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コラム

警官募集や、指名手配犯の顔写真の並ぶポスターの貼られた交番の前で、急に身動きができなくなった。|うさぎの耳〈第五話〉谷村志穂

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警官募集や、指名手配犯の顔写真の並ぶポスターの貼られた交番の前で、急に身動きができなくなった。|うさぎの耳〈第五話〉谷村志穂

初めから読む 母子の部屋は、一階にあるその角部屋である|うさぎの耳〈第一話〉

E駅の外のベンチで莉子を待った。

理玖をベビーカーから出してやり、空に高く抱き上げたり、膝の上に立たせたりしていても、なかなか義母との会話によって始まった胸のつかえが、解けていなかった。

義母に止められた、というのを言い訳に、捜索願を出さずに来た。それはやはり間違えだったのだろうか。出さずにいることで、逃げていたろうか。

「ごめん、ちょっと遅れたね。リーク、くん、今日のお人形はね、ちょっと季節には早いけど、頭にスイカ載せちゃった」

紺色のパペットくんの頭上には、三角のスイカが載っている。理玖は目の前で動いたスイカが、自分の鼻先にチョンチョンと当たるのを、ごーっ、ごーっと息を吸いながら笑っている。

「また素敵な子が生まれましたね」

「そ、リクくんに渡せると思うと張り切っちゃう。海まで歩こうか」

ベビーカーは、莉子が押してくれた。

心地良い、この時期にしかない風が吹き、頬を撫でていく。夫も、どこかでではこの風を感じているはずなのだと信じたかった。

海からの明るい陽射し、浜辺には、サーフボードを手にした人たち、気の早いことにビキニ姿の若い人たちもいる。

ビニールシートは郵便局のもらい物だ。二人で座り、理玖は莉子の両手に抱かれている。

「美夏さん、なんかあった?」

「どうして?」

「何もないなら、いい」

保温ポットの紅茶と、クッキーを出して、莉子にも薦める。

小説『うさぎの耳』|谷村志穂
子どもの障がい、夫の失踪、ギスギスした義母との暮らし。そんななかで、主人公の美夏は公園で出会った莉子と心を通わせていく。その莉子にも複雑な事情があり…。毛糸の指人形と子どもの果てしない生命力。喪失を抱えるすべての女...
小説『うさぎの耳』|谷村志穂
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