皆さんの家庭ではプロパンガスと都市ガスのどちらを使用していますか?それぞれ特徴があり、メリット・デメリットがあります。この記事では、多くの人が気になる料金の違いをはじめとする両者の違い、さらにガス自由化やガス会社の乗り換えについても、わかりやすくご紹介します。
プロパンガスと都市ガスの違い
プロパンガスと都市ガスと聞いても、どんな違いがあるのかきちんとわかっている人は意外と少ないのではないでしょうか。ではさっそく、さまざまな角度からその違いをチェックしてみましょう。
① 原料
プロパンガスはプロパンやブタンなどの液化石油ガスを原料としています。液化石油ガスは英語でLiquefied Petroleum Gasと訳せることから、LPガスとも呼ばれています。日本ではガスを輸入していますが、プロパンガスはカタールなどの中東や、数年前から輸出量が増えたシェールガスを扱うアメリカから輸入しています。(参考:日本プロパンガス(LPガス)協会2017年度データ)
一方、都市ガスはメタンを主成分とした天然ガスを原料としており、オーストラリア、マレーシア、カタールなどから輸入。プロパンガスも都市ガスも本来は無色・無臭ですが、ガス漏れした時にすぐ気付くように匂いをつけてあります。
②配給方法
配給方法に関しては、プロパンガスと都市ガスで大きく異なります。プロパンガスの場合、圧縮され液化されたガスをガスボンベに充てんし、各家庭に届けます。
一方、都市ガスは、地下に張り巡らされたガス導管を通して各家庭にガスを送っています。この時ガスはマイナス160度に冷やされた状態で圧縮され、気体の状態で家庭まで届くようになっています。
このような都市ガスの特徴から、民家がある程度密集したエリアでなければガス導管を引くことができません。ガス導管を設置するためには初期投資が必要である背景から、それらを回収できる見込みのある都市部では都市ガス、地方や離島などの都市ガスが引けない地域ではプロパンガスが多く使われているようです。
③重さ
空気を引き合いにしてそれぞれの重さを比較してみると、プロパンガスは空気よりも重く、ガス漏れした際は低い場所にたまります。一方で都市ガスは空気よりも軽く、ガス漏れの際には天井部に溜まる傾向にあります。
これらの特徴から、空気の逃がし方やガスセンサーをつける位置も異なります。プロパンガスの場合は、センサーを設置するなら床から30cm以内に、都市ガスを利用するなら天井に設置するのが望ましいところ。
④火力
火力で比べてみると、プロパンガスの熱量は都市ガスの2.18倍です。お湯を沸かすときに、プロパンガスは1㎥で沸くところを、都市ガスの場合2.18㎥必要ということです。
実際は、ガスコンロの設計によって都市ガスでも多めにガスが出るようになっているものもあり、一概に都市ガスだから火力が弱いということはありません。しかし発熱量はプロパンガスの方が倍以上高いため、同じ体積で比べたとき発生させる熱量に違いが見られます。
⑤災害時の復旧速度
地震などの災害が起こった際に、ガスが使えなくなると日常生活に支障が出てしまいます。プロパンガスの場合、ボンベと配管、ガス器具の安全性が確認できれば使用が再開できます。
一方で都市ガスの場合は、ガス導管を通じてガスを各家庭に届けているため、ガス導管の検査を行う必要があり復旧作業は地域ごとに分かれて行われることから、どうしても時間がかかります。しかし、今の段階ではプロパンガスの方が災害に関しては強いと言えますが、都市ガスの復旧速度も年々改善が見られています。
⑥導入コスト
プロパンガスにせよ都市ガスにせよ、新築時には給湯器や配管設備などの初期費用が必要です。都市ガスは導入時一括で支払うのに対し、プロパンガスの場合は導入コストを分割して、最初に支払わなくていい代わりに毎月の料金に上乗せして支払うことが多いです。賃貸で契約している場合でいうと、この分割料金を入居者に支払わせているケースが多いということになりますね。
⑦ガス料金
一般的に、料金は都市ガスよりもプロパンガスの方が高いです。地域によって価格が異なりますが、東京都のガス代平均価格を比べてみると、プロパンガスは都市ガスの約1.7倍です。
ではなぜプロパンガスの料金が都市ガスよりも高くなってしまうのでしょうか。まず、プロパンガスは価格を自由に、しかも消費者に通知せずに設定、変更することができます。そのため、知らない間に価格変更されて高額になっている場合もあります。また、プロパンガス業界の仕組みから、価格競争が起こりにくい状態にあることや、初期費用を少なくして毎月のガス料金に上乗せしていることなども理由として挙げられます。
詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
https://kurashinista.jp/column/detail/4443
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都市ガスのメリット・デメリット
都市ガス自由化とは?
