コラム
私が先日、取材でお邪魔したＳさん（42才女性・息子13才・娘10才）のお宅も、ママのこだわりがそこここにあふれた素敵なインテリア。そこでお茶と手作りお菓子をいただいていると、まるでちょっとしたカフェにいるような気分になりました。
家計診断をさせていただいたのですが、食費や外食費、ママのおこづかいが異常に少ない！聞けば、ママは管理栄養士の資格をお持ちとのことで、料理の腕前はプロ級。食材をムダなく使い、栄養バランスのととのった美味しいお料理は、お友だちの間でも評判で、ママ友ランチも材料費をもらい、Ｓさんが手料理でもてなすそうです。食費やおこづかい費が少ないのも納得です。
そんなふうに得意なことを身の丈に合った方法で趣味として楽しんでいればいいのですが、趣味が高じて自宅の一室を改良し、料理教室を開けば、もしかしたらいくらか稼げるかしら……そんなふうに考え始めたら“サロン貧乏”の始まりです。
いくらお友だちの間で評判だからといって“じょうずにできる”と“お金がとれる”は、全く別の問題だからです。
Ｇさん（39才・息子17才と15才）は、いつかネイルサロンを開きたいという夢を持っていました。Ｇさん自身も、いつもきれいにネイルを施し、勉強だから、と周りのママに声をかけて自宅に来てもらい、お友だち価格でネイルをしていました。それがどんどん広がって、お友だちじゃない人まで来るようになりました。
自宅に人が多く訪れるようになれば、お茶やお菓子代もかさむし、掃除もたいへん。見ず知らずの人を家にあげるわけですから、セキュリティもある程度、ととのえなくちゃいけない。自分自身の洋服代やアクセサリー代だって、専業主婦だった時代とは比較にならないくらい出ていきます。持ち出す金額がどんどんかさんでいき、お客さんはふえるけれど、貯金は減る一方。でもお友だち価格で始めてしまったため、急に値段を上げるわけにもいきません。
売り上げは月に数万円、それ以上に持ち出しのある赤字経営の中、なんとＧさんはそのネイルサロンを会社にしてしまいました。会社にすれば信用も付いて、きちんとした値段で商売をしていけるだろうと踏んだからです。
とはいえ、個人の場合、赤字であれば所得税も住民税もほとんどかかりません（住民税の均等割は赤字でもかかる）。ですが、法人化すると、赤字であっても法人住民税という名の税金を払わなくてはなりません。さらに自分では決算できないから、と税理士をつけたので、それだけで年間20万円の出費。毎月２万円近いコストが上乗せされてしまいました。
その後、お客さんが増えていくかと思いきや、一巡したら一段落。２回目はちらほら、３回目、４回目とリピートしてくれる人は、ほとんどおらず、いまは自宅の一室が倉庫と化しているそうです。甘い見通しで始めて、どんどん首を絞められていくという典型です」
本当にちゃんとやろうとすれば、月々数万円でなくて何十万円と稼ぐ目標を立て、しっかり資金を準備して部屋を借りてやる。部屋もそれなりの雰囲気のある空間をつくらないと。玄関に子どもの靴が散乱しているような空間に、お金を払う人はなかなかいません。
逆に、自宅でやるなら、趣味の延長と割り切ってやる。生活に必要なお金はアルバイトやパートで稼ぐことを原則として、プラスαで人生を豊かにするために自宅サロンを楽しむ程度にとどめる、ということです。このどちらかにしないと続きませんし、続かないだけでなく、将来の老後資金を食いつぶすことになります。
Ｓさんのように、「友達と外でランチをしたらお金がかかる。でも材料費をもらって自分で作れば家計も助かるし、友だちも喜んでくれる」というのが賢い楽しみ方。ネイルにしろ料理にしろ、自宅サロンというのは、友人、知人たちとの交流をする世界でとどめないといけないものなんですね。その世界を超えようとしたら、やはり勉強するなり、修行するなり、それなりの必要な経験や手段が必要。階段をのぼらず、いきなりプロとしてやっていくのは、かなり難しいということです。
