家を建てる場合、いったいいくらいの費用がかかるのか、マイホームづくり未経験の人は見当もつかないに違いありません。家づくりには「土地の代金+建物の代金+付帯工事費用+登記やローンなどの諸費用」がかかります。そのうち今回は、土地の価格の相場を中心に説明していきましょう。
土地の価格はどうやって決めているの
まず、土地には4つの異なる価格が存在します。これを「一物四価」といい、その内訳は「実勢価格」「公示地価/基準地価」「相続税評価額(相続税路線価)」「固定資産税評価額(固定資産税路線価)」となります。実際にはこれに、不動産鑑定士による「鑑定評価額」が加わるため「五価」となりますが、それぞれ、決め方、決める人が異なります。
① 実勢価格
不動産には同じものが2つとないので、物件ごとに取引価格を決めることになります。具体的には、売主と買主の合意によって価値が決まりますが、同じ土地でも価値を高く感じる人とそうでない人がいるため、実際の交渉によって取引価格が異なってくることもあります。しかし、似た土地で直近の取引事例をいくつか集めると、特別な事情がある場合を除き、ある程度同じような価格帯で取引されていることがわかります。たとえば、同じ道路に接している隣り合った土地の場合、平米あたりの単価が数万円も異なることは起きないということです。これが「実勢価格」です。
【公表主体】不動産会社やシンクタンクなど。公表時期は決まっていない
メリット:取引事例から得られる価格のため、実情に近い
デメリット:地域の取引数が少ない場合や類似物件がない場合、精度が低くなる
≪実勢価格を知るための3つの方法≫
1. 土地総合情報システム
国土交通省が、不動産取引をおこなった当事者にアンケート調査をおこない、そのアンケート結果から得られるデータを集めて公表しています。
2. 仲介業者の販売価格
現在売りに出されている土地の価格を調べてみることで、目的の土地の価格をある程度推測することができます。アットホーム、ホームズ、スーモなど、できるだけ取扱物件が多いサイトを利用するか、もしくは地域に特化したサイトから選ぶのも賢い手。ただし、成約時は売り手と買い手との間で交渉がおこなわれるため、大抵の場合、売り出し価格よりも低い価格で取引されることになります。
3. 査定価格
どんな仲介業者も、土地を査定して価格を提供するサービスをおこなっています。価格査定には簡易査定と詳細査定(訪問査定)の2つがあり、簡易査定が、住所、広さ、前面道路などの情報から査定したものであるのに対して、詳細査定は、仲介業者が現地を訪れて、周辺の環境なども考慮しながら算定したものです。
② 公示地価/基準地価
公示地価は国土交通省が年に1回公表している土地の価格で、基準地価は都道府県が公表している価格です。公示地価や基準地価はすべての土地に対して公表されるものではなく、おおむね標準的とされる土地を選び、1平米あたりの価格で公表されるものです。また、公示地価と基準地価の標準値が異なっている場合、評価基準は同等と考えて問題ありません。気になっている土地に近いほうの標準地を探せばOKです。
【公表主体】公示地価=国土交通省、公表時期は毎年3月 基準地価=都道府県、公表時期は毎年9月
メリット:市場取引でも参考にされる価格のため、公的指標として信頼できる
デメリット:定められた地点での価格の為、近隣においては補正が必要となる
③ 相続税評価額
相続税の増額を決めるための基礎となる評価額のことです。相続税評価額が求められることは少ないですが、相続の際に初めて相続税額を知ることを避けるため、事前に推測できるよう、相続税路線価が公表されています。
【公表主体】国税庁。公表時期は毎年7月
メリット:公表された路線価などから簡単に知ることができる
デメリット:あくまで相続税額の算出用であって、時価ではない
④固定資産税評価額
相続税評価額と同様に、固定資産税の税額を決める評価額を固定資産税評価額といいます。土地の所有者に毎年送られてくる、固定資産税課税明細書で確認することができます。固定資産税課税明細書は所有者しか入手できないため、価格を知るためには固定資産税路線価を利用します。
【公表主体】市町村。公表時期は3年ごとの4月
メリット:課税明細書で公表された路線価などから簡単に知ることができる
デメリット:あくまで固定資産税額の算出用であって時価ではない
⑤鑑定評価額
不動産鑑定士が鑑定評価することで出す価格です。鑑定評価には国土交通省が提供する評価基準があり、作成される不動産鑑定評価書には、公的機関に提出可能なほどの高い証明力があります。仲介業者がサービスでおこなう査定とは異なり、鑑定評価は厳密に不動産の価格を評価するもので、公的地価/基準地価も不動産鑑定士が算出した鑑定評価額をベースとしています。
【公表主体】不動産鑑定士に依頼。公表時期は随時
メリット:不動産鑑定士がミスしない限り客観的な土地の価格として有用できる
デメリット:実勢価格とはかい離することがある。また、算出が有料
≪鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務≫
不動産鑑定士以外が鑑定評価を業務とすることは固く禁じられています。無資格者がおこなうと法律で罰せられますし、そもそも鑑定評価は極めて専門性が高いため、知識や経験がない人にはできません。そのため、鑑定料はかなり高額。土地の価格が高くなるほど高額になり、安いところでも15万円程度からスタートするのが相場とされています。土地が高いほど鑑定料が高くなるのは、高い土地の不動産鑑定評価書ほど、証明書として担う役目が重くなるため。法人資産の鑑定依頼などで不動産鑑定士が鑑定を誤ると、場合によっては損害賠償請求にまで発展する恐れがあるのです。