都市ガスのメリット・デメリットをチェックする前に、2017年4月から始まった都市ガス自由化についておさらいしておきましょう。電力自由化と同じく、ガスについても自由化が始まりました。
では、ガス自由化になって、私たちの生活の何が変わるのでしょうか。以前は都市ガスを使用する場合、住んでいる地域によってガス会社が決まっていました。各エリアに一つのガス会社がガスの供給を独占している状態です。
それがガス自由化の動きによって、消費者がガス会社を選べるようになったのです。電力自由化はよく聞くけれど、ガス自由化については知らなかったという人も結構いるのではないでしょうか。現状は、ガスが自由化されたのはいいけれど、参入企業がさほど多くないため、予想していたよりも変化が起こっていないようにも見えます。
ガス自由化は経済産業省主導で、1995年から段階的に進められてきました。はじめは大規模工場だけ、1999年には製造業全般、大規模商業施設など、2004年には中規模工場やシティホテル、2007年から小規模工場・ビジネスホテルなどでガスの自由化が実施されてきました。
ガス自由化の目的ですが、大きな視点で見てみると、他業種からのガス市場への参入や、今まで限定されていた都市ガス会社の他エリアへの事業拡大などが起こることによって、経済が活性化します。それは国単位で見ても望ましいことですよね。
各家庭単位で考えてみるとどうでしょうか。もともと公共料金に分類されていた都市ガス料金は、消費者が困るような金額に設定されることはありませんでしたが、ガス自由化によって市場で競争が起こり、料金やガス市場にも競争が生まれます。世界的にも高いと言われている日本のガス料金の抑制や、サービスの向上が期待できます。
このように、もともと自由料金であったプロパンガスのように、都市ガスを利用している家庭でも、ガス会社を選べるようになったのです。
https://kurashinista.jp/column/detail/4534
都市ガスのメリット
◇料金の安さ
以前は公共料金だった都市ガスは価格を変更するのに国の承認が必要でしたが、2017年からガス自由化が始まりました。今後も、価格競争が続き、さらに都市ガス代が下がる可能性もあります。プロパンガス、都市ガスどちらかを料金の安さで選ぶなら、今のところは断然都市ガスに軍配が上がるでしょう。
◇ガス設備の場所を取らない
プロパンガスの場合、ガスボンベによってガスを供給するため、家の外などに設置場所が必要です。しかし都市ガスの場合は地下に張り巡らされた導管を通じてガスを各家庭に届けるため、場所を取りません。また、ガスボンベの交換の時のように配達員が訪ねてくることもないので、煩わしさもなくなります。
◇サービスの向上
都市ガスの自由化によって、ガス会社は料金を下げる、もしくはサービスを向上するかどちらかで他社に差をつける必要が出てきました。その結果、セット割などのサービスが生まれています。例えば電気とガスを両方販売している会社では、まとめて契約すると料金が安くなるサービスを見受けられ、都市ガスはサービスに関しても徐々に向上が見られています。
都市ガスのデメリット
◆初期費用が高い
都市ガスを新規で契約する場合、ガス導管を引き込む必要があり、この費用は利用開始時に一括して請求されます。プロパンガスも初期費用がかかりますが、分割して毎月のガス料金に上乗せして支払わせていることが多いため、初期費用が特別高いと思うことはあまりありません。都市ガスの場合はこれを一括して支払うため、初期費用の高さが気になってしまうのです。
◆災害時の復旧が遅い
複数の家庭にガスを供給している都市ガスは、災害が起きた際、エリア毎にガス漏れなどの検査が必要です。地下に広範囲にわたって張り巡らされたガス導管のチェックは、プロパンガスと比べると復旧作業に時間がかかります。
しかし、災害の規模にもよりますが、都市ガスの復旧速度は年々早くなっています。2011年に起こった東日本大震災では約40万戸を54日、2016年の熊本地震では10万戸を15日、2018年の大阪北部地震では11万2千戸を7日で復旧 させています。このように、改善が見られているのは確かですが、プロパンガスと比べると、どうしても復旧速度に差が見られます。
◆地方での整備に課題
都市ガスという名称からもわかるように、都市部では利用率の高い都市ガスですが、地方ではその特徴から使用できない場所もあります。都市ガスは地下にガス導管を設置してガスを各家庭に供給する仕組みです。
