ステンレスの錆、見たことありますか? ステンレスは基本的に錆びないのが売りなのですが、シンクやお鍋、包丁など、茶色く変色したり、黒ずんでしまった部分は錆です。食べるものを扱うキッチンで錆が発生しているとなると、ちょっと心配。見つけたらすぐに対処法をチェックして、それ以上広がらないようにケアしましょう。
ステンレスって何?
ステンレスはクロムとニッケルを含む、錆びにくい合金属。ふだん何気なく使っている言葉ですが、英語で書くと「steinless steel」。’’ステイン’’が’’レス’’(無い)な‘’スチール’’(鉄)だということです。ステインは「染色、汚れ」の意味なので、「汚れたり、錆で変色したりしないよ」というイメージでそう呼ばれるようになったのでしょう。
開発のきっかけとなったのは、インドの錆びない刀だったそうです。この刀の成分をヒントに、19世紀の終わりのイギリス、20世紀初頭のフランスで、開発競争が激化。日本でも昭和の初めには実用化に一歩を踏み出しています。戦後、軽くて錆びにくいこの金属は、家庭でも鍋や流し台として使われるようになり、今に至ります。
ステンレス鋼の表面には非常に薄い膜が形成されていて、表面が傷ついて皮膜が破壊されても瞬時に再生する性質があります。この性質によって、ステンレスでできた製品の表面が保護されて、錆びたり汚れたりしにくいものになっているのです。
それまでの日本の家庭では、流し台にしてもトタンやタイルなど、手入れの大変な素材が使われていたので、この錆びにくいステンレスは夢の素材と人気が出ました。
ただ、こんな理想的とも思えるステンレスですが、使い方によって、また偶然のミスで、錆びてしまうことがあるのです。それはどんなときなのでしょうか?
ステンレスの錆の原因は?
金属が酸化して発生したものが錆です。ステンレスが錆びない理由は、傷ついても再生する皮膜があり、酸化を防ぐからなのですが、経年劣化や、使用中に傷が頻繁につくような場合、またシンクなど、油汚れで酸化しやすい場所などは、皮膜の再生が追いつかず、その部分から錆びてしまうということがあるのです。
とはいえステンレスにも色々と種類があり、錆びやすいもの、錆びにくいものがあります。シンクやお鍋など、家庭で使われているステンレスの錆びにくさの簡単な見分け方は、磁石を近づけてみること。ピタッとくっつくものは錆びることもあり、磁石がくっつかないものは一般的に耐食性が高く錆びにくい「SUS304」というタイプなどのステンレスです。錆びに’’より強いタイプ’’のステンレスは、ごく普通に使っていれば、錆びることはほぼありません
ジオ 片手鍋 18cm/宮崎製作所
人気の多層構造のステンレス鍋。一番外側の層に高温に強いタイプのステンレスが使われ、内側にはより錆びにくい「SUS304」を使用。15年間保証はメーカーの自信の表れでしょうか。
錆びることもあるタイプのステンレスでできているものは、普通に使っていても錆びてしまうことはあります。数年で買い替えるものと割り切って。それでも磁石を近づけてみて錆びやすいものだとわかったら、日頃から錆チェックを行い、少しでも変化があればその錆を落とすということを習慣づければ、使える期間が伸びるでしょう。
また、錆の原因として一番気をつけたいのが「もらい錆」と言われるもの。鉄製のヘアピンを浴室などで放置すると、その周りが赤く錆びて驚くことがありますよね。これがもらい錆。ステンレス製のものの上に鉄製品を放置するとこの現象が起きやすくなるので気をつけましょう。
ほかに、塩素系の漂白剤などが付着して長時間放置しまった場合にも、そこから錆びてしまうことがあるので注意しなければいけません。海のそばなどで常に塩分が付着する環境にある場合も、錆びやすくなるでしょう。
ステンレスの錆を落とす方法は?
