コロナ禍を経験した私たちは、家族の健康の維持のためには手洗い・うがいなどの生活習慣、そして食事での体調サポートの重要性を痛いほど知るようになりました。
やはり家族が健康なお家は、日頃から食事にひと工夫があるなと感じませんか? 何も丁寧に全部手作りというわけではありません、そんなこと働く私たちには絶対無理。
そうではなくて、朝ごはんにフルーツやヨーグルト、納豆や小魚を食べる習慣があったりと、手間をかけずに栄養素プラスの工夫をしているのです。
こうした「効率的な栄養管理の要点」を、産婦人科医であり、栄養療法のエキスパートである稚枝子おおつきクリニック院長 武者稚枝子先生に伺いました。
現代人は飢餓状態!?その不調は栄養不足が原因かもしれません
疲れやすい、落ち込みやすい、肌の調子がイマイチ……など、なんとなく調子が悪いという人が多いように感じます。また、風邪など感染症に繰り返しかかっている人もいますよね。個人差はあると思いますが、いつも元気な人との違いは何が考えられますか?
「私たちのからだ(生体)は、生まれながらにして病気やケガを自ら治す力を持っています。よく、自然治癒力といいますね。その能力を支えているのが、生体恒常性(ホメオスタシス)です。外界の状況が変化しても体温や血糖値など体内の状態を一定に保つ機能のこと。さまざまな原因で生体恒常性が機能しなくなると、発病につながることが多くあります」
不調を抱えている人は、その生体恒常性の働きがうまくいっていない可能性があるんですね。その原因はなんですか?
「ストレスや加齢、不規則な生活が挙げられます。食生活も原因のひとつです。現代人は、カロリーは十分にとれているのですが、からだを作るために必要な栄養素が不足しているんです。今、問題となっている『新型栄養失調』です」
栄養失調と聞くと、食料が不足している国や紛争が起きている国の話と思われますが、過剰な食事制限によるダイエットなど偏食によって日本でも子どもや女性に多く見られます。特に不足しているのが、たんぱく質、ビタミン、ミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛)です。
「この栄養不足が、だるい、疲れやすい、集中力がない、肌あれ、抜け毛、風邪をひきやすいといった不調を招く原因になっているのです。私のクリニックでは、婦人科以外にも思春期相談や不定愁訴で来院される方もいらっしゃいます。起きるのがしんどい、疲れやすいという子どもたちが増えていると実感しています。そういう子どもたちはじつは必要な栄養がきちんととれていないことが多いんです」
病気に勝つための防御システム「免疫」は、腸がカギになる。いつでも腸を元気にして
これからの季節は、風邪をはじめ感染症が気になります。毎年のようにインフルエンザにかかる人もいますし、しょっちゅう風邪で休んでいる人もいます。その人たちも、やはり栄養不足から自然治癒力が低下しているのでしょうか。
「感染症など病気から体を守るのは、免疫です。外部から侵入した細菌やウイルスなどの異物や、体内にできたがん細胞から身を守る防御システムのことです。生まれつき備わっている『自然免疫』と、体内に侵入した病原体に対し、その特徴をもとに攻撃する『獲得免疫』があります。防御システムの担い手が『免疫細胞』です。この免疫細胞の約7割が腸に生息していて『腸管免疫』と呼ばれています」
よく、免疫力を高めるには腸を整えましょうといわれるのは、免疫細胞が多く存在するからなのだそう。
「私たちのからだはたくさんの細胞でできていますよね。その細胞に栄養が行き渡らなければ、本来の機能を発揮できません。特に、すべての細胞の主原料であるたんぱく質が大切なのですが、ほとんどの人が不足しているのが現状です」
たんぱく質不足の話はよく耳にしますが、1日どれくらいとるのが理想ですか?
