安心して住める家をつくるには、地震を想定した対策が欠かせません。築年数のたった家のリフォームなら、なおさら。土地や建物の状況をしっかり見極めて、万全の対策を施しましょう。
このページでは、戸建て、マンション、または両方に共通する地震で壊れない家を手に入れるための調べ方や対策を紹介します。
地盤を調べる
マンションの場合は地盤調査を行い基礎を設計しているので、きちんとした調査と基礎工事があるという前提で、地盤に関してはそれほど心配はないはずです。
戸建ての場合、2000年に建築基準法が改正されて以降は地盤調査が事実上、義務化されましたが、築20〜25年の住宅では行われていないケースがほとんど。
軟弱な地盤は、地震が起こると液状化や不同沈下を引き起こし、建物が傾いたり倒れたりすることも。まずはしっかり地盤を見極めることが大切です。
地盤調査を行った結果、地盤が弱いことがわかっても、地盤の強度に合わせた地盤改良を行えば安心。
ですが、相応の費用がかかることは覚悟してください。中古住宅を購入する場合などで、地盤が弱いところを避けられるのであれば、それに越したことはありません。
中古住宅の場合、地盤の状態を見極めるのは、更地に新築するケースよりも比較的簡単です。
地盤に不具合があればそこに立っている建物に何かしらの兆候が現れているからです。
下記のチェック項目に従って既存の建物や敷地の周辺を観察しましょう。
地盤調査のデータをチェック(戸建て・マンション)
特に戸建ての場合は、地盤の強度の確認は必須です。その土地の強度を調べるには、周辺地域で実施した調査結果からでも、ある程度は推察できます。
国土地盤情報検索サイトKunijiban(国土交通省)では、これまでに実施された地盤調査のデータをHPで公開しています。
ほかにも、自治体によっては調査結果が閲覧できるサイトもあるので、チェックしてみてください。
液状化マップやハザードマップをチェック(戸建て・マンション)
最近では、国や市区町村のHPで、液状化するおそれのある地域を示した液状化マップや、地震や津波・洪水などの災害リスクを示したハザードマップが公開されているので、こちらもぜひ調べてみましょう。
こういった情報を公開している自治体であれば、防災対策の意識も高いと考えられますので、物件選びの際の参考にするのも手です。
土地の来歴を調べる(戸建て・マンション)
その昔、田んぼや湿地帯、池だった地域は、地震の時に揺れやすく、地盤の被害が生じる可能性があります。
土地の来歴は、地名からもある程度は推察できます。水、沼、谷がつく地名など、水や低地を連想させる地名は要注意です。
また、古地図で昔の土地利用状況を確認するのも一案。古地図は、地元の図書館などで閲覧できます。
敷地内や周囲を歩いてみる(戸建て)
建物のまわりを一周してみて、地面の状態をチェックしてください。建物と地面の間にすき間やくぼみがあるケースは、地盤が沈下しているおそれがあります。
また、周辺の道路の一部が陥没していたり、雨のあとになかなか乾かない水たまりがあるのも、地盤が弱いエリアの可能性があります。
周囲を歩いてみる(戸建て)
坂の多い街や、ひな壇上の造成地は注意。こういった地形に家を建てる場合、土地を削ったり(切り土)、盛ったり(盛り土)して平らな土地をつくりますが、きちんと造成していないと、切り土や盛り土の境目の地盤がゆるんでずれていることがあります。
擁壁を観察してみて、ひび割れがあるのは地盤がゆるんでいるサインであることも。
また、盛り土をはじめ、埋め立て地などは地盤が軟弱な可能性が。自治体が公表している地図で確認したり、売主などに造成方法を確認してみましょう。
周辺を歩いてみて、擁壁のひび割れや、塀がたわんでいる家が広い範囲に及んでいたり、電柱が曲がっているのを見つけたら要注意。軟弱地盤のおそれがあります。
履歴を確認
建物がいつ建ったのか、現在までにどんな補修が行われてきたのかを調べることは、建物の状態や安全性を知るための重要な手がかりになります。
マンションの場合は、修繕の履歴が残っているので確認が容易にできますが、戸建ての場合は、それがないケースがほとんど。まずは売主や不動産会社に確認してみまよう。
履歴が不明な場合、素人判断による安全性の確認は難しいので、建築家やホームインスペクターなどのプロに診断を依頼することを検討しましょう。
1981年より前に建てられたか否か(戸建て・マンション)
建築基準法の耐震基準は、これまで大地震が起こるたびに改正され、1981年に「新耐震基準」が制定されました。
