インターネットで「超ローコスト住宅」と検索すると、1000万円を切るような商品が続々とあらわれます。そこで浮かんでくるのが「どうしてこんなに安いの? 」「こんなに安くて大丈夫なの? 」という疑問。
「ローコストなハウスメーカーの選び方と注意ポイントを徹底解剖! 」 に続いて、ここでもホームインスペクターの市村崇さんに、超ローコスト住宅の実情について教えていただきました。
ローコスト住宅より安い!? 超ローコスト住宅とは
一般的な大手・準大手のハウスメーカーの家は、坪単価( 延べ床面積1 坪=3.3㎡あたりの建築費 )はおよそ80~100 万円。ローコスト住宅を手がけるメーカーでは、広告などで坪単価45~50万円と打ち出しています。
「超ローコスト」とうたわれている住宅はさらに安く、その多くがなんと坪単価30万円以下! 30坪の家ならなんと900 万円で建てられる計算です。これは本当なの? いったいぜんたいなぜ新築の一戸建てが、このような金額で建てられるのでしょうか。
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超ローコスト住宅を手がけているのはどんな会社?
家づくりのおもな依頼先には、ハウスメーカー、工務店・ハウスビルダー、設計事務所などがありますが、超ローコスト住宅を手がけているのは、いわゆる「パワービルダー」。
ハウスメーカーではなく、建て売りの分譲住宅をおもに扱う不動産会社で、施工は下請けの工務店が行います。
パワービルダーがほかの依頼先と大きく違う点は、土地と建物( 参考プラン )をセットにして販売し、その合計を利益ととらえていること。
つまり土地の売却で利益を上げられれば、建物で儲ける必要はそれほどないわけです。なかには建物の値段を実際より安く設定し、その分を土地の値段に上乗せすることで、トータルの利益を出しているケースもあります。
なんだかずるいように聞こえるかもしれませんが、企業として利益を得るのは当然のこと。このように売り方を工夫して、販売軒数を増やし、薄利多売の仕組みをつくって経営を成り立たせているのです。
ただ、こうしたシステムで建物の価格を抑えている以上、すでに所有している土地に建物だけを建ててもらうのは難しいでしょう。もし依頼できたとしても、坪単価30万円以下という価格にはならないと考えたほうが無難です。
家づくりの代表的な依頼先
ハウスメーカー
住宅展示場にモデルハウスをもち、多くが全国展開。自社で請負契約を行う会社と、フランチャイズ形式をとっている会社がある。
工務店・ハウスビルダー
地域密着型で、設計から施工までを一貫して行う。
設計事務所
建築家が設計と工事監理を行う。施工は工務店に依頼する。
パワービルダー
土地と建物( 参考プラン )をセットで販売する不動産業者。
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超ローコスト住宅の安さの秘密を知りたい!
一般的に住宅の価格の内訳は、材料費 6 :人件費 4。
超ローコスト住宅を手がける会社では、この両方をぎりぎりまで削っています。建材や設備といった“ モノの値段" 、営業マンや設計者、大工さんや職人さんなどの“ ヒトの値段" 、さらには自社の利益率も低く設定して、1 軒あたりの単価を抑えているのです。
“ モノの値段" を削れる理由は、大量発注。同じメーカー、同じ型番の建材や設備を大量に発注することで、仕入れの掛け率を下げています。
そのため、プラン変更や仕様のグレードアップを希望すると、ふだんは使わない材料を高い掛け率で仕入れることに。建材や設備が変われば施工方法も違うため、多額のオプション費用がかかりますし、場合によっては変更そのものがNGということも。
“ ヒトの値段" の抑え方は、まず人数を減らすこと、さらに1 人あたりの賃金を抑えることです。人数を減らすということは、1 軒ごとに関わる担当者が少ないということ。
その敷地に必要なプラン変更や、予想外のトラブルがあったときのきめ細かな対応などは、あまり期待できないと考えたほうがいいでしょう。
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超ローコストで安心・安全な家は本当に建つの?