いざ事業としてやっていくのなら、きちんと見通しを立てることが重要です。自分で元手を用意して、ここまでは赤字になっても耐えよう、これを食いつぶしたら自分には才能がなかったと思って潔くやめようなど、どこまでのリスクを覚悟するのか、その分岐点をきっちりと決めてやめる勇気も含めてスタートすることです。
その見通しもなく、憧れだけでとりあえずで始めてしまうのは、避けたほうが良いと思います」
『サヨナラ、お金の不安』（1200円＋税・主婦の友社刊）
http://www.amazon.co.jp/dp/4074163675
子育て世代が知らずにやっている「お金が貯まらない悪習慣＆行動」を大研究。お金を貯めるのが驚くほどラクになるアドバイスが満載です！
畠中雅子／ファイナンシャルプランナー
社会人の娘、大学生、高校生の息子の母。実体験に基づく的確なアドバイスに定評があり、多数のメディアで幅広く活躍している。『Como特別編集 子育て中でも貯金ゼロでも1000万円貯める10のルール』（主婦の友社）、『どっちがお得？定年後のお金』（高橋書店）など著書多数。
取材・文／池田純子
憧れのサロネーゼから地獄へ！“自宅サロン貧乏”にご注意!!
更新日：2017.10.28
“じょうずにできる”と“お金がとれる”はイコールじゃない！
「『自分の空間を大切にしたい』という人が増えています。私が先日、取材でお邪魔したＳさん（42才女性・息子13才・娘10才）のお宅も、ママのこだわりがそこここにあふれた素敵なインテリア。そこでお茶と手作りお菓子をいただいていると、まるでちょっとしたカフェにいるような気分になりました。
家計診断をさせていただいたのですが、食費や外食費、ママのおこづかいが異常に少ない！聞けば、ママは管理栄養士の資格をお持ちとのことで、料理の腕前はプロ級。食材をムダなく使い、栄養バランスのととのった美味しいお料理は、お友だちの間でも評判で、ママ友ランチも材料費をもらい、Ｓさんが手料理でもてなすそうです。食費やおこづかい費が少ないのも納得です。
そんなふうに得意なことを身の丈に合った方法で趣味として楽しんでいればいいのですが、趣味が高じて自宅の一室を改良し、料理教室を開けば、もしかしたらいくらか稼げるかしら……そんなふうに考え始めたら“サロン貧乏”の始まりです。
いくらお友だちの間で評判だからといって“じょうずにできる”と“お金がとれる”は、全く別の問題だからです。
Ｇさん（39才・息子17才と15才）は、いつかネイルサロンを開きたいという夢を持っていました。Ｇさん自身も、いつもきれいにネイルを施し、勉強だから、と周りのママに声をかけて自宅に来てもらい、お友だち価格でネイルをしていました。それがどんどん広がって、お友だちじゃない人まで来るようになりました。
自宅に人が多く訪れるようになれば、お茶やお菓子代もかさむし、掃除もたいへん。見ず知らずの人を家にあげるわけですから、セキュリティもある程度、ととのえなくちゃいけない。自分自身の洋服代やアクセサリー代だって、専業主婦だった時代とは比較にならないくらい出ていきます。持ち出す金額がどんどんかさんでいき、お客さんはふえるけれど、貯金は減る一方。でもお友だち価格で始めてしまったため、急に値段を上げるわけにもいきません。
売り上げは月に数万円、それ以上に持ち出しのある赤字経営の中、なんとＧさんはそのネイルサロンを会社にしてしまいました。会社にすれば信用も付いて、きちんとした値段で商売をしていけるだろうと踏んだからです。
とはいえ、個人の場合、赤字であれば所得税も住民税もほとんどかかりません（住民税の均等割は赤字でもかかる）。ですが、法人化すると、赤字であっても法人住民税という名の税金を払わなくてはなりません。さらに自分では決算できないから、と税理士をつけたので、それだけで年間20万円の出費。毎月２万円近いコストが上乗せされてしまいました。
その後、お客さんが増えていくかと思いきや、一巡したら一段落。２回目はちらほら、３回目、４回目とリピートしてくれる人は、ほとんどおらず、いまは自宅の一室が倉庫と化しているそうです。甘い見通しで始めて、どんどん首を絞められていくという典型です」
ママの仕事に“あわよくば”はありません!!
