近ごろ、シェリー酒の人気が上昇中なのをご存知ですか? と言うのもここ数年、日本へのシェリー輸出量が増加しているというのです。
でも、シェリー酒は日本ではちょっとなじみが薄いですし、「どんなお酒なのかも知らない!」という人も多いのではないでしょうか。今回はそんなシェリー酒について、基礎知識からおすすめの飲み方までをご紹介します。
シェリー酒とは?
シェリー酒と聞くと、お酒の1ジャンル?といったイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。でも、実はシェリー酒は白ワインの一種。ワインの一種ではありますが、一般的なワインとは違うところがたくさんあります。では、どう違うのか、見ていきましょう!
◎原産地呼称制度をクリアしているか
シェリーは原産地呼称制度によって品質を保証されているお酒。シャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方で造られ、かつ、製造方法などの厳しい条件をクリアしたものだけが「シャンパン」として認められますよね。シェリーもそれと同様。「シェリー」を名乗ることは、産地や製造方法などの厳しい諸条件をクリアしたものだけが、認められているのです。
◎シェリーの産地は?
シェリーにとって、一番重要なのが産地。原産地呼称制度により、スペイン南部のアンダルシア州にある、「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」(以下、へレス)という小さな町とその周辺の限られた地域で造られていることが、「シェリー」を名乗るための第一条件となっています。
シェリーの産地は、「シェリーの三角地帯(シェリートライアングル)」とも呼ばれ、ヘレスのほかに「エル・プエルト・デ・サンタ・マリア」と「サンルーカル・デ・バラメダ」という3つの街を中心とした約7,000haほどの地域。ここで作られたものでなければ、たとえ同じ製法で造ったとしても「シェリー」と名乗ることはできないのです。厳しいですね…。
◎シェリーは酒精強化ワイン
「シェリー」は製造方法も一般的なワインとは異なります。いわゆる「酒精強化ワイン」なのです。
酒精強化ワインとは、醸造の過程でブランデーなどアルコールを添加することでアルコール度数を高めたワインのこと。シェリーはポルトガルの「ポート」や「マディラ」と並び、世界3大酒精強化ワインに数えられているのですよ。
酒精強化ワインの特徴は、温度管理が難しい地域でも保存性を高められること。そして、味に個性を持たせることができることです。
アルコール度数についても、ワインをベースにアルコールが加わるので、シェリーの度数は15~22%ほど。ワインのアルコール度数は12~14%が程度なので、シェリーのほうがちょっと高いですね。
◎熟成方法がワインと違う
シェリーは醸造をするとき、あえて酸化熟成をさせるのも特徴です。具体的には、「ソブレタブラ」と呼ばれる樽のなかへ3分の2程度の量だけワインを注入し、樽内でワインの表面が空気に触れる状態をキープ。酸化熟成することで独自の風味を生み出します。一般的なワインは酸化を嫌うので、これは大きな違い。
さらにシェリーは、「ソレラシステム」という抜き注ぎ熟成をするのもポイントで、熟成期間や樽の異なるものを混ぜて熟成させます。こうした方法を採用しているので、シェリーは風味豊か。かつ、毎年同等の品質を保ちながら出荷しやすくなっているだそうですよ♪
シェリー酒の意味って?
ところで、そもそも「シェリー酒」という名前、どういう意味なのか気になりませんか?
日本ではシェリー酒として名前が知られていますが、「酒」を付けずに「シェリー」と呼ぶのが本来。ただし、「シェリー」(Sherry)という名前も英語名で、本場のスペインでの名称は「ビノ・デ・へレス」(Vino de Jerez)です。これは「へレスのワイン」という意味なのです。
へレスは、「シェリートライアングル」の3つの町のなかでも最大のシェリー生産地。しかもシェリーの品質を管理する「シェリー原産地呼称統制委員会」がある町です。へレスのワインは12世紀にはイギリスで販売され、「シェリシュ」というアラブ名で名が広まっていたのだとか。当時すでに価値が認められていたと伝わっています。
ちなみに、へレスはシェリーの産地であるともにフラメンコ発祥の地とも言われ、馬祭りやロードレースの世界選手権が開催され、観光地としても人気を集めていますよ。
シェリー酒の白ぶどうの種類は?
