【Mさん宅(静岡県) 本体工事費約2150万円 建築面積約29坪】
ご夫妻と小学4年生の息子さんの3人暮らし。ダンボールで甲冑(!)を作るのに夢中の息子さんと一緒に、休日は各地の古戦場やお城に出かけることが多いそう。「息子のつきあいでしたが、今は家族で楽しんでいます(笑)」
「予算内」達成のコツ3カ条 by Mさん
中途半端にならないよう潔く割りきる部分をつくる
デザインや間取りを複雑にせずシンプルにする
設計事務所や工務店の担当者と会話する機会を多く設ける
1F DK & ロフト
平屋の家ですが、キッチン上部にロフトを設けて一部を2階に。本がたくさん並ぶロフトが、小説家の暮らす山荘のような雰囲気をかもし出します。
街の中心地までさほど遠くないのに、周囲は静かな雑木林。そんな恵まれた環境の奥さまの実家の敷地内に、お子さんの小学校入学に合わせて新築したMさん夫妻。設計を依頼したのは、北欧ヴィンテージ家具店のサイトで知った「悠らり建築事務所」の安藤さん夫妻。「年齢も近く、生活状況も似ていたので、意思の疎通がしやすかった」といいます。
「共働きなので、家事のしやすいフラットでこぢんまりとした、家族が集える家が希望でした」。このコンパクトな家という割りきりのよさが、コスト調整成功の最大の要に。シンプルが好みというお二人の感性もプラスに働きました。
反対に、耐震に関する部分や、耐久性が高い素材やメンテナンスフリーの素材にはお金をかけることに。天井や造作キッチンにはラワン合板を使っても、肌にふれる床やキッチンの腰壁などの天板には無垢材を使い、壁は調湿性のある砂しっくいにするなど、快適さにつながるバランスも考えました。
コンパクトな家といいつつ、傾斜天井や可変的な間取り、窓の配置などの工夫で、狭さはまったく感じません。ご主人には本棚の並ぶロフト、奥さまにはお気に入りを飾れるデスクコーナー、そしてお子さんには隠れ家のようなロフトつきの子ども部屋と、小さくても自分の世界を楽しむ豊かな空間がたっぷり詰まっています。
1F キッチン
【コストダウンIDEA】天井や造作キッチンにはラワン合板を活用。
キッチンは主にラワン合板で造作。立ち上がり部分の天板にだけ、サンドペーパーで汚れが落とせるように無垢のクモスギ材を採用。
【コストダウンIDEA】天床暖房は家じゅうではなくエリアを決めて採用。
ステンレスと木のとり合わせで機能美あふれるキッチンに。ダイニング側からワークトップが見えないように立ち上がりをつけて。引き出しは、奥行きを無駄なく使える収納を採用。調味料専用の引き出しもつくってもらいました。
【コストダウンIDEA】天水回りへの扉を省略してのれんで目隠し。
バックカウンターもあり、収納スペースは十分。家電が置きやすい窓のサイズにも注目。
1F デスクコーナー
キッチンの一角にデスクと棚を造りつけ、奥さま専用のコーナーに。「窓から雑木林が見える、お気に入りの場所です」
1F LDK
傾斜天井と緑をとり込む窓でのびやかな住空間に
天井の傾斜や窓の位置などで、広がりを演出。ボーエ・モーエンセンのダイニングテーブルは、この家に合わせて購入しました。
ロフト
開放的なロフトは、本好きのご主人のための読書スペース。「スギ材の床はやわらかいので、寝転がっても気持ちいいです」
1F リビング
「自然な感じにしたくて」と、1枚ずつ長さの違う無垢のナラ材を採用した床。ソファはハンス・J・ウェグナーのデザイン。
1F 子ども部屋
ピンナップできるコルクボードの壁は、図画工作好きの息子さんにぴったり。見晴らしのいいロフトもついています。
1F 和室
【コストダウンIDEA】床の間はベイマツのフローリング材で代用。和室の引き戸はふすまをやめてラワン合板で造作。
「家族の寝室として使っている和室。「来客時はここを客間にして、私たちは子ども部屋で寝ます」。造りつけの座卓の前には、雑木林が広がるピクチャーウインドーが。和室の出入り口の引き戸を開け放つとLDKとひと続きに。
