家づくりをする際には、耳慣れないいくつかの契約を交わしながら進めることになります。はじめての家をつくる機会であれば、いつどのような契約があるかもよくわからないはず。よくわからないだけに、相手の言うままに流されていくと、高い買い物だけに後で痛い思いをすることもありえます。そんな失敗を防ぐためにも、事前に契約内容や注意点を理解しておきましょう。
家づくりに関する契約とは?
土地を購入して家を建てるまで、いくつかの取り決めがあります。双方が合意したことを、単に口約束ではなく、正式に法律で成立させることを「契約」といいます。家づくりにかかるお金は非常に高額なので、どんな契約でもそれぞれの内容に納得できるかどうか、急がず慎重に進めることが大切です。
家づくりに関する契約の種類にはどういうものがあるの?
契約とひと口にいっても、家づくりに関係のある契約には、「土地売買契約」「建築設計・監理業務委託契約」「工事請負契約」「金銭消費貸借契約」の4つがあります。
家づくりでは、完成するまでに上記の複数の契約が関わり、ひとつとして疎かにはできません。それぞれの契約の種類と内容をきちんと把握しておきましょう。
土地売買契約
土地売買契約とは、土地を売る側と買う側で交わす契約ですが、不動産会社が仲介して契約することがほとんどです。
土地の所在地と面積を明確にし、売買価格、支払い条件、所有権移転登記の時期、どちらかの都合で解約になった場合の処置などを取り決めます。
建築設計・監理業務委託契約
建築設計・監理業務委託契約とは、建築士事務所に設計を依頼する場合に、建築士事務所と建主が交わす契約です。 建物の形を図面に起こす設計作業、工事費見積もりのコスト管理、工事が図面どおりに行われているかどうかの工事監理などが主な業務内容です。
2008年に建築士法が改正され、重要事項説明などが義務付けられたので、契約時に各項目をしっかり確認してください。
工事請負契約
工事請負契約とは、工務店やハウスメーカーと建主が交わす契約です。
工事内容、請負代金の金額、工期、支払い条件などをとり決めて、契約時には図面や仕様書も添付されます。
金銭消費貸借契約
金銭消費貸借契約とは、住宅ローンを申請して融資が決定になった後で金融機関と結ぶ契約です。
家づくりに関する契約っていつ、どのタイミングで行うの?
では上記に挙げた契約をどういうタイミングで行うかについて、一般的な流れを紹介しましょう。
まず家を建てるためには土地が必要になるので、土地を入手するための「土地売買契約」が最初の契約になります。もちろん既に土地がある場合はこの契約はありません。
その後、設計を依頼する会社や建築家と「建築設計・監理業務委託契約」を結びます。
土地売買と設計が同じ会社組織の場合は、土地売買契約と同時に行う場合もあります。
次に予算や間取り等のプランを練っていき、かかる費用が分かった上で住宅ローンといった「金銭消費貸借契約」を結びます。
そして最後に「工事請負契約」を結んで実際の工事がスタートします。
建売住宅を購入する場合は、家は土地に既に建っている状態なので、上記の契約を一気に行うことになります。
家づくりの契約でチェックすべきポイントが知りたい
家づくりをどこに依頼するかによって、着目ポイントが変わります。
以下、ケースごとに紹介していきます。
ハウスメーカーとの契約時注意点
設計以外にもさまざまな面倒を見てくれるのがハウスメーカーですが、何から何まで任せっきりというのは考えものです。
たとえば「工事請負契約」。営業マンは、一件でも多く成約し、実績を上げたいがために、契約を急がせる傾向にあります。しかし、詳細な打ち合わせをしていないうちに契約に進んでしまうと、あとでとり返しのつかないことにもなりかねません。
ハウスメーカーとの家づくりの流れは、早い段階でラフプランと概算見積もりが出され(「家づくりにおけるハウスメーカーの見積書チェックポイント」を参考)、たいていのメーカーは「細かい打ち合わせは契約のあとにしましょう」というのが常套句です。
