【萩原さん宅(神奈川県)】
緑が映えるシンプルなフォルムのこの家は、建築家の萩原健治さんが家族のために設計した自邸。
玄関ドアをあけると正面の小さな窓越しに中庭が見え、その楽しい仕掛けにワクワクしながら階段を上ると、中庭をぐるりと囲んだ気持ちのいいLDKが広がっています。「自宅とはいえ、基本構想がかたまるまで試行錯誤の毎日。あるときふっとひらめいたのが、中庭にルーフテラスを連続させたプランでした」。
当初から予算的に厳しい計画で、工事費アップにもつながるこのプランは実現が難しい面もありましたが、中庭がもたらす効果はそれ以上と判断し、決意したそうです。プランを単純化し、間仕切りや扉、造作家具はできるだけ排除することでコストダウン。工事費のかかる水回りは、洗面室を独立した部屋にせずに廊下の中間に設け、トイレも1カ所にしました。
こうしたコスト削減をはかる一方で、インテリアではこだわりを実現。ダイニングの壁一面の本棚もそのひとつです。「毎日暮らす空間こそデザインにこだわりたいと思った」と萩原さん。四季を一巡した今、「中庭を通して自然を感じることができ、どの季節も大好きです。子どもたちも居心地がいいのか、学校から帰ると本棚の前に釘づけなんです」と、奥さまもうれしそうに語ります。
理想の住まいが「1000万円台」で実現したポイント
- 建物本体の高さを通常より低めに抑えることで、建材の量をカット。
- あとからでも設置できる間仕切りや室内扉をなくして、シンプルなプランに。
- 無垢材の床や木部のワックス仕上げと、外構工事の一部は家族でトライ。
2F DK
【こだわりPoint】屋根勾配を利用した斜め天井で空間を広く見せて
床は、梁や造作家具とも調和する無垢のカラマツ材。テーブルは比較的安価なシナランバーコア材のものですが、椅子はこだわってハンス・ウェグナーのデザインをチョイス。
【こだわりPoint】どの部屋も中庭に面して配し明るさを確保
中庭に面した居心地のいいLDKができ、「家族で集まることが多くなった」と奥さま。お子さんたちは、料理本やパパ所有の建築写真集にも興味をもち始めたそう。
2F ダイニング
【こだわりPoint】家族が自然と集まる大容量のライブラリー。本棚の一部に丹沢山系が望める ハイサイドライトを。
読書家の奥さまがいちばんに希望した本棚は床から天井近くまであり、幅は約6.5m。下段には「無印良品」のケースなどを使って、子どもたちのおもちゃも収納しています。
2F LDK
中庭を囲むようにLDKとアトリエ(右手奥)をレイアウト。どのスペースにも光が届き、開放感にあふれています。1階の天井高を2.1mと低めに抑えた分、2階は3.3mと高めに。
2F リビング
【こだわりPoint】眼下に流れる川を見るための小さな地窓
ご主人が学生時代からあこがれていたソファ「マレンコ」は、新居でぜひ使いたかったそう。ソファに体を沈めると天井がいっそう高く感じられ、リラックス度アップ。
2F アトリエ
萩原さんの仕事部屋。将来、このスペースをフレキシブルに使えるよう、本棚もデスクも既製品を採用しました。窓から中庭の緑が望め、仕事で疲れた目を癒します。
2F パソコンコーナー
階段を上がりきったコーナーに、お子さんたちも自由に使えるパソコン用デスクを。背面はパパのアトリエ。デスクの下に足が出せるつくりになっています。
2F ルーフテラス
【こだわりPoint】ルーフテラスは一年じゅう大活躍のアウトドアダイニング
キッチンに面した窓から出入りできるので、配膳も片づけもラクラク。気軽に“外ごはん”が楽しめます。夜は家族で天体観測をすることもあるそう。
1F 子ども部屋
8畳弱のスペースを姉妹で仲良く使っています。ベッドや机は、以前の住まいで愛用していたもの。左手にある出入り口の扉は、通風調節に便利な引き戸を採用しています。
2F キッチン
コスト節約のため、システムキッチンは「イケア」、背面キャビネットは「サンワカンパニー」の既製品を採用。右手奥にパントリースペースがあり、食品や調理器具の収納に重宝しています。
