【Sさん宅(愛知県)】
洋裁が大好きな奥さまと、家で過ごすのはもちろん、旅行などに出かけることも多いという多趣味のご主人。共通の趣味は庭仕事。ハーブを育てて料理に使うなど、日々、楽しんでいます。
手ざわりのいいリネンの手作りカーテンが似合う、自然素材に包まれたSさん宅。仕事のかたわら独学で洋裁を始め、今ではショップで委託販売もしているという奥さまは、大好きな洋裁が存分に楽しめる自分だけのアトリエを持つことが夢でした。 「以前の住まいは、オーソドックスな分譲マンション。床の色などが好みではなかったので、一度はリフォームも考えたのですが、工事中の仮住まいのことを考えると面倒になって……。いっそ一戸建てを新築してしまおうと(笑)。老後には洋裁の教室も開いてみたいし、お客さまにおいでいただく場所も欲しかったので、アトリエは絶対条件でした」 偶然ネットで見つけた「悠らり建築事務所」が気になり、開催中のオープンハウスを見て、依頼を即決。「雑誌のスクラップブックをつくってイメージを伝えたのですが、事務所のカラーを押しつけたりせず、建主の目線で、こちらの思いをすぐに理解していただけました」 周囲の古い家並みにとけ込む落ち着いた外観で、室内は明るく、雨の日も晴れやかな気分で過ごせる家。そして、大きな窓があり、ミシン糸を飾りながら収納できる念願のアトリエ。これが、奥さまの希望でした。作業がしやすいだけでなく、光があふれ、庭の緑にも癒される、居心地のよい空間が生まれました。
大好きな洋裁が存分に楽しめる「自分だけのアトリエ」
【写真左】洋裁道具や本などを収納する棚は、シナ合板で製作。ロフトには生地のストックなどを収納しています。
【写真右】余った布を裂いてリボン状にし、結んだだけの手作りカーテンは、まねしたいアイディア。
本数をふやせば目隠しにも。
光があふれる奥さまのアトリエ。来客のことを考えて、チーク材の床は土足OKに。壁面の珪藻土は、奥さまのリクエストで刷毛引き仕上げにしました。裁断や打ち合わせに使う大きなテーブルは「深見木藝」にオーダーしたもの。
「作業中も庭の緑が見えるように、窓辺のカーテンはあえて短い丈でつくりました」。ショーウインドーの役目ももちあわせている大きな窓。ベンチを兼ねた収納棚はレッドシダーで造作しました。
【写真左】「La sartoria Libero」というブランドで、天然素材の洋服づくりをしている奥さま。壁面のキャミソールワンピースも作品のひとつです。
【写真右】洋服と同じ布で小さなバッグも作ります。これは麻製で、レースのリボンがアクセント。
光と風、そして窓の外の緑、 心地よいものをたくさんとり込んで
斜めにして高さを出した天井のおかげで、室内に開放的な広がりを感じます。南側にある大きなケヤキの借景をとり込むため、コーナー窓を設置。梁や火打ち梁などベイマツの構造材は、隠さずアクセントに。
Sさん宅は、奥さまのアトリエだけでなく、料理、音楽など趣味の多いご主人の希望も生かされています。キッチンにはスタイリッシュな「ハーマン」のガスコンロ、リビングには煮込み料理にも使える薪ストーブを。大好きなボサノヴァを聴くためのオーディオ類は、コードを壁の中に通すなどしてすっきりさせました。また、今後はフルート演奏を楽しむ計画もあるそうで、音をよく響かせるために寝室を板張りにするなど、工夫もいっぱいです。
「趣味以外の部分では、とにかく設備を極力シンプルにしたくて。便利な機械はありがたいのですが、自分たちでメンテナンスできる範囲のものでとお願いしました。床暖房だけでなく、食洗機や浴室乾燥機もやめましたが、特に不便はないですよ」趣味を楽しみながら、心地よく過ごせる家。奥さまはますます、お出かけ好きのご主人も、家にいる時間が愛おしい様子です。
「深見木藝」のフックをLDの壁面に。「実際に使っています」という掃除道具も、美しいインテリアのひとつ。
ダイニングの横に設けた畳スペース。2畳ほどですが、収納の下に空間があるため、宿泊客用に布団も敷けます。「ほっとする空間。ここで洗濯物をたたんだりします」
「深見木藝」のダイニングテーブル&チェアに、「Favor」で購入した北欧ヴィンテージのひじつチェアを合わせて。床はナラ材、壁は珪藻土。
【写真左】シナ合板と厚さ4㎜のステンレストップで仕上げたオリジナルキッチン。「洗剤を見せたくなかったので、収納用のポケットをつけてもらいました」。トップライトや小窓で雨の日も明るく。
【写真右】冷蔵庫と一列になるよう、パントリーにレンジとトースターを置いて。作業時は扉をあけ放し、パントリーまでをキッチンとして使用しています。パントリーの上は収納用ロフト。
