【佐賀枝さん宅(滋賀県)】
「白木の床のナチュラルな家がいいなと思っていたのですが、夫に洗脳されました」。そう言って笑うのは佐賀枝さんの奥さま。でき上がったのは、ユーズド感のある仕上げの床に、一部を濃茶色にした天井、階段の手すりにはざっくりした風合いの黒皮鉄を使ったモダンテイストの家でした。
家づくりを依頼したのは、「おしゃれな家を建てるならここ」と知人に紹介されたビルダー。代表の大池さんをはじめ、スタッフ全員が「つくり手」というアトリエ風の会社で、併設されたショップには古材やアイアンを使った家具や雑貨が並び、佐賀枝さん夫妻のイメージをかき立てました。
本当はストイックなほどシンプルな空間が好みだというご主人。「でも、家族で暮らす家ならもう少しラフなほうがいい。年齢を重ねても違和感なく暮らせて、なにより『どこにもない、かっこいい家にしたい』と考えました」
奥さまの希望である自然素材もとり入れ、この“モダンヴィンテージスタイル”の住まいに。お二人の熱意にこたえ、ビルダーからはこまかいパーツに至るまでひと味違う提案がされました。
かといって予算を度外視したわけではありません。板張りを希望した天井はクロス張りにし、間接照明で雰囲気を高めるなど、コストを抑えながら希望のイメージに近づける工夫も重ねました。
佐賀枝さん宅の工夫
予算内におさめる工夫
壁はペイントの下地風のクロス張りにし、コストをかけずに雰囲気アップ。
色&柄物クロスも効果的に使いました。収納の扉をなくしたり、窓を小さくするなどのこまかい工夫も。
好みのインテリアにする工夫
“ピスタチオ色”の自然塗料や黒皮鉄など、素材や仕上げでヴィンテージ感を演出。
キッチンや洗面台はオリジナルで造作し、デッドストックの取っ手などパーツにもこだわって。
暮らしやすさの工夫
キッチン → パントリー → 洗面室と続く間取りで家事動線をスムーズに。
オープンキッチンは造作カウンターで手元を隠し、開放感を保ちながらすっきり見せています。
1F リビング
【Point】ダークな色のクロスを張った天井
「天井の一部を板張りに」との希望を、クロス張りにしてコストダウン。天井を1段下げ、間接照明を組み込んでデザイン性も高めて。
【写真左】濃茶色の天井や間接照明が落ち着いた雰囲気。テレビボードは木とアイアンを使って造作しました。ソファは滋賀の「プラスカーサ」、テーブルは「unico」で購入。
【写真右】ほっこりフォルムのハンドルでレトロ感を演出
リビングと和室の間は縦格子の造作建具で間仕切り。左手の窓は当初、掃き出し窓の予定でしたが、ソファを置くことを考えてサイズを変更。コストダウンにもつながりました。
1F LD
【Point】床はこだわりの “ピスタチオ色”に仕上げて
床は無垢のオーク材を自然塗料の“ピスタチオ色”で仕上げ、使い込んだような雰囲気を出しました。
ドアや建具も同じ色に。
リビングとダイニングをL字型に配置し、空間をほどよく分けて。ダイニングはウッドデッキにも続き、広がりが感じられます。壁にはご主人の選んだマリンランプをつけて。
1F 和室
建具を引き込めばリビングとひと続きの空間に。シンプルなオリジナルのふすまや地窓が、和モダンテイストを醸し出します。段差部分は収納スペースで、腰かけるのにも便利。
1F DK
【Point】木とアイアンでつくったオリジナルのテーブル
テーブルは、ビルダーが展開するショップ「CAMP」のオリジナル。無垢材とアイアンの武骨なイメージが空間に似合っています。
オーク材で造作したキッチンカウンターがインテリアの核に。ボーダータイルがデザインを引き締めます。サイドには表紙を見せながら収納できるマガジンラックをつけました。
1F キッチン
【Point】引き出しには デッドストックの取っ手をつけて
あけ閉めしやすいレールつきの引き出しに、デッドストックの取っ手を。オーダー製作したアイアンのバーやレトロなガラスにもこだわりました。