ステンレスに一旦錆が発生すると、落とすのは至難のワザ。特に進行してしまった錆は、錆を落とすプロセスでステンレスの表面に傷をつけることになってしまうので、発見したら、小さいものでもすぐにケアをしてください。
・メラミンスポンジで
初期の軽い錆なら、メラミンスポンジを濡らしてこすれば落ちることも。錆に気づいたらすぐにやってみてください。また、落ちない場合は強くこすり過ぎず、クレンザーや錆落とし剤を使ってみることをおすすめします。
・キッチン用クレンザーで
メラミンスポンジだけで落ちない場合は、キッチン用クレンザーを試してみます。クリーム状のクレンザーをスポンジにたっぷりとり、錆の部分を少しだけ力を入れてこすってみてください。軽めの錆ならこれでスッキリ、ピカピカになります。
クリームクレンザー ジフ (270ml)/ジフ
一部のバイク愛好家からも、錆落としとして熱烈に愛されているジフ。錆だけでなく、定期的なキッチン周りのお掃除にも活躍度大なので、常備しているお宅も多そうですね。
ただしステンレスの皮膜に傷をつけていることには変わりないので、その後も定期的に、錆が付着していないかよくチェックをして、小さいものでも見つけたら、すぐに落とすようにしましょう。
・錆落とし剤を使ってみる
メラミンスポンジやクレンザーで落ちない錆の場合は、錆落とし剤も検討。研磨剤が入っていないタイプの錆落とし剤は、ステンレスを傷つけることなく錆を除去することを目的としていますが、深く進行してしまっている錆の場合には、錆取り剤を塗布した後、真鍮性のブラシなどでこすったほうが良い場合もあります。
技 職人魂 サビ取り職人 錆除去剤(100ml)/技・職人魂
その名の通り錆を落とすために開発された「サビ取り職人」。塗布すると、錆びている場所が紫色に反応するので、気づかなかった小さな錆びももれなくケアできます。
ステンレスの錆を落とすときの注意点は?
落ちにくい錆の場合、つい強くこすってしまいがちですが、これはさらにステンレスの皮膜を傷つけてしまう場合があるので悪循環になります。ある程度の力でこすっても落ちない場合はあきらめて、錆がそれ以上広がらないような定期的なチェックを心がけましょう。
また、錆取り用の薬剤を使用するときは、必ず手袋をし、換気の良いところで行い、塗布時間に決まりがあるものは、時間を必ず守ってください。そのまま長時間置いたからといって効果が高まるというものでもありません。
ステンレスの錆を予防する方法は?
・油汚れを放置しない
シンクやお鍋、特に見逃しがちなお鍋の外側などに注意です。油が付着したまま長い時間置いておくと、油が酸化し、ステンレスの皮膜を傷つけ、錆の原因になります。
・強い力でこすらない
ステンレスの鍋を焦がしたりした場合も、研磨剤や金だわしなどでゴシゴシと無理に焦げをこそげとるのは厳禁。傷ついた場所から錆てしまう可能性があるからです。
鍋底に焦げた食材が貼りついてしまったようなときは、鍋に水1ℓと重曹大さじ1を入れ、弱火で加熱し沸騰させます。沸騰から10分ほど経ったら火を止め、お風呂のお湯の温度くらいまで冷めたら、ゴム手袋をはめ、スポンジで焦げを落としていきます。
・塩分はしっかり落とす
調理後にはシンクも鍋も良く洗い、ステンレスを酸化させる塩分を残さないようにしましょう。また同様に塩の害という意味で、海のそばでの使用の場合は、潮風に当たらないような場所に保管するなど、注意が必要です。
・塩素系漂白を使用後はよく洗い流す
ノロウイルスの消毒などで使われる次亜塩素酸が配合された薬剤や、塩素系漂白剤などはステンレスを腐食させる可能性があるので、シンクで使った後は、周囲も含めよく洗い流すようにしましょう。
ステンレスの錆を予防するときの注意点は?
①定期的に、②よく観察して、③錆を見つけたらすぐに除去。これがステンレスの錆予防の3大ポイントです。また、シンクに関しては、自分でできる市販のコーティング剤なども活用して、いつまでもピカピカをキープできるようにするのも良いでしょう。
流しキレイ ステンレスシンク用 ガラスコーティング/ariURU
まずステンレスをよく磨いて、その後にコーティング。一旦乾けばその後はツヤツヤ&ピカピカをキープしてくれる頼もしい味方です。
まとめ
ステンレス(汚れなし!)とは言っても、やはり永遠にツルピカでいられるわけではないのですよね。虫歯と同じで、これは錆が出来てから慌てるよりも、予防が大事と肝に銘じ、日々のお手入れ、頑張っていきましょう。
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まとめ/伊波裕子
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