こだわりの家を建てたいけれど、予算があまりなくて…。と理想の家づくりをあきらめている人はいませんか?
大丈夫、建てられます!!
建主の思いと設計者の知恵とアイディアがたっぷり詰まった素敵な事例を紹介します。
使わない場所はなし!無駄のない間取りがシンプルな暮らしを生む
大江さん宅(徳島県)
「近所に飲みに行ったりして家の話題になると、初対面の人にも“あの家の人!”とわかってもらえたりするんです。家の印象って、自分が思うよりずっと影響力があるんですね」
結婚を機に家づくりをスタートさせた大江さん夫妻が最初に行ったのは、設計事務所3社によるコンペでした。ご主人のご両親との二世帯住宅を希望していたことと、高いところからの見晴らしがよさそうだったので2階建てを想像していたそうですが、建築家の高橋利明さんから提案されたのが子世帯と親世帯を完全に分けた平屋の家。「まったく想像していなかったので、驚きました」
「コストのことを考えると2階建てのほうが安くできます。ですが、実際に土地を見たところ家の前の交通量が激しく、2階建てにしても電柱などが視界を遮ってしまうので意味がないなと。平屋にして中を開放的にしてあげるほうが、この地に合っているのではないかと思いました」と高橋さん。
想定外のプランに驚きはしたものの、人をたくさん呼びたいと思っていた大江さん夫妻にとって、気軽に人を呼べる大きなテラスは魅力的に思えました。
そのかわり工夫したのが建材選びや建て方。壁面はビニールクロス、外壁はガルバリウム鋼板など安価な建材を使って、素材の力に頼るのではなくデザイン力で勝負。凹凸の少ない箱形の外観デザインもコストダウンに貢献しています。「カッコいい家に住みたい」という希望をあきらめるのではなく、家づくりにおいてどこを重視するのかというポイントをはっきりさせることが、大江さん宅のローコスト法。そしてなんといっても、高橋さんが日頃からひいきにしている職人さんが、高い技術はそのままに作業代を抑えてくれたこともコスト減につながった大きなポイントです。「実際に見えるものではないけれど、依頼者と施工者のつながりや経験値がものを言うのだと実感しました」
コストダウン3カ条
1.外壁や内壁の素材を低コストのものに
2.すっきりデザインで余計な造作を行わない
3.最新モデルの設備にこだわらない
テラス
シマトネリコが影をつくる木造のテラスは第二のリビング。手前にご両親の家があり、両家のつなぎ役にもなっています。壁は丈夫で安価なガルバリウム鋼板。デザインでカッコよく見せています。
夏のある日、親戚が集まってバーベキューを。「室内だとにおいが気になりますが、外なので気になりません。人を呼びやすくなりました」
あたたかな間接照明の明かりがテラスを照らして。「テラスから眺めるわが家が好きです」とご主人。
外観
外からは中の様子がうかがい知れず、クールな配色も手伝って、建築中は「ショップができるに違いない」と噂が立ったそう。右端に見えるのがご両親の家。
エントランス
玄関は家の顔。カッコよさをとことん追求。黒×茶の配色がカッコいい。扉を開けるとテラスからの光がこぼれます。
すっきり感を大切にしたいので大容量のシューズクローゼットを完備。中を隠す扉も必須。
LDK
テラスがあるつくりのおかげで、明るく開放感いっぱい。人目を気にすることなく、いつも外の気配を感じることができます。パッシブデザインで、デザインもよく暮らしやすさもアップ。
夏と冬の日ざしの高さの違いを考慮した軒の長さ。一年じゅう快適に過ごせます。
キッチンの背面収納上の窓から見える一枚の絵のような美しい光景。新くんは、ここに月が昇るのを見て「moon」という言葉を覚えたのだそう。思い出に残るエピソードです。
