自分の土地であっても、好きな大きさの家を自由に建てられる訳ではなく、法律によってさまざまな規制を受けます。中心となるのが「建築基準法」でほかに「都市計画法」「消防法」「民法」などが関わってきます。
プランニングにとりかかる前に、まず建設予定地にどれくらいの規模の建物が建てられるのかを把握しましょう。ここでは、最低限知っておきたい基本的な法規制について解説します。
家の広さに関する法規制
まずは、家の広さに関する法規制から解説します。それぞれの土地に建てられる建物の広さは、用途地域ごとに定められた「建ぺい率」と「容積率」によって決まります。
建ぺい率
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合で、いわゆる建坪のこと。建築面積とは、建物の外壁や柱の中心線で囲まれた水平投影部分を指します。
住居系地域においては、住宅地としての環境を保つ目的から、建ぺい率の上限は30%~60%と低めに定められています。しかし、商業系の地域では、土地の有効利用ができるよう、建ぺい率は80%と高く設定されています。つまり、土地の広さが同じであっても、用途地域によって建てられる家の広さが異なるということです。
ただし、出寸法が1m未満のひさしやバルコニー、出寸法が50cm未満の出窓、地盤面からの高さが1m以下の地下室などは、原則として建設面積に含まれません。また、算定の細目については各自治体によって規準が異なるため、正しい数字を知りたい場合は確認が必要です。
容積率
「容積率」とは、敷地面積に対して延床面積(=各階の床面積の合計)が占める割合のことです。
たとえば容積率が200%なら、敷地面積の2倍の広さまでの延床面積を持つ建物が建てられます。ちなみに延床面積には、奥行2m以下の開放バルコニー、出寸法が50cm未満の出窓、一定面積以下の小屋裏収納、吹き抜けなどは含まれません。また、延床面積の5分の1以下のガレージ、3分の1以下の地下室などは、容積率にふくまなくてよいことになっています。
そのため、限られたスペースを有効に活用すべく、容積率に算出されない小屋裏などを計画的に取り入れるケースが増えてきています。しかし、小屋裏を設けるにもいくつかの法規制があります。
小屋裏収納・ロフトに関する法規制
天井高について
小屋裏の天井高は1.4以下と定められています。これは、平均的な身長の大人が立って歩けない程度の高さです。
床面積について
小屋裏の床面積は、直下階の床面積の1/2以下と定められています。
階段について
固定階段を設置することは禁止されている場合もあります。その場合、上げ下ろしするタイプのハシゴか可動式の階段を設置します。
その他
開口部などの制限がかかる地域もあるので、詳しくは建設地の特定行政庁に問い合わせてください。
建ぺい率と容積率は、「第一・第二種低層住居専用地域」「第一・第二種住居地域」などの用途地域ごとに、都市計画法によってその割合が定められています。
用途地域とは
地域ごとに建てるべき建物の用途や建て方のルールを定めることで、一定の環境を保ち、効率的な活動ができるようにしています。用途地域の種類は以下の12種類です。
1. 第一種低層住居専用地域
低層住宅のための良好な住居の環境を保護するための地域
2. 第二種低層住居専用地域
主に低層住宅の良好な住宅の環境を保護するための地域
3. 第一種中高層住居専用地域
中高層住宅の良好な住居の環境を保護するための地域
4. 第二種中高層住居専用地域
主に中高層の良好な住居の環境を保護する地域
5. 第一種住居地域
住居の環境を保護するための地域
6. 第二種住居地域
主に住居の環境を保護するための地域
7. 準住居地域
道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これに調和した住居の環境を保護するための地域
8. 近隣商業地域
近隣の住宅地に暮らす住民への日用品の供給をおこなうことを主な目的とする商業地域およびその他の業務の利便を図る地域
9. 商業地域
主に商業その他の業務の利便を増進するための地域
10. 準工業地域
主に環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を図る地域
11. 工業地域
主に工業の利便を増進するための地域
12. 工業専用地域
工業の利便を増進させるための地域。住宅建築は不可
家の高さに関する法規制
先に述べた「建ぺい率」「容積率」の家の広さと同様に、用途地域によっては、建物の高さに制限があります。そのため、3階建て住宅などを検討している場合は注意が必要です。 建物の高さについては次のような制限があります。
絶対高さ制限
「第一・第二種低層住居専用地域」では、10mまたは12mに制限されています。地方自治体で「高度地区」を指定している場合もあります。
北側斜線制限
隣地の日照や通風に影響の大きい北側部分の制限で、「第一・第二種低層住居専用地域」「第一・第二種中高層住居専用地域」で制限されています。
道路斜線制限
敷地が面している道路の幅員によって、建物の高さが制限されます。
建物は、道路の反対側の境界線までの距離に一定の数値(住居系の地域では1.25、そのほかの地域では1.5)を掛けあわせた高さ以内にしなければなりません。この範囲の中に建物をおさめるには、屋根に勾配をつけるなどの方法があります。
また、道路斜線制限にも道路後退(セットバック)や天空率などの緩和規定が設けられており、建物を後退させることで、その分、道路が広いとみなされ、より高い建物を建てることができます(上図参照)。
ただし、門や堀の高さや形態については条件があります。
隣地斜線制限
