カリスマ家庭教師・辻義夫先生の授業は、夢中で遊び、楽しく学ぶうちに、知らないうちに理系科目が大好きになってしまうことから、「わくわく系中学受験」と評判です。
インタビュー最終回となる今回は、わくわく学べる子に育てるための年齢ごとのポイントをご紹介!今日から親子で楽しめるアイデアが満載です。
【0〜2歳】乳児期は語りかけとスキンシップ
0歳から通える習い事もたくさんありますね。親子でゆっくり楽しめる範囲なら、親にとってもリフレッシュや育児の情報交換の場所になるなど、メリットも多いと思います。
ただ、習い事や幼児教室で忙しくて、親子の時間が減ってしまうようでは考えものです。
この時期に何より大切なのは、語りかけやスキンシップ。
絵本の読み聞かせをしたり、ひざにのせて手遊びをしたり、子どもの話を聞いたり、そんななにげない時間こそがとても大切です。これは乳幼児期に限ったことではなく、子どもが成長し、小学生、中学生になっても変わりません。子どもにとっては、大好きなお父さん、お母さんと話をする、話を聞いてもらうことが、安心感を生み出す大切な時間なのです。
愛着形成の重要な時期である乳児期なら、なおさらですね。
【3〜5歳①】幼児期は数の感覚を身につける
3歳くらいになると、数に興味を持つ子が増えてきます。この頃から、生活のなかで数の感覚を育むことを意識するとよいでしょう。
たとえば、おやつの時間に「今日のおやつはビスケット5枚だよ」と見せてから、まずお皿に2枚のビスケットをのせて出してみます。すると子どもは「あれ?まだあったはずだぞ」と頭をめぐらせますね。こんなふうに遊び感覚で、数の量感を瞬時に判断できる練習をしていきましょう。
「卵パックに4つの卵が入っているよ。あといくつあったらいっぱいになるかな?」
こんなクイズで遊ぶのもいいですね。実物を見せながら、目で見て感じる量感を通じて数への興味を広げていきます。10のかたまりの感覚は、小学校の算数ではもちろん、日々の生活でも役立ちます。
【3〜5歳②】お絵描きで座って書く練習を
小学校に入学する前に基本的な勉強のルールが身についていると、授業にも戸惑うことなく取り組めます。
基本的なルールとは、鉛筆の持ち方や椅子に座るときの姿勢、消しゴムをかけるときは反対の手で紙を押さえる、といったこと。幼児期の遊びや生活を通じて、自然に習得していけると理想的です。
たとえば、お絵描きをするときには、椅子やテーブルの高さが子どもの体格にあっているかをチェック! 椅子に座ったときに、ひじがテーブルの上にのるくらいの高さが適切です。足がぶらぶらしてしまうなら、台を置いて、足の裏が床につくように調整しましょう。
また、鉛筆の持ち方についても注意が必要です。2〜3歳まではぐーで握るような持ち方をしていることが多いですが、だんだんだと親指、人差し指、中指で支える「えんぴつ持ち」へと移行するように促しましょう。グー握りでは、手首のスナップがきかないため、大きな線や図が書きにくく、すぐに疲れてしまうのです。
スケッチブックからはみ出るくらい、思いっきりお絵描きをするのもよい経験です。子どもたちのなかには、算数で「図を書きましょう」といっても、どうしても小さな図しか書けない子がいます。これは、これまで大きく手を動かす経験をしてこなかったことのあらわれなんです。
子どもがその成長段階にあわせて、遊びのなかで身につけていくことは、すべてのちの学校生活や勉強のなかでも生きてくることがわかりますね。
【小学校低学年】ボードゲームやトランプで計算力アップ
小学校低学年では、「勉強って楽しい!」というポジティブな感覚や手応えを味わうことが重要です。「ぼくは勉強ができる子なんだ!」という自己イメージで学校生活をスタートできると、子ども自身も「できる子」ポジションを守ろうと、日々の授業にも前向きに取り組むようになります。
しかし、だからといって、この時期に進学塾に通わせ、上の学年の内容まで学習を進める必要はありません。塾に行かせること自体は悪くありませんが、成績は度外視でOK!楽しく通えていれば、それで十分です。家庭でも、ドリルや参考書に力を入れるより、遊びのなかで自然と数の感覚を養ったり、絵本や会話で語彙を増やしたりすることに意識を向けましょう