【Point】黒板塗料で仕上げた扉もインテリアのアクセントに
カウンター下部には収納を設け、扉は黒板塗料で仕上げました。チョークでお絵描きも楽しめますが、「まだ勇気がなくて(笑)」と奥さま。
フルオープンのキッチンを希望したご主人に対し、「手元が隠せないと主婦にはつらい」とビルダーの代表がカウンターの設置を提案。レンジフードは「アリエッタ」の製品を採用。
キッチンの背面キャビネットもオーク材で造作。ダイニングから見えない場所に炊飯器置き場をつくるなど、すっきり見えて使いやすいように設計されています。
【Point】ステンレスの仕上げにこだわり、「イケア」のキッチンを採用
「エンボスではなく、ヘアライン仕上げのステンレスに」と希望し、コストも手頃な「イケア」のキッチンを
選びました。
使い勝手のいいキッチンで 毎日の調理も楽しく。「自然にひと皿ふえています」
カウンターやキャビネットを造作したキッチンは、「取っ手やタイルがかわいくて、立つのが楽しい」と奥さま。
「使い勝手もよくて食器の出し入れもしやすいから、いつもと違うお皿を使ってみようかなという気になります」
LDKはもちろん、洗面室や収納スペースなど暮らしに直結するスペースも素敵に仕上がり、
「日々の生活もおしゃれに」と心がける佐賀枝さん夫妻のモチベーションを高める家になりました。
階段
【Point】鉄そのものの風合いを生かした黒皮鉄の手すり
塗装を施さず、酸化皮膜を残して鉄らしい風合いを味わう「黒皮鉄」を手すりに採用。経年変化を楽しむ家にぴったりです。
濃茶色が存在感を放つ階段。大きめにつくった無垢材の踏み板で、上り下りもラクです。左手の室内ドアはシンプソン社の木製ドアを“ピスタチオ色”に塗装。
吹き抜け
リビングに足を踏み入れると階段ホールの吹き抜けに迎えられ、のびやかな気分に。上から降り注ぐ光も快適です。LDと2階とコミュニケーションもスムーズ。
1F 洗面室
【写真左】洗面台もミラーも造作で。幅180㎝の広々カウンターにシンプルな角型ボウル、「コーラー」の水栓金具、六角形のモザイクタイルトップなど、すみずみまでこだわりました。
【写真右】洗面室の一角には可動棚も設置。タオルやパジャマを収納しています。キッチンからパントリー&家事コーナー、洗面室と一直線につながり、家事動線もスムーズです。
1F パントリー
【写真左】パントリーの一方の壁面にデスクを造りつけ、家事コーナーに。デスクには配線穴も設けてあり、パソコンなどのコードもすっきりまとまります。
【写真右】キッチン横に設けたパントリーの壁には、レトロモダンな柄の「シンコール」のクロスを採用。片づけなどの作業も明るい気分でできそうです。
2F 寝室
「10畳は欲しい」と希望して、ウォークインクローゼットも併設してゆったり設計した寝室。公園の見える北側に大きめの窓を設けました。シンプルな空間の中で、壁のマリンランプをアクセントに。
寝室の壁の1面をワインカラーにした、造り付けの書斎コーナー。脚をつけずに天板を壁づけにしたデスクや、シンプルな棚受けを使ったオープン棚で、すっきりとした印象に。
2F ホール
バルコニーからの光がたっぷりさし込むホール。広めに設計し、アイアンと木で造作した本棚を設置しました。「本棚を置いたことで、空間がぐっと締まりました」
2F 子ども部屋
【Point】床と同じ色に仕上げた建具
室内ドアやクローゼットの扉はオーダー製作。床と同じ“ピスタチオ色”に塗装し、素材感を生かしたシンプルな
デザインにしました。
2人のお子さんの部屋は、今はのびのび遊べるワンルームに。将来は2部屋に仕切ることができる設計です。
クローゼットの扉を天井近くまでの高さにして、すっきりとした印象に。
将来の間仕切りに備えて、ドアを2つ設置。ドアの上にはガラスをはめ込み、明かりがもれるようにしています。