ここで重要なカギとなるのは、もうひとつの“ ヒトの値段" の抑え方。1 人あたりの賃金を抑えるという部分です
。超ローコスト住宅にかかわる大工さんや職人さんの工賃は、当然ながら大手・準大手メーカーに比べて安価。しかも少ない人数で1 軒の家を建てなければなりません。そうなると心配なのは、いわゆる手抜き工事です。
たとえば実際にあったのは、4 本のネジで固定しなければならない金具に、1 本しかネジが使われていなかったケース。仕上がると隠れてしまう部分なので、建主が気づくことはありませんし、会社側の担当者も1 軒あたりにかけられる時間が短いため、そこまではチェックできません。これは職人さんの技術力というより、モラルの問題。時間がないから、賃金が安いから「できるけれどやらない」ことから生まれた手抜き工事です。
手抜き工事の例(写真提供/(社) 住まいと土地の総合相談センター)
もちろん、これがすべての超ローコスト住宅に当てはまるわけではありません。低い賃金でもていねいに仕事をする職人はもちろんいます。
とはいえ、坪単価60~100 万円の家と比べたとき、そのリスクが高くなるのは納得できるはず。家の価格と秤にかけたうえで、どちらを選択するか、じっくり考えてみてください。
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自分たちでできる対策はある?
本当に手抜き工事を予防するには、プロにホームインスペクション( 住宅診断 )を依頼するしかありませんが、ローコスト住宅や超ローコスト住宅を手がける会社では、診断そのものを許可しないケースも。そこで、建主さん自身でできるちょっとした対策をご紹介します。
気になる会社があったら、そこの工事現場を見にいってみましょう。大規模に展開しているパワービルダーなら、住宅情報誌などに分譲予定地が掲載されています。棟上げが終わると周囲が覆われてしまうので、それより前の段階を見られればベストです。
現場でまずチェックしたいのは、敷地内や前面道路の様子。作業の道具や材料、弁当などのゴミが散らかっていないかを見ると、職人さんの傾向がわかります。停まっている車もさりげなくチェック。車内が汚れていたり、ダッシュボードに設計図が雑然と積み上げられていたりするのは黄色信号です。ほかにも、ヘルメットを着用しているか、作業着などの身なりはきちんとしているか、大声でどなり合ったりしていないかなども、職人さんのモラル面を知るヒントになります。
超ローコスト住宅の建築現場でのチェックポイント
- 現場周辺の道具や材料が整理されているか
- 飲食のゴミが放置されていないか
- 車の中が雑然としていないか
- 作業する人の安全対策や身なりは整っているか
- 現場の雰囲気が荒れていないか
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まとめ
「安くていい家を手に入れたい! 」とは誰もが願うこと。でもそれにとらわれすぎると、“ いい" より“ 安い" が目的になってしまうことも。もしかしたら、同じ金額で中古住宅をリノベーションすれば、もっとゆとりをもって予算を使えるかもしれません。超ローコスト住宅を検討するなら、「本当に新築の家がほしい? 」から見直してみるなど、広い視野をもつことを意識してみてください。
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アドバイス
(社) 住まいと土地の総合相談センター 代表理事 市村崇さん
一級建築士、一級建築施工管理技士、一級造園施工管理技士、宅地建物取引士。1998年日本大学理工学部海洋建築工学科卒業後、大手ハウスメーカー勤務を経て、2007年に設計事務所・工務店を設立。2013年に「住まいと土地の総合相談センター」副代表に就任。現在は代表理事として、建築トラブルを抱える多数のクライアントの相談に応じている。
この記事のライター:後藤由里子
主婦の友社刊「はじめての家づくり」をはじめ、数々の住宅・生活関連記事を手がけるライター。キャリアは20年、これまでの実例や建築家、ハウスビルダーへの取材件数は300以上に及ぶ。
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