この年の6月以降に確認申請を行った住宅なら、震度6強〜7程度の地震でも倒壊・崩壊しない耐震性が。
注意したいのは、工期が長いマンションの場合。81年の竣工では、建築確認は新耐震基準以前という可能性もあります。
大地震や浸水・火事などに遭っているか(戸建て)
これまでに大きな地震や、大雨・台風による浸水などの災害に遭っているかどうか、売主や不動産会社に聞いてみましょう。
災害後に簡単な修復だけですませてしまったケースでは、表面上は問題なく見えても、構造体など内部にダメージを抱えている可能性があります。
その場合は必ず、専門家による診断を依頼しましょう。
修繕履歴と今後の修繕計画を確認(マンション)
マンションでは10〜15年に一度、外壁の補修や給排水設備、屋上の防水など大規模な修繕が行われるのが一般的。きちんと行われていないマンションは、建物の劣化が早く進んでいる可能性もあるので要注意です。
同時に修繕積立金の額も確認を。低すぎる場合は適切なメンテナンスがされていなかったり、多額の一時金が発生することもあります。
増改築やメンテナンスの履歴を調べる(戸建て)
戸建ての場合も修繕履歴を確認しましょう。新しい外壁や屋根を上から張る修繕などをした場合、構造体内部の不具合が隠れているケースもあるのでヒアリングは重要です。
また、増築をしているなら、必要な手続きをしたかを確認。手続きせずに増築した場合、柱や壁を補強しないで撤去していたり、増築部の接合がきちんと行われていない可能性も。
老朽化をチェック
築年数のたった古い住宅をリフォームする場合、建築当時の図面がきちんとそろっているケースは、むしろ稀でしょう。
また、たとえ図面が残っていたとしても、確認申請のときの図面と実際の建物が異なる場合も少なくありません。
建物の耐震性を判断するうえで、建築当時の図面はあるに越したことはないのですが、それ以上に、建物の現状をきちんと確認することが重要になります。
“目立ったひび割れがないか”“建物が傾いていないか”“雨漏りや白アリによるダメージはないか”・・・・など、建物の傷んでいる箇所を丁寧に確認した上で、地震に備えた適切な耐震補強や修繕をすることが、安心な家を手に入れるための近道となります。
たとえば基礎や外壁のひび割れ、天井や壁の雨ジミ、建物のゆがみや傾きなどは、素人でも見分けやすいもの。
反対に、床下や小屋裏といった構造体に関する部分は素人ではなかなか判断が難しいので、少しでも心配な部分があったら、建築家など専門家に診断してもらうことをおすすめします。
基礎や外壁のひびをチェック(戸建て)
家の外観を見回して、ひび割れがないかを調べましょう。ひび割れが何ヶ所か見つかったら、その位置に注目を。
部屋の縦と横の同じ線上にあったり、上下階の同じ位置にある場合、その線を境に地盤が傾いている可能性があります。
外壁に目に見えてわかる亀裂や異様にふくらんだ箇所があれば、雨もりなど建物内部の老朽化が進んでいるおそれがあります。
壁や天井にシミがないか(戸建て)
雨ジミは素人でも見つけやすいので、じっくり観察してみましょう。壁と天井の境にシミがある場合は、雨もりしているかもしれません。
また、家具の裏や部屋の隅のカビや黒ずみは、壁体内結露が原因の場合も。
木造住宅で雨もりなど水のトラブルがあると、木材が腐食したり、白アリが発生するおそれがあるので要注意です。
メンテンナンスの状況を調べる(マンション)
先述でもマンションの修繕履歴の確認について説明しましたが、実際の建物の状況を目で見て確認することも大切です。
特に気になるのが基礎や外壁の目立ったひび割れ。外壁の内部に雨が染みこんで構造体の劣化が進んでいる可能性が。
きちんと補修したあとが確認できれば安心ですが、逆にひびの修繕跡が多すぎる建物も心配です。
床下の状態を確認(戸建て)
まずは、床下点検口を開けてみます。このとき異様にカビくさいなど、においが気になる場合は要注意。床下環境がよくない可能性があります。
ほかにも、基礎のコンクリートのひび割れ、土台や床組みに水もれの跡がないかどうかをチェックします。
ただし、素人では判断が難しい部分でもあるので、できれば専門家に見てもらうと安心です。
床の傾き・きしみがないか(戸建て)
意外にも頼りになるのが自分の感覚。室内に入ったときの足元の感覚や目線に違和感を感じる場合、大きな傾きやゆがみがあるケースが。
素足で歩いて床のへこみやきしみが目立つ場合は、基礎部分が傷んでいることも。