しかし、建物というのは本体工事以外に付帯工事があり、この分の工事費があとで加わったり、オプション費用も加算されたりすると、契約時の額を大幅に上回ることもあります。
細かい打ち合わせをせずに契約し、あとから「こんなはずではなかった」と言っても手遅れです。このような事態にならないためにも、「契約は、細かい打ち合わせの後にします」とはっきり伝えましょう。
書類作成などの費用を請求されるかもしれませんが、契約時にその分を引いてもらう交渉をすれば良い訳です。この家なら建ててもいいと納得できてはじめて、契約すべきではないでしょうか。
建築士事務所との契約時注意点
ハウスメーカーの場合は設計・施工を一括して依頼するので、メーカーと「工事請負契約」を結びますが、建築家に設計を依頼する場合は、設計を建築事務所に、工事は工務店に依頼することになり、それぞれに契約を結びます。
建築士との建築設計・監理業務委託契約
建築士と交わす契約は「建築設計・監理業務委託契約」です。 業務内容は主に3つで、建主の希望を聞きながら初期段階で提案する「基本設計業務」、基本設計をもとに詳細な図面や仕様書を作成し、見積もり調整などを行う「実施設計業務」、工事が始まってから適正な工事が行われているかどうかを監理する「工事監理業務」です。
名称は少々難しいのですが、要は、建主の要望を形に起こす図面をつくり、予算に沿って工事費の見積もりを調整し、工事が図面どおり行われているかどうかをチェックするのが建築家の仕事で、業務内容をまとめた書類が契約書です。
内容は建築士事務所によって違い、一律ではありませんから、契約時にはしっかりチェックしてください。
建築士との契約で確認すべきこと
契約書の中には、設計業務に対する「設計監理業務報酬」(一般に設計料といわれる)の金額や、支払い時期なども明記されています。金額は法律や建築業界などで決められているわけではなく、設計の実績、経験年数、技術レベルなどによって建築士事務所が決めています。
一般的に建物の規模、構造、立地、設計の難易度、スタッフの人件費などを考慮して決めますが、建築工事費の10〜15%というところが多いようです。
しかし、規模が小さい建物では15%以上になる場合もあります。 支払い方法についてもまちまちで、契約時、基本設計時、実施設計時、竣工時の4回に分けて払うのが一般的ですが、3回や5回に分ける建築士事務所もあるなど、一律ではありません。いつ、どの段階で支払いが発生するのかを確認しておきましょう。
工務店との契約時注意点
先述の通り、家づくりおける工事に関する契約は、工務店と結ぶ形となります。
工務店との工事請負契約
建築事務所に設計を依頼した場合は、工事を工務店に依頼し、その工務店と「工事請負契約」を結ぶことになります。時期は本見積もりや実施設計のあとになるのが一般的です。
契約時に工務店から用意される主な書類は、工事請負契約書、契約約款、本見積書、設計図書、工程表などがあります。 工事請負契約書には契約の基本的な内容が明記されていますから、きちんと確認しましょう。
契約約款は、工事を進めるうえで万が一トラブルがあったときのとり決めなどが書かれています。 本見積書には、工事の内容、部材の単価などがわかる内訳明細書の内容が書かれており、設計図書は、平面図面や断面図、展開図などの図面一式と仕様書などがまとめられています。
設計図だけでも厚さ1cmほどの冊子になる場合もありますから、書類が全部そろうと膨大な量になります。一式受け取ったらじっくり目を通す時間をもらい、よく確認することが大切です。
工務店との契約時に確認すべきこと
まず、必要な書類がそろっているかどうかです。契約約款については難解な文章で書かれていることが多いので、前もって読んでおくことはもちろん、契約時には工務店のスタッフに声を出して読んでもらうといいでしょう。
そのときに疑問や質問があれば、説明を受けるようにしてください、こちらは素人なのですから専門用語に疎いのは当然のことです。納得するまで説明してもらいましょう。
