古くからある家電「ポップアップトースター」。
日本ではオーブントースターが全盛。そうですよね、上にいろいろな食材をのせてトーストすることができ、とても便利。忙しい朝などは、実に重宝します。
しかし欧米のホテルの朝食などで使われるのは、 ポップアップトースター。
セットしてパンが焼けてくる香りがすると、お腹がグーっとなります。今回は、そんなポップアップトースターの魅力をレポートします。
トーストとは「焼く」こと
ジョン・ランディス監督作品に「ブルース・ブラザース」という映画があります。税金が払えず閉鎖されようとする修道系孤児院のために、そこで育った不良の兄弟がお金をかき集めるお話。
日本だと、お金をかき集めるのに、ヤクザからかすめ取るなどの犯罪モノの作品になるのでしょうが、そこはアメリカ。コンサートの入場料でお金をかき集めます。映画の作りはミュージック・コメディ。使われる音楽も半端なく、ジャンルを問わない紅白歌合戦状態。大スターが次々出てきます。
今で言うと「神」映画でしょうね。最も、お金をコンサートで集めることを、神からの啓示という設定ですので、真の「神」映画ということもできます・・・。
不良兄弟の弟は、痩せてた時代のダン・エイクロイド。無闇矢鱈にカッコイイ。この弟は偏食で食べるモノと言えば「白パンのトースト」。長逗留できるホテルの一室に帰ってきて、パンをトーストするシーンがあります。電熱器の上にパンをのせ焼くのです。
そうですね。お餅を焼くのに似ています。この時、パンって本当に「焼く」んだと思いました。そう欧米人にとって温めるのではなく、焼いて、表面の色が分かって、焼ける香りがするのがトーストなのです。
ポップアップトースターは大正ボーイ!?
トースターを作ったのはトーマス・エジソン。1910年のことです。トースター発明の理由の1つが、電気を使ってもらうため(ある程度の需要がないと、電力会社がなりたたないため)とありますので、発明王はかなりのビジネスマンでもあったことが分かります。
そして、スプリングとタイマーの付いたポップアップ型の電気トースターは、1921年にアメリカのチャールズ・ストライトの発明です。日本でいうと大正10年。モガ(モダンガール)、モボ(モダンボーイ)の時代です。
ポップアップ・トースターの利点とは?
ポップアップトースターの利点は幾つかあります。
1つめは、外はサクサク、中はしっとりとトーストしてくれることです。これは電熱線がパンの直ぐ側にありますので、さっさと外を焼き、中の水分を閉じ込めてしまうからです。
2つめは、焼きの調整がし易いこと。ダイヤル1つで調整できます。
この2つの特長は、炊飯器に似ています。洋の西、東を問わず、主食を美味しく食べることに、人はスゴく労力を使うというわけです。
3つめは、豊富なデザインです。このため、古いポップアップトースターは骨董品としてのマーケットがあり、かなり高値が付きます。
各国の魅力的なポップアップトースター
いろいろなトースターを並べて見ましょう。
エントリー1番は、イギリスの ラッセルホッブス。
側面ガラスのちょっとモダンな美人さんです。
次もイギリスのデュアリット。私はジブリの「天空の城ラピュタ」のロボット兵をイメージしてしまいます。
お値段は、なんと48,600円!高級ホテルなどで使用されているそうです。
3番目はフランス。T-falです。T-fal製品は、フェミニンな感じの女性にお似合いの家電が多いですが、トースターもその一つです。しかもコンパクト。色違いで、黒もあります。
4番目はイタリア。コーヒーマシン、オイルヒーターで有名なデロンギ社です。デザイン王国と言われる通り、ちょっとクラシックな佇まいがたまりません。色は3色。シリーズで電気ケトルもあり、合わせて使うと、部屋の雰囲気が違ってきます。
5番目はドイツ リッター社のトースター。バウデザインの流れを汲んでおり、シンプルモダン。そぎ落とした美しさがユニークです。
最後は日本です。ツインバード工業製。色は黒の1色。和モダンとも言える切れのよいデザインです。
お国柄の違いが透けて見えて、面白いですね。
IFA(ベルリン家電ショー)で見つけたトースターいろいろ
毎年9月に開催される世界最大の家電の展示会、IFA。テレビを皮切りに、冷蔵庫、洗濯機、掃除機等々、あらゆるカテゴリーの最新家電が展示されています。
ポップアップ・トースターも例外ではありません。
特徴あるデザインのものを幾つか並べて見ます。
何枚でも焼いてやると言わんばかりの4枚同時焼きトースター。
イタリア デロンギ・グループの傘下、Ariete社のもの。
トマトの様な赤が目立つ、シュナイダー社のもの。上のワイヤーアタッチメントは、焼くのではなく、温める時に使います。
こちらはスイスのOURSSON社のトースター。中間色も多く、このみの色が見つかりそうです。
思いっきり高級そうなのは、英国 ケンウッド社の、限定モデル。銅メッキを施したモノ。アメリカのクロームメッキは有名ですが、これが本家イギリスの貫禄と言うべきでしょうか?
ちなみにイギリスは夕食が不味いことで知られていますが、朝食は別。
かの名探偵エルキュール・ポアロも、「イギリス式の朝食は別格」とも言っている位です。
あり過ぎて切りがないのですが、日本人に身近なブランドから2点。
パナソニックとシャープのポップアップ・トースターです。
トースターあれこれコラム
私の個人所有は、今はなきアメリカのサンビーム社製。「クラシック」と言われるロングセラーモデル。友人から譲って頂いたものです。前から欲しかったのですが、1997年に会社が倒産。今は復活していますが、現行モデルのデザインは感心しません。
このロングセラーモデル、小説の主人公になったこともあります。アメリカの小説に『いさましいちびのトースター』というのがあります。別荘に置き去りにされた電気器具が、自分たちを使ってくれる人間をさがす旅に出るという物語です。ここに出てくるトースターがサンビーム製です。
ちなみに、今年のグッドデザイン賞を、前述のイギリス ラッセルホッブス社の「クラシック」モデルが受賞したとのこと。
この世知辛い人の世。やはり、休日くらいは、ゆかしい優雅な朝食を取りたいということでしょうかね。
文/多賀一晃
1961年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学部卒。大手メーカーにて商品開発、企画を担当後独立。国内はもちろん、世界最大の家電見本市「IFA」等で世界中の家電を取材し、役立つ情報を「生活家電.com」から発信中。日本経済新聞夕刊の家電製品特集や土曜日別冊「日経プラス1」の「家電ランキング」選者、WEDGE Infinity「家電口論」主筆としても活躍。
生活家電.com
おすすめ記事
2018.05.02家電のプロ(株)MOA鈴木様に伺い、安くてコスパの高いトースター、使い勝手のいいトースターなど選び方からメーカー別の特徴まで詳しく解説します!続きを見る
2018.05.24朝はパン派の家庭に欠かせないのが、焼きたてさながらのおいしさを再現してくれるトースター。トーストだけでなくさまざまな調理ができることでも、主婦からの人気が右肩上がり! 今回は、ふるさと納税のポータルサイト「ふるなび」でおす...続きを見る
2018.08.14地方次自体への寄付により、様々な返礼品をもらえる「ふるさと納税」。実は家電ももらえるって知ってましたか? この機会にぜひチャレンジしてみてください。続きを見る
コメント
全て既読にする
コメントがあるとここに表示されます