土地の価格の内訳について知りたい
では、5つの土地の価格が、実際にどのように機能しているかというと、
・仲介業者の価格査定=参考となる土地の価格
・不動産鑑定士の鑑定評価額=合理的で適正な土地の価格
となります。
ただし、鑑定評価額がいくらであっても、売主または買主の事情によって、その価格で取引されないのが不動産の面倒なところ。鑑定評価額は、第三者視点の価格に過ぎません。しかし、価格の公平性を訴える材料にはなりますし、最も正確な土地の価格を得られるのが鑑定評価額と言っても過言ではないでしょう。
土地の価格の調べ方が知りたい
続いて、土地の価格を調べるための4つの方法を解説します。
①不動産情報サイトで調べる
まずひとつめが、不動産情報サイトを利用する方法です。「 不動産」「住宅・不動産」「不動産情報サイト アットホーム」「(スーモ)」「(ホームズ)」「不動産」などでは、今売りに出ている近隣の土地の価格を調べることができます。ただし、この方法だと、土地に建物が建っている場合、建物代が加算されることもあるので、土地単体の価格を知ることが難しいです。また、今売りに出ている価格はあくまで売主の希望価格であるため、実勢価格・時価と大きく開きがある場合もあります。さらに、その土地の条件によって価格は大きく上下するので、ざっくりとした土地の価格を知りたいというときにのみ活用できる方法だと思ってください。
②国土交通省の土地総合情報システムで調べる
ふたつめは、国道交通省のサイト「土地総合情報システム」を利用する方法です。こちらのサイトでは、実際の不動産取引価格を調べるための「不動産取引価格情報検索」と、標準値や基準値を記した「地価公示都道府県地価調査」を閲覧できます。
③複数の不動産屋に査定してもらう
①②の方法なら自分で調べることができるというメリットがありますが、大まかな相場の予想しかつきません。より正確な価格相場を知りたいなら、やはり不動産屋に査定してもらうことが必要です。しかも、鑑定士によって価格が上下するため、複数の不動産屋に査定してもらうのがおすすめ。土地の価格は、不動産業者によって上下10%以上も差が出ると言われています。ただし、一か所一か所に申込をしていては大変なので、不動産一括査定サイトを利用するのがいいでしょう。
不動産一括査定サイトには、たとえば「不動産売却 ホームフォーユー(HOME4U)」がありますが、こちらのサイトを利用すれば、「みずほ不動産販売」「イエステーション」「MUFG 三菱UFJ不動産販売」「住友林業ホームサービス」「三井住友トラスト不動産」「積和不動産中部株式会社」「阪急不動産」「東京建物不動産販売」「野村の仲介」「京王不動産」をはじめとする全国約900社の物件の情報を知ることができるため、検索時間短縮にも役立ちとても便利です。
④路線価から調べる
路線価は、国税庁のサイト路線価図・評価倍率表にて閲覧可能です。ただし、路線価はそもそも、相続や贈与の際に「この土地はこのくらいの評価だから税金はこれくらいかかります」と算出するために使用するものなので、実勢価格とは差があることを覚えておきましょう。
土地の相場は具体的にいくらくらいなの
さて、以上を踏まえた上で、地域ごとの相場を見ていきましょう。
今回は、フラット35(=長期固定金利の住宅ローン商品)を借りて注文住宅で家を建てた人が使った費用をもとにご説明します。
※出典=住宅金融支援機構 2015年度フラット25利用者調査
まず、全国平均で見ると、建物の融資のみを受けた人が建築費にかけた額は3,231万円で、そのうち2,483万円を住宅ローンでまかなっています。一方、家と土地の両方で融資を受けた人は、土地代が1,315万円、建築費は2,583万円で合計金額は3,898万円という結果。
もちろん、都市部にいくほど土地代は高くなり、首都圏に家を建てる場合、合計金額が4,658万円にまでアップします(土地代=2,164万円、建築費=2,492万円)住宅ローンの総額に関しても、全国平均の3,284万円に対して、首都圏は3,799万円と500万円以上上乗せしなければなりません。
注文住宅融資利用者の主要指標(土地取得のための借入のない者)
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
住宅面積 |
129.5平米 |
127.8平米 |
128.5平米 |
132.8平米 |
129.6平米 |
敷地面積 |
239.2平米 |
172.1平米 |
200.0平米 |
239.6平米 |
288.8平米 |
建設費 |
3231.2万円 |
3521.0万円 |
3271.7万円 |
3358.2万円 |
3028.2万円 |
また、首都圏のほうが高額になる分、家づくりに着手する年齢が遅くなっていることもわかります。
社会的属性
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他地域 |
世帯年収 |
599.0万円 |
656.8万円 |
590.7万円 |
603.7万円 |
569.5万円 |
年齢 |
42.3歳 |
43.9歳 |
42.3歳 |
41.2歳 |
41.8歳 |
さらに、資金調達内訳や月々の返済額についても見ていきましょう。
資金調達内訳
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
手持ち金 |
691.0万円 |
818.1万円 |
