インスタグラムを含め、大人気の写真。昔のようにアルバムに写真を貼るという形はなくなりつつありますが、メールで送ったり、SNSに投稿したり、写真集を作ってもらったりと、写真に触れる機会は昔より多くなっています。
しかし、流行語にもなった「インスタ映え」する写真は、そう多くはありません。
プロカメラマンは「表現する」
カメラマンという職業があります。お金をもらえる写真を撮るのが仕事です。当然カメラマンはいろいろな被写体を撮影しますが、なぜお金をもらえる写真にすることができるのでしょうか?
それはカメラマンの写真は、明確な意志(意図)が見えるからです。別な言い方をすると、「撮る」のではなく「表現する」写真だからです。女性を撮るとしたら、その女性がどんなふうに魅力的なのかを、表現するわけです。ルノワールの絵、フェルメールの絵と同じことです。 もちろん一朝一夕にできるものではありません。画家も習作を何枚も書きます。どこをどのように表現すると自分の意図に合うのかを詰めていくためです。その時に、いろいろな技法を試します。
画家の中には、色(絵の具)を自分で作る人さえいます。これはより多彩な表現を求めてのことです。世界に認められる日本人、北斎も油絵より遠近法を学び、表現を広げています。 多くのカメラマンが携帯に便利なスマホではなく、本格的なカメラ(いわゆる、「一眼デジカメ」)を使っているのは、本格的なカメラの方が、表現力が豊かだからです。
近ごろ人気の「ミラーレス一眼」
今のカメラは大きく3つに分かれます。「コンパクト」「ミラーレス一眼(以下ミラーレス)」「一眼レフ」。並びは安い方から高い方です。カメラに余り興味がなく、ただ単に「スマホよりきれいに撮れればいい」「使い勝手がよければいい」とお考えなら「コンパクト」。いわゆる入門用のカメラです。 今まで「スマホ」は「コンパクト」の下に位置してきました。しかし今、「スマホ」のカメラ機能はかなり良くなっています。まだ差はあるものの、わざわざ「コンパクト」を買わなくてもと思えるほどです。このためか、「コンパクト」の市場は昔より大幅に小さくなってきています。
カメラは「光の芸術」です。このため光を取り入れる「レンズ」が重要となりますが、残念ながら「コンパクト」の普及価格帯のレンズは、スマホよりイイものの、それでも小さく、絶賛するほどではありません。
しかし「一眼デジカメ」と呼ばれる「ミラーレス」「一眼レフ」のレンズは違います。表現力が一桁も二桁も違うのです。今、カメラメーカーが「ミラーレス」「一眼レフ」に力を入れていますが、それは自分たちの得意分野「レンズ」で「表現力」の勝負できるからです。 コンパクト市場が小さくなっており、“脱スマホ”の受け皿は、一眼デジカメのうち「ミラーレス」が担うことになりました。いわゆる、本格カメラの入門〜中級者向けです。一方の「一眼レフ」は中級〜上級。
この2つのカメラはレンズ交換型ですから、多彩な表現ができます。では「ミラーレス」と「一眼」の差は何かというと「正確さ」と「画質」です。 カメラはその一瞬を切り取り、それを自分の表現とします。その一瞬を「正確」に切り取るのはカメラの基本ですが、その精度が非常に高いのが「一眼レフ」です。そして「画質」もイイのです。 カメラは光の芸術。このため、取り込める光の量が多ければ多いほど表現が豊かになります。デジカメは「撮像素子」で光を受けるのですが、この素子が大きいのが「一眼レフ」です。「一眼レフ」は、妥協なきカメラと言えます。 しかし、一眼レフにも欠点があります。レンズが大きく、撮像素子が大きいということは、「大きく、重い」ということ。大きく、重いカメラを持って目的地に行き、いい場所を見つけて撮影するのはかなり大変です。 そこで精度や画質は多少劣るものの、同じような表現ができるのが、今回紹介する「ミラーレス」というカメラです。 大きな特長は「小型軽量」なこと。カバンに入れっぱなしでも気にならないレベルです。特にカメラは手に持って使うモノですから、手に馴染む必要があります。小型だと、小さめな手にも馴染みます。そして常に持ち歩けて使いやすい。つまりシャッターチャンスが多いのです。スマホのように何気なく使える本格的なカメラ。それが「ミラーレス一眼」なのです。 先ほどから「画質」という言葉を使っていますが、「ミラーレス」と「一眼」の差はいかほどかというと、テレビでいうと「8K」(一眼レフ)と「4K」(ミラーレス)の画質比較をしている感じです。プロの人、マニアならいざ知らず、「普通の人はわかるんだけど関係ない」という感じです。オーバースペックと言ってもイイかも知れません。 ミラーレスは、小型軽量でありながら、本格的な表現もできるカメラなのです。
自撮りに強い「ミラーレス」