床の傾きは、水平器で測ると正確な数値がわかります。傾きが気になる場合は専門家に計測してもらいましょう。
屋根裏をのぞいてみる(戸建て)
上階の押入れやクローゼットの天井に設けられた点検口から、屋根裏の状態を確認します。
懐中電灯で内部を照らしながら雨もりのシミがないか、また、手を入れてみて湿った感覚がないかどうかも確認していきます。
ただし、屋根裏のチェックは足場も悪く危ないので、建築家など専門家に依頼するのがベストです。
建物の形状を見る
地震に強い建物は、正方形に近いシンプルな形です。縦と横の差が極端に大きい細長い建物や、凹凸が多くて複雑な形の建物は、地震によって大きな力が加わったときに、バランスを崩して損傷するおそれがあります。
リフォームをすることが前提であれば、こうした地震に対して弱い部分を直したり、補強することはいくらでも可能です。
“柱を太くしたり梁を渡す”、“すじかいなどを入れた耐力壁をバランスよく配置する”、“上下階の壁の位置をそろえる”など、耐震性を上げる方法はいくつもあるので、まずは建物の形を見て、弱い部分をしっかりチェック。
間取りの変更を検討する際に、耐震性を上げる計画も盛り込むようにします。
LDKを2階に配置する逆転プランは、必然的に1階に個室を設けることになり、壁の量が多くなるので構造的に安定した形となります。
反対に、コーナーに大きな吹き抜けを設けたり、1階より2階が飛び出した形の建物などは、構造的に弱くなるので、しっかりと耐震補強を施すことが必要になります。
基礎が鉄筋コンクリートでつくられているかどうか(戸建て)
最近の木造住宅は、布基礎かベタ基礎がほとんどですが、築年数のたった建物ではまれに独立基礎のケースも。
最も耐震性が高いベタ基礎は、建物全面に鉄筋コンクリートの底盤を設けて建物を支える構造で、地震の衝撃を地盤に逃します。強固な地盤の場合は、布基礎を採用することも。
耐震性を考えるとベタ基礎か布基礎であれば安心ですが、共通して大事なポイントは、基礎の中に鉄筋が入っているかどうか。
2階建ての場合はシングル配筋、3階建てなどはさらに強度の高いダブル配筋を採用するケースが多いようです。配筋の有無は、下地センサーなどでチェックします。
屋根の材質を確認(戸建て)
昔ながらの瓦屋根の家は要注意。建物に加わる地震の強さは建物が重いほど大きくなり、特に屋根部分が重くなるとより不安定になります。
スレートや金属板葺きなど比較的軽い建材を使用しているなら安心です。築年数が古い場合、下地材の劣化の可能性も。
屋根の葺きかえ工事は高額ですが、耐震性のほか、家を長持ちさせる面からも有効です。
1辺4m以上の大きな吹き抜けがあるか(戸建て)
開放感のある吹き抜けは気持ちいいですが、耐震の面からはあまりおすすめできません。
開口部が多くて壁や柱が少ないと、構造的なバランスがとりにくく、耐震性が劣る原因になります。
吹き抜けは1辺4m以下などなるべく小さくして、梁を渡すなど十分な補強が必要です。
また、窓は外壁面の4分の3以内におさめないと壁の強度が不足する可能性も。
壁にすじかいがあるかどうか(戸建て)
すじかいとは、柱と柱の間に斜めに入れて構造を補強する部材のこと。こういった補強を施した壁を「耐力壁」といい、これがバランスよく配置されていることが耐震性を高めるポイントとなります。
すじかいのほか、構造用パネルを打ちつけて補強する方法もあります。これも外見からは判断できないので、ヒアリングや図面などで確認を。
1階の東西南北各面のうち全く壁のない面がある(戸建て)
地震の揺れは、建物に水平方向に大きな力を加えます。この力に耐えるには、東西南北の各面にバランスよく壁を配置することです。
配置に偏りがあると、地震で加わる力が壁の少ない箇所に集中し、弱いほうに倒れてしまいます。
開口部も同様に、東西、南北に同じ程度つくるのが理想。コーナー出窓など角に壁がない建物はバランスが悪くなります。
平面の形は単純なほうが耐震性が高い(戸建て)
L字型やT字型など複雑な形の建物より、正方形や長方形など単純な形のほうが、耐震性を保ちやすくなります。
外観上も凹凸の多い家は、地震や台風から受ける力をうまく分散することが難しいため、複雑な力が加わることになります。
ただし、きちんと構造設計がなされていて、施工もしっかりしていれば、複雑な形の建物でも問題ありません。
1階より2階が飛び出している建物は要注意(戸建て)