人口が密集しているエリアであれば問題ありませんが、そうではない地域ではその構造上、都市ガスを整備するのが難しい場合もあります。そのため、今までは都市ガスを使いたくても地方に住んでいるため、プロパンガスを選択せざるを得なかったケースもあります。しかしガス自由化に伴って、都市ガスに必要なガス導管網の整備が進められているため、課題はありますが今後は都市ガスのエリアが拡大していくことが予想できます。
プロパンガスのメリット・デメリット
プロパンガスのメリット
◇火力が強い
プロパンガスの発熱量は都市ガスの2.18倍です。これは、プロパンガスの方が2.18倍多く物を温めることができるということです。逆に考えてみると、都市ガスを使った場合、2.18倍時間がかかってしまうということになります。しかし、実際はガスコンロの設計にもよるので、一概に都市ガスだと温めるのに時間がかかるとも言えません。あくまで同じ条件で発熱量を比べた際には、プロパンガスの方が早く温めることができるということです。
◇人体や環境に優しい
ガスと聞くと、なんとなく危ないイメージがあるという人もいるのではないでしょうか。しかし、ブタンを主成分とするプロパンガスは体に害を及ぼすことはありません。酸化物などの有害物質はガス会社が不純物のチェックをしており、ほとんど含まれないようになっているので安心です。燃焼後も有害物質を発生させないだけでなく、二酸化炭素の排出量も少ないため、人体だけでなく環境にも優しいエネルギーであることがわかります。ただ、ガス漏れなどにより、不完全燃焼したガスは一酸化炭素が発生する場合があるので注意が必要です。
◇災害時に強い
災害時に活躍する点で考えるなら、都市ガスよりもプロパンガスでしょう。地震などの災害が起きても、各家庭単位の配管やガス器具の安全が確認できれば、すぐにでも使用を再開できます。また、ガスボンベと設備さえあればどこでも使用できるため、災害時の炊き出しなどにも大いに役立ってくれます。このようなエネルギー源を「分散型エネルギー」と言い、災害時の復旧の早さから、注目されています。
◇初期費用が安い
都市ガスの場合、都市部から離れた人口が密集していないエリアではガス導管が配管されていないことがあります。地下にガス導管を整備するためには何十万という初期費用が必要となることも。
それに比べてプロパンガスは、初期費用がかからないプランも多く見られます。しかしこれにはカラクリがあり、この費用をあとで毎月の料金に上乗せして支払わなくてはいけない場合がほとんどです。しかし、あくまで初期費用という点においては、プロパンガスの方が安く済むと考えられます。
プロパンガスのデメリット
◆料金が高い
長い間公共料金であった都市ガスに比べ、プロパンガスはもともと自由料金で、各プロパンガス会社が価格を設定できる仕組みになっています。それならば価格競争が発生するのではと考えられますが、プロパンガス業界では長きにわたって、お互いの利益を損なわないように結託して価格競争を行わない体質が浸透しています。各家庭でほぼ確実に消費されるガスのような資源は、価格を下げていくと業界全体の利益が下がってしまうからです。
また、都市ガスはガス導管を通して直接各家庭に届けられますが、プロパンガスの場合、ガスボンベを各家庭に供給するための輸送費用と人件費が必要です。プロパンガスの料金の内訳を見てみると、「基本料金」と「従量料金」があります。「従量料金」は、使用した分のガス料金であることがわかります。では、「基本料金」とは何かというと、ガスボンベの配送費用、保安管理費用、そして検針費用などが含まれているのです。
◆設置場所を取る
プロパンガスの場合、ガスボンベにガスを入れて各家庭にガスを届けるため、設置場所が必要です。ガスボンベの体積は決して小さくないので、地下に導管を張ってガスを供給する都市ガスと比べると場所を取るのは一目瞭然です。基本的に家の外に取り付けることが多いと思うので、十分な広さがあれば問題ありませんが、隣家との距離が狭い場合などは影響が気になってしまうかもしれませんね。
◆ 相場がわからない
プロパンガス会社は、プロパンガスの適正価格を公表していません。そのため、ガス料金として支払っている金額が高いのかどうかも調べようがなく、なんとなく高い金額を支払い続ける状態に陥ってしまう可能性が高いのが現状です。さらに、輸送コストや初期費用の上乗せなどが含まれてくると、住んでいる地域や、家がマンションか一戸建てかなど、他の情報も加味して考える必要があるため、余計に相場がわからなくなります。
