家づくりをする上で、建物と同じくらい重要な土地探し。賢く見つけるためにはどうしたらいいの?
そこで数多くの失敗&成功例を見てきた、相陽株式会社代表取締役の古橋裕一さんに、土地を選ぶときの5つの鉄則を教えてもらいました。
鉄則1.焦って先に土地を買うのはNG
家づくりで何よりやっていけないのは、家のプランや予算を建てるより前に土地を買ってしまうことです。
というのは、限られた予算の中、余地優先で話を進めてしまうと、希望していた家の仕様を諦めなくてはならなくなる可能性が高いからです。
そうならないためにも、土地を買う前に家づくりについてしっかりと勉強し、かけられる予算や住みたい家のイメージをできるだけ明確にしておくことが大切と言えます。
では、どういうことを考える必要があるのかを具体的に紹介していきましょう。
土地代に予算をかけすぎない
家づくりにおいて最も最切なのが、先に上げた「予算」の問題です。家づくりの予算には限りがありますが、言うまでもなく、家を建てる上でかかるのは、“土地代”だけではありません。
建築費はもちろん、諸経費、インテリア費など想像以上にさまざまな費用が発生します。これらを含めた資金計画を立てずに土地にお金をかけすぎてしまうと、賢い家づくりはできません。
予算がオーバーすると、どうなるでしょうか。おのずと建築費が削られ、建物のつくりや設備であきらめなければならない部分があります。 「カッコいい書斎を持ちたい」「憧れの食洗機をとり入れたい」など、長年夢に見たマイホームには家族それぞれが抱いている夢があるでしょう。
でも高い土地を買ってしまった後では、叶わぬ夢になる場合があります。
不動産会社からの話を冷静に聞く
「土地を購入するときは不動産会社からもアドバイスしてくれるのでは?」と思う人がいるかもしれません。しかし、彼らは土地探しのエキスパートであって建築や金融のプロではないのです。
物件を見つけ出し、最低限のことは教えてくれても、その後にかかる細かい諸経費を教えてくれたり、希望の家を実現するためにどのくらいの費用がかかるのか、無理のないローンはいくらなのかまでアドバイスしてくれる人はまれです。
むしろ商売なので、早く土地を売るために都合のいい言葉を並べることも。「諸経費は気にするほどかかりません」「少し高めでも駅近はやっぱり便利ですよ」「掘り出し物なので、早急に決めないと売れてしまいますよ」などと言われることも。 そうなると、つい冷静さを失ってしまいます。
そんなときに賢く判断するためにも、「まずは家づくりの全体像をつかんでおくこと」を最重要視しましょう。
周辺環境にとらわれすぎない
土地探しの失敗で「家のプランに入ってから、実は思い描いていた暮らしができない土地であることに気づく」ということがあります。 土地を買うとなると、つい周辺環境や立地条件ばかりを気にして探しがちです。
もちろん、「最寄り駅が勤務先の沿線」「駅から近い」「商店街が近い」などの立地条件は魅力的ですし、家に求めるものは人それぞれなので、それを第一に考えて土地を選ぶ人もいるでしょう。 いわゆる変形地や狭小地を選んだとしても、工夫次第でデメリットを克服できるケースもあるため、理想の家を建てられないという訳ではありません。
ただ、実際に生活をするのは土地の中ではなく、“家の中”であることも忘れてはいけません。変形地や狭小地を選んだことが、利便性ばかりに気を取られていた結果であれば、理想の住まいとはほど遠くなる可能性があるのです。
家をつくることは“家族の関係をつくること”でもあります。「生活の中で家族が自然に顔を合わせてコミュニケーションをとれるようにしたい」との希望を受けて、子ども部屋をリビングに隣接させたり、2階にいても1階の家族の気配を感じられるよう吹き抜けを設けたり。
オリジナルの発想で自分たちにぴったりの家をつくれるのは、注文住宅だからこそ。せっかく自由に作るのであれば、どんな住まいにしたいのかを見つめて、それが実現できる土地を選ぶようにしましょう。
鉄則2.家に求める条件を整理する
家のイメージを家族で話し合う
