床がきちんと安定している状態を「水平剛性がとれている」といい、この状態なら構造上の問題はありません。いっぽう、スキップフロアなどで床が途中で分断されると、安定性が下がり、水平剛性がとりにくくなります。
こうなると地震や強風などの横からの力に弱くなり、最悪の場合、倒壊の危険も考えられます。
1階の床下を半階分だけ掘り下げてインナーガレージをつくり、そこで生まれた段差をスキップフロアとして生かしています。敷地内にガレージをつくらなくてすむので、その分の面積は庭などに使えます。
B1階の駐車スペース~1 階のDK~1.5 階のリビング~2 階の水回り~2.5 階の寝室・子ども部屋、という4 層構造。駐車スペースの分だけリビング部分が上がり、DKとの間に段差ができました。
ダイニングとリビングの間のスキップフロア。段差から生まれるほどよい距離感が、両方のスペースの心地よさを高めています。ダイニングの天井高は3.5mもあり、外も見通せるため、開放感たっぷり。
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1 階の床下に大きな収納スペースをつくり、そこで生まれた段差をスキップフロアとして生かしています。
狭い家では難しい大型収納をつくれるメリットもあります。
床下収納から生まれた段差を生かして、スペースをゆるやかにつなぐ
1 階に9 畳大の床下収納をつくり、そこから半階ずつずれたフロアを積み重ねるようにプラン。1.5 階の子ども部屋~2 階のLDK ~2.5 階の和室という4 層構造になりました。
2 階のDKから、2.5 階の和室を見たところ。高さの違うスペースがゆるやかにつながり、視線が遠くまで届くため、実際より広がりが感じられます。
和室の下の窓を開けると、子ども部屋とつながることもできます。違うフロアにいても会話できるのが楽しい!
和室から見下ろしたDK。1 つの空間をさまざまな角度から見られるのも、スキップフロアの魅力です。
1 階の床下収納。法規上、天井高は140cm と低めに設定しましたが、広さが9 畳もあるので収納量はたっぷり。
1 階の玄関ホール。階段の下に床下収納の入り口があります。
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2階の床をスキップさせて、その階下に天井の高いスペースをつくっている例です。
1 階でも開放感のある部屋ができるのがメリット。
天井の高さを生かしてロフトなどをつくれば、もっと変化に富んだ空間になります。
2 階のLDをスキップフロアにして、1 階の子ども部屋をおおらかな空間に
このお宅では、1 階東側の2 つの子ども部屋が小さめ( それぞれ約4 畳 )なので、ロフトを設けて立体的に使いたいと考えました。そこで、この部分だけ天井を上げたため、その上のダイニングの床も上がり、リビングとの間に段差が生まれました。
1 階の2 つの子ども部屋。どちらも天井を高くしてロフトを設けたことで、スペースにゆとりが生まれました。ロフトはベッドとして活用しています。
子ども部屋の上にあたるダイニング。1 階の天井高を上げたことで、リビングとの間に4段ほどの段差ができました。
ダイニングとスキップフロアでつながるリビング。この上にもロフトをつくったため、天井高は抑え目になりましたが、空間の重心が下がり、かえってくつろげる雰囲気になりました。
スキップフロアのメリット
スキップフロアのメリットをまとめてみました。
構造計算をして安全性を確保できれば、変化に富んだ魅力的な住まいができるはず。
●傾斜や段差がある敷地では、その形状を生かしてスキップフロアをつくると、敷地を平らにするための盛り土・切り土のコストを抑えられる。
●限られた空間を効率よく利用できる。
●立体的でテンポのある面白い空間をつくることができる。
●一般的な2 階建て・3 階建てより、家族の気配や声が伝わりやすい。
●視線が上下階に抜けるため、面積以上の広さを感じることができる。
●階段をベンチがわりのように使うことができる。
スキップフロアのデメリット
反対に、スキップフロアのデメリットを挙げてみましょう。
強度や耐震性のほか、歳を重ねたあとの暮らしも考慮に入れて検討するのがおすすめです。
●構造上の弱点となるケースがある。
●構造計算を行ったり、建物の強度を高めるために、建築予算が高くなる。
●空間のつながりが複雑になり、生活動線・家事動線が悪くなる場合がある。
●小さな子どもがいる家では、安全性に注意が必要。
●高齢になってくると、段差の移動が負担になりやすい。
スキップフロアをつくる際に考えるべきポイント
上で紹介したデメリットを理解した上で、実際にプランニングをする際に考えておくべきポイントをまとめてみました。
●フロアが何層かに分かれているスキップフロアでは、中間のフロアを通って上下階に行くことになるので、動線をよく整理しましょう。特に毎日の家事動線が複雑にならないように注意して。
●狭い空間の中に複雑なスキップフロアを計画すると、階段ばかりが目立ち、より狭く感じることもあります。できるだけ広さをイメージしながらプランすることが大切です。
●毎日階段を上り下りすることになるので、余裕のあるゆるやかな階段にしましょう。つまずきを予防するために、階段の踏面と蹴上げのサイズは家全体で統一するのがおすすめ。
●高齢になった時を想定して、寝室とトイレは同じフロアにレイアウトしておくと安心。日中に比べて、夜間の段差の移動は特に危険です。
●家全体に音が伝わりやすいことを想定しておきましょう。受験勉強などに備えて、声や音が気にならない個室をつくっておく手もあります。
スキップフロアをプランする際の注意点
次にプランする際に注意すべきことをまとめます。
●必ず構造計算を行って、建物全体の強度を確認すること。インナーガレージがRC造でその上が木造といった「混構造」になる場合は、特に注意が必要です。
●スキップフロアは平面的ではなく、立体的なプランになるので、空間のイメージが難しいもの。できれば立体模型を作ってもらい、設計者から詳しい説明を受けながら進めてください。
●段差の安全性には十分に配慮を。子どもや高齢者にとって危険そうな段差ができてしまった場合は、手すりなどを設けておくと安心です。
●階段の上り口や下り口には、床を照らす照明を設置して。暗感式の埋め込みタイプがおすすめです。
●フロア同士の間仕切りが少ないプランでは、冷暖房が効きにくくなります。予算はかかりますが、セントラル空調を採用できればベストです。
スキップフロアの間取り・プランニングのコツ
スキップフロアについての解説は、こちらのページにもあります。実例をもとに、間取りやプランニングのコツを詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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まとめ
スキップフロアは構造に深く関わってくるので、安心した住まいにするためには注意しなければいけないポイントがいくつもあることがわかりました。
とはいえ、問題をクリアできれば広がりが生まれたり、空間に変化をつけられたりとメリットは大!
なるべくスキップフロアの設計に慣れたパートナーを選び、安全性とメリットの両立を目指しましょう。
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アドバイスをくださったのは
取材・文/後藤由里子
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