このように、自分だけでは相場を見極めることが難しいプロパンガスは、いくつかのガス会社から見積もりをとったり、料金比較サイトなどを利用して客観的にガス代を見直してみるのがオススメです。
◆賃貸だと一戸建てよりも料金が高い
前述したように、初期費用を一括して支払う都市ガスと異なり、プロパンガスの場合は、最初に初期費用を分割して毎月のガス代に上乗せする方法が主流です。すると賃貸物件の場合、本当は大家さんやオーナーが初期費用を支払うところを、入居者が支払わなくてはいけなくなります。このような背景から、一戸建てから賃貸に引っ越してガス代の高さに驚く人も少なくないようです。
また、一戸建てのガス料金を高くすると、すぐに別の会社に乗り換えられてしまう可能性が高いのに対し、アパートやマンションなどの賃貸物件では大家さんがガス会社と契約を交わしているため、入居者がガス会社を変更することは基本的にできません。そのため、多くはありませんが、料金を徐々に値上げするような悪質なプロパンガス業者も存在するようです。
https://kurashinista.jp/column/detail/4567
乗り換えを検討してみる
ここまで読んできて、プロパンガスと都市ガスのメリットが大体把握できたと思います。長所と短所がそれぞれあり、何を重視するかによって選択も異なります。しかし、やはり料金を重視したいという人は、現在契約しているガス会社から乗り換えを検討してみるのも良いかもしれません。
プロパンガスから都市ガスへ
プロパンガスを使っているけれど、ガス料金が安くなる都市ガスへ乗り換えると、最大で今まで支払っていたガス代の1/3以下にすることも可能です。しかしすぐに実現するのは難しいところ。持ち家であれば工事費用がかかりますし、賃貸であれば別のエリアへの引っ越しを検討しなくてはいけません。もしこの方法をとる場合は、事前にどのくらい費用が必要か確認を忘れずに慎重に判断しましょう。
プロパンガスからプロパンガス他社へ
現在使用しているプロパンガス会社から、別のプロパンガス会社へ乗り換える方法は、実は安全にガス代を安くする方法でもあります。最安値でガスを提供しているプロパンガス会社に変更すれば確実にガス代を節約できますし、ガスの設備もそのまま使えるため、工事費用が高額になることもありません。安全にガス代を節約するために、まずは見積もりを出してみる価値はありそうですね。
都市ガスから都市ガスへ
ガス自由化によって、都市ガスから都市ガスへの乗り換えも可能になりました。電力とセットにして販売することで、お得にガスと電気を利用できるプランなど、都市ガスの中でも気に入ったサービスを提供しているガス会社に乗り換えるのもおすすめです。
https://kurashinista.jp/column/detail/4502
▼おトクなガス会社に乗り換えるためにガス料金プランを比較する↓
まとめ
プロパンガスと都市ガスの特徴をご紹介しました。両者でこんなにも違いがあることに驚いた人もいるのではないでしょうか。それぞれメリットとデメリットがあり、何を重視するかに加え、住んでいるエリアや持ち家なのか賃貸なのかなどの要素も選ぶ際に考えなくてはなりません。
都市ガスに比べて料金の高さがデメリットとして挙げられるプロパンガスですが、ガス会社を変更することでガス代の節約が期待できます。そこで、まずは他のガス会社ではどのくらいの料金になるのか、見積もりをしてみてはいかがでしょうか。ガス見積もりの詳細についてはこちらを参考にしてみてください。
▼身近なところからガス代を節約したい方はコチラ↓
https://kurashinista.jp/column/detail/4520
https://kurashinista.jp/column/detail/4568
https://kurashinista.jp/column/detail/4443
名前によって損したり得したりしているアラサーフリーライターです。昨年突然の湿疹を伴うアレルギー症状に見舞われ、食事や生活習慣を改善したことで克服した経験から、オーガニック食品や漢方などに興味があります。
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