壁紙はビニールクロスを採用することでコストダウン。しっくいのような風合いのビニールクロスを採用しました。幅木と壁の面を合わせるために目透かしを入れてフラットに。意匠が垣間見られる凝った細工はビニールクロスを品よく見せてくれます。
窓の下枠と床面の高低差がない掃き出し窓を採用。すっきりとした印象になり、掃除もしやすいという利点が。
キッチン
二人並んで立っても十分に余裕のあるキッチンカウンターを造作。奥行きを110㎝とり、カウンターとしても使えるように。
床面と壁面の間にすき間がないのでホコリがたまらず、害虫が逃げ込む心配もなし。清潔に保てることが、過ごしやすさの秘訣です。
あらかじめ壁をへこませる施工を行い、スイッチやコントローラーをその中に。見た目がよく、誤作動も防げます。
キッチンカウンターと造作棚は、まとめてつくって節約を。愛用の調理器具がぴたりとおさまる大きさに設計されているので、使い勝手も抜群。内装と統一感の出る造りつけ家具は注文住宅ならではの醍醐味です。
すべて透明ガラスにする予定でしたが、立ち位置の高さまではすりガラスにしました。光は確保しつつ、外からの視線は気になりません。カーテンも必要なくスッキリした印象です。
和室
伊東豊雄さんデザインのペンダントランプが映える、すっきりとした和室。普段はしまっている扉をつければ立派なゲストルームに。
押入れの上にはロフトがあります。今すぐには必要なくても、将来に備えて収納量を確保しておくと安心。
インテリアの雰囲気を損ねないよう、生活感の出るエアコンは木枠の中におさめました。
寝室
LDKとは対照的に窓を極力少なくして落ち着ける空間に。ウォークインクローゼットにつながっているので動線もスムーズです。
子ども部屋
シンプルなつくりにしてフレキシブルに使えるように。コストダウンにも役立っています。ベッドとして使ったり、荷物を置いたり、そのときどきによって自由に使えるロフトも設置しました。
ロールブラインドの設置部分を板で隠してスマートに。視覚がブラインドを面でとらえるので、部屋を広く見せる効果も。
暮らしやすさの秘訣は、自然のエネルギーをとり入れたパッシブデザイン
シンプルなデザインと、連続する登り梁の天井が魅力的な大江さん宅。南側のテラスに向かって傾斜しているつくりは、テラスに視線を集める効果を狙ったものだけではなく、夏と冬の日ざしの高さを計算してのこと。これは太陽の光や熱、風といった自然エネルギーを利用して、快適な住まいづくりを行う〝パッシブデザイン〟といわれる設計手段で、冬はあたたかく、夏は涼しく過ごせるようになっています。直接的なコスト減にはなりませんが、将来を見据えると、電気やガスなどへの依存率が減少し、省エネで快適な毎日を送れるのが魅力です。
テラスの先に見える白い平屋がご両親の家。
廊下
東側の回廊の先には洗面室と浴室が。引き戸を開けっぱなしにしておけば、風の通りがよく湿気もこもりません。
トイレと回廊の間のわずかなスペースに収納を設置。壁面に見えるようなフラットさがスマートです。
トイレ
正円のフォルムがモダンな印象のボウルは「サンワカンパニー」の「ASSO」。
タンクレスの「パナソニック」の「アラウーノ」で、すっきりコンパクトに。小窓で採光と通気を確保しています。
洗面室
品のいい人造大理石のホワイトつや消し仕上げの洗面台。換気扇は目立たないように、この洗面台の下にとりつけています。トイレ共に、最新モデルにこだわらず機能とデザイン重視でセレクトすることでコストダウンに。
浴室
意外とコストのかかるタイルをやめて、手入れもラクなガラス繊維強化樹脂のFRPを床材に採用。コスト減につながりました。バスタブは角のない丸い形が特徴的な、「サンワカンパニー」の「バルカ」を採用。
家づくりの本音トーク!
家づくりを始めたきっかけは?
A 結婚です。二人とも同じ町出身で職場も近いので、この地に家を建てることが自然の流れでした。ただ、どこかで見かけたことのあるような家はいやで、漠然とカッコいい家がいいなと思っていました。
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最初に家づくりをしたいと思ってから実際に建つまでにどれくらい期間がかかりましたか?
A 1年半~2年はかかりました。趣味室や食品庫など、いろいろな希望を詰め込んだ最初のプランから、ずいぶん詰めていきました。最終的にゆずれなかったのはテラスの広さです。
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家づくりを進める中で「まじか!?」と驚いたことがあれば教えてください。
A 家づくりに関してまったくの素人なので、二世帯住宅というと2階建てしか頭になくて。なので、高橋さんから同じ敷地内に平屋を2軒建てるプランを提案されたときには驚きました。
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これから家づくりを始める人にぜひアドバイスをお願いします。
A「3回建てないと理想の家にならない」といわれますが、1回目でできることはといえば、何にこだわるかということだと思います。希望を言ったらキリがないので、次に建てることがあったら……くらいの余裕のある心もちが、家づくりの楽しさにつながると思います。
PROFILE
高校時代からのおつきあいという大江さん夫妻と2歳のくんの3人暮らし。この冬には、もうすぐ生まれてくるお子さんが加わり、4人家族としての暮らしが始まります。
主な仕様
・床/バーチ無垢フローリング [ポーチ]コンクリート金ゴテ仕上げ
・壁/ビニールクロス
・天井/梁あらわし、ラワン化粧合板あらわし
・給湯/エコキュート
・キッチン/本体:オリジナル(Ⅰ型・幅258㎝)
・レンジフード:「パナソニック」 水栓金具:「グローエ ミンタ」
・浴室/浴槽:「サンワカンパニー バルカ」 床・壁:FRP
・洗面/ボウル:「サンワカンパニー カリッサ900壁固定」
・トイレ/「パナソニック アラウーノ」
・サッシ/「LIXIL」ペアガラスサッシ
・玄関ドア/木製ドア(ベイヒバ プラネットカラー塗装)
・屋根/ガルバリウム鋼板
・外壁/ガルバリウム鋼板(小波)、一部杉板張りプラネットカラー塗装
・デッキテラス/セランガンバツ
・断熱方法・材質/壁:充塡・ポリエステル断熱材 屋根:外張り・フェノール樹脂
DATA
家族構成 |
夫婦+子ども1人 |
敷地面積 |
340.71m²(103.06坪) |
建築面積 |
105.83m²(32.01坪) |
延べ床面積 |
104.02m²(31.47坪)(ロフト10.83m²は除く) |
構造・工法 |
木造平屋(伝統構法+在来工法) |
工期 |
2014年4月~9月 |
本体工事費 |
約2260万円(そのほか家具、エアコン、外構、設計料) |
3.3㎡単価 |
約72万円 |
設計 |
TTA+A 高橋利明建築設計事務所 ☎0883-38-9044 |
施工 |
株式会社コール ☎088-655-3411 |
設計のポイント
TTA+A 高橋利明建築設計事務所
高橋利明さん
1981年生まれ。大阪府出身。設計事務所勤務を経て、2011年現事務所を開設。15年「暮らしにそっとデザインをそえる」がテーマの雑貨店「WEEKEND TAKAHASHI STORE」を展開。
敷地は住宅街の国道沿い。交通量の多い通りだったため、内向きに広がりをつくろうと「コの字形」の平屋を提案しました。「ひとつの部屋」としてとらえた中庭(テラス)は、どの部屋にも太陽の光を落とし込み、心地よい風の通り道になっています。また、住まい手の要望でもあった家族や知人たちが集える家を、このスペースを設けることで叶えることができました。大きな空を仰ぎながら、みんなで楽しく食事をとれる「つながりのある住まい」の大切な核となっています。
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