【Oさん宅(神奈川県)】
海とウインドサーフィンをこよなく愛するご夫妻と、来年小学校に上がるMくん(6歳)の3人家族。ご主人は学生だった約20年前からウインドサーフィンを始め、国内の大会で優勝した経験の持ち主でもあります。
中庭を通って玄関ドアをあけると、2階までの吹き抜けにらせん階段が気持ちよく伸びる、Oさんのお宅。中庭と吹き抜けを中心に家の隅々まで光と風が行き渡る、心地よい住まいです。
ウインドサーフィンが暮らしの一部となっているOさん一家が、この海辺の街に暮らし始めたのは約5年前。最初は賃貸住宅に住んでいましたが、海まで自転車で約10分のちょうどいい土地が見つかったため、ここで新居を持つことを決意したそうです。
インターネットで依頼先探しを始め、20名ほどの建築家が登録している「湘南建築家コミッション」というサイトを発見。紹介された3名の建築家に実際に会ってみて、「私たちの話をとにかく聞いてくれたのが谷田さんと日野さんでした。設計したお宅を見学させてもらったときも、建主さんとの関係がまるで友達みたいで。私たちとも感覚が合いそうだと思って決めました」
Oさん夫妻が出した要望は、「海へ行くための基地のような家」。休日はほとんど海で過ごすため、家の中はリゾートスタイルではなく、リゾートの延長ではあるけれどハワイのコテージのようにシンプルに。休日は海で思いきり楽しみたいので、平日の仕事の疲れはその日のうちにとれるようなリラックスできる家にしたいということでした。
そうしてできた家は、家の内側から光をとり込み、近隣の視線を気にせずにリラックスできる明るい住まい。吹き抜けと中庭をぐるりと囲むようにつけたシアーカーテンは、閉めることによって夏と冬の冷暖房効率を上げると同時に、開放的な空間に異なる表情を与える効果もあります。「吹き抜けを通る風と、中庭から入るやわらかい光が気持ちいいですね。窓の外の木々がざわめいてると、いい風が吹いているな、と海に行きたくてうずうずします」とご主人。「玄関が中庭にあるというプランに感心しました」と奥さま。自然を感じながら暮らせる、心地よい住まいになりました。
1F 玄関ホール
建築家が設計したまっ白の美しいらせん階段が印象的な玄関ホール。構造の梁を見せた2階の勾配天井まで伸びる吹き抜け空間は、住まいのほぼ中央に位置し、光と風と家族の気配が行き交います。
2F DK
隣家に接する西側を壁で閉じ、中庭から光をとり込む2階のDK。「住んでみて、直射日光が家の中にそれほど入らなくてもいいんだなと実感しました」とご主人。2階にプランニングしたLDKとスタディコーナー、子ども部屋は、中庭と吹き抜けを介してつながり、ワンフロアを見渡せる開放感が。
どっしりとした厚みのある木のカウンターテーブル。最初はシャープなデザインでつくろうと思ったそうですが、ごつごつした耳つきのまま板を利用し、木の素材感を生かしました。
中庭と吹き抜けを囲むようにつけたカーテンを閉めると、開放的な空間とはまた違った表情に。「文化祭などで教室をカーテンで仕切ると、見慣れた空間が違うように見えたドキドキ感が原点です」と谷田さん。課題だった夏冬の室温コントロールにも一役買います。
2F キッチン
【写真左】キッチンは「INAX」のⅠ型システムキッチンを採用し、手元を隠す造作と木のカウンターテーブルをプラスしてアイランドキッチンのように仕上げました。
【写真右】キッチンの奥には引き戸の収納を。収納力も十分です。
2F リビング
【写真左】勾配天井になっている2階のリビング。天井高は一番高いところで4.4mもあり、ダイナミックな構造梁が白い空間のアクセントに。しずくのような形の照明は「遠藤照明」のもの。
【写真右】隣家と目線が合わないようにハイサイドライトを設けた西面。「ソファに座って、あの高い窓から夕日に染まった雲や星空を眺めていると、本当に癒されます」とご主人。