1F/2F トイレ
【Point】木のボックスは置いただけの簡単設計
【写真左】カウンター下の木のボックスは、収納棚。固定しておらず、オープン面をくるりとこちらに向けて出し入れする簡単設計で、コストダウン。
【写真左】お客さまも使う1階のトイレは、手洗いカウンターも設けたゆったり空間。大きな鏡で広がりをもたせています。シックな色のクロスと鏡の下の六角形タイルで高級感も演出。
【写真右】おもに家族が使う2階のトイレは、壁の1面にマルチストライプのクロスを張って明るい雰囲気に。「サンゲツ」の製品です。設備はシンプルなものをチョイス。
1F 玄関
無駄をそぎ落としたデザインが心地よい玄関。床と建具を同じ色に仕上げ、たたきは大理石風のグレーのタイル張りに。色みを抑えた空間に、ニッチ部分のブルーグレーが控えめなアクセント。
1F シューズクローゼット
【Point】既製品の可動棚システムを 活用して、使い勝手よく
壁面にとりつけたレールに棚受けを設置するシステム。棚の位置を変えられて、ポールをとりつけるなど、カスタマイズもできます。
【写真左】シューズクローゼットはたたき部分からホールにかけて設け、コート掛けも設置。「仕事用のかばんも帰宅と同時にここへ。リビングが散らかりません」。
【写真右】家族はシューズクローゼットから出入りする2WAYの動線で、玄関はすっきり。内部の壁の一部にはモダンな柄のクロスを採用しています。
外観
外壁は塗装仕上げの黒とサイディングの白を組み合わせ、コストを抑えながらコントラストを強調。通りに面した部分は窓を小さくし、デッキの目隠しと意匠を兼ねた縦格子を設けました。
わが家のお気に入り♪
シンク前のボーダータイルはひそかな楽しみ
シンク前に貼った、黒、茶色、白のボーダータイル。「キッチンに立たないと見えないので、ひとり占めで楽しんでいます」
階段を支える鉄の部材の武骨な表情が好き
「普通なら家の中には使わない部材だからこそ、かっこいいですよね」。どこにもないような家にしたい、との希望にもぴったりです。
DATA. 佐賀枝さん宅(滋賀県)
Profile.
佐賀枝さん 一家
「昔は建築家になりたいと思っていた」というご主人が主導権を握った家づくり。奥さまは「こだわりの強い夫が気持ちよく住める家なら」と譲歩の姿勢でしたが、完成してみるととても住み心地がよく、大満足だそう。
設計のPOINT
ご夫妻で好みが異なる場合、意見をバラバラにとり入れるとちぐはぐな家になってしまいます。方針を決めて一貫させることが大切。佐賀枝さんの場合はご主人の好みを奥さまに説明したところ、納得して共感してくださいました。使い勝手に関しては、フルオープンのキッチンを希望するご主人に対し、目隠しのカウンターを提案するなど“主婦目線”を考慮してプラン。パントリーのクロスやキッチンのタイルなど、楽しさを感じるようなデザインにも配慮しました。
アトリエイハウズ代表
大池 義和さん
1968年京都府生まれ。2002年に同社を設立、施主との二人三脚を大切にした家づくりを進める。古い倉庫を改装したオフィスには、セレクト家具や雑貨のショップ「CAMP(カンプ)」も併設。
家族構成 |
夫婦+子ども2人 |
敷地面積 |
136.27㎡(41.22坪) |
建築面積 |
66.31㎡(20.06坪) |
延べ床面積 |
115.25㎡(34.86坪) |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2011年5月〜9月 |
本体工事費 |
約2300万円 |
3.3㎡単価 |
約66万円 |
設計・施工 |
アトリエイハウズ TEL: 075-382-6990 |
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