1995年の阪神大震災では、死亡者の4分の3が倒壊した建物の下敷きになっての圧死、もしくは倒壊した建物による腹部圧迫などからくる窒息死でした。家族を守るはずの家が、凶器になってしまうことほど悲しいことはありません。
日本に住んでいる以上、いつどこで遭遇するか分からない地震。家族の安全を守るため、家は地震に強いものを建てたいものです。
地震被害を軽減する方法には大きく分けて「耐震」「制震」「免震」の3つがあります。似た意味合いのイメージがありますが、漢字が違うように意味するところが異なっています。それぞれのメリットやデメリットを知り比較することで、違いや特徴を見ていきましょう。
耐震住宅とは
耐震住宅とは、「揺れに耐える家」のことです。ツーバイフォーのように面で支える、筋交いなどをしっかり入れた耐力壁を使うなどの方法で、建物の躯体を強固に作り、地震の揺れに対抗します。普通の地震では大きな損傷がなく、大震災の場合にも倒壊しないといえる住宅のこと。現行の建築基準法にあわせて設計施工された家であれば、基本的にすべてが耐震住宅といえます。
制震住宅とは
制震住宅とは、「揺れを制御する家」のことです。耐震性のある壁の中に、制震装置をプラスアルファで設置することで、建物の揺れを装置が吸収します。普通の地震では大きな損傷がなく、大地震の場合には躯体の内部の制震装置が揺れのエネルギーを吸収しますので、揺れによる家具の転倒被害なども起きにくくなっています。
免震住宅とは
免震住宅とは、「揺れを吸収する家」のことです。基礎と建物の間に免震装置を設置することで揺れを吸収し、建物に伝わる揺れを減らします。普通の地震では大きな損傷がなく、大震災の場合にも揺れのエネルギーを躯体に伝えない構造ですので、建物自体の傷みも抑えられます。
「耐震」「制震」「免震」の違いとは?
耐震・制震・免震の違いは、読んで字のごとく揺れに「耐える」か、揺れを「制する」か、揺れを「免れる」かの違いです。
耐震はがっしりと強固な建物を作ることで揺れに対抗するイメージで、制震・免震は装置によって揺れのエネルギーを吸収し、軽減するイメージです。
耐震住宅、制震住宅、免震住宅それぞれのメリットとデメリット
【耐震住宅のメリットとデメリット】
現行の建築基準法に準じており、耐震住宅にするための特別な費用は発生しません。大地震の際にも建物の倒壊や損壊がないようにするという基準であり、損傷する恐れはあります。また、建物は揺れますので、ものが落ちる、家具が倒れるなどの被害はあるかもしれません。そして上層階ほど激しく揺れます。大きい余震を繰り返す場合など、何度も揺れることで、建物の損傷が増していく恐れもあります。
【制震住宅のメリットとデメリット】
地震の揺れを吸収するため、建物自体が変形することを防ぎます。繰り返しの揺れにも強いうえ、台風などの強風の揺れも抑えます。転倒防止金具などの使用で、家具の転倒なども免震住宅と同程度の被害にとどめることができます。耐震装置を設置する場所や数によって、効果が違ってくるため、しっかりした構造計算が必要です。
【免震住宅のメリットとデメリット】
揺れのエネルギーが建物に直接伝わらないことから、建物の変形や傷みが少なく済み、繰り返しの揺れにも強いです。しかし縦揺れの場合には効果を発揮しにくく、また台風などの強風でも上層階が揺れる場合があります。また、装置自体が高価であること、強固な地盤が必要であること、地下室の設置ができない、装置のメンテナンスが必要など、さまざまな条件の制約があります。
耐震住宅、制震住宅、免震住宅それぞれの特徴と価格を比較!
【耐震住宅の価格】
2000年に改正された現在の耐震基準は、震度6強〜7程度(阪神大震災レベル)の地震がおきても、建物構造の倒壊や損壊がないことを目安に設定されています。そのため今から家を新築する場合には、別途の出費をせずとも本体工事で耐震構造を得られます。
【制震住宅の価格】
制震装置には、オイルダンパーや鋼材ダンパー、制震パネルなどがあります。例えばオイルダンパーは、揺れによってシリンダーが作動し、内部の粘性度が高いオイルを圧縮します。その抵抗で地震エネルギーを吸収します。
設置のコストは30万〜100万程度と言われます。もちろん建物の大きさや、施工業者によっても違ってくるため、施工業者がどのような制震技術を持っているのかというリサーチが必要です。
【免震住宅の価格】
こちらもあくまで目安ですが、設置のコストは200万〜500万程度と言われます。高額なため、一般の住宅に使われることはまだ少ないです。軟弱地盤や、液状化の恐れがある地盤には向かないため、場合によっては地盤改良の費用も必要です。また、装置の定期点検が必要であること、大地震のあとには臨時の点検が必要であることなど、メンテナンス費用がかかることも忘れてはいけません。
【耐震・制震・免震のそれぞれの住宅について比較してみましょう】
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メリット
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デメリット
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施工業者
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価格
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耐震住宅
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・特に費用が必要ない
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・繰り返しの地震に弱い ・建物の上層部ほど大きく揺れる ・大きな地震のあとには修繕費用がかかることがある
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どの施工業者でも対応できる
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本体工事に含まれ、追加の費用が発生しない
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制震住宅
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・繰り返しの地震に強い ・建物が傷みにくい ・強風による建物の揺れも軽減できる
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・制震装置のしっかりした配置計画が必要
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対応できる業者が限られる
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30万〜100万円ほど
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免震住宅
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・繰り返しの地震に強い ・建物が傷みにくい
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・費用が高額 ・台風などの強風で揺れる ・地盤の強さ、土地の広さなどに制約がある ・装置の定期点検が必要 ・大地震のあとには臨時点検が必要
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対応できる業者が少ない
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200万〜500万円ほど
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地震に強い家を建てる方法
地震対策には耐震住宅・制震住宅・免震住宅の3つの方法があることが分かりました。
そのほかにも、地震に強い家を建てる方法としては土地の選び方や基礎工事のやり方、地盤調査や補強の方法、工法の選び方などさまざまなチェック項目があります。
地震に強い家を建てることを考えるためには、こちらの記事も参考にしてください。
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まとめ
家は家族の暮らしの拠点となる大切な場所。家族や財産の安全を守れるものであることが望ましいですね。建築基準法にのっとって建てた家は、そのままで耐震住宅ではあるのですが、できれば家自体の傷みも軽減し、長く暮らしたいものです。大地震に遭っても家を失うことなく住み続けることができるというのは、被災したときには大きな安心となります。
どのような地震対策をとるのがベストかというのは、家を建てる地盤の強さや土地の広さ、間取りのプランや工法などの違いでそれぞれ変わってきます。現在では耐震に制震をプラスするなど、複合的なプランの提案もしてもらえます。施工業者がどのような地震対策の手段を持っているのか充分リサーチし、かかる費用なども考えあわせながら、どのような地震対策をとるか検討しましょう。
★おしゃれな注文住宅を建てたい方はこちら
ライター:加世田侑季
北海道函館生まれ。住んだことのある街は群馬県前橋、東京都吉祥寺、兵庫県明石の東側と西側、福岡県北九州。現在は福岡県宗像在住で、世界遺産の氏子。夫は鹿児島の人ですし、各地の方言がまざって大変です
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