「自宅サロンというと響きがおしゃれだし、周りからも素敵といわれます。当人もあわよくば……と思いがちですが、ママの仕事に“あわよくば”はありません。本当にちゃんとやろうとすれば、月々数万円でなくて何十万円と稼ぐ目標を立て、しっかり資金を準備して部屋を借りてやる。部屋もそれなりの雰囲気のある空間をつくらないと。玄関に子どもの靴が散乱しているような空間に、お金を払う人はなかなかいません。
逆に、自宅でやるなら、趣味の延長と割り切ってやる。生活に必要なお金はアルバイトやパートで稼ぐことを原則として、プラスαで人生を豊かにするために自宅サロンを楽しむ程度にとどめる、ということです。このどちらかにしないと続きませんし、続かないだけでなく、将来の老後資金を食いつぶすことになります。
Ｓさんのように、「友達と外でランチをしたらお金がかかる。でも材料費をもらって自分で作れば家計も助かるし、友だちも喜んでくれる」というのが賢い楽しみ方。ネイルにしろ料理にしろ、自宅サロンというのは、友人、知人たちとの交流をする世界でとどめないといけないものなんですね。その世界を超えようとしたら、やはり勉強するなり、修行するなり、それなりの必要な経験や手段が必要。階段をのぼらず、いきなりプロとしてやっていくのは、かなり難しいということです。
いざ事業としてやっていくのなら、きちんと見通しを立てることが重要です。自分で元手を用意して、ここまでは赤字になっても耐えよう、これを食いつぶしたら自分には才能がなかったと思って潔くやめようなど、どこまでのリスクを覚悟するのか、その分岐点をきっちりと決めてやめる勇気も含めてスタートすることです。
その見通しもなく、憧れだけでとりあえずで始めてしまうのは、避けたほうが良いと思います」
これでお金の不安ともサヨナラ！
もっと詳しく畠中先生のお話を読みたい方はこちら！『サヨナラ、お金の不安』（1200円＋税・主婦の友社刊）
http://www.amazon.co.jp/dp/4074163675
子育て世代が知らずにやっている「お金が貯まらない悪習慣＆行動」を大研究。お金を貯めるのが驚くほどラクになるアドバイスが満載です！
畠中雅子／ファイナンシャルプランナー
社会人の娘、大学生、高校生の息子の母。実体験に基づく的確なアドバイスに定評があり、多数のメディアで幅広く活躍している。『Como特別編集 子育て中でも貯金ゼロでも1000万円貯める10のルール』（主婦の友社）、『どっちがお得？定年後のお金』（高橋書店）など著書多数。
取材・文／池田純子
Profile畠中雅子
ファイナンシャルプランナー
社会人の娘、大学生、高校生の息子の母。実体験に基づく的確なアドバイスに定評があり、多数のメディアで幅広く活躍している。『Como特別編集 子育て中でも貯金ゼロでも1000万円貯める10のルール』（主婦の友社）、コミックエッセイ『結婚したらすぐ考えるお金のこと』（KADOKAWA）など著書多数。
社会人の娘、大学生、高校生の息子の母。実体験に基づく的確なアドバイスに定評があり、多数のメディアで幅広く活躍している。『Como特別編集 子育て中でも貯金ゼロでも1000万円貯める10のルール』（主婦の友社）、コミックエッセイ『結婚したらすぐ考えるお金のこと』（KADOKAWA）など著書多数。
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