たとえば、トランプやスゴロク、ボードゲームなどは、親子で夢中になって遊びながら、同時に計算のトレーニングにもなっておすすめです。
たとえば、配られたカードの合計点数が21点を超えないようにするトランプのゲーム「ブラックジャック」は、すばやく足し算をしなければならないので、親も子どもも必死で計算!単純計算は繰り返すとどんどんスピードが上がり、子どもも大人と対等に勝負できるようになります。子どもにとって、親を負かすことは、最大の楽しみ!ぜひ、真剣に勝負に挑んでください。
こうして遊びの中で計算力を養った子は、幼稚園生や小学校1年生のうちに、自然と二桁の計算までパパッとできるようになることも少なくありません。
【小学校中学年】抽象的な概念の理解へ
小学校低学年までは、目で見てわかるものを中心に、物事の理解を深めていく時期です。たとえば10個のまんじゅうがあるというとき、10個分の長さは「テープ図」を使ってあらわします。まんじゅうが15個に増えると、5個分の長さのテープを付け足します。
これが、3年生になると、テープ図から「線分図」にステップアップ。まんじゅうという立体の量をただの線であらわすので、抽象度がぐっと上がりますね。
小学校中学年からは、こうした抽象的な理解ができるようになってくる年代です。一方で、「9歳の壁」「10歳の壁」とも言われるように、抽象的な概念に苦手意識を持ち始める子も増えてきます。
もし、子どもが線分図に納得感がないようなら、目に見える世界にもどって考え直すことが大切です。たとえば、図ではなく絵を書かせるなど、具体的な方法で理解を助けるとよいでしょう。
「この子は算数が苦手」「勉強ができない」と決めつけるのではなく、どこにつまずいているのか、どこに納得がいっていないのかを確認し、子どもが立っている場所にもどって積み上げていくことが大事です。
まちがっても、「お母さんも算数苦手だからやっぱりあなたも…」「お父さんが子どものころはこんなことでつまずかなかったのに、どうしてお前は…」といった、ネガティブな刷り込みをしないように気をつけて。
中学受験をする場合は、新4年生の春から通塾を始めるのが一般的ですが、4年生のうちは、楽しく塾に通えていればOK。宿題も完璧にこなす必要はありません。1回やってみて、間違えたところがあれば直す。それだけで十分です。
親はあくまでサポート役です
高学年になると、いよいよ受験対策も本格化します。通塾回数も増え、宿題の量も多くなり、テストのたびに順位が出ることも。順位によって座席やクラスが決まる塾もあります。
受験が近づいてくると親も気が気がでなく、「ちゃんと勉強しているの?」「今回のテストの結果はどうだったの?」と、つい目先の成績ばかりに意識がむきがちです。
しかし、受験生であっても、好きな本を読んだり、外で友だちと遊んだり、家庭で手伝いをする時間だって大切です。試験問題にも、机上の勉強だけではなかなか太刀打ちできない問題が多いことは、すでにお話したとおりです。
いちばん気をつけたいのは、親は「勉強をやらせる人」、子どもは「勉強をやらされる人」というふうに関係が固定化されてしまうことです。
あくまで親は、子どものサポート役です。子どもの将来を考えるからこそ真剣になるのは当然ですが、同時に「中学受験は親も視野が狭くなりがち」といことを頭に入れて、少し自分を客観視する冷静さも持ち合わせたいものです。この意識があるだけでも、子どもへの接し方がぐっとやわらかくなるはずです。
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辻 義夫(つじ・よしお)●理数教育課、中学受験専門のプロ家庭教師「名門指導会」副代表。「中学受験情報局かしこい塾の使い方」主任相談員。大手塾講師、個別指導教室運営を経て、楽しみながら理数系科目が好きになるノウハウを確立。勉強法や受験のお役立ち情報を発信している。
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