1F 玄関ホール
【こだわりPoint】 2方向から出入りできる玄関が スムーズな動線を実現。褐色に染色したカラマツ材のパネルをアクセントに。
右手の玄関ドアを入ると、正面の壁に設けた小窓から中庭が見える仕組み。奥が寝室で、水回り、子ども部屋と回遊できる間取りなので、帰宅後の着替えや手洗いなどの動きがスムーズです。
中庭
間仕切りのないオープンプランで光も風も思いのままに
【こだわりPoint】中庭を中心に回遊できるプランで暮らしやすい家に
お子さんの友達が来ると、デッキ材敷きの中庭や、部屋から部屋へとぐるぐる回って遊んでいるそう。センター部分には、家の完成に合わせて植えたシマトネリコが。夜間はライトアップします。
1F 寝室
大きな開口をとったので、通風も採光も十分。南北に長い間取りで、将来は2室にできるよう準備してあります。こちらの寝室をはじめ、すべての部屋の壁には珪藻土クロスを採用。
1F 洗面スペース
子ども部屋と寝室をつなぐ廊下に洗面スペースを設けました。洗面台は、カウンターにボウルを置いただけのシンプルなデザイン。壁がないので湿気がこもる心配がなく、コストダウンにも貢献するプランです。脱衣所も兼ねるので、入浴時はカーテンを引いて。
1F 浴室
「変形スペースは、部屋としては使いにくいので浴室に利用しました」と萩原さん。規格品のユニットバスも設置できないので、在来工法で施工しましたが、仕上げ材を工夫することでローコストで完成。
1F トイレ
トイレと手洗いボウルは「INAX」のもの。スペースを有効に使うため、扉は引き戸を採用し、仕上げに玄関まわりと同じパネルを使ってデザインをそろえました。
外観
外壁に白いガルバリウム鋼板を張りめぐらしたモダンなデザイン。春には白い花を咲かせ、初夏に実をつけるジューンベリーをシンボルツリーに選びました。
【こだわりPoint】特殊パネルで車スペースを無理なく緑化
ポストとインターホンを設置した門柱は、建物に合わせてデザイン。駐車スペースには、地表面の高温化緩和と、公園のような雰囲気づくりのため、イワダレソウを植えて。
DATA.萩原さん宅(神奈川県)
Profile.
右から、読書が趣味の奥さまのさん、健治さん、絵を描くのが好きな菜々さん(小3)、手芸が得意な妃菜さん(小5)。みんなで庭いじりをするのが休日の楽しみとか。
設計のPOINT
萩原健治建築研究所 萩原 健治さん
高台にあるため、北側は川が見下ろせて、遠くに丹沢山系が望める眺望のいい敷地。その一方、南側は雛段状に民家が立ち並び、東西にも隣家が接近し、さらに変形地という制約がありました。そこで、外に開くのではなく、家の中心に中庭を設けた「囲んで開く」というプランを考えました。外部に面した窓は少なくしてプライバシーを確保しつつ、中庭に向けて開口部をとるデザインです。中庭はわずか1.5坪ですが、採光や通風には十分です。
profile.
1973年神奈川県生まれ。一級建築士。1994年中央工科学校建築設計科卒業後、設計事務所勤務を経て2000年に現事務所を設立。住まい手に満足してもらえる住宅を常に考え、提案している。
家族構成 |
夫婦+子ども2人 |
敷地面積 |
112.90㎡(34.15坪) |
建築面積 |
48.23㎡(14.59坪) |
延べ床面積 |
85.70㎡(25.92坪) 1F 46.16㎡ + 2F 39.54㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2010年10月〜2011年3月 |
本体工事費 |
約1600万円 ※地盤改良工事費含む、外構工事費別 |
3.3㎡単価 |
約62万円 |
設計 |
萩原健治建築研究所 TEL: 0463-82-3359 |
構造設計 |
MID研究所(加藤征寛) TEL: 03-6280-8805 |
施工 |
村上建設(瀬野尾めぐみ) TEL: 0463-75-0300 |
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