「1日に必要な量は、体重1㎏あたり1~1.5gです。体重50㎏の人なら、50~75g。じゃあ、たんぱく質50gってどれくらいかというと、生卵なら8個、豆腐なら1皿100gと考えて15皿分です」
そんなに!! 全然足りていませんでした……。
「そうなんです。みなさん、食べていますと言っても足りていないんです。新型栄養失調の話をしましたが、足りていない栄養素は『肉、魚、豆や、木の実』を毎食バランスよくとることをお勧めします」
これは、縄文時代から変わらないこと、と武者先生。
「赤みの肉、魚からはたんぱく質だけでなく鉄分もとれるのでお勧めです。まずは生きるために必要なたんぱく質を積極的にとってほしいですね」
「いつも健康」でいるための秘密は、腸が元気であること!悪玉菌を増やさないために善玉菌や食物繊維を積極的にとって
先ほど、免疫細胞の約7割が腸にいるというお話がありました。腸が元気だと、いつも健康でハツラツと過ごせるということでしょうか。
「腸が元気であれば、食事もしっかりととれるので、健康なからだを維持できると言えますね。先ほどもお話ししましたが、腸だけでなくからだ全体の細胞を元気にするためには栄養が必要です。もりもり食べるためには、胃腸が元気でないといけません。健康な胃腸を保つためには、たんぱく質や鉄など必要な栄養素をしっかりととることです。免疫は栄養でつくられるのです」
ここ数年、腸活ブームで、健康のためには腸を整えることが大切だということが多くの人に広まっています。腸を健康に保つためにとったほうがいい食品はありますか?
「腸を健康に保つには、腸内フローラ(細菌)のバランスが大切です。悪玉菌を増やさないように善玉菌が含まれる、ヨーグルトなどの発酵食品をとるのがいいでしょう。代表的なものにはヨーグルト以外にもチーズなどがありますね」
大腸の善玉菌の主役はビフィズス菌なので、ビフィズス菌の入った食品も健康維持にお勧めです。腸内のバランスは常に変化しているので、継続してとることが大切なのだそうです。
からだを中から強くする、世界中で注目の成分「ラクトフェリン」とは
美容や健康に気をつかう女性のあいだでラクトフェリンのサプリメントを飲んでいる人が増えています。この「ラクトフェリン」とは、どんな成分なんでしょうか。
「ラクトフェリンは、人間の母乳、特に初乳に多く含まれているたんぱく質の一種です。人間だけでなく哺乳動物の乳に含まれていて、生まれたばかりの赤ちゃんを守っている成分と言われ、世界中のさまざまな国と地域で体調管理に使用されています。それほど大切な成分の一つなんです。また、鉄分とも相性がいいのも特徴です。特に女性は月経で鉄分が不足しがちなので、合わせてとるとよいですね」
乳に含まれるということは、乳製品をとればいいのでしょうか。
「ラクトフェリンは熱に弱いため、加熱殺菌された市販の牛乳やチーズなどにはほぼ含まれていません。食品から摂取するのは難しいと言われています。サプリメントやラクトフェリン入りと表示されているヨーグルトやヨーグルト飲料からとるのがいいでしょう」
いつも健康でいるためにはバランスのとれた食事が基本
食べているのに、必要な栄養が足りていない人が多いことに驚きました。食べたものでからだはできていると言われますから、元気の源は食事なんですね。
「健やかな身体を維持するためには栄養が欠かせません。たんぱく質、ビタミン、ミネラルは必須。忙しくて食事がちゃんととれないという人は、さまざまな食品やサプリメントが出ていますので、普段の食事を補うために上手に活用するといいですね」
教えてくれた人
稚枝子おおつきクリニック院長 武者稚枝子先生
東京女子医科大学医学部医学科卒業。同大学院卒業。東京女子医科大学病院、同関連病院、小川赤十字病院、湘南記念病院、大月市立中央病院などに勤務。2011年に地元である山梨県大月市で「稚枝子おおつきクリニック」を開業。東京女子医科大学病院 非常勤講師も務める。更年期障害、骨粗しょう症のほか、栄養療法、思春期相談も受けている。
https://chieko-clinic.com/
撮影/柴田和宣(主婦の友社)
*2025年8月Dr’sReview事務局調べ
対象:101名(内科医または小児科医)
設問:「本シリーズを継続的に摂取することで、子供や大人の健康的な生活の維持におすすめできると思いますか?」
※本アンケートは商品使用者個人の感想であり、効果効能を保証するものではありません。
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