シェリーの原料となるぶどうですが、パロミノ種、ペドロ・ヒメネス種、モスカテル種という3種類の白ぶどうのみです。ぶどうの品種はブレンドせずに、それぞれ1品種のみで作ります。品種ごとの違いを見てみましょう。
◎パロミノ
辛口のシェリーに使われる品種が「パロミノ」。へレスで育てられているぶどうの大部分がパロミノです。
パロミノは粒の皮が薄く、香りや酸味、糖度が控えめ。風味がニュートラルないことが、シェリーを造るのに最適と考えられています。パロミノ・フィノとパロミノ・デ・ヘレスの2品種があり、パロミノ・デ・ヘレスのほうが希少で高品質。
◎モスカテル
モスカテルは、マスカット系の品種。甘みがあって、そのまま食べてもおいしいので、日本でも食用として販売されているのを見かけたことがあるかもしれませんね。
モスカテルは、比較的干ばつに強いので、保水力の弱い土壌の畑で栽培されることが多く、主にサンルーカル南の海岸沿い、チピオナ地域で収穫されています。お花やピーチのような芳しい香りが魅力で、甘口ワインを作るのにぴったり。モスカテルで作ったワインは、主に同名の甘口シェリーや辛口タイプのシェリーとブレンドして仕上げられます。
◎ペドロ・ヒメネス
フルーツの風味と香り豊かなシェリーを作ることができる品種。果皮が薄く、天日干しにしてレーズン状にし、糖度をしっかり高めることで、味に深みのある極甘口ワインが造れます。同名の甘口シェリーに使われる品種で、発酵を早い段階で止めて、ぶどうの甘さを生かしたワインにするのが一般的。辛口タイプのワインとブレンドすることもります。
シェリー酒のタイプは?
シェリーには多種多様なタイプがあるのが魅力のひとつ。シェリーは、どのぶどう品種を使うのか、どのように醸造や熟成をするかといったことによって、いろいろな味わいになります。そんなシェリーのタイプについて、代表的なものを挙げてみましょう。
【ぶどう品種による分類(辛口・甘口)】
シェリーの原料となる白ぶどうは、パロミノ、モスカテル、ペドロ・ヒメネスの3種類のみ。どのぶどうを使うかにより、次の3種類に分けられますよ。
◎ビノ・へネロソ
パロミノ種で造るシェリー。発酵を最後まで完了させる辛口タイプです。
◎ビノ・ドゥルセ・ナトゥラル
甘みのある品種、モスカテルとペドロ・ヒメネスで造るシェリー。発酵を途中で止めて、ぶどうの甘さを残すようにします。天然甘口タイプと表現されることも。ビノ・ドゥルセ・ナトゥラルは、さらに次の2種類に分けられます。
・「モスカテル」
…ビノ・ドゥルセ・ナトゥラルのなかでも、モスカテル品種を天日干ししたものから造るもの。濃いマホガニー色で、マスカットならではの香りがあります。極甘口シェリーですが、フレッシュさを兼ね備えています。デザートワインのように楽しんでも。
・「ペドロ・ヒメネス」
…こちらも極甘口シェリー。ペドロ・ヒメネス種を天日干しにしたものから造るビノ・ドゥルセ・ナトゥラル。アルコール度数は15~22度。濃いマホガニー色で香りが深く、ソフトな口当たりは柔らかいのに力強さも感じられます。
バニラアイスにかけたり、青かび系チーズに合わせたり、デザートワインにしたりして味わえます。
◎ビノ・へネロソ・デ・リコール
先に挙げた辛口タイプの「ビノ・へネロソ」と、甘口タイプの「ビノ・ドゥルセ・ナトゥラル」をブレンドして造る、甘口タイプのシェリー。ブレンド方法により、甘さの段階を調節できます。次のクリーム、ミディアム、ペイルクリームの3種類に分けられます。
・「クリーム」
…オロロソ(後述)をベースにして造る、フルボディのブレンド甘口シェリー。口当たりははなめらかで、木樽や干しぶどうを思わせる深みのある香りが楽しめます。フォアグラやメロンなどと好相性。アルコール度数は15.5~22度。
・「ミディアム」
…アモンティリャード(後述)をベースにして造る、繊細な香りのブレンド甘口シェリー。キッシュやエスニック料理などと合わせても◎。アルコール度数は15~22度。
・「ペイルクリーム」
…フィノ(後述)をベースにして造る、ブレンド甘口シェリー。エレガントな香りとほのかな甘口が感じられる仕上がりです。フォアグラと相性よし。アルコール度数は15.5~22度。
【熟成方法(フロール)による分類】