堅苦しいことを書いてきましたが、ミラーレスカメラは、本格カメラへの入門機です。ということは、スマホユーザーを意識したカメラということです。 スマホのカメラが爆発的に流行ったのは「自撮り」と「送信」の2つがあるからです。言い換えると。いろいろな写真を楽しく撮る機会と、他人に見てもらって楽しむ機会の2つが合わさったものが、スマホの得意技です。 スマホユーザーを意識した「ミラーレス」は、この点も十二分に意識しています。 まず「自撮り」。ミラーレスで自撮りする場合、後面の大きな液晶モニターを180°動かし、前からでも見えるようにします。これで「自撮りモード」に切り替わるのですが、今時のミラーレスのモニターは「大きい」ので、自分がどのような状態か、はっきりわかります。 そして次のポイントは「広角レンズ」の採用です。通常のスナップは、街中で、眼で見た時に合わせます。「標準レンズ」と言われるレンズがそうです。レンズは「mm」で表す数値があります。広角レンズは、ざっくり18mm以下、標準レンズは25〜40mm位です。 実際の写真を用意しました。あとで紹介するパナソニックの最新ミラーレス一眼、「DC-GF10」で撮影したものです。同じ位置から、公園にある丸太のベンチを撮ったものです。
上が「広角(12mm)、下が標準(32mm)です。これほどまでに違います。自撮りでは、自分の顔の横に風景を写りこませたいもの。当然「広角レンズ」が必須となります。今販売されているメーカーのレンズキットは、「広角〜標準」をカバーするズームレンズが基本となっているので、必要以上に心配することはありません。 この広角ズームレンズがあれば、自撮り、風景から、日常スナップまでカバーすることができます。
Wi-Fi(もしくはBluetooth)搭載も当たり前
今、IoT化で、いろいろな家電がWi-Fiで接続し始めていますが、デジカメも例外ではありません。Wi-Fi機能を使えば、直ぐにネット上のクラウド、もしくは自分のスマホにデータを飛ばすことができます。 つまりイイ写真を、今までと同じように、スマホからSNS等にアップできるというわけです。「自動でアップ」する設定にしておくと、スマホの「Photo」の中に勝手にアップされていきます。以降はスマホでいつもの通り。とても便利です。 (連写など、データが大きいとアップできない写真もあります)
「ミラーレス」の魅力はレンズ
スマホから引き継いだ機能を2点あげましたが、ミラーレスの大きな魅力はなんといっても「レンズ」です。最近のレンズセットは、前述の「広角ズーム」が基本。それに「単焦点レンズ」か「望遠ズーム」を組み合わせたものが多いです。 単焦点レンズは、明るく魅力的なものが多いです。色、特に肌色がきれいですし、外に比べ、光量が少ない室内でもキレイに撮影できます。特に子どもなどのスナップなどは、輝いて見えます。見直されている「今ドキ流行」のレンズです。 「望遠ズーム」はあると非常に便利。何たって写真独特の表現「ボケ」を作りやすい。ポートレート的に人物を際立たせるなら、是非欲しい一本でもあります。 理想は、「広角ズーム」「標準単焦点」「望遠ズーム」があるとイイのですが、全部買うとお値段も張ります。自分が一番撮りたい被写体で決めてください。
「連写」で、欲しいシーンを確実に抑える
連続して写真を撮ることを「連写」と言います。昔、連写機能は高級カメラの代名詞でした。フィルム時代なら、フィルム代もすごくかかります。お札に羽根が生えて飛んで行く感じと言ってもいいでしょう。お金持ち、もしくはプロでしかできない芸当でした。 連写のメリットは、「一瞬」の切り出しには優れることです。子どもが走っている姿を撮っても、マンガで描くような、如何にも走っていますというポーズで撮れることは少ないです。しかし連写すると、その中の一枚がドンピシャになっていることが多いです。連写は激しい動きの時だけ有効なわけではありません。例えば、舞台で話をしている時、撮ったとします。しかし、まばたきしたり、急に下を向いたりと、結構狙った通りに撮れないことが多いモノですが、そんな時にも有効です。 今は、4Kの連写が実用レベルで使えるようになりました。これはキレイです。ベストシーンをセレクトできます。下の写真は、1秒の4K連写から切り出したピントがあったシーンと、ピントがあっていないシーンです。
花などをアップで撮る場合、すぐピントがずれますが、連写だと問題ないですね。(写真は、パナソニック DC-GF-10で撮影。頭、0.2秒の時の一枚と、0.8秒の時の一枚。桜が動くので、ピントが合っている位置が違う) あと、連写はデーターの処理スピードが重要ですので、高速記録できるメモリーカードが必要です。高性能な分、価格は高めです。
プリセットを効果的に使う
実は、カメラは、シャッタースピード、露出など、いろいろなことを覚えた方がベターです。表現力が違ってきます。しかし、今の「デジタル一眼」の「自動(オート)撮影」は、実に良くできています。車の「マニュアル」と「オート」後外のような感じです。「マニュアル」も使えるのがよりイイのですが、「オート」だけでも差し障りはありません。このため、「オート」しか使えなくても問題ありません。 しかし、「オート」は昼間、太陽光線が豊富な時間帯が基本。となると、夕焼け、花火などは、撮りにくいです。しかし、ミラーレスの場合、そんな時に使えるプリセットが用意されています。これを上手く使えば、「シャッタースピード」とか「露出」とか、面倒なことを覚えなくても大丈夫です。 このプリセット、スマホメーカーとカメラメーカーの違いがかなり明確に出てくる機能でもあります。当然カメラメーカーの方が、いろいろなところで撮影し、経験を積んでいるからです。これもぜひとも使いたい機能です。 こちらの上の写真は、梅を「ソフトモード」で撮ったもの。下は、公園の水場を「夕方モード」で撮影したものです。この様な写真も楽に撮れるのが、ミラーレス一眼の実力です。