建物は、1階から2階まで外壁がそろっているほうが、構造上は安定します。小さな敷地の家などで見かけることの多い、2階部分を飛び出させて(オーバーハング)カーポートなどに利用している建物は不安定になりがち。
また、2階が小さい建物は一見安定感がありそうですが、2階の外壁の下に壁がないと、建物に負担がかかり、地震が起きたときに2階の重みを1階が支えきれなくなる場合もあります。
2階を支える壁にひびが入っているなど、劣化した部分がないかも要チェックです。
住宅に地震への対策を施す
地震の際は、家具の転倒や棚の上からの落下物による被害も多いもの。地震は「くるかもしれない」ではなく、「必ずくるもの」と考えて対策をとっておくことが大切です。
リフォームを機に、転倒の心配がない造りつけの家具を設置することなども検討してみましょう。
また、揺れがおさまったあとの避難通路の確保も重要。万が一、家具が倒れたとしても、被害を最小限に抑える配置を考えましょう。
たとえば寝室では、ベッドの位置と本棚やタンスが倒れる方向が重ならないようにしたり、出入り口をふさいでしまう位置に置くのも避けましょう。
戸建ての場合なら、雨水を利用できる仕掛けをつくっておくと、震災時の備えにもなります。
また、“避難通路となるベランダにモノをたくさん置かずに整理整頓する”、“家族で連絡をとり合う方法や避難場所などを決めておく”、“日頃から近隣とのコミュニケーションを密にはかっておく”など、普段の習慣も大切。
地震がきても慌てずに行動できるよう、住まい方の工夫もこの機会に考えておきましょう。
ガラスフィルムで飛散防止(戸建て・マンション)
災害時のけがで多いのは、割れたガラスによるもの。割れても破片が飛び散りにくい網入りガラスもおすすめですが、ガラスフィルムを張るものおすすめです。避難通路となる廊下や玄関まわりのガラスに張っておくとよいでしょう。
また、リフォームで建具をとりかえるなら、ガラス部分にポリカーボネートやアクリル板などを採用することも検討して。
テレビや冷蔵庫など大型家具には転倒防止策(戸建て・マンション)
地震の際、テレビや冷蔵庫など大型家電の転倒は大怪我のもとです。テレビは壁づけにする方法もあります。
その際、壁の下地材の石膏ボードではなく、柱や桟にきちんと固定すること。
テレビや冷蔵庫の下に貼るタイプの「耐震マット」もおすすめです。パソコンなどの精密機器にも貼っておくと安心。
家具は造りつけがベスト(戸建て・マンション)
リフォームで内装をかえるなら、背の高い家具はできるだけ造りつけにすると安心。手持ちの家具を使う場合は、造りつけの家具と組み合わせて固定させるのも一案です。
置き家具は、耐震金具などでしっかりと壁や柱に固定すること。粘着式の「耐震マット」なら、ネジやクギなしで家具を固定できます。
さらに、前面を少し浮かせる形に家具の下にパッキンを入れておくと、倒れにくくなります。
食器棚には耐震ラッチを設置する(戸建て・マンション)
大きな地震では、食器棚などの扉が開き、中のものが落下・散乱することも。こうした被害を防ぐためには「耐震ラッチ」が有効です。
耐震ラッチとは、地震が発生したときに、センサーが揺れを感知して扉が開かないようにロックがかかる仕掛け。揺れがおさまると同時にロックは自動解除されます。キッチンの吊り戸棚や食器棚につけておくと安心です。
寝室や子ども部屋には重いものを置かない(戸建て・マンション)
寝ている間に地震がくることを想定して、寝室や子ども部屋には重いものや倒れて危ないものは置かないのが基本。
寝室にタンスを置く際は、寝るときだけ一番下の引き出しを少しあけておくと、前方に倒れてこないので安心です。
また、収納は上段には軽いもの、下段に重いものを入れるようにしておくと、安定性がよくなります。
雨水タンクを設置しておく(戸建て)
戸建てのリフォームを検討しているなら、災害時の備えとして貴重な水を確保できる雨水タンクの設置も検討してみては。
雨どいに小型の貯水タンクを接続するのが一般的で、庭の水やりや真夏の打ち水、洗車などに利用すれば水道代の節約にもなります。
雨水タンクの設置を補助金で助成する制度を設けている自治体もあるので、調べてみましょう。
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取材協力
リノベーション住宅推進協議会
リニューアル仲介株式会社 稲瀬稔さん
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