次は、熟成方法によるタイプの違いを見てみましょう。シェリー酒は熟成を始めると、発酵の段階で固形物がタンクの底に沈み、済んだワインになります。このときのアルコール度数は11~12度。表面には「フロール」と呼ばれる酵母の膜ができます。
フロールはヘレスならではの気候やぶどうの性質、たっぷりの酸素量などの条件がそろうことで発生するのだとか。このタイミングで、最初の分類が行なわれ、次のようなタイプに分けられます。
◎フィノ
…すっきりとした香りで色が淡く、軽い口当たりのワイン。ワインの蒸留酒を加えて15度までアルコール度数を上げます。アルコール度数が上がってもフロールの膜はそのまま残っていて、フロールが樽の中でワインの表面をカバーして空気とワインを遮断する膜となってくれます。その結果、ワインの酸化を防ぐことになります。
辛口タイプのシェリーで、幅広い料理と合わせやすいもの。なかでも生ハムと相性抜群。
◎オロロソ
…フィノと違って、酸化熟成をしたワイン。フルボディで色が濃く、ナッツやカラメルを思わせる華やかな香りが魅力。こちらもワインの蒸留酒を使って17~21度までアルコール度数を上げます。17度までアルコール度数が上がると「フロール」が生育できません。そのため、空気とワインを遮断する膜がないため、ワインは酸化熟成をします。
辛口タイプで、肉の煮込み料理などと合わせると美味。酸化熟成をして造られたシェリーは栓を抜いたあとも味わいを保ちやすいので、ゆっくりマイペースに味わいたいときにもどうぞ。
◎マンサニーリャ
…フィノのなかでも、海辺の町「サンルーカル・デ・バラメダ」で造られるものは、「マンサニーニャ」という名前を使えます。独自の気候条件のもとで、通常のフィノよりもさらに繊細で、海から届いたかのような塩気を感じる風味となっています。辛口タイプのシェリーで、シーフードとの相性が良いと言われます。
◎アモンティリャード
…フィノかマンサニーリャを一旦造り、さらに第2段階として酸化熟成を加えたワイン。フィノとオロロソの中間のような色合いで、味わいはバランスがよく、複雑な香りが楽しめます。アルコール度数は16~22度。
辛口で、幅広い料理と合わせやすく、初めてシェリーを飲む人にもおすすめ。
シェリー酒の飲み方5選
最後に、シェリー酒のおいしい飲み方をご紹介しますね。
◎ストレートで飲む
一番シンプルで基本的な飲み方はストレート。そのまま飲むだけですが、香りを楽しみたいので、できればワイングラスに注いで飲みたいところ。白ワイン用のグラスがベストです。
◎カクテルにして飲む
シェリーはカクテルにして飲むことも多いお酒。代表的なものをピックアップしてみましょう。
・「レブヒート」
…フィノかマンサニーリャをサイダーなどの炭酸飲料で割るもの。グラスに氷を入れ、シェリー、その2倍量の炭酸飲料を注げば完成です。好みでミントの葉やレモンを添えるとさらに美味。地元スペインでポピュラーな飲み方ですよ。
・「アドニス」
…シェリーの飲み方として日本でよく知られているカクテルが、アドニス。食前酒として人気です。
辛口のフィノとスイートベルモットを2:1でグラスに入れ、オレンジビターズを加えてステアして作ります。スイートベルモット、オレンジビターズが必要ですが、本格的なシェリーカクテルを楽しみたいときにどうぞ。
・「バンブー」
…日本生まれのカクテル。「アドニス」のスイートベルモットを、ドライベルモットに換えたもの。すっきりとした辛口の味わい。
◎アイスクリームと一緒に
極甘口シェリーなら、アイスクリームにかけるのもおすすめ。シェリーの凝縮された風味が、アイスクリームと絶妙にマッチすること請け合いです。大人のデザートとして楽しんでみてくださいね。
まとめ
まだまだ奥深いシェリー酒ですが、どんなお酒なのか、少しはお伝えできたでしょうか? 辛口から超甘口までいろいろな味があるので、タイプの違いを知るほど、好みのシェリー酒に出会いやすくなるかもしれませんね。
シェリー酒はまだ飲んだことがない人も、この機会によかったら挑戦してみてくださいね♪
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文/北浦芙三子
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