もっちりとした白い餅で甘いあんこを包み、葉っぱで巻いた和菓子、柏餅。口に入れるともっちりとして、葉の香りがほのかに広がっておいしいですよね。その柏餅、包んである葉っぱに注目すると、なんだか謎が多いことに気づきます。
「この葉っぱ、食べてもいいの?」、「そもそも何の葉っぱなの?」、「なんで巻いてあるの?」 などなど。今回はそんな柏餅の葉っぱにまつわる謎を解く、豆知識をお伝えします。
柏餅の葉っぱって食べていいの?メーカーに確認しました!
柏餅と言えば、5月5日の端午の節句に合わせて食べられる和菓子。日本では桜餅と並び、古くから親しまれている伝統菓子ですよね。
ひと足先にシーズンを迎える桜餅は、桜の葉っぱで包まれています。塩漬けされ桜の葉っぱは、口に含むと薄くて歯切れがよく、塩気や爽やかな香りが魅力。好みですが、この葉っぱごと食べる人は多いのではないでしょうか。
桜餅の季節が終わると、お次は柏餅。こちらをくるむのは、やや厚みのある緑の葉っぱです。この葉っぱは食べないのが一般的ですが、なんとなく疑問に感じたことはないでしょうか?
「柏餅の葉は食べてもいいのかな?」
この疑問について、大手製菓材料専門店の富澤商店様にお聞きしてみました。すると、柏餅の葉の製造会社に問い合わせをしてくださり、以下のような回答をいただきました。
「柏餅に葉を巻く意味合いは、香りづけや包装のため、というのがメーカー様の見解です。
主には包装材料としての扱いですので、栄養面や味については検討されておらず、食用とすることは推奨されていないとのこと。また、『お好みで召し上がっても結構です』といったことも申し上げられない、というのがメーカー様としての回答です」(株式会社富澤商店 問い合わせ窓口スタッフ様より)。
柏餅の葉っぱは食べてよい、とは言えないそうです。
柏餅の葉っぱって何の種類の葉?関西だと種類が違う?
ところで、柏餅の葉っぱって、どんな植物の葉っぱなのかご存知でしょうか?
「柏餅と言うからには、柏の木の葉っぱじゃないの?」と思われがちですが、実は、ほかの植物の葉っぱが使われていることも少なくないのです!
もちろん、柏の葉っぱでくるむこともあるのですが、地域によっては、昔から他の葉っぱが選ばれているというケースも。では、関東と関西で見比べてみましょう。
関東地方では柏が主流
関東地方をはじめ、中部より北のほうでは、柏餅は柏(かしわ)の葉っぱでくるむのが多いようです。上の写真が柏の木。葉っぱの形が「兜に似ている」なんて言われますが、いかがでしょうか?
これは新緑なので明るいグリーンですが、寒くなると茶色に。そして、茶色になったまま葉っぱが落ちずに残るものがあるので、子孫繁栄をイメージさせる縁起のいい植物とされているんですよ♪
ただし、関東地方でも、東京の「かしゃんば」、茨城の「ばらっぱもち」と呼ばれるものなど、サルトリイバラを使った柏餅も作られています。
関西地方ではサルトリイバラなど
関西をはじめ、沖縄を除いた関西以南では、柏餅には柏ではない葉っぱを使うことがほとんど。と言うのも、関西では柏の木が育ちにくく、近くの里山に生えている「サルトリイバラ」の葉っぱが利用されたようなのです。
サルトリイバラの葉っぱは上の写真のとおり、やや丸みのある形。香りがよく、表面がツルッとしているのでお餅を包むにもちょうどよさそうですね!
ほかにも、関西では朴(ほう)の葉、みょうがの葉などが柏餅の葉っぱに使われていますよ。
柏餅にはなんで葉っぱがついているの?
