コラム

明日は我が身⁈ 40歳以上が発症しやすい過活動膀胱とは？

更新日：2017.10.27

最近、耳にすることが多くなった「過活動膀胱」。2003年に行われた調査（「排尿に関する疫学的研究」日本排尿機能学会誌2003;14:266-77.）によると、日本国内では推定800万人以上の人が過活動膀胱に悩まされていると言われています。
一体、過活動膀胱とはどのような病態なのでしょうか。予防と治療についても、ご紹介します。

過活動膀胱とは？日常生活への支障が大きい

過活動膀胱とは一言でいうと、膀胱におしっこを溜めることができなくなってしまった状態のことを言います。具体的には次のような症状が出ることが多いです。

・突然尿意を感じ、我慢することが難しい
・トイレに行ったばかりなのに、またトイレに行きたくなる
・トイレに急いでいくが、間に合わずに漏れてしまう。しかし、その量は少しである

過活動膀胱が生命に危険を及ぼす直接の原因になることは考えにくく、また症状からして人に相談したり、受診をしたりすることが恥ずかしいと、放置されることが多いと考えられています。

しかし、「夜中にもトイレに目が覚めるので睡眠不足」「仕事中にもトイレのことが気になって集中できない」「トイレのことを考えると乗り物に乗るのが不安」といったように、日常生活に支障が出ることも少なくありません。

過活動膀胱の原因は「神経性」もしくは「非神経性」

過活動膀胱は40歳を過ぎた頃から、年齢とともに患者数も増えていきます。上述の調査によれば、40歳以上の12.4％、つまり８～９人に1人が過活動膀胱に悩まされています。ちなみに、男女間に大きな差はないと言われています。

過活動膀胱の原因は大きく分けて２つあります。1つは脳血管障害やパーキンソン病などによって脳神経が障害されることによって起こり、もう1つは神経には関係ないというものです。
神経に問題がないとなると、考えられる原因で一番多いのが、男性の場合は前立腺肥大とされていて、女性の場合は加齢や妊娠、出産による骨盤底筋群の筋力低下だとされています。

骨盤底筋群の筋力低下と聞いて、ドキッとした人もいるのではないでしょうか。
骨盤底筋群とは骨盤をつなぐ筋肉の集まりのことを言いますが、妊娠すると出産準備のために、それらの筋肉が緩められます。出産経験のある人は産後の尿漏れを予防するために、妊娠中に骨盤底筋運動というものを指導された記憶がある人も多いでしょう。

過活動膀胱の予防法

妊娠中にすすめられる「骨盤底筋運動」が過活動膀胱の予防にも効果的だとされています。膣や肛門付近を意識しながら、筋肉をキュッと締めるだけの簡単な運動です。

産後に、くしゃみや大笑いした際に尿漏れをすることがあるという人は、過活動膀胱の予防のために、骨盤底筋運動を続けることをおすすめします。電車の待ち時間、朝起きてすぐ、寝る前、歯磨きの時など、すき間時間に行ってみてはいかがでしょう。
男性は、ペニスの付け根と肛門を意識して同様にキュッと締めると良いようです。

過活動膀胱の治療

医療機関を受診すると、過活動膀胱質問票というものに沿って、簡単な質問に答えることになるでしょう。

悪性腫瘍や尿路結石といった病気が隠れていないかを超音波検査や血液検査で確認をした後、過活動膀胱と診断されれば、薬物療法が開始されます。一般的な薬物療法では、膀胱の収縮を起こすアセチルコリンという神経から分泌される物質を抑える薬を内服します（前立腺肥大がある場合は抗コリン薬でない薬を利用することが多いです）。同時に、骨盤底筋運動やおしっこに行きたくなっても我慢をする膀胱訓練などの指導も受けます。

できれば、受診時には2～3日の排尿日誌をつけて持参をすると、診断の助けになります。
排尿日誌とは、トイレに行った時間やおしっこの量の記録です。飲水量も記入しておくと、水分の取り過ぎに原因がないかの判断に助かります。尿意の有無や尿失禁があれば、そのことも書いておきましょう。夜間の記入が苦痛である場合は、回数だけでもメモしておくと良いでしょう。

若いうちには。なかなか受診をするのが恥ずかしいと思うかもしれません。今では女性専用の泌尿器科もできてきていますし、症状に心当たりのある人は早めの受診をおすすめします。

写真　© beeboys - Fotolia.com

Profile松下歩

日本ではナースとしてバリバリ働いていましたが、長年の夢であったオーストラリアへの移住を果たしました！今は子育ての真っ最中、フリーランサーとして働きながら、家族5人ブリスベンで、のんびり生活しています。ナースの経験を活かした健康記事をお届けしたいと思っています。

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