屋根は機能面から台風に伴う強風や近年多発しているゲリラ豪雨、降雪など、自然災害から建物を守るという役割を担っています。そして、外観デザインを考える上では、そのスタイルや勾配、使う仕上げ材によって印象が違って見えるほど重要な要素と言えます。ここでは屋根のかたちにはどんなものがあるのか、さらに形状を決める際、何に気をつければいいのかポイントを見てみましょう。
屋根のかたちは大切なの?
広々とした敷地の真ん中に、ぽつんと家を建てるというなら別ですが、住宅地の限られた土地に建てる場合、多くは土地や建物に関する法規制を守らなければなりません。高さや勾配の規制をクリアしながら、雨や風、地震といった自然の力から建物を守るために、屋根のかたちはその土地の気候にあった機能的なつくりにすることが大切です。理にかなったかたちになっていれば、家の痛みも少なく、長期的なメンテナンスにもあまり費用がかからなくてすむことも覚えておきましょう。
選ぶときのポイントは?
もちろん「こんな家が好き!」という観点から外観スタイルや屋根のかたちを決めてもいいでしょう。その際、敷地の条件や建物の規模、構造、工法などから、どのスタイルが可能なのか、あるいは何をすると問題なのか、コストがかかるのかといった基本的なことを把握しておきましょう。そうすることでより具体的なイメージがまとめやすくなります。将来、太陽光発電パネルを搭載したい場合には、屋根の向きや勾配、パネルの重さなどを予め考慮しておく必要があります。これは設計段階で必ず確認しましょう。
屋根のスタイルpart1
一般的に屋根の架け方は、建物のかたちと外観デザインのイメージから決めていきます。木造住宅の屋根の形状について主なものをご紹介します。
〈切妻屋根〉
2枚の屋根が中心から両側に下がるデザイン。形が単純なのでコストが比較的抑えられ、和風、洋風どちらでも合わせられます。
〈寄棟屋根〉
4枚の屋根が寄り添うかたち。台風などにも強い頑丈な構造です。外壁の収まりがよく北側斜線にも対応しやすい形状なので、敷地の小さい都市部に多く見られます。
〈片流れ屋根〉
1枚の屋根が片側に傾斜しているシャープなデザイン。これも切妻屋根と同様シンプルな構造なのでコストが抑えられます。また、上方への換気ルートが作りやすくなるメリットもあります。
〈方形屋根〉
寄棟の一種で、ピラミッド型の屋根。4方向の屋根が1つの頂点から同じ角度で傾斜しています。
屋根のスタイルpart2
上記の他に日本の伝統的なスタイルや個性的な形状をいくつか紹介します。周辺環境との調和を考えたり、斬新なスタイルで個性を発揮したり。最上階のプランと合わせて考えることも大切です。
〈陸屋根〉
傾斜のないフラットな屋根。屋上庭園などルーフバルコニーとして多目的に使うこともできます。ただ雨漏りのリスクが高いので、水が流れるための勾配をとり防水処理をしっかりと行う必要があります。
〈入母屋屋根〉
上部は切妻、下部は寄棟になっている屋根。伝統的な日本建築に多く見られるため、本格的な和風住宅に用いられ高級なイメージが感じられます。
〈招き屋根〉
切妻屋根の片側が長く、もう1方が短いスタイル。屋根勾配や軒の出に配慮することで耐風性に優れています。
〈越屋根〉
切妻屋根の中央部分だけ上がり小屋根が付いたような形状。小屋根部分に設けられた開口が風の通り道となり、夏の暖気を逃がしてくれる。機械にできるだけ頼らず快適な温熱環境を実現します。
土地の特性・気候に適した屋根のかたち
南北に長く地域によって気候風土が異なる日本にあって、人々の暮らしを支える住宅にも、地域性が見受けられます。それは屋根の形状にも言えます。台風が頻繁に通る地域は緩勾配の屋根が多く、沖縄など南方にある赤瓦の寄棟屋根はその一例。一方、豪雪地帯では白川郷の合掌造りのように屋根を急勾配にすることで、雪の荷重を軽減する工夫をしています。この場合建物の周囲に落雪を溶かすための水路があります。一般的な北国の住宅は落雪による危険を回避するため緩勾配が多く、そのため冬場は雪下ろしが欠かせません。このように屋根のかたちを考える上で、土地の特性を見極めることも重要です。
高さに関する法規制に準じる
住宅地に家を建てる際、それぞれの住人が日照や風通しを確保できるようするとともに、防災上の観点からも高さが制限されています。多くは高さ制限、道路斜線、北側斜線などの制約を受け、そのため建物の配置によっては、屋根のかたちや勾配が自ずと決まる場合もあります。
住宅系用途地域のうち、第1種・第2種低層住居専用地域では10m、もしくは12mが上限。その他の地域でも高度地区が指定されたところでは、絶対高さも定められている場合があります。
道路をはさんで向かい合う建物同士や、道路面の日照・通風などを確保するための制限。住宅系用途地域では、道路の反対側から1:1.25の角度の斜線の範囲内に建物の高さが制限されます。ただし建物が後退している場合、道路斜線は緩和されます(セットバック)。
北側隣地との境界線から、高さ5m(中高層住居専用地域は10m)の垂直の線を引き、その上端から引いた1:1.25の角度の斜線内に高さが制限されます。低層住居専用地域と中高層住居専用地域のみに適用されます。
住宅系の用途地域では、隣地境界線上の垂直20mの高さから1:1.25の角度の斜線内に高さが制限されます。
まとめ
屋根のかたちを決めるときのポイントについてお分かりいただけましたか?法規制などのルールを押さえたうえで、まずは「どんなスタイルの家に住みたいのか?」考えてみるのもいいでしょう。外観スタイルは室内空間ともリンクしてくるので、双方のバランスを考えながら計画を進めることも大切です。さらには個人の住宅とは言え建築物の周辺環境に与える影響は大きなものがあります。街並みにしっくりと馴染みながら、そこに住まう人がステイタスを感じられる家づくりの重要な要素として、屋根のスタイルを考えてみてはいかがでしょう。
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