コラム

家計が苦しいと嘆いている人へ…節約するなら、まず見直すべきは住居費！

更新日：2017.10.28

「子どもの教育資金、足りるかしら？」「老後はどうしよう？」…など、お金の不安は尽きないもの。ファイナンシャルプランナーとして数多くの相談に答えてきた畠中雅子先生が、そんな不安とサヨナラするための心得をアドバイスします！

収入源でも家賃の高い人気エリアから離れられない人たち

「節約というと、食費や電気代に手をつける人が多いですが、実はまず考えるべきは住居費です。特に残業代カットなどで収入が減ってしまうと、住居費を減らさなくては、家計に対する住居費の割合はどんどん増えていく一方。そうすると小手先の節約は焼け石に水なのです。

わたしの知り合いで、二人ともフリーランスというＨさん夫婦（妻51才・夫53才）がいます。自宅で仕事をしているので、アドレスにこだわっています。アドレスとは、港区アドレスや中央区アドレス、渋谷区アドレスなど、ちょっと響きのよい素敵なアドレスですね。

名刺を出したときには○○市ではなく、○○区。その夫婦もある区に住むことにこだわっていて、20何万円という家賃を毎月払っています。ところが時代とともに仕事が減り、最近は前ほどかせげなくなってきた様子。

家賃が高くて貯金もまったくできないけれど、都落ちのようになると前よりもっと仕事がこなくなるんじゃないかといって引っ越さない。Ｈさん夫婦の話を聞いていると、見た目は優雅だけど、水面下では足を必死に動かしている白鳥を思い出さずにいられません」

アルバイトで20万円の家賃を払う親御さんの話

「ある家計診断で知り合ったＩさん（女性45才）の親御さんもそう。お母さんは元アナウンサー、お父さんは会社を経営している社長さんで、都内の一等地に一軒家を建てて住んでいました。

Ｉさんも、いわゆるセレブな暮らしの中で育ったけれど、10年前ぐらいにお父さんが自己破産してしまった。それで親御さんたちは一軒家を売り、近くのマンションに移り住みました。

マンションに移り住んだといっても、一等地なので家賃は20万円。
その親御さんたちは、いまも二人でアルバイトをしながら、そこの家賃を払って暮らしているそうです。アルバイト代と貯金を入れても家賃を払うのはピーピーどころじゃないことは、ちょっと話を聞いただけでもわかりますよね。

でも、お母さんは近所にアナウンサー時代からの友だちも多く、友だちはみんな優雅な暮らしをしている。Ｉさんの親御さんたちは自己破産しているから楽ではないと、周りもわかっているけれど、それでもあのマンションに住んでいるんだから実態はわからないといわれているらしいですね。

一人娘であるＩさんは、ほんとうに親孝行な人で東京近県に住んでいるのですが、自分で買った家に親もいっしょに住めるように部屋をあけてあるんですって。そこに来てくれれば家賃がなくなり、二人ともラクに暮らせるはずなのに、それでもどんなに説得してもダメなのだそう。

都落ちは耐えられないとお母さんが言っている。もう持ちこたえられないところまできているのに、現役時代にレベルの高い生活をずっとつづけてきた人の感覚というのは、外からではわかりません。立ち入れない領域です」

状況が変わったら早く受け入れて航路を変更しましょう

「Ｈさん夫婦にしても、Ｉさんの親御さんにしても、本人たちの感覚の問題ですから、こちらがアドバイスしづらいというのはあります。でも、もし相談を受けたら『どっちがいやか』ということは聞くでしょうね。

そこの住所にこだわりつづけて、この先貯金がないままか、家賃を下げて生活が楽になり貯金もできるようになるのと『どっちがいや？』って。『いい？』じゃなくて『いや？』と聞くのがポイント。
いいほうはとりにくいので、いやなほうを選択してもらうと『ああそうか、現実的には無理なのかな』と感じてくれるといいなと思っています。

でもＩさんの親御さんの場合は、どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、もう連れてくるしかない。おそらく貯金をすべて食いつぶせば、仕方なく動いてくれるのではないかと娘さんも話しています。

いずれにしても節約するとしたら、住居費がいちばん大きいところです。
何か状況が変わったら、まず住みかえることを考えないといけない。でも多くの人はアドレスにこだわったり、地元に友だちがいるからといって、なかなか動きません。でもやはり住みかえて、新しい環境でやっていくしかない。

住宅ローンが払えないなら、いまは損が小さく売れる可能性が高い、売るにはよい状況なので、マンションを思い切って売ってしまってやり直すというのも手ですよね。

結局、ライフプランを変えるしかないわけで、住まいは変わるけれど、それも早く受け入れたほうが勝ち。Ｉさんのお母さんのように、いつまでたっても受け入れられないと、何もいいことはないということです」

『サヨナラ、お金の不安』（畠中雅子著　主婦の友社刊　1200円＋税）より

畠中雅子／ファイナンシャルプランナー
社会人の娘、大学生、高校生の息子の母。実体験に基づく的確なアドバイスに定評があり、多数のメディアで幅広く活躍している。『Como特別編集　子育て中でも貯金ゼロでも1000万円貯める10のルール』（主婦の友社）、『どっちがお得？定年後のお金』（高橋書店）など著書多数。

取材・文／池田純子

Profile畠中雅子

ファイナンシャルプランナー
社会人の娘、大学生、高校生の息子の母。実体験に基づく的確なアドバイスに定評があり、多数のメディアで幅広く活躍している。『Como特別編集　子育て中でも貯金ゼロでも1000万円貯める10のルール』（主婦の友社）、コミックエッセイ『結婚したらすぐ考えるお金のこと』（KADOKAWA）など著書多数。

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