同居感はないけれど、お互いの気配が心地よい。ほどよい距離感と安心感のある暮らし

Sさんご夫妻がご主人の実家を二世帯にリフォームしようと考え始めたのは、結婚して3回目の賃貸契約更新を迎えたときのこと。

「契約を更新するか、家を持つかを考えたとき、実家で暮らすことも選択肢のひとつだったんです。もともと僕の実家は母方の祖父母との二世帯住宅でしたし、交通の便がよく、生活環境も昔から知っているので安心でした」とご主人。三世代7人の大家族でにぎやかに育った奥さまも二世帯リフォームに賛成でした。

同じ頃、奇遇なことに、実家でも水回りなどをリフォームする話がもち上がっていました。「今がいいタイミングではないかと思いました。それで、一部に手を入れるより全面リフォームして同居しようと、僕らから提案したんです」

ご両親も喜んで同意し、Sさん夫妻が中心となって設計会社をリサーチ。リフォーム会社の紹介本やホームページの施工事例写真などを参考に候補を数社にしぼり、最初に訪ねたのが「スタイル工房」でした。「スタイル工房さんが手がけた家はどれも木の質感がうまく生かされていて、シンプルだけど飽きずに長く住める家がつくれそうだね、と４人の意見が見事に一致。迷わず１社目で決めました」と奥さま。

玄関ホールを引き戸でゆるやかに仕切った共用玄関を入り、１階は親世帯、２階は子世帯の住まい。「最初は玄関も別々にという話があったのですが、共用のほうが広く使えて、外に出なくても行き来ができて便利だからと、今の形になりました。住んでみると、息子たちが帰宅したときに『ただいま』『おかえり」と自然に声をかけ合うことができて、安心感があります」とお母さま。

平日は親子の生活時間帯が全く違い、顔を合わせるのはごくまれ。「同居感も気をつかうこともほとんどない」と４人が口をそろえて言います。一方、週末は１階に集まって食事を楽しみ、４人で出かける機会もふえたそう。お互いにほどよい距離を保ちながら快適に暮らしています。

子世帯のリフォーム

Living & Dining

奥行き約２mの広いバルコニーにはデッキ材を敷き、ガーデンベンチを置いて部屋の延長のような視覚効果を。（左）

バルコニーに面した天井までフルオープンの掃き出し窓に加え、ダイニング側は天窓つきの吹き抜けになっていて、実サイズ以上の広々空間に。（右）

Kitchen

夫婦で料理を楽しむSさん。食器棚を置かずにすむようカウンター下などに造りつけ収納を設け、2人でも調理しやすい広さを確保。キッチンは「トクラス」、コンロは「ハーマン」を採用。

Bedroom

もとは和室。梁の奥にあった押入れをとり払うことで、ダブルベッドを置いてもゆったり。カラークロスの壁と「オスモカラー」で白く塗装した梁がアクセント。

W・I・C

左側は棚が１段とポールだけのシンプルなつくり。下に衣装ケースを重ねてチェスト風に使用。右側の壁には帽子を飾りながら収納するフックもとりつけました。

Sanitary

「既製品の使い勝手のよさとお手頃感が捨てがたく」、「LIXIL」のナチュラルな洗面台を選択。ニッチやミラー、タイルを組み合わせて造作感を出しました。（左）

Sさん夫妻は朝シャワー派。窓には視線を遮りながら光をとり込む「ニチベイ」の浴室用ウッドブラインドを。（右）

洗濯室～ＬＤＫ～寝室～Ｗ・Ｉ・Ｃと、動線が輪になった回遊型プランを採用。「家事をするときも移動がラクで、生活するうえでとても便利です」

トイレは壁紙やディスプレイ小物、タイルをブラウン系で統一。デザインが気に入って選んだ白木の床板風フロアタイルは、掃除のしやすさも◎。

Grenier

お気に入りの本やＣＤ、写真などを集めた隠れ家のようなグルニエ。奥に壁づけの棚を設置してライブラリーコーナーをつくり、空間を有効活用。

親世帯のリフォーム

Living & Dining

親世帯のＬＤは「家具蔵」のウォールナット材のダイニングテーブルが主役。（左）

テレビコーナーに飾り棚を設け、旅行みやげや息子さんが子どもの頃に書いた絵など思い出深いものを集めて。（右上）

ＬＤに隣接する５畳の部屋は、右半分はお父さまの仕事スペース、左半分はお母さまの趣味スペース。本や裁縫道具など、散らかりがちなものはこの部屋に集め、ほかの居室はすっきりと。（右下）

Kichen

明るい光の中で料理できるよう、キッチンにもドアを設けました。コンロ、調理台、シンクのすぐそばに、それぞれ使用頻度の高いものを置くための棚を造作。コンパクトで使いやすいキッチンです。

Entrance

左側は親世帯、右側は子世帯の、共用玄関。ホール中央の柱と壁の間に引き戸を設け、開ければ室内で行き来でき、閉めてゆるやかに仕切ることも可能です。

共働きで帰宅が遅い日も多いというSさん夫妻は「家事も身支度もスムーズにしたい」と、生活動線に配慮したプランを希望しました。そして完成したのが、洗面室～ＬＤＫ～寝室～Ｗ・Ｉ～Ｃと主要スペースの動線がひとつの輪でつながった、暮らしやすさ抜群の住まいです。ＬＤは、吹き抜けや部屋の延長のようにも見える広いバルコニーなど、以前の家の長所を存分に生かすリフォームで広がり感がいっそう増しました。

一方、自宅で過ごす時間が長いご両親は、暮らしの中心であるＬＤの明るさと開放感にこだわり、掃き出し窓に加えてドアや収納扉も天井までフルオープンに。これまでの暮らしでふえた荷物は思いきって処分し、お気に入りのものと今必要なものだけに囲まれた、身軽な暮らしを満喫しています。

「帰りが遅い日が続くとお母さんが夕食を差し入れてくれて、とても助かっています」と奥さま。料理好きのお母さまにとってはそれが張り合いに。ひとつ屋根の下、お互いの存在が心地よく、困ったときには心強く感じられるS家の二世帯生活です。

リフォームのポイント

設計のポイント

両世帯ともＬＤとキッチンの開放感や明るさを強く希望され、ドアや階段の位置を工夫してより広く、フルオープンの窓を採用することで光あふれる空間を実現しました。各スペースに設けた収納も力を入れた点です。スペースを無駄にせず使いやすいよう、しまうものに合わせたサイズで造作しました。

スタイル工房　黒沢拓也さん

1980年埼玉県生まれ。大学卒業後、映画製作会社に２年勤めたのち、スタイル工房に転職し、建築関連の資格を取得。「お客さまに寄り添いながら」がモットー。

DATA

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