次に、竣工日や引き渡し日、工事費の支払期日などが明記されているかどうかもチェックします。竣工日や引き渡し日の日付については、「着工◯◯日以内に竣工」という書き方だとNGです。
天候や追加工事などで遅れた分が日延べする可能性がありますから、きちんと「◯◯年◯月◯日竣工」と書かれているかどうかを確認してください。
また、建築確認申請の確認が取れているかどうかも大切な確認事項です。これが取れていないと、工事を始めることができません。
住宅ローンの申請は一般的に契約時に行われますが、万が一、審査が通らず融資が実行されなかった場合は白紙に戻すことがよくあります。このような記載がされているかどうかも確認しましょう。
工事請負契約後の変更について
工事請負契約をした後での軽微な設計変更が多少出てくる場合もありますが、大幅な変更はできれば避けたいものです。 実施設計が完了した後の設計変更は、場合によっては変更工事に伴う料金が発生し、大幅なアップになる可能性があり、現場の工事関係者に影響が及ぶこともあります。
さらに、建築確認の申請後となれば、再度申請しなければなりません。2007年6月の建築基準法の改正により、申請後に工事内容に変更が出た場合は、再申請しなければならないと定められたからです(軽微な変更を除く)。
これにより、再申請のための手数料が余分にかかり、さらに、許可が下りるまでは工事がストップするため、工事遅れが出る可能性があります。 家づくりで「基本設計の段階から納得がいくまで打ち合わせを重ねることが大事」といわれるのはこのためです。
工事請負契約の契約約款について
契約約款は、工事を進めるうえで万が一トラブルが合った場合の対処法などをとり決めたものです。これは通常、工務店が作成し、建主側はその内容に同意するという形式になります。
内容をおおまかに説明すると、工事請負者(工務店)が設計図どおりに設計すること、一括して下請けに出さないこと、工事が設計図と違う場合は修正すること、工事期間中の責任の所在、さらに保証期間やどのような保険に加入しているかなど、何項目にもわたって明記されています。
工務店に有利な内容になっていることが多いようですので、不安な項目があったら確認しておくことをおすすめします。
また建主にとって不利な内容があったとしても、契約内容の変更には応じてもらえません。工事費の支払いタイミングやメンテナンスについては、覚書として明記してもらいましょう。
家づくりに関わる契約で起こりがちな失敗事例が知りたい
家づくりの契約でよく聞くトラブルを挙げてみました。
- ●ハウスメーカーの営業さんの「月末までに契約をしたら安くする」というセールストークに乗ってしまって、勢いで契約をしてしまった。でも実際は非常に高い買い物だけに、もっとじっくり検討すべきだったと後悔している。しかも後で調べると、そのセールストークは常套句であることが分かって余計がっかり。
- ●実際に家づくりが進む中で、ちょっとだけプランの変更をお願いしたいと思ったが、「契約後は間取り相談はできない」と一蹴。対応してくれるかどうかも確認すべきだった。
- ●口約束したことが書類や契約書にきちんと反映されているかどうか確認したほうがいい。後で「言った」「言わない」で揉めて、せっかく夢あるマイホームづくりなのに、嫌な雰囲気になったのは辛い。
- ●土地と建物を同じ会社から購入しました。土地が破格だったので大喜びで契約したけれど、後でよく見たら、建物の建築費は相場より高かったみたい。結局、建物に上乗せされていたのですね。建築費の相場は分かりづらいだけにチェックしたほうがいいと思う
まとめ
家づくりにはいくつかの山場となる契約があります。それぞれが重要なので、事前にどういう契約があるのか、そしてその内容を理解し、じっくり検討した上で進めるようにしましょう。一度交わした契約を破棄するのは精神的にもこたえますし、違約金もそれなりにかかってきます。決して、勢いに押されて進めないように気をつけてください。
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