2階は構造計算をしたうえでなるべく柱をなくし、ひと続き感のあるオープンな空間に見えるよう設計したそう。床は、床暖房対応のパイン無垢材フローリングをホワイトオイルで仕上げています。
2F 子ども部屋
中庭を介してキッチンの対面に位置する子ども部屋。「引きこもれないように」と半ばオープンな間取りにしたことで、いつも家族の気配を感じられて安心感があります。
1F ゲストルーム
中庭に面した部屋は現在、ゲストルームにしていますが、将来はご夫妻の寝室にする予定。窓をあけると、中庭まで続く広い空間として感じられます。家族の衣類や季節のものをたっぷり収納できるウォークスルークローゼットを隣接させ、家事や整理整頓がしやすいようになっています。
2F スタディコーナー
現在パソコンコーナーとして活用しているスタディコーナーは、将来Mくんの勉強机になる予定。デスク前の壁には塗装下地としてマグネットペイントを施し、掲示板として使えます。
1F 寝室
シンプルなボックスのような寝室は、天井高を2.1mに抑えて落ち着いた空間に仕上げています。将来、ご両親と同居することになったときには、この部屋を譲る予定だとか。
1F 外部シャワー
外につけるシャワーは、マリンスポーツをする人の必需品。ボードや体についた砂をざっと落としたり、海水のついた道具のあと片づけやお手入れにも便利です。
1F 浴室・サニタリー
1階にまとめた水回りは、平日、ご主人が「サーファーからビジネスマンに変身しなければならないので(笑)、会社に行くための気持ちをととのえられるよう」、モノトーンを基調にしたシティホテルのようなモダンなデザインにしました。床は、冬でもひんやりしないサーモタイルを採用。
1F 納戸
海から帰ったとき、流れるようにスムーズに身支度できる“サーフ動線”の確保は、Oさんがこだわった要望のひとつ。外部シャワーから玄関を通らず納戸に直接入れる出入り口を設け、そのまま洗面室や浴室に直行。納戸にはボードやウエットスーツを収納でき、洗濯機も備えています。
外観
外壁や屋根は、メンテナンスがラクなガルバリウム鋼板張りに。「倉庫のような、海へ出るための秘密ドックのような、タフなイメージにしたかった」というデザインです。
DATA.Oさん宅(神奈川県)
設計のPOINT
見た目の開放感や一体感と同時に室温調整などの暮らしやすさを工夫
谷田建築設計事務所
谷田 一彦さん 日野 志保さん
中庭や吹き抜けをつくって開放的なプランにしましたが、日射や室温のコントロールが課題でした。勾配天井にはシーリングファンをつけて、あたたかい空気と冷たい空気の循環ができるようにし、夏と冬の冷暖房効率を上げるためにカーテンをつけました。デザイン面では、垂れ壁をつくらずに扉を天井の高さにしたり、窓に立ち上がりを設けず床面ギリギリまでガラスにすることで、一体感を出すようにしました。
profile.
ともに一級建築士。2005年にライフスタイルを提案する現事務所を夫妻で立ち上げる。施主と一緒につくり上げるため、1棟ずつ個性が光るデザインに。滋賀、愛媛でも活動中。
家族構成 |
夫妻+子ども1人 |
敷地面積 |
136.06㎡(41.16坪) |
建築面積 |
57.34㎡(17.35坪) |
延べ床面積 |
107.84㎡(32.62坪) 1F 53.61㎡ + 2F 54.23㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(在来工法) |
工期 |
2010年4月〜7月 |
本体工事費 |
約2200万円 |
3.3㎡単価 |
約67万円 |
設計 |
谷田建築設計事務所 TEL: 03-3462-6620 |
施工 |
目黒建設 TEL: 046-232-9301 |
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