伝統的な住まいの外装工法として古くから親しまれてきた塗り壁。幅広い世代になじみのある点は、ほかの外装材にはない特色といえるでしょう。左官職人の手仕事によって作りあげられる塗り壁には、独特の風合いと味わいがあります。
塗り壁とは
外壁に、天然素材あるいは人工の樹脂製の外壁材を、左官職人が塗って仕上げていくのが塗り壁です。
日本家屋で古くから用いられている塗り壁である土壁や漆喰壁は、おそらくだれもが目にしたことがあるはず。塗り壁は何度も塗り重ねて仕上げていきますが、もっとも表面に塗ったものが土の場合は「土壁」、漆喰なら「漆喰壁」と呼ばれます。
サイディングやタイルのように、あらかじめ製品化されたものを施工するのではなく、手仕事で一から仕上げていく、いわば完全オーダーメードなので、さまざまなデザインに対応できるのが大きな魅力です。
塗り壁外壁の特徴
メリット
○手仕事の趣ある味わいが出せる
工場で大量生産される外壁材にはない味わいが塗り壁の最大の魅力。左官の技を駆使した表面の仕上げ方で自由な模様、デザインを表現できます。
○つなぎ目がなく美しい
つなぎ目なく一体感のある美しい外壁に仕上げられます。サイディングのように、つなぎ目の劣化の心配がないのが利点。
○和風にも洋風にも合う
もともと古くから日本の建築に調和してきた塗り壁ですが、素材や表面の仕上げ具合、色合いで洋風の建物に合う雰囲気を演出することも可能。
デメリット
△施工費が高め
現場での職人仕事がほぼすべてとも言える塗り壁の施工。重ね塗り、乾燥に時間がかかるため、工期がほかの外装材より長くなる傾向にあります。したがって、施工費用もかかります。
△ひび割れ、色褪せ、汚れが目立つ
仕上がりが職人の腕次第であるため、耐久性も仕事の精度に左右されてしまいます。経年劣化により、細かなひび割れ、色褪せ、汚れが生じると、目立つケースも。
塗り壁外壁の種類
塗り壁には、伝統的に使われてきた天然素材のほか、化学的に耐久性能を高めた樹脂系の材料などがあります。
〈漆喰〉
消石灰を原料とする漆喰(しっくい)は、強アルカリ性の性質から抗菌力があり防カビ効果が期待できます。耐火性があるため、お城や蔵にも使われてきました。つるつるとした肌触りが特徴です。
〈珪藻土〉
植物性プランクトンの化石から作られた珪藻土(けいそうど)は耐火性があり、調湿性能にも優れているため家の内装によく用いられます。ざらざらとした風合いが特徴。
〈樹脂系〉
天然素材にくらべて色彩が豊富なのが特徴。光触媒処理を施して防汚性を高めたものもあります。
タイル、サイディングとの違い
手仕事の温もりを優先したい人にとって、塗り壁は何よりも魅力的な外壁となるでしょう。タイルもサイディングもデザインのバリエーションは豊富ですが、塗り壁の味わいは出せません。予算に余裕があり、実績と信頼のある職人を見つけられるのであれば、迷うことはないでしょう。
高級感を演出できる外壁タイルは、耐久性に優れています。初期費用は高めながら、メンテナンスの費用は抑えられます。デザイン性の高さと費用面を両立させたい場合には優れた外壁材となります。
予算がなく初期費用を抑えたいのであれば、サイディングを検討してみることです。メンテナンスコストはかかりますが、新築ならタイルや塗り壁より低価格ですむはずです。
ジョリパットについて
色褪せしにくく耐久性のある外壁材として知られているのが、ジョリパット。「ジョリパット」は、製造しているアイカ工業の商品名ですが、塗り壁材として国内で多くのシェアを占めているため、商品名が通称として使われているようです。
雨水による汚れがつきにくく、塗り替えの回数を抑えられる特性が人気ですが、塗り壁である以上、職人によって仕上がりが変わってくる点は、ほかの塗り壁材と同じです。
塗り壁外壁の補修・メンテナンス
経年変化による色褪せ、ひび割れなどには再塗装や修繕が必要。塗り壁材の種類、状態によって方法が異なるので、気になる点はまずプロに相談しましょう。
一般的に、塗り替えのタイミングは施工後10年が目安といわれています。メンテナンスの費用は、耐久性にすぐれたタイルにくらべると、高めとなる傾向にあります。
塗り壁外壁の施工法
断熱材や防水シートで下地を作った壁面に塗り壁材を塗り込んでいきますが、下塗り、中塗り、仕上げ塗りと何度かに分けて工程を進めていきます。仕上げ塗りでは、表面の模様を、職人のコテさばきで作るため、専門技術が要求されます。
また、塗りだけでなく乾燥の時間も必要なので、サイディングなどに比べると工期は長くなります。
まとめ
左官の技術で美しい壁面を作れる塗り壁。その味わいは、サイディングやタイルなどでは表現できない良さがあります。和洋どのタイプの建物とも相性がよいのも、ありがたい特長。
一方で、比較的工期がかかり、初期費用もメンテナンス費用も高めという弱点も。
記事作成協力:株式会社北九州住宅診断研究所
http://jyutaku-shindan.com
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