そもそも柏餅に葉っぱが付いているのはなぜなのでしょうか。柏餅の歴史を探りつつ、葉っぱの役割について考えてみましょう。
歴史
昔、食器がない時代に、食べ物を置いたり包んだりするのに活躍したのが葉っぱ。こうした葉っぱは古くから総称して「柏」と呼ばれていました。なかでも、柏の木の葉っぱはやわらかく、食べ物を盛りやすいので好まれたと伝わります。
そして、江戸時代。商売上手な江戸の商人が、あんを餅で挟み、カシワの葉で包んで売り出したことで、柏餅が誕生。
カシワは新芽が育つまで、古い葉っぱが落ちないことに商人が目を付け、「跡継ぎが途絶えないよ~」と謳ったところ、端午の節句に贈り物として爆発的にヒット。
まず武家の間で人気に火が付き、参勤交代の影響もあって、全国に広まったのです。
ちなみに、江戸時代の柏餅の中身は、塩あんや味噌あんが多かったようですよ。
役割
柏の葉っぱは、食べ物と一緒に蒸すとよい香りがします。なんと弥生時代のころにはすでに、土器の底に柏を敷いてお米を蒸すのに使っていたという説も!端午の節句は、菖蒲など香りの強いもので邪気祓いをする行事でもあり、その意味でも柏はぴったりです。
また、江戸の商人が売り出したように、柏の葉っぱは縁起のよい植物。端午の節句に欠かせないアイテムとしての役割も大きくなっています。葉っぱでくるまれていると、餅が手にベタベタとくっつかないのもいいですね。
柏餅を手作りで作りたい!葉っぱは売ってる?代用品ってある?
柏餅は家庭で作ることもできます。せっかく作るなら、和菓子屋さんで売っているみたいに葉でくるんで、それらしい一品に仕上げたいですよね。
作り方はいろいろなサイトで紹介されていますので、好みのレシピを探してください。
揃える材料は、次の通りです。
・もち…上新粉、かたくり粉、砂糖、好みでヨモギなど
・あん…小豆あん、味噌あんなど
・葉っぱ…柏の葉、サルトリイバラの葉、朴の葉、みょうがの葉など
葉っぱについては、柏の葉やサルトリイバラなどが見つかるとよいのですが、実はほかの植物の葉っぱでもOK。
江戸時代の風俗習慣や故事等を記録した「世事百談」という文献でも、どの葉っぱでも餅を包めばかしわ餅と呼んで差支えない、と書かれているくらいです!
でも、できれば殺菌作用のあるものや、柏餅におすすめの葉っぱを選びたいですよね。そこで、手っ取り早く手に入れるなら、やはり頼れるのは製菓材料店でしょう。
時期によっては、スーパーなどでも販売されているので、チェックしてみてくださいね。近くに販売店が見つからない場合、送料はかかりますが、インターネットで注文するのもおすすめですよ。
柏の葉の塩漬け20枚真空パック
1枚ずつ丁寧に洗い、塩漬けされた柏の葉が20枚セットになっています。さっとすすいでから水気を切って使用します。賞味期限は、未開封の場合、直射日光と高温多湿を避けて冷暗所で保存すれば365日。
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緑色が美しい柏の葉の塩漬け
こちらは青々とした柏の葉っぱを塩漬けしたもの。茶色と同じく賞味期限は365日です。蒸すととても良い香りがします。
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こしあんのかしわ餅が20個できる手作りキット
こしあん450g、上用粉300g、柏葉20枚がセットになっていて、かしわ餅を20個作ることができます。端午の節句に家族で手作りしたら楽しそう!
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まとめ
由緒ある柏餅ですが、葉っぱは意外にも「どんな葉っぱでOK」とざっくり。こういう大らかさも、柏餅が日本中に広まって長く愛されてきた理由のひとつなのかもしれませんね♪次の端午の節句にはぜひ、葉っぱも調達して、柏餅を手作りしてみてはいかがでしょうか。
取材協力/株式会社富澤商店
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文/北浦芙三子
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