自分たちで塗った珪藻土の壁のやさしい陰影に癒される家【DIY&建主参加の家づくり】

【Nさん宅（大阪府）】

ご夫妻と元気な2人の男の子の4人家族。阪神・淡路大震災の経験から「丈夫な家」にこだわり、SE構法を手がけるビルダーに依頼しました。のびのび遊べる家にお子さんたちも大喜び。

「ナチュラルな家を建てたい」と、自然素材を使った家づくりが得意なビルダーに依頼したNさん。床には厚みのある無垢のスギ材を採用しましたが、さて壁は……。「塗り壁にしたいけれど、予算的に厳しい」と悩んでいたところ、飛び込んできたのがDIYでリフォームしたという友人のニュース。「それを聞いて、私たちも壁塗りに挑戦しようと思い立ちました」

ビルダーに相談すると、左官職人に頼んだ場合とDIYで仕上げた場合を比較した見積もりを出し、コストダウンになるとあと押しされました。スケジュールも調整し、現場を1週間あけてくれることに。平日は奥さまと友人、週末にはご主人も参加し、朝から夕方までみっちり作業。家全体となると大仕事なので、家族の集まるLDKに限定しましたが、それでも大変だったそう。「2月の寒い中、黙々とコテを動かしました。腕が疲れて上がらなくなり、四十肩になったかと思ったほど（笑）」

それだけに完成したときの達成感はひときわだったとNさん。そして住み始めて実感したのは、塗り壁独特の陰影の美しさ。「同じ白壁でもクロスとは全然違う。光の当たり方で表情が変わって見飽きません」。窓のとり方に工夫し、旗ざお状敷地という条件をクリアしたNさん宅。あちこちの窓からの光がコテむらのついた壁に広がり、豊かな空間になりました。

DIYをしたところ

• ２階の壁の珪藻土塗りetc.

2F LDK

DIYしました

知人の左官屋さんに頼んで仕入れた「四国化成」の珪藻土を塗った壁。「最初は同じ場所を何度も塗ったりしましたが、慣れると早くなりました」。人によってコテあとが違うので、場所を決めて塗るのがコツ。

南面の3連の窓は、飾りながら収納できる棚を上下に設けてインテリアのアクセントに。造りつけのキャビネットにはシンプルな白い扉を。

2F リビング

耐震性の高いSE構法を採用し、天井の構造梁を見せて広がりを。床は30㎜厚さのスギ材を、国産の保護剤「木肌美人」で風合いのある仕上げに。

2F ダイニング

音楽が趣味のご主人のために、手持ちのオーディオ棚を置くスペースをダイニングに確保。ターンテーブルと
LPレコードを備え、ときにはDJ風に楽しみます。

2F キッチン

ステンレスでオリジナル製作したキッチン。カウンター下はオープンにし、業務用っぽいガスコンロとオーブンを設置して厨房風に。

3F 子ども部屋

高い勾配天井にインパクトある太い梁が走っています。将来、2部屋に仕切れる設計。引き戸や扉はシンプルなものをオーダー製作しました。

3F 寝室〜子ども部屋

寝室と子ども部屋は、風通しを考えて引き戸で間仕切り。天井までの引き戸は閉めれば壁のようになり、すっきり。
プライバシーも守れます。

3F 廊下

寝室のドアをあけると、廊下からバルコニーへの掃き出し窓まで一直線。風が気持ちよく通り抜けます。
バルコニーは布団干しの場としても活用。

1F 洗面室

集成材のカウンターに陶器の洗面ボウルを設置したオーダーメイドの洗面台。かごやボックスを使ってナチュラルに
収納しています。

1F/2F トイレ

トイレはシンプルな空間にして雑貨で味つけ。2階のトイレ（左）は壁厚を利用して浅い棚を造りつけ、小物を飾って。どちらも入り口は、あけ放してもOKの引き戸に。

1F 玄関

靴は土間クローゼットに収納できるので、玄関はすっきり。ドアをあけたときに家の中が見えないよう、玄関の位置と動線に配慮しました。

1F 土間クローゼット

靴や外遊びの道具を収納する土間クローゼットの奥にデスクを造りつけ、フラワーアレンジメントのアトリエに。
窓を設けて光と風もとり入れて。

外観

DIYしました

【写真左】あえて旗ざお状敷地を購入、プランの工夫で快適な家に。通りから見える部分にバルコニーを配し、木製のフェンスでぬくもりを演出しています。
【写真右】建物の周囲には防犯用の砂利を敷いていますが、玄関前の一角だけDIYでタイル敷きに。「夫や子どもたちが素振りをするスペースです」

教えて！ DIY体験談

DIYをやってよかったと思うことは？

自分たちも時間をかけ、手間をかけ、「わが家らしい家ができた」ことがうれしいですね。
メンテナンスを自分たちでできるのもよかったと思います。

予想よりもつらかったことや困ったことは？

上のほうや角を塗るのが難しかったです。途中で角用のコテを買い足しました。
それと、子どもが小さかったため幼稚園や実家への送り迎えが必要で、移動も多くてクタクタになりました。

コストダウンになった？

プロの左官屋さんに頼んだ場合と比べると約14万円、クロス張りにした場合と比べても8万5000円ほどのコストダウンに。

読者に何かアドバイスを

何でもはじめてのことは大変なもの。4年間過ごして、「やって正解だった」と思っています。
時間が許せばぜひチャレンジしてみてほしいですね。

【写真左】ママたちが作業しているそばで、長男もコテを片手に何やら製作中。
【写真右】でき上がった作品。珪藻土を塗った板に割り箸で木の絵を描きました。

DATA. Nさん宅（大阪府）

設計のアドバイス

福田工務店
代表・クリエイティブディレクター
福田 明伸さん

スケジューリングがポイント。 材料や道具についても相談を

家に愛着のわくDIYはおすすめ。壁塗りのほか、床の塗装をする人もふえています。材料や道具は当社が用意したり、量だけ計算して購入していただくなど、柔軟に対応しています。引っ越しまでの日程を逆算し、余裕をもった作業のスケジューリングが大切ですね。

Profile.

私設ミュージアムの運営を経て1998年同社代表に。SE構法と自然素材にこだわった家づくりを提案。オフィスに併設のショップ＆カフェも人気。

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