隣地の上空の開放感を保つため、「第一・第二種住居専用地域」以外の用途地域で適用されます。
日影規制
近隣に落とす日影を制限した法律で、建物の高さに影響します。
道路と敷地に関する法規制
道路と敷地に関しても、いくつかの法規があります。
接道義務
まず、建築基準法において、「建築物の敷地は道路に2m以上接していなければならない」と定められています。ここでいう「道路」とは、幅4m以上(地域によっては6m以上)の公道や、位置指定道路とされた私道などを指します。ただし、幅4m未満であっても、建築基準法が定められた1950年(昭和25年)以前から存在する、役所が指定した道路(=通称「二項道路」)であれば、道路として認められています。
≪道路の種類≫
- 公道
国や地方自治体が認定した道路
- 位置指定道路
原則として幅員4m以上の私道で、建築基準法上の道路として認定を受けた道路
- みなし道路(=二項道路)
建築基準法施工以前からある幅員4m未満の道で、道路として認められているもの。この道路の場合、道路中心腺から2m後退した場所に位置する線を「道路境界線」とします。
また、都市計画図には、住宅地の中に道路が通っている箇所があります。これは「計画道路」といって、将来、道路になると計画されているものです。敷地がこの部分にかかっている場合、将来、立ち退きさせられることになりますが、木造や鉄骨造などの建物は建てることができます。
1敷地に1建物
建築基準法では、原則として1つ敷地に1つの建物しか建てることができないとしています。しかし、用途上それぞれの建物が不可分であれば建築可能です。たとえば、住宅に付随する別棟の茶室、物置程度なら、1つの敷地内に建ててよいことになっています。
しかしたとえば、敷地内の空いたスペースに子世帯の家を建てたい場合は、別の住宅とみなされてしまいます。この場合、それぞれの敷地が道路に2m以上接するよう、敷地を分解することでもう1軒建てるしかありません。敷地を分解できない場合は別棟を建てることはできないので、元からあった家を建て替えて二世帯住宅にするなどの対策が必要です。ちなみに、親の土地に子どもの名義で建物を建てると、親と子は地主と借地人の関係になります。
路地状敷地
旗ざお敷地や袋地などと呼ばれる敷地のことで、その名のとおり、細い路地の先に土地が広がっている形をした敷地のことです。家を建てる場合、敷地そのものも形が問題になるわけではありませんが、接道状況によっては建てられない場合があります。
上述の接道義務の項で解説したように、敷地が道路に2m以上接していなければ、建物は建てられません。路地状敷地を購入する場合は、路地になっている部分が、道路に2m以上接しているかどうかを必ず確認してください。
また、路地状部分の長さについては、各自治体の条例によって決められているので、調べてみてください。
※ 東京都の場合は、路地状部分の長さは20m以内と定められており、20mを超える場合は、道路と3m以上接していなければなりません。
路地状敷地の場合は、このほかに建物の用途や床面積についても制限を受ける場合があるので、事前調査が必要。また不動産広告で「再建築不可」と記載された物件には、この接道規定を満たしていないケースが多いもの。
格安で飛びついても、家が建てられないことがあるので要注意です。
セットバック(敷地後退)
4m未満の2項道路に接する敷地に建物を建てる場合は、道路の中心線から2m(地域によっては3m)、敷地を後退させることが決められています。今、住宅が建っていても、建て替えの際にこの規制が適用され、後退部分には家が建てられません。
道路の幅が3mの場合、中心から2m後退させると、50cm後退させられることになり。敷地は50cm狭くなります。建ぺい率や容積率は、この後退部分を除いた敷地面積から割り出すため、既存の家より狭くなります。
隅切り
角地に家を建てる場合、道路のコーナーを車が安全に曲がれるように、角部分を道路に提供しなければなりません。東京都の場合は、交差する道路の幅がそれぞれ6m未満で、角が120度未満の場合は、底辺2mの二等辺三角形の部分を道路に提供しなければなりません。
十字路でもT字路でも同じ規制を受けますが、角が120度以上ある場合は、隅切りの必要はありません。隅切り部分は、セットバックと異なり、多くの場合、建ぺい率や容積率には影響しません。
上に述べたような土地の法規制に関してより詳しく知りたい場合は、窓口に問い合わせるのがベスト。問い合わせ先は以下の通りです。
≪問い合わせ先≫
◎法務局
土地の登記簿謄本や公図の閲覧ができます。また、土地の所有権、敷地面積、地名地番を確認できます。
◎各市区町村の窓口(建築指導課・都市計画課その他)
用途地域、建ぺい率・容積率、高さ制限、道路斜線、北側斜線、隣地斜線、日影規制、外壁の後退距離などが問い合わせ可能です。
◎各市町村の道路課
道路の種類、道路幅員、計画道路の有無に関して教えてもらうことができます。
まとめ
購入した土地は自分のものなのに、その土地に自由に好きな家を建てられないなんて残念な気もしますが、周囲環境に合わせて他と共存してみんなが幸せに暮らしていくためにも法規制は必要です。ただ、土地を購入してから「法規制のために思い描いていた家が建てられない」と後悔することがないように、ある程度はここで諸愉快した内容を頭に入れた上で土地探しを行いたいもの。その他、建築協会や地区計画に関することなどで市区町村に確認が必要なこともあるので、めぼしい土地が出てきたら、訊きたいこと・訊いておく必要があることをまとめてから問い合わせするとよいと思います。
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