1F 洗面室
北向きでも高窓で明るく。シンクは広くて便利な“病院流し”を採用。「水栓金具は根元が水びたしにならないよう、立ち上がり式ではなく壁出し式にしました」 棚の内部には、ぞうきん用のバーを設置。隠したまま干すことができます。
1F 浴室・トイレ
【コストダウンIDEA】シンクやバスタブはシンプルでリーズナブルなものを選択。
風景を切り取る小窓が印象的。「老後を考えて、洗い場は広めにしました」。床はひんやりしない「LIXIL」のサーモタイルを採用。
トイレは「TOTO」のタンクレスタイプをチョイス。手洗い器は、スリムで壁に水がはねないデザインのものに。
1F 玄関ホール
【コストダウンIDEA】日常の出入りと接客に不便のない最小限の広さに。
【写真左】視覚効果を狙って斜めに切った上がり框。ドアには三ツ矢亮一さん作のステンドグラスが。
【写真右】奥さまの実家で使われていた建具のガラスも再利用。
外観
【コストダウンIDEA】平屋にして建物規模をコンパクトに。
凹凸のあるリシンかき落とし仕上げの外観。玄関前の駐車スペースには芝生の緑化ブロックを。「夏涼しく、見た目にもほっとします」
DATA. Mさん宅(愛知県)
設計のPoint
悠らり建築設計所 安藤 亨英さん 安藤 節子さん
延べ床面積を小さくした分の費用で、耐震や断熱など躯体性能を高めました。圧迫感が出ないよう、高い天井や、家の端から端まで見渡せる間取り、抜け感が出るよう配慮した窓などで、空間をのびやかに見せています。また、心地よい空気感や経年変化による味わいが得られるよう、上質な建材を使い、長期的なメンテナンスを軽減。砂しっくいとラワン合板の色のコントラストは室内に陰影を生み、お二人が望まれた「新築でも味わい深い、あたたかみある家」になったと思います。
【Profile】
亨英さん(1973年生まれ)は名古屋の設計事務所を経て、節子さん(72年生まれ)は住宅設計・リフォーム会社を経て、2007年に夫婦共同で現事務所を設立。男女両方の目線を生かした設計が得意。
家族構成 |
夫婦+子ども1人 |
敷地面積 |
335.72㎡(101.56坪) |
建築面積 |
95.55㎡(28.90坪) |
延べ床面積 |
85.68㎡(25.92坪) |
構造・工法 |
木造平屋(軸組み工法) |
工期 |
2011年10月~2012年3月 |
本体工事費 |
約2150万円 |
3.3㎡単価 |
約83万円 |
設計 |
悠らり建築事務所 TEL:052-871-5689 |
施工 |
㈲藤里建築工房 TEL:090-2614-1184 |
★おしゃれな注文住宅を建てたい方はこちら
★注文住宅のカタログを取り寄せたい方はこちら
こちらの記事もおすすめ!
2018.01.15「都市部のエリアで便利な場所に住みたい!」と思う人が直面しやすいのが、「土地が狭い」という問題ですよね。そこで注目されているのが、「賢い狭小住宅のつくり方」です。ここでは、狭小住宅についての基礎知識から、暮らしやすい狭小住...続きを見る
2017.06.10都市部での便利な暮らしを望むファミリーにとって、ネックになりやすいのはやっぱり「土地の狭さ」。まずは、小さくても快適で暮らしやすい間取りづくりについて、実例をまじえながらご紹介しましょう。目次開く狭小住宅とは?狭小住宅の間...続きを見る
2017.06.26「家って最低限どのくらいの広さがあれば生活できるの? 」という素朴な疑問。みなさんも考えたことがあるのでは?狭小住宅が歩んできた過程を見てみると、この問題にチャレンジしてきた先輩たちが次々に登場します。なかにはなんと建坪(...続きを見る
コメント
全て既読にする
コメントがあるとここに表示されます