと思い込みがちですが、実際には25坪にしても、プランを工夫すれば狭さや不便を感じることはほとんどないはず。敷地が余っても「もったいない」と思わず、「いずれ増築できるゆとり」と考えてみては。(井上さん)
家づくりで大きなウエイトを占めるのが人件費。仕様にもよりますが、一般的に大工さんの工賃は1坪ごとに計算されるため、建物の床面積をしぼればそれだけ人件費を抑えられます。そのためには、無駄なスペースをできるだけ省いたコンパクトなプランが有効。廊下をつくらずにLDKと水回りを直結させたり、反対に通路の幅をあえて広げ、そこに別の役割をもたせて暮らしに役立てるなど、面積をめいっぱい使えるプランを考えましょう。(菊地さん)
【M邸 設計/MONO設計工房】
床面積が小さい分、吹き抜けやハイサイドライト、デッキなど、開放感を感じさせる工夫を盛り込んで。
2階の廊下の幅を広げ、アトリエの機能をもたせることで、面積を有効活用。
建物の凹凸をできるだけなくしシンプルに
面積が同じでも、外周に凹凸の多いプランは、シンプルな四角いプランよりコスト高になる傾向が。外壁の面積が多くなる、屋根形状が複雑になる、コーナー部分の仕上げに専用の部材が必要、などがその理由です。つまりローコストをめざすなら、なるべく凹凸のない箱形で、総2階のプランを選ぶのが最も有効です。とはいえ、これはあくまで敷地条件や希望とのバランスで決まるもの。間取りも、1階にすべての水回りを配し、吹き抜けもつくらないベーシックなプランがいちばんローコストですが、理想の住まいとかけ離れてしまっては意味がありません。建物の形状も間取りも、優先させたいものをしっかり決めたうえで計画を。(宮地さん)
【M邸 設計/MONO設計工房】
変形敷地を選んで土地の購入費を抑えつつ、廊下などの無駄な面積を省いたプランに。工事費を予算内(約1600万円)におさめました
部屋ごとにこまかく仕切らず ざっくりとしたプランにする
建物内部のプランは「なるべくシンプルに、ざっくりと」がコストダウンのコツ。部屋同士を仕切る壁や建具を少なくすれば、その分だけ木材や仕上げの内装材、建具にかかるコストを抑えることができます。
間仕切りの少ないプランは、コスト面だけでなく将来の暮らしにもメリット大。たとえば夫婦ふたり暮らしや子どもが小さいうちは、間仕切りのないワンルーム空間を広々と使う→子どもが成長したら壁を立てて個室をつくる→子どもが巣立ったらワンルームに戻す、という具合に、ライフスタイルに合わせて間取り変更ができます。このときのポイントは、外壁で建物全体をしっかり支える構造にしておき、屋内の耐力壁をなるべく減らすこと。耐震性を損なうことなく、間仕切り壁の撤去・新設の自由度が増します。(井上さん)
2階のLDKは、L字形のワンルーム空間。梁に沿って壁を立て、引き戸をつければ、子ども部屋や寝室をつくれます。
【M邸 設計/ピーズ・サプライ】
必要に応じて仕切れるようなつくりにしつつ、1階、2階とも仕切りのないオープンな間取りにして、約1900万円で家づくりに成功。
優先順位をつけてコスト配分にメリハリを
プランニング中はつい「あれば便利かも」「一応つくっておこう」という意識が働き、余分なスペースや仕様、設備を加えてしまいがち。これが積もり積もって、床面積アップ&コストアップにつながることも少なくありません。それだけでなく、全体に等しくコストをかけることで、プランのテーマがぼやけてしまい、本当に欲しかったもののよさが埋もれてしまうことも。こうした事態を避けるためには、新居への希望にしっかり優先順位をつけたうえで、順位の低い項目をばっさり省くこと。そしてその分の予算を、順位の高い項目に思いきってかけることが大切。このコスト配分のメリハリがきいていればいるほど、「好きなものだけに囲まれている」という満足感が高まるはずです。(小山さん)
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Adviser
ピーズ・サプライ 井上 徹さん
1996年設立のハウスビルダー「ピーズ・サプライ」代表。「シンプル&ナチュラル」をコンセプトに、新築、リフォーム、キッチン設計などを手がける。
MONO設計工房一級建築士事務所 菊地 一幸さん
1962年大分県生まれ。東京工芸大学工学部建築学科
卒業。92年に現事務所を設立。ローコスト住宅を数多く手がけ、神奈川県内の自宅も1000万円台で建築。
プランボックス一級建築士事務所 小山 和子さん
1955年広島県生まれ。女子美術大学芸術学部卒業。87年に小山一級建築士事務所、95年に一級建築士の湧井辰夫さんと共同で現事務所を設立。
宮地亘設計事務所 宮地 亘さん
1970年千葉県生まれ。工学院大学工学部建築学科卒業。高橋克彦建築事務所を経て2001年に独立。同年、
オフィス兼自宅を千葉市内に建てる。HP「おうちや」
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1955年広島県生まれ。女子美術大学芸術学部卒業。87年に小山一級建築士事務所、95年に一級建築士の湧井辰夫さんと共同で現事務所を設立。
宮地亘設計事務所
宮地 亘さん
1970年千葉県生まれ。工学院大学工学部建築学科卒業。高橋克彦建築事務所を経て2001年に独立。同年、
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