鉄則1でも述べたように、土地を買う前に、理想の家のイメージをふくらませることが大切です。まず“どんな空間”で“どんなふうに”過ごしたいのかを家族で話し合ってみましょう。
「夏は開放感あふれるテラスでビールを飲みたい」「リビングは日当たりのよさが大切」「キッチンには窓がほしい」などたくさん出てくるはずです。そうして出し合ったものをリストアップし、「絶対に譲れないこと」「妥協してもいいこと」などを整理して、優先順位をつけましょう。
こうすると、自分たちが探すべき土地が、だいたいでもつかめてきます。後述しますが、このリストは、家づくりの相談でのちのち建築家を訪ねるときにも役立つでしょう。
もし条件を整理せず、家のイメージを明確にしないままに土地を探したら・・・・・。つい駅近などの立地条件だけに気をとられたり、不動産会社に言われるがままに、理想の暮らしが実現できない土地を買うことになりかねません。
土地購入前でも建築家に相談する
土地を決める前でも、 既に家づくりを頼んでみたい建築家や建設会社が決まっているのなら、住まいに求める条件を整理した後、それを元にしてどんなプランが考えられるのかを相談してみるといいでしょう。
もちろん、具体的な土地が決まってない以上、正確な設計図は作れませんが、家に求める条件を話して、大まかな設計プランを出してもらうことは不可能ではありません。
土地購入前に建築会社が提案したプラン例
土地の条件というのはさまざまです。敷地の形や広さ、日当たりの善し悪しだけではなく、地盤によっては改良工事が必要になることも。
また、住宅密集地では、すこやかな住環境を保つため建物の高さ制限の規制が厳しく、一般の人には判別しにくいことがあります。 これぞという土地に出会ったとき、買うべきかどうかを建築家に相談できるのはとても心強いものです。
その土地ならではの条件の中で、自分たちが求めている家を建てられるかどうか、プロなら的確なアドバイスをしてくれるでしょう。
“土地探しを建築家に相談しながら進める”くらいの気持ちで、購入前でも積極的に関わりましょう。
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鉄則3.土地にかけられる金額を見極める
家づくりのはじめの段階で着手したほうが良いこととして、ローンの計画も挙げられます。余裕を持って返済できる借り入れ額を算出して「総予算」を決定し、それから土地にかかる費用や建築工事費、諸経費の配分を決めましょう(「資金」に関する基本記事も参考に)。
無理のない借り入れ金額から総予算を知る
憧れの家を思い描き、それに基づいて家づくりを進めても、借り入れ額に無理があると暮らしが圧迫されてしまいます。 借り入れ可能額を最大限に利用するのはリスクが高いので、やめましょう。
総予算は「自己資金+総借り入れ可能額」ではなく、「自己資金+無理なく返済していける借り入れ額」として計画することが大切です。
家づくりの予算の考え方
- ×総予算=自己資金+総借り入れ可能額
- ○総予算=自己資金+無理なく返済していける借り入れ額
では、「無理なく返済していける借り入れ額」はどうすれば出せるのでしょうか。子どもの成長とともに発生する教育費、定年後にとっておきたい生活費など、当然ですが、この先かかる費用は住まいのことだけではありません。
将来に起こりうることをわかる範囲で把握し、そこにかかる費用がどれくらいかを予測することが重要です(「家づくりが決まったら必ずおさえたい資金計画のはじめ方」も参考に)。
家づくりにかかる諸経費は多めに考える
家づくりには、土地代、建築工事費の他にも経費がかかります。諸経費として総予算の10〜15%を見積もっておくのがおすすめです(「建築費だけじゃない!家づくりにかかる諸経費一覧」も参考に)。
主なものとしては、税金、ローン関連の手数料、仲介手数料などの事務手続き費用が挙げられますが、新築となればそろえたくなる新しい家電や家具の費用、近所への挨拶時のお菓子代などもあります。