趣味を楽しむこだわりスペース
あこがれだった大きな窓とミシン糸の収納棚
アトリエの大きな窓は、ショーウインドーの役目も兼ねています。夕暮れにはあたたかな明かりがともり、近所の子どもたちから「山の中のおうちみたい」と言われるとか。
ミシン糸が並んだ収納棚は、機能的であると同時に、アトリエのフォーカルポイント。「これだけは絶対に壁面に欲しくて、リクエストしました」。アトリエがカラフルに華やぎます。
窓辺の棚がサボテンたちの居場所
サボテン市に出かけて、すっかり魅了されてしまったSさん夫妻。そのサボテンを飾るため、窓辺につくった木製のディスプレイ棚。たくさん並べれば、隣家からの目隠しにも。
音楽を楽しむ工夫と料理にも活躍の薪ストーブ
ご主人が山小屋で体験して以来、設置したかった薪ストーブは、ベルギーの「ドブレ」製。背後にはタイルをレンガのように貼って。「冬は、毎週ここで煮込み料理を作ります」
デスクは、LDがすっきり見えるよう、奥まった場所に設けました。デスク側にあるご主人のオーディオと、リビング側のスピーカーをつなぐコードは、壁の中を通してすっきりと。
シンプルで機能的な間取り。複数の用途をもたせてスペースを有効に
アトリエ横にある1階の洗面室。明かり取りと通風用に小窓を設けました。縫製前の布を水通しするため、その洗い場も兼ねて、シンクは大きめの“病院用流し”に。トップは人造大理石。
寝室兼書斎は、カーテンで仕切ると分離するつくりです。ご主人がフルートの練習をするため、壁面と天井は音の響きがいいというシナ合板に。
【写真左】シンプルながら、ニッチがあることで広がりを感じさせるトイレ。便器は「TOTO」。
「手洗い一体型のタンクは掃除がしにくいので、とにかくシンプルな形を選びました」
【写真右】「伊吹物産」のシンプルな陶製ミニシンク。手洗いや簡単なお茶出しができるように、
アトリエ横に設置しました。
【写真左】2階の階段ホール、トイレの向かい側に、来客用も兼ねた手洗いコーナーを配置。「トイレが狭くなるし、小さな手洗いで水ハネを気にするのもいやで、トイレとは別にしました」
【写真右】陶製ボウルと水栓金具は「伊吹物産」、タイルは「VASE」のオーダー品。「ほかがシンプルなので、ここだけ柄ものにしました」
【写真左】ミニシンクのあるコーナーは、フィッティングルームも兼ねています。そして、内玄関へとつながる
通路の役割も。
【写真右】アトリエにあるベイマツ材のドアがSさん宅の玄関です。ドア右横に見えるスリットは郵便受け。「ドアにつけると、郵便物をとるときにかがまなければならないのですが、ここだと郵便物がテーブルの上にのるので
ラクです(笑)」
片流れ屋根と薪ストーブの煙突がアクセント。外壁はガルバリウム鋼板で、アトリエ部分のみレッドシダーで仕上げています。
DATA. Sさん宅(愛知県)
設計のPoint
悠らり建築事務所
安藤 亨英さん 安藤 節子さん
質のよい素材を使ったため、サイズをコンパクトにしてコスト調整をしました。勾配天井で高さをつける、家の端から端まで視界が通るようにする、バルコニーと室内につながりをつけるなど……。実質面積以上の広がりを感じさせるよう、LDKには空間構成と景色のとり込みを工夫しています。また、アトリエと住居用のトイレを兼用にしたり、フィッティングルームがシンクスペースと通路を兼ねていたりと、ひとつの空間に複数の用途をもたせて空間を有効利用することで、広さの確保もできました。
【Profile】
亨英さん(1973年生まれ)は設計事務所を経て、節子さん(72年生まれ)は住宅・リフォーム会社を経て、2007年に夫婦共同で事務所を設立。男女双方の目線を生かした設計が得意。フランスやイギリスのカントリースタイルをモチーフに、質感とディテールにこだわった家を提案。デザイン性はもちろん、高断熱・高気密で耐震性にもすぐれた自然素材の家が人気。
家族構成 |
夫婦 |
敷地面積 |
200.74㎡(60.72坪) |
建築面積 |
70.16㎡(21.22坪) |
延べ床面積 |
99.02㎡(29.95坪) 1F 58.20㎡ + 2F 40.82㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2012年12月〜2013年6月 |
設計 |
悠らり建築事務所 TEL: 052-871-5689 |
施工 |
㈲藤里建築工房 TEL:090-3305-8352 |
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