736.3万円 |
752.9万円 |
593.0万円 |
融資金 |
2482.9万円 |
2639.8万円 |
2476.3万円 |
2550.4万円 |
2384.7万円 |
返済関係
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
予想返済額/月 |
9.22万円 |
10.04万円 |
9.31万円 |
9.43万円 |
8.7万円 |
総返済負担率 |
20.2% |
20.2% |
20.6% |
20.3% |
20.1% |
※総返済負担率=世帯年収に対する返済額の割合
次に、土地付注文住宅融資利用者の場合で見ていきましょう。
注文住宅融資利用者の主要指標(土地取得のための借入のない者)
住宅概要
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
住宅面積 |
113.4平米 |
107.3平米 |
112.6平米 |
116.8平米 |
115.6平米 |
敷地面積 |
194.3平米 |
139.2平米 |
156.2平米 |
196.0平米 |
222.9平米 |
建設費 |
2582.9万円 |
2493.6万円 |
2496.9万円 |
2775.1万円 |
2607.2万円 |
土地取得費 |
1315.0万円 |
2126.4万円 |
1532.7万円 |
1272.7万円 |
870.9万円 |
社会的属性
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
年齢 |
37.3歳 |
38.1歳 |
37.2歳 |
36.8歳 |
37.1歳 |
世帯年収 |
610.5万円 |
695.7万円 |
617.8万円 |
615.2万円 |
567.0万円 |
資金調達内訳
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
手持ち金 |
497.3万円 |
638.4万円 |
542,8万円 |
527.3万円 |
408.1万円 |
融資金 |
3284.2万円 |
3798.9万円 |
3360.4万円 |
3425.6万年 |
2983.1万円 |
返済関係
|
全国平均 |
首都圏 |
近畿圏 |
東海圏 |
その他の地域 |
予想返済額/月 |
11.11万円 |
13.08万円 |
11.45万円 |
11.52万円 |
9.98万円 |
総返済負担率 |
23.3% |
24.1% |
23.7% |
23.8% |
22.6% |
※総返済負担率=世帯年収に対する返済額の割合
土地の価格相場の計算方法が知りたい
次に、土地の価格相場の計算方法ですが、基本的には前述した「土地の価格の調べ方」で紹介した4つの方法を採りますが、「④路線価から調べる」に関しては、より詳しい計算方法があります。
なぜなら、土地の形が正方形および長方形でない場合、路線価×平米数で単純に計算することができないので、補正計算が必要になるのです。補正の計算方法は、「路線価×補正率=1平方メートルあたりの評価額」となります。この方法で算出した評価額は、実勢価格の7~8割の金額になります。
また、角地(=交差点などの過度の土地)の場合は2つの路線に面しているため、それぞれの路線価を奥行き価格補正して、高いほうの価格を正面路線価評価、そうでないほうを側面路線価とした上で計算する必要があります。表と裏に道路が面している土地の場合も同様です。
注文住宅の購入予算相場はいくらなの
最後に、注文住宅を建てるにあたっての購入予算相場をご紹介します。
まず、国土交通省住宅局の「平成27年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅を建てた人の世帯収入の分布は以下の通り。
400万未満 ………………15.2%
400〜600万未満 ………30.8%
600〜800万未満 ………19.3%
800〜1000万未満 ………14.4%
1000〜1200万未満 ……5.1%
1200万以上 ……………6.6%
(8.6%は無回答)
400〜600万円の世帯収入家庭が一番多く、次いで600〜800万円、400万円未満と続きます。世帯収入の平均は659万円です。
また、土地を購入した注文住宅新築世帯の購入資金は平均で4176万円、自己資金の比率は36.6%となっています。おおまかに、1500万ほどの自己資金を持ち、4,200万円ほどの注文住宅を建てていることになります。
さらに詳しい相場を知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
注文住宅の平均費用と価格相場は?年収・坪数別の予算の決め方・コツを合わせて読む
まとめ
一口に「土地の相場」といっても、同じ土地にもいろんな観点からの価格が存在することから、実際に取引される価格は売り手買い手の意向によって大幅に異なることがあることまでわかりました。しかしいずれにしても、まずは様々な観点からの相場を割り出すことからスタート土地探しが始まります。今まさに家づくりに着手しようとしているという人は、お目当てのエリアにある土地の相場を、いろんな方法で調べてみてください。おおよその価格がわかれば、そのエリアで費用的に問題がないかだけでなく、建物にどのくらいの費用を充てられるかまでわかってくるので、理想のマイホームづくりに一歩近づきます
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