さらに、地盤改良工事が必要になることも。工事が必要かどうか、またその費用については土地購入前に調べられないケースが多いためはっきりしませんが、100万円くらいは見ておくのが安全です。
このような経費は、積み重なるとかなりの金額に。たとえば、2000万円の土地に2000万円の建物を建てる場合、合計4000万円。この金額の15%となると諸経費は600万円見ておく必要があり、総予算は4600万円なくてはなりません。
もしこの金額で負担が大きければ、土地や建物の費用を抑える必要が出てきます。 結果的に多く見すぎていたとしても、予算オーバーで行き詰まるよりはいいでしょう。
「こんなはずではなかった」とならないよう、資金計画を優先してください。
鉄則4.不動産会社は信頼できる1社とつきあう
土地探しは、本来1社で探すのがいいと言われています。なぜなら、不動産物件が登録されている「不動産流通標準情報システム(レインズ)」というネットワークは、宅地建物取引業の免許があれば同じ情報を入手し、販売できるからです。
だからこそ、じっくりつきあえる不動産会社に出会えるかどうかが成功のカギなのです。そのためには何社か回って、相性のいい会社を探すようにしましょう。 信頼できる不動産会社の条件は、“何でも質問がしやすい”こと。
口コミや建築家からの紹介も手ですが、自分で確かめる方が確実です。 契約書を交わす前に注意したいのは、「重要事項説明書」を理解すること。数日前には入手し、契約前に疑問点の解決を。日程に余裕を持って渡さないような会社は、見送っていいと言えます。
重要事項説明書の備考欄
水道配管工事が必要なことなど、大切なことは「備考」「その他」欄に小さく書かれていることが多いので、入念にチェックが必要。
鉄則5.時間帯や天候を変えて現地をチェック
納得の行く土地を手に入れるためには、実際に現地を訪れてみることは欠かせません。人気の物件は早く売れてしまうため、焦ってしまいがちですが、「時間帯」と「天候」を変えて何度か訪れることは、最低限やっておきたいことです。
土地の時間帯と天候による変化
同じ土地だからといって、いつも状況が同じとは限りません。日中は静かでも、通学路が近ければ朝と夕方は子どものにぎやかな声が響き渡るでしょう。
大きな道路に接していなくても、敷地の周りが国道への抜け道になっていれば、朝夕の通勤ラッシュ時に車の往来が激しくなり、騒音や排気ガスに悩まされるかもしれません。
晴れている日は問題がなくても、水はけが悪いと雨の日に歩きにくかったり、建物や庭の植物に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。
チェックしておきたいポイントは?
隣接する道路 |
抜け道になっていないか?閑静な住宅街に見えても騒音が気になる。 |
通学路になっていないか?昼と夜は静かでも、朝と夕方、通学する子どもの声でにぎやか。 |
夜、十分な明るさの街灯があるか? |
雨の日 |
土地の排水状況は?水はけが悪いと雨天に歩きにくいだけでなく、建物や庭の植物に影響することも。 |
付近に川や大木がある場合には、夏に虫が発生することも。落葉樹は落ち葉が散ることを想定して。 |
近所の人にも聞いてみる
また、よく知っている地元であればいいのですが、住んだこともない地域なら、訪れただけでは気づかないこともあるものです。
中には、急かされて契約をしたら、ゴミ焼却場や墓地など、あまり快いと思えない施設があったり、近隣に気を遣う神経質な人が住んでいることがわかったというケースもあります。
地元で長く営んでいる不動産会社なら、土地柄について詳しく話してくれることもあるでしょう。もし土地に詳しい人がまわりにいないようなら、商店街で買い物ついでにお店の人に聞いてみるのも手です。
後悔しないためにも、できるだけ歩きまわって街の雰囲気を確かめることをおすすめします。
●土地探しについては、こちらの記事も参考に。
https://kurashinista.jp/house_building/detail/3908
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