カメラが変われば日常の見方が変わる
街を歩いていて、気になったものを撮(うつ)す。撮すという行為自体は、スマホでもミラーレスでも変わりません。が、意識して撮ろうとすると、日常風景が変わって見えます。いろいろなものが、新しい発見をさせてくれます。「ミラーレス」を使うことは、ある意味、より自分に気づくことでもあります。昨日より、ちょっと違う自分がそこにはいます。
さて、デジカメはかなりの高価格。買ってすぐはイイのですが、その内、ホームイベントしか使わなくなり、タンスの肥やしになったりする人もいます。できる限り、家族皆で使うことをお勧めします。お金の負担もそうですが、写真はその後の整理、編集など、コミュニケーションツールとしても優れモノです。上手に使えばとっても便利なのが、「ミラーレス一眼」です。
オススメのミラーレス一眼カメラとは?
ここからは、お買い得なカメラを紹介。ただし価格帯は、レンズ付きで8〜12万円とムラがあります。常に持ち歩く場合、デザインと色は大きな要素です。自分の好き、嫌いで決めてもらって構いません。むしろ店頭で大きさ、重さ、デザインなどを見てもらえればと思います。
■オリンパス PEN E-PL9
オリンパスと言えば「PEN」と言われる程の伝統モデル。最近流行のクラシックなデザインを、ホワイト、ブラック、ブラウンの3色で展開。 キットには「14-42mm EZ レンズキット」、「EZ ダブルズームキット(14-42mm、40-150mmのEZレンズ」があるが、「ダブルズームキット」がお買い得です。
■キヤノン EOS Kiss M
1993年から育てたファミリー一眼のモデル名を冠した意欲作。一眼レフに近い機能美にあふれたデザインで、ホワイト、ブラックの2色展開。 標準レンズキット(EF-M15-45mm IS STM)で販売。
■ソニー α6000
撮像素子の技術に優れたソニーのミラーレスモデル。大きなグリップが特長のデザインは、ブラック、ホワイト、シルバー、グラファイトの4色展開。 キットは「α6000 パワーズームレンズキット ILCE-6000L(E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSレンズ)」とα6000 ダブルズームレンズキットILCE-6000Y(E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSレンズとE PZ 55-210mm F4.5-6.3 OSS)」がある。おすすめは「ダブルズームレンズキット」。
■ニコン Nikon 1 J5
南極探検、戦場、など過酷な環境でも頼れるカメラとして「神話」を作ってきたニコンのミラーレスモデル。ある種の質実剛健さが感じられます。色はシルバーとブラックの2色展開。 キットは「Nikon 1 J5 ダブルズームレンズキット(1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM、1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6)がおすすめ。
■パナソニック LUMIX DC-GF10
名門ライカの厳しい品質基準をクリア、「LEICA」の名を冠したレンズを使用するパナソニック。シンプルかつ上品なデザインは、オレンジ×シルバー、ホワイト×ローズゴールド、ブラックの3色展開。 キットは「ダブルレンズ キット(LUMIX G VARIO12-32mm /F3.5-5.6 ズームレンズ、LUMIX G 25mm /F1.7 単眼レンズ)」。 今回のサンプル写真の撮影に使ったモデルです。
■富士フイルム X-A5
レトロデザインと、フィルムライクな画質が好評な富士フイルムXシリーズの入門ミラーレス。ブラウン、シルバー、ピンクの3色展開。 デジタルカメラレンズキット「FUJIFILM X-A5/XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」を販売。
【筆者プロフィール】多賀一晃 さん 1961年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学部卒。大手メーカーにて商品開発、企画を担当後独立。国内はもちろん、世界最大の家電見本市「IFA」等で世界中の家電を取材し、役立つ情報を「生活家電.com」から発信中。日本経済新聞夕刊の家電製品特集や土曜日別冊「日経プラス1」の「家電ランキング」選者、WEDGE Infinity「家電口論」主筆としても活躍。生活家電.com
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