瀬戸さんのご主人は、長男でひとりっ子。ご両親と一緒に暮らすのは、お互いにとってごく自然の成り行きだったといいます。「結婚する前から妻ともその話をしていましたし、両親もそのつもりだったようです。僕たちが結婚したのとほぼ同時期に、両親は住んでいた家を建てかえたのですが、僕らが一緒に住むかもしれないと考えて、外観デザインを洋風にしたり、基礎をしっかりつくったりと工夫してくれていました」
その後、ご主人の仕事の都合で一家はイタリアへ。2年後に戻ってきてから、同居をスタートする時期を検討し始めたといいます。「長女が小学校3年生くらいの時期がちょうどいいかな、と話し合って。もうひとつの問題は、同居のスタイル。当時はまだリフォームすることは決まっていなくて、リフォームせずにそのまま2階に住むという案や、敷地内に自分たちの家を新築するという案もあったんです」
リフォームせずに住む完全同居型では、生活スペースが足りず、お互いに気がねしながら暮らす不安が。一方、新築するとせっかくの庭がなくなり、ご両親の家であいている2階フロアも生かせません。そこでたどり着いたのが、2階を増築して床面積を広げたうえで、子世帯専用の玄関や水回りを新たに設ける、分離型の二世帯住宅プランでした。
「お互いに生活時間帯が違うので、玄関は別のほうがやっぱり気楽。これから長く暮らしていくことを考えると、キッチンやお風呂もそれぞれにあったほうがストレスなく生活できるはず、と思いました」
これはご両親も同じ考えでした。仕事で深夜に帰宅したり、それぞれの友人を招いたり、好きな時間に入浴したりと、両世帯の自由な生活を重視したのだそう。
「とはいえ、上下階なので気軽に行き来できる距離。特に子どもたちは毎日のようにおじいちゃん、おばあちゃんを訪ねています。子育てには理想的な環境かもしれませんね」
子世帯のリフォーム
Living & Dining
既存建物のゆったりした天井高を生かした、開放的なLD。キッチンの上にはロフトもつくり、収納に役立てています。「ちょうどDKのスペースが増築した部分。これだけ広げられたおかげで、家族4人が快適に暮らせています」(左)
ダイニングとキッチンの間にも室内窓を採用。趣のある木枠のガラス窓は和のユーズド。(右)
家族で長い時間を過ごすLDは、床をボルドーパイン、壁を珪藻土で仕上げ、自然素材のよさを味わって。玄関ホールとの間を仕切る壁には室内窓をつけて、光と気配を届けています。
Kitchen
シンクと向かい合わせのコンロスペースも、材質をそろえて木製に。壁は素朴なブリックタイルで仕上げました。(左)
シンク前につけた窓は眺望抜群。木製カウンターが家具のような印象を与えます。(右)
Entrance
ナチュラルな雑貨が映える玄関ホール。チェッカーガラス入りのドアも愛らしい。(左)
庭の緑になじむ木製の外階段が、子世帯フロアへのアプローチ。(中央)
階段を上がると、玄関ポーチを兼ねたデッキが。ご両親を招いてバーベキューをする際にも活躍。(右)
Sanitary
繊細な表情のモザイクタイルに実験用シンクの組み合わせ。「娘たちがいずれ鏡のとり合いをしなくてすむように(笑)、カウンターをL字形にしました。収納も確保できて一石二鳥です」
Kid's room
カーテンとクロスの色で女の子らしい雰囲気を演出。「姉妹なのでワンルームを共用させてもいいかなと思っていますが、どうしても個室を欲しがったら2つに仕切るつもりです」
Bedroom
2階でリフォームしなかったのはこの部屋。内装もきれいで収納スペースも充実していたため、そのまま使うことにしました。工事費のコスト削減にも貢献しています。
クラシックな家具でまとめた、親世帯のリビング。「孫たちはここでよくおやつを食べたり、一緒にテレビを見たり。私たちにとってもなによりの楽しみです」とお父さま。
1階の外壁に合わせて2階の西側を増築したため、ほぼ総2階のつくりに。ご両親の住まいへの思いを尊重して、外観デザインは変えず、外壁の仕上げも既存建物にそろえました。(左)
お母さまが丹精している美しい庭が、二世帯の共用スペース。「ここを通って2階に上がるプランにして大正解。コミュニケーションの機会が自然にふえたと思います」(右)
瀬戸さんがリフォームのパートナーに選んだのは、ナチュナルな作風が人気のハウスビルダー「ピーズ・サプライ」。奥さまが愛読していたインテリア誌「プラスワンリビング」(小社刊)で知り、その素材使いやデザインに惚れ込んで依頼を決めたといいます。
「リフォームプランにはイタリアでの生活経験を生かしました。特に木製カウンターのキッチンは、現地で住んでいた家で気に入ったもの。シンクの前に窓があって外を眺められるプランも、当時から憧れていたものなんですよ」と奥さま。
打ち合わせを重ねながら検討したプランは、10通り以上。ワンフロアでもきゅうくつにならないよう、2階の一部を増築し、さらに内階段をなくして外階段を設けるプランを考えました。階段ホールの分も2階の居住スペースが広がり、納戸などに役立てることができたそう。ご両親の暮らす1階でも、階段だった部分をクローゼットにリフォーム。2階に置いていた衣類などをおさめるのに重宝しているそうです。
「息子一家と暮らすようになって感じるのは、生活に張りが出たこと。つねに顔を合わせているわけではないけど、いつでも会える安心感と緊張感がいいのだと思います」とご両親。なかでもお孫さんたちと庭で過ごす時間は、ガーデニング好きのお母さまにとって、かけがえのない宝物になっているようです。
リフォームのポイント
設計のポイント
内装のみをリフォームする場合と違い、増改築をするには建築確認申請が必要。つまり、既存建物の状態によってはできないケースもあります。瀬戸さん宅の場合は既存建物に十分な強度があり、2階部分を増築することができました。さらに意外と面積をとる階段を外に出し、天井高を生かしてロフトを設けたことで、ゆとりの生活空間が確保できました。
ピーズ・サプライ 井上徹さん
「ピーズ・サプライ」は1996年設立のハウスビルダー。「シンプル&ナチュラル」をコンセプトに、新築、増改築、リフォーム、キッチン設計を手がける。
DATA
家族構成 |
夫婦+子ども2人+夫の両親 |
住居形態 |
一戸建て(木造2階) |
築年数 |
12年 |
延べ床面積 |
166.22㎡(50.28坪)(増築部分 18.00㎡を含む) |
リフォーム面積 |
64.22㎡(19.43坪)(増築部分18.00㎡を含む) |
リフォーム部分 |
寝室を除く2階全体、1階クローゼット |
リフォーム期間 |
2012年12月~2013年3月 |
リフォーム設計・施工